Strawberry Night The Movie


2013年2月2日(土)「ストロベリーナイト インビジブルレイン」

2013・フジテレビジョン/S・D・P/東宝/協同テレビジョン/FNS27社/光文社・2時間6分(allcinemaでは127分)

シネスコ・サイズ(デジタル、CINEMA EOS)/ドルビー・デジタル

(日PG12指定)(一部字幕上映もあり)

公式サイト
http://www.strawberrynight-movie.jp/
(全国の劇場リストもあり)

警視庁中野東署管内で龍崎組の若いやくざ小林の惨殺死体が発見され、殺人事件を担当する第一課と、組織犯罪対策部の第四課合同の捜査会議が持たれる。左目が切られているなど、他の2件の龍崎組構成員の殺害事件と手口が似ていることから、組内の抗争が原因の連続殺人事件として捜査されることになる。しかし第一課の姫川班・警部補、姫川玲子(竹内裕子)は、「犯人は柳内健斗だ」というタレコミ電話を受ける。それを聞いた入院中の上司、係長の今泉春男警部(高島政宏)から「柳内健斗は俺に預けてくれ」と言われ、管理官の橋爪俊介警視(渡辺いっけい)からも「柳内健斗には触れるな」と止められる。納得できない姫川は、密かに単独捜査を進めるが……。

76点

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 正統派の、堂々たるミステリー。TV版は2時間スペシャルしか見ていないが、実に良くできたお話。感動と衝撃。TV版のスペシャルも良かったが、映画版はTVの延長と言うより、ちゃんと映画として単独で成立している。TV版を見ていればさらに面白いのだろうが、見ていなくても、単独のミステリーとして楽しめる。

 当然、個性派ぞろいのキャストの魅力も大きいし、演出の妙、ちゃんとカラリストがいる絵作りの美しさも、脚本の見事さもあるだろうが、おそらく何より原作がすばらしいのではないだろうか。そんな感じが伝わってくる作品。

 合同捜査で、組織犯罪担当の四課と、殺人事件担当の一課の確執、キャリアとノンキャリア、先輩と後輩、警察組織と個人といった対立構造が緊張のドラマを生み出している。そして核となる暴力団組織の「龍崎組」にも、当然、上下関係、力関係があって、パワー・ゲームが面白い。

 そして本作ではちょっとインテリやくざ風の、ちょっと異質なやくざ、牧田がいい。さすが大沢たかおが演じるだけあって、悪人なんだけれど、結局はカッコよくて、魅力的な人物になっている。しかもドラマの王道の展開というか結末。良い役だ。

 原作は誉田哲也の姫川玲子シリーズの1本「インビジブルレイン」(光文社)。シリーズは累計240万部を超えるベスト・セラーなんだとか。TVドラマとしてシリーズ第1作の「ストロベリーナイト」が作られたため、本作も「ストロベリーナイト」の「インビジブルレイン」として作られることになったらしい。

 姫川玲子役の竹内裕子はじめ、キャストはオール・スター的な豪華版。菊田和男役の西島秀俊が、中野東署の井岡博満役の生瀬勝久にグー・パンチをするところが面白かった。映画版ではそれに、さらにヤクザ役で大沢たかお、捜査一課長として三浦友和(友情出演とあったが、誰への友情なんだろう)らが加わり一層豪華だ。

 不思議なことに、自主製作映画でもやくざ役というのは皆さんうまい。そして本作でも、まるで暴力団のように見えるという第四課の刑事の方々は、スゴイ迫力だ。今井雅之、柴俊夫、やくざ役の鶴見辰吾など、まあリアル。そして権力を笠に着る刑事部長の田中哲司、管理官の渡辺いっけいなども、嫌らしさは見事だ。

 意外な配役で面白かったのは、違法捜査も平気で行うおそろしい刑事、ガンテツこと勝俣健作を武田鉄矢が演じていること。どうしても「金八先生」とか「刑事物語」(1982・日)のイメージが強くて、ちょっとコミカルで熱血なキャラクターを想像してしまうが、そのギャップが衝撃的だった。

 また仲が悪いようでいて、ひそかにサポートしている日下守役の遠藤憲一もいい。どうしてもVシネのやくざ役というイメージが強く、いかにも悪人面だが、本作のような内面で優しい男がピタッとハマるとは。

 1つ気になったのは、最初に発見されるやくざの小林の刺し傷が、多くは死亡してからのものであると後でわかるが、これは検死ですぐにわかるのではないだろうか。アメリカのTVドラマ「CSI」などで良くやっている。生体反応のある傷がどうしたこうしたと。

 銃はやくざが使うグロック。銃器特殊効果はビッグショット。

 事件の間中、ずっと雨。水をまいたような雨もあったが、リアルな雨もあり、どうやって撮ったんだろう。本当にたまたま雨だったのか。ちょっとしたシーンで、とても雨待ちなどできるとは思えないし。そして事件が解決するとすっきり晴れ、青空が広がる。そのキレイでさわやかなこと。さすがカラリストがいるだけのことはある。デジタル・カメラを使ったのも大きいかもしれない。

 脚本は龍居由佳里と林誠人の2人。龍居は2010年のTVムービー版から「ストロベリーナイト」を書いており、多くのTV、TVムービーの脚本を手掛けている。映画はちょっと残念な「小さき勇者たち〜ガメラ〜」(2006・日)。林誠人は2012年のTVドラマ「ストロベリーナイト」を書いていて、「ケータイ刑事」は2003年からずっと、そして2003年の「トリック」も書いている。

 監督は佐藤祐市。TVの「世にも奇妙な物語」、「ウォーターボーイズ」、「シバトラ」などを手掛けていて、映画は女子カーリングの「シムソンズ」(2006・日)やミステリーの「キサラギ」(2007・日)を手掛けている。

 公開8日目の初回、新宿の劇場は全席指定で金曜に確保。15分前くらいに開場となって場内へ。やはりTVドラマの映画かということでか、若い人から中高年まで幅広く、しかもメインは若い人たち。しかも男女比は3対7くらいで女性が多く、特に若い女性が目だつ。6割くらいは若い女性という感じ。遅れてくるヤツが多く、はっきりとはわからなかったが、最終的には301席の8割くらいが埋まった。

 例によって場内はあちこちでケータイが光っていた。任天堂のゲームをやっているやつも。上映までちょっとしかないのに。

 気になった予告編は……ジャパニーズ・ホラー「クロユリ団地」はティーザーで良くわからなかった。前田敦子が主演らしい。5/18公開。

 上下マスク「船を編む」もティーザーで良くわからなかったが、本屋大賞受賞した原作で、辞書を作る話らしい。それにしても宮崎あおい、よく映画に出てるなあ。4/13公開。


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