Salmon Fishing in the Yemen


2012年12月8日(土)「砂漠でサーモン・フィッシング」

SALMON FISHING IN THE YEMEN・2011・英・1時間48分(IMDbでは107分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、松浦美奈/シネスコ・サイズ(レンズ、in Panavision、IMDbではArri)/ドルビー・デジタル、DATASAT(IMDbではSDDSも)

(英12A指定、米PG-13指定)


公式サイト
http://salmon.gaga.ne.jp/
(音に注意、全国の劇場リストもあり)

イギリスの漁業・農業省に勤務する釣り好きの生物学者アルフレッド・ジョーンズ博士(ユアン・マクレガー)のもとへ、投資コンサルタント会社のハリエット・チェトウォド=タルボット(エミリー・ブラント)から、イエメンの大富豪がイエメンの川で鮭釣りをしたいといっているが可能かどうかメールしてくる。これに実行不可能と答えたジョーンズ博士だったが、それを聞きつけたマクスウェル報道担当官(クリスティン・スコット・トーマス)は、イギリスとアラブ諸国の間がうまくいっていないことから、宣伝材料とするためこの話をすすめるよう漁業・農業省に指示する。気が乗らないジョーンズ博士はハリエットと会い、諦めさせようと適当なプランを話し、金額を告げる。ところが依頼主のシャイフ・ムハンマド(アムール・ワケド)から5,000万ポンドの振り込みがイギリス政府にあり、関連企業も実際に動き始め、ジョーンズ博士はイギリスに城を持つシャイフと会うことになる。

71点

1つ前へ一覧へ次へ
 うむむ……とても中途半端な印象。バランスが悪い。やっぱりか……。最初は見る気がなかったのだが、ほかに見たい作品がなく、ポイントがたまっていたので見ることに。いきなり日本語字幕が斜体で、ジャギーが目立って、クォリティの低さを露呈って!? ビデオじゃないんだから。

 とんでもない夢のようなプロジェクトの実現と、男女の恋模様を描いたラブ・ストーリーをコミカルに描いたものだが、どれもリアルなんだかファンタジーなんだか、シリアスなんだかコメディなんだか、とても中途半端。半端に笑えて、半端にリアルでかわいそうな感じ。ただIMDbでは6.8点という高評価。

 最初はプロジェクトがメインで、かなり細かく描写されているのに、後半、主人公と彼女がいい雰囲気になってくるといい加減な印象に。そしてラブ・ストーリーもそれぞれ相手がいるので、最初は不倫な雰囲気。やがて連れ合いの存在がなくなって急接近するわけだが、その急接近に説得力がない。むしろかわいそうな感じの方が勝っている。多忙とすれ違いで冷めた夫婦関係とか、愛するパートナーを戦場に送り出して行方不明とか、ため息が出るようなかなり深刻な状況。これを笑えというのか。

 コメディは半端で、シチュエーションはシリアスすぎるほどシリアス。心から笑えず、最後はさわやかに良かったと思えない。生物学者の奥さんも良い人だし、軍人の彼氏も良い人なのだ。ここはやはり、ハリウッドの定石通りあまりシリアスな設定にせず、悪い人は悪く、前半でたっぷり笑わせて、ラストでしんみりと感動させる手だろう。このウェットさがイギリス流のコメディなのかもしれないが。最初はスケールの大きな話のはずが、どんどん小さく収れんしていって、普通のTVのメロドラマのような終わり方。残念。

 ちなみに、漁業・農業省というのは実際にはないようだ。

アルフレッド・ジョーンズ博士役のユアン・マクレガーは、最近、小さな映画の出演が多い感じ。つい最近ハリウッド・アクションの「エージェント・マロリー」(Haywire・2011・米/アイルランド)に出ていた。

 ハリエット・チェトウォド=タルボットはエミリー・ブラント。「プラダを着た悪魔」(The Devil Wears Prada・2006・米)あたりから目立ち出したような印象だが、最近は「アジャストメント」(The Adjustment Bureau・2011・米)は良かったが、「ガリバー旅行記」(Gulliver's Travels・2010・米)は残念なことに。次のSFアクション「LOOPER/ルーパー」(Looper・2012・米/中)に期待したい。

 マクスウェル報道担当官はクリスティン・スコット・トーマス。「イングリッシュ・ペーシェント」(The English Patient・1996・米/英)や「モンタナの風に抱かれて」(The Horse Whisperer・1998・米)の印象が強く、演技派で暗いイメージの人だが、本作ではちょっとコミカルで、政治家っぽい傍若無人な人物を好演。最後に見たのは「ルパン」(Arsene Lupin・2004・仏/伊/西/英)のカリオストロ伯爵夫人役だったろうか。やはり小さな映画が多くなってきた気がする。

 シャイフ・ムハンマドはエジプト生れのアムール・ワケド。ジョージ・クルーニーの「シリアナ」(Syriana・2005・米)に出ていて、その後クレジットされていないが感染爆発映画「コンテイジョン」(Contagion・2011・米/アラブ首長国連邦)にも出ているらしい。

 ちなみに役所で使っているのはWindowsで、投資会社のハリエットはMacBookプロ。アルフレッド・ジョーンズ博士がときどき話しかけているのはニシキゴイ。イエメンのテロリストのような男たちはAKS-47。

 原作はポール・トーディの「イエメンで鮭釣りを」(白水社)。アイルランド生れで、59歳になって初めて書いた小説らしい。なんでも実体験に基づいた話らしい。

 脚本はサイモン・ビューフォイ。TVの脚本家として活躍し、初めて書いた劇場長編映画「フルモンティ」(The Full Monty・1997・英/米)でアカデミー賞脚本賞ノミネート、「スラムドッグ$ミリオネア」(Slundog Millionaire・2008・英)でアカデミー賞脚本賞受賞、さらに「127時間」(127 Hours・2010・米/英)でもアカデミー賞脚本賞ノミネートという実力派。でも本作はどうなんだろう。

 監督はスウェーデン生れのラッセ・ハルストレム。「マイライフ・アズ・ア・ドッグ」(Mitt liv som hund・1985・スウェーデン)や「ギルバート・グレイブ」(What's Eating Gilbert Grape・1993・米)、「サイダーハウス・ルール」(The Cider House Rules・1999・米)といったドラマで高い評価を得ている人。ただ、その後、あまりパッとしない感じ……。

 水から現れて、流れに消えるようにタイトル文字はニック・ベンズ。武器係はリチャード・フーパー、チャールズ・ボディコム。製作会社はBBC。

 公開初日の初回、新宿の劇場は全席指定で、金曜に確保しておいて30分ほど前に到着。10分くらい前に開場になって場内へ。観客層は中高年がメインで、高齢者の方が多い感じ。20人中、女性は3〜4人。靴を脱いで、前の席にかけてる馬鹿ジジイがいたが…… その後少し女性が増えて1/4くらいに。関係者は4人くらいいたが、最終的に157席に3.5割ほど。まあ、この内容だし、こんなものだろう。

 気になった予告編は……どうも日本映画の予告は見たい気になるものが無かった。気が重くなるというか…… トム・クルーズの「アウトロー」は新予告に。ますます楽しみ。面白そう。2/1公開。


1つ前へ一覧へ次へ