Looper


2013年1月13日(日)「LOOPER ルーパー」

LOOPER・2012・米/中・1時間58分(IMDbでは119分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、松浦美奈/シネスコ・サイズ(レンズ、by Panavision)/ドルビー・デジタル、DATASAT、SDDS

(米R指定、日PG12指定)

公式サイト
http://looper.gaga.ne.jp/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

2044年アメリカ、カンザス州。30年後に開発されるタイム・マシーンによって未来から送られてくる犯罪者を射殺して処分するルーパーをーとして生計を立てているジョー(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)は、毎日、指示通りの時間に決まった場所で職務を遂行し、麻薬を打ち、売春婦のスージー(パイパー・ペラーボ)を買い、銀の延べ棒を貯め込んでいた。しかしある日、友人のルーパーであるセス(ポール・ダノ)がやって来て、かくまってくれと言う。射殺する相手が30年後の自分で、つい逃がしてしまったというのだ。しかたなくかくまうが、ボスのエレブ(ジェフ・ダニエルズ)に呼び出され、友人を売ってしまう。再びヤクと女に溺れて感情を殺し、職務を遂行していると、今度は30年後の自分が送り込まれてくる。

76点

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 何となく、ありがちなSFドラマで、先が読めるかと思っていたら、全く予想外の展開。いったいどうなってしまうのか。全然先が読めなかった。最初はいかにもSF的な、ちょっと退廃的な未来観の中で展開する処刑人の話かと思ったら、ギャング的な話になって、タイム・トラベルの話になり、西部劇のような展開を見せ、恋愛もののニュアンスも見せつつ、超能力の話になってオカルトチックになり、そして思いもかけない結末を迎える。いやあ、スゴイ話だ。謎は解けて納得できるが、ショッキングで、だいぶ気分は落ちる。かなり血も飛ぶ。悲しい。

 ちゃんとSFらしいし、映画的で、見終わるとなんだか長い夢を見ていたような感じ。別世界へと行っていたというか。ただ、全体を見通すと、わずかに短編的な展開という気もした。奇妙な発端と、どんでん返しという。長いようで短い。不思議な映画だ。ループは輪で、輪のようにつながること。それでこういうタイトルか。

 タイム・トラベルものなので、いろいろ仕掛けがあるようで、DVDとかBDとかでじっくり見直すと新たな発見があるかもしれない。逆に傷の位置がちがうとか、連続性のミスとかも見つかるかもしれない。ただ、よく話題になる過去の自分と出会ったら同時に自分が二人存在するというタイム・パラドックスはないことになっている。しかしそのおかげで「お前の行動はオレに残る(記憶になる)」という面白さが出ている。

 ルーパーたちによって使われるメインの銃器はブランダー・バス(ラッパ銃)と呼ばれるショットガン。これはプロップとしてデザインされた映画オリジナルの銃らしい。有効射程はせいぜいそして15ヤードしか撃てない(と映画の中で言っている)のに対して、精度と射程距離が優る銃として出てくるのが、「ガット銃」ことマグナム・リサーチのBFR(ビッグ・フレーム・リボルバー)。口径は.30/30から.500マグナムまで色々あるが、imfdbによると.45-70らしい。

 ほかにジョーが逃亡した後、一瞬だがハイスタンダード・デリンジャーのようなものも持っていたように思うのだが見間違いか。あと、未来でマテバ・リボルバーを使い、レインメーカーの部下の1人が.22口径のピストルを使う。ボクはてっきりブローニングのバック・マークかと思ったのだが、imfdbによるとベレッタU22Neosuなんだとか。

 未来のジョーはダイナーでUSP(Mk23)を使い、ルーパーの生意気な若造に捕まってエレブのところに連れて行かれてからFN P90をしかも2挺、乱射する。なぜかエイブの部屋のところではMP5になっている。ジョーは血だるまに。

 若いジョーを演じたのはジョセフ・ゴードン=レヴィット。傑作SFアクション「インセプション」(Inception・2010・米/英)でディカプリオの相棒を演じていた人。同じクリストファー・ノーラン監督の「ダークナイト・ライジング」(The Dark Knight Rises・2012・米/英)では、正義感の強い警官からロビンになる男を演じていた。なんと本作では製作総指揮も担当。ブルース・ウィリス演じる未来のジョーと似せるため、特殊メイクをしているので、ちょっと印象が違うが。

 その特殊メイクを担当したのが辻一弘。1989年から日本の映画界でクレジットされるようになり、1997年からハリウッドで活躍を始めたらしい。大作にも関わっており、驚きの映画「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」(The Curious Case of Benjamin Button・2008・米)、最近では「トータル・リコール」(Total Recall・2012・米/加)を手掛けている。

 未来のジョーはブルース・ウィリス。まあとにかくB級から超大作まで、映画にガンガン出ている。2012年に製作された映画だけで6本。すべて主演ではないが2カ月に1本出ている感じか。お金に困っているのだろうか。つい最近「エクスペンブダルズ2」(The Expendables 2・2012・米)と「シャドー・チェイサー」(The Cold Light of Day・2012・米/西)が公開されたばかり。そしてまもなく主演作の「ダイ・ハード ラスト・デイ」(A God Day toDie Hard・2013・米)が公開される。

 娼婦のスージーを演じたのはパイパー・ペラーボ。女子の成り上がり映画「コヨーテ・アグリー」(Coyote Ugly・2000・米)に主演して注目されたが、その後あまり良い作品に恵まれなかった模様。しかし2010年から始まったTVの「コバート・アフェア」(Covert Affairs・2010〜・米)で主演の新米CIAエージェントを務め再び注目を集めている。半裸で胸をさらしてこんな役をやるとは!

 重要な鍵を握るシングル・マザーのサラはエミリー・ブラント。イギリス出身で、「プラダを着た悪魔」(The Devil Wears Prada・2006・米)からハリウッドに進出し、最近は良く映画に出ている。最近ではSFラブ・ストーリーの「アジャストメント」(The Adjustment Bureau・2011・米)、「砂漠でサーモン・フィッシング」(Salmon Fishing in the Yemen・2011・英)などに出ている。

 ガット・メンのボスのエレブはジェフ・ダニエルズ。この人は印象が良い人そうで、どこかコメディの雰囲気がしてしまう。ちょっと「インデペンデンスメデイ」(Independence Day・1996・米)で大統領を演じたビル・プルマンにも似ている。1980年代から活躍していて、ボク的にはタイム・トラベルSFの「グランド・ツアー」(Timescape・1992・米)が良かった。大ヒット・アクション「スピード」(Speed・1994・米)ではキアヌー・リーブスの相棒を演じ、最近では「消されたヘッドライン」(State of Play・2009・米/英/仏)に出ていた。

 ルーパーズの生意気な若造、キッド・ブルーはノア・セガン。マグナム・リサーチのBFRを西部劇のようにクルクル回していて、足を撃つぞと注意されるところが傑作。生意気な感じが実にうまかった。「BRICKブリック」(Brick・2005・米)というミステリーでジョセフ・ゴードン=レヴィットとライアン・ジョンソン監督と仕事をしている。

 脚本・監督はライアン・ジョンソン。劇場長編映画の監督デビューは「BRICKブリック」。その後の作品は日本劇場未公開となっているが、TVを手掛けた後、本作に至っている。ジョセフ・ゴードン=レヴィットの信頼が厚かったということだろう。

 劇場のエンド・ロールでは見つけられなかったが、IMDbによるとクレジットされているアーマラー、武器係はモーリー・バトラー。「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」ではローカル・アーマラー、「エクスペンダブルズ」(The Expendables・2010・米)ではアシスタント・アーマラーを務めている。

 公開2日目の初回、銀座の劇場は初回のみ全席自由。35分前くらいに係の人に開場を教えてもらってエレベーターへ。やはりメインは中高年で、30代以下は1割いただろうか。男女比は7対3くらいで男性の方が多かった。469席が10分前くらいで5割ほど埋まり、最終的には7割ほどが埋まった。これは立派では。

 スクリーンはシネスコで開いていて、案内のアナウンスのあと半暗になってビスタになった。気になった予告編は……CMの後スクリーンが上下が縮まって左右に広がり、シネスコになって、すごい重厚な絵で始まったのは、なんと「S」のマークの男スーパーマンをリアルに描く「マン・オブ・スティール」。「ダークナイトライジング」(The Dark Knight Rises・2012・米/英)の監督クリストファー・ノーランが製作しているらしい。えっ、ケヴィン・コスナーがパパ? 期待したい。2D&3Dで夏公開。

 トンプソンを撃ちまくっていたのは「L.A.ギャングストーリー」。なんだかアンタッチャブルの話のようだったが……M1A1で舞台は1949年。悪役がショーン・ペンで、追う方がジョシュ・ブローリン。あとでっかいニック・ノルティも。エマ・ストーンが素晴らしくキレイ。まだ日本語の公式サイトは無い模様。それでも公開日は決まっていて、5/3公開。英語サイトはここ

 名手ブライアン・シンガーが監督を務める新作は「ジャックと豆の木」の実写映画化「ジャックと天空の巨人」。日本語吹替での予告だったが、面白そう。さらわれた姫を助けに、ジャックが大きく生長した豆の木を登ると。2D&3Dで3/22公開。


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