Parker


2013年2月11日(月)「PAKER パーカー」

PARKER・2013・米・1時間58分

日本語字幕:細丸ゴシック体下、市種譲二/シネスコ・サイズ(レンズ、Hawk Scope、デジタルも)/ドルビー・デジタル、DATASAT(IMDbではドルビー・デジタルのみ)

(米R指定、日PG12指定)

公式サイト
http://parker-movie.net/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

パーカー(ジェイソン・ステイサム)は、恋人クレア(エマ・ブース)の父親ハーリー(ニック・ノルティ)の手配により、組織に属さないフリーランスの犯罪者4人と共に、オハイオ州で開催される大きなイベント、オハイオ・ステート・フェアの売り上げを強奪する計画を実行する。ところが、メンバーの1人ハドウィック(マイカ・ハウプトン)がドジを踏み、死者1人とけが人6名が出てしまう。逃走途中、パーカーは分け前を要求するが、次のより大きな仕事のために全額必要なので、このまま次の仕事に向かうという。けが人を出さない主義のパーカーは、不参加を表明したため殺されそうになり、銃弾を撃ち込まれ、池に落とされる。そこへたまたま通りかかった農夫一家に助けられ入院させられるが、パーカーは病院を脱出して分け前を取り返すため一味のあとを追う。

76点

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 いわゆるピカレスクもの。主人公は悪党だが、保険の出る金か悪党からしか盗まず、悪党以外からはけが人を出さず、ポリシーを持って盗みをやっているという、感情移入しやすい設定。ほとんど構成も、ほかのジェイソン・ステイサム主演の痛快アクションと同じ。ワン・マン・アーミー的に孤軍奮闘して、疾走し続けて事件を解決する。新鮮味はないかもしれないが、安心して見られて、楽しめる。ちょっと「ザ・タウン」(The Town・2010・米)を明るくした感じか。ジェイソン・ステイサムの前作「SAFE/セイフ」(Safe・2012・米)よりは数倍面白い。「アドレナリン」(Crank・2006・米)的でもあるし、「トランスポーター」(The Transporter・2002・仏/英)的でもある。IMDbでは6.5点だが、ボクは面白かった。

 おもしろいのは、ジェニファー・ロペスを使っておきながら、ジェイソン・ステイサム演じるパーカーには決まった相手がいる設定で、ロマンスには発展しないこと。しかもダメ打ち的に「私には最初から望みなしね」とまで言わせている。これがいい。浮気的な発展がないことで、主人公のスジの通ったところがはっきりするし、ジェニファー・ロペスも色に流れないことで自立した女であることを示せる。しかもジェニファー・ロペスはバツイチで、一緒に同居するわがまま放題の「なかなか死にそうにもない」母親までいるのだ。この設定が良い。しかもこのやっかい母さん、いざとなるとしっかりしていて頼りになる。

 さらには、パーカーの恋人クレアの父親がニック・ノルティなのに、最初は深く関わっていながら、後半はほったらかしで、いつのまにかフェード・アウトという扱い。友情出演か何かか。普通ならジェイソン・ステイサムと一緒にやくざ相手に派手な銃撃戦を期待するところだ。制約があってできなかったのか、あえてそんな扱いにしたのか。いずれにしても予想を裏切る扱いで、意外だった。

 そして、ちょっとした役でもキャラクターが良い。オハイオ・ステート・フェアの発作を起こすまじめそうな警備員、病院の隣のベッドの声がでないのでマイクを使っているじいさま、パーカーを救う農夫、書類偽造の悪党の印刷屋、クールで無口な殺し屋……などなど。

 銃は、4人のフリーランスの1人、ロス(クリフトン・コリンズJr.)が持っているのが水平二連のソードオフ・ショットガン。あとでM92を使う。パーカーらはグロック。モーテルで盗む銃がルガーLCPかLC9。しかも撃っている。これはスクリーン初登場かも。印刷屋で手に入れるのがシルバーの1911オートで青いG10グリップの付いたモデル。後に印刷屋のボス(カルロス・カラスコ)はサタデー・ナイト・スペシャルのようなリボルバーをベルトに差している。シカゴのボスの使いの男はパイソンらしき4インチのリボルバー。ラストでパーカーが使うのがS&WのM5906かM4006。トリガー・ガードが角張っていたと思うが、丸いものも使われていたようで混じっていたのかも。やたらしゃべっていないで、すぐズドンと行くところがリアル。特にジェイソン・ステイサムは問答無用。そこがまたいい。

 エンド・クレジットにアーマラーの役職は見つけられず、IMDbにもなかった。小道具係が兼ねたとか、スタント・コーディネーターがやったとか……。

 ジェニファー・ロペスが乗る車はマツダ。後半、金持ちのカウボーイを装ったジェイソン・ステイサムはベントレーを乗り回し、ラストはたぶんシボレーのSUV。そしてジェニファー・ロペスが使うPCがiMac。

 町の中にCGの文字が浮かんでいるのは「パニック・ルーム」(Panic Room・2002・米)の手法か。タイトルがイマジナリー・フォースだったので、このCGもイマジナリー・フォースだろうか。

 ラストにドナルド・ウェストレイク(1933〜2008)に捧ぐと出るが、これは原作者リチャード・スタークの本名らしい。多くの作品が映画化されており、ペンネームもいくつかあるのだとか。有名なところではロバート・レッドフォードの「ホット・ロック」(The Hot Rock・1972・米)、リー・マーヴィンの「殺しの分け前/ポイント・ブランク」(Point Blank・1967・米)などがある。本作は「悪党パーカー」シリーズの1本「悪党パーカー/地獄の分け前」(ハヤカワ・ミステリ文庫)。

 ジェイソン・ステイサムは、本作の中でジェニファー・ロペスに「イギリス・アクセントね」と指摘されているように、イギリス・ロンドン出身。この人も映画出まくり。「SAFE/セイフ」みたいな作品もあるが、たいていはおもしろい。本作の前には「エクスペンダブルズ2」(The Expendables 2・2012・米)に出ていた。公開を控えているのが3本。さすが人気者。

 不動産屋を演じたジェニファー・ロペスは、モンスターというわけではないが「ゴジラ」(1954・日)や「JAWS/ジョーズ」(Jaws・1975・米)のようになかなか出てこないでじらす演出。だから強く印象に残る。「Shall we Dance?シャル・ウィ・ダンス?」(Shall We Dance?・2004・米)以降、スクリーンであまり見かけない気がして、懐かしさを感じたほど。本作はさすがの存在感。良かった。新作の予定はないようだが、大丈夫なのか。まあこの人の場合は歌があるか。ちゃんとお約束の、盗聴器チェックのため服を脱がすシーンもある。

 恋人クレアの父親ハーリーはニック・ノルティ。独特のラジオか電話を通して聞くような声で、独特の威圧感というか存在感がある。72歳で、さすがに歳を取ったなあという感じ。本作の前に「LK.A.ギャング・ストーリー」(Gangster Squad・2013・米)に出ているが、それは5月公開予定。ジェイソン・ステイサムと並ぶと頭でかいなあ。

 悪党のリーダー、メランダーはマイケル・チクリス。TVドラマの「ザ・シールド ルール無用の警察バッジ」(The Shield・2002〜2008・米)でリーダーを演じた人。日本ではCS放送であまり知られておらず、残念な「ファンタスティック・フォー[超能力ユニット]」(Fantastic Four・2005・米/独)で岩石の体のベン・グリムを演じて知られるようになった。「ファンタ……」の人の良い役から一転、なかなかの怖さで良かった。

 仲間の1人、黒人のカールソンはウェンデル・ピアース。TVの仕事が多いようで、映画は東京は小劇場の単館公開となった「噂のギャンブラー」(Lay the Favorite・2012・米/英)や、確かこれも小劇場公開だった「モンスター上司」(Horrible Bosses・2011・米)などに出ている。

 仲間の1人、ラテン系のヒゲの男はクリフトン・コリンズ・Jr。「アドレナリン ハイ・ボルテージ」(Crank: High Voltage・2009・英/米ほか)でメキシカン・マフィアのボスを演じていた人。「サンシャイン・クリーニング」(Sunshine Cleaning・2008・米)では良い役だったが、こんなこすいギャング役がよく似合う。

 印刷屋のボスはカルロス・カラスコ。どこかで見たなあと思って調べたら、「スピード」(Speed・1994・米)に出ていた人だった。確かバスの乗客の1人ではなかったか。

 レスリーの一見お気軽そうな母はパティ・ルポーン。この人もどこかで見たと思ったら、ロバート・デ・ニーロの「容疑者」(City by the Sea・2002・米)に出ていたらしい。

 女性は美人が多い。パーカーの恋人のクレア役のエマ・ブース、不動産屋の同僚役の、シャロン・ランディ、アリシア・オクサ、皆きれい。

 脚本はジョン・J・マクロクリン。ナタリー・ポートマンがアカデミー賞主演女優賞を受賞して話題になった「ブラック・スワン」(Black Swan・2010・米)の脚本を書いた人。これから公開される「ヒッチコック」(Hitchcock・2012・米)の方を先に書いたらしい。

 監督はテイラー・ハックフォード。TVから映画界に入り、2作目の「愛と青春の旅だち」(An Officer and a Gentleman・1982・米)で注目されるようになった人。監督よりプロデューサーとしての仕事の方が多い。最近だと民間警備会社の男の活躍を描いた「プルーフ・オブ・ライフ」(Proof of Life・2000・米)や、レイ・チャールズの生涯を描いたアカデミー賞受賞作「Ray/レイ」(Ray・2004・米)などを監督している。ということは、当然の面白さか。

 公開3日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、金曜に取ろうと思ったら2日前からしか受け付けていないということでダメ。土曜に取り直しし、当日は12〜13分前に開場。思ったとおりほとんど中高年。男女比も予想していたように女性が少なく、ほぼ9対1くらいで男性のみ。最終的には138席に7.5割くらいの入りは、良いのか、悪いのか。たぶん良い方だろう。

 気になった予告編は……アニメを多く上映する劇場なので、アニメの予告が多い。「アニメミライ」という文化庁の若手アニメーター等人材育成事業で製作された何本かが上映されるらしい。

 あいかわらず平気で液晶画面を光らせてるヤツが多いが、上下マスクの「ジャックと天空の巨人」は新予告に。ただ日本語吹替版だったので、大きなスクリーンだと声と口の動きが合わず、かなり違和感があった。3/22公開。

 わく付きで1.66くらいの比率で上映されたのは「ヒンデンブルグ 第三帝国の陰謀」の予告。これもドイツ語の英語吹替のようで違和感があった。本番の上映でも英語吹替なんだろうか。2/16公開。

 「ゼロ・ダーク・サーティ」も新予告に。かなりシリアスで怖い感じ。2/15公開。

 「ダイ・ハード/ラスト・デイ」も新予告に。2/14公開。

 上下が狭まってシネスコ・サイズになって本編へ。


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