Dredd


2013年2月16日(土)「ジャッジ・ドレッド」

DREDD・2012・英/米/印/南ア・1時間35分

日本語字幕:丸ゴシック体下、岡田壮平/シネスコ・サイズ(デジタル、Red One)/ドルビー・デジタル、DATASAT

(英18指定、米R指定、日R15+指定)(3D上映もあり)

公式サイト
http://www.judge-dredd.jp/
(全国の劇場リストもあり。表示されないページも……)

未来世界のアメリカは、古い建物が残る中に巨大なメガ高層ビルが建ち、メガ・ハイウェイで結ばれていた。ボストンからワシンシンD.C.に掛けての一帯はメガシティ♯1と呼ばれるエリアで、8億もの人が住んでいた。銃とギャングから街を守っているのは裁判所で、そこに所属するジャッジと呼ばれる法執行官に処刑までの大きな権限が与えられていた。腕利きのジャッジ・ドレッド(カール・アーバン)は、ある日、チーフ・ジャッジ(レイキー・アヨラ)に呼び出され、ジャッジの試験にわずかの差で合格できなかったという女性、カサンドラ・アンダーソン(オリヴィア・サールビー)を見てくれといわれる。彼女はミュータントで、これまでにない強い超能力を持ち、人の心が読めるという。そんな時、75,000人が住む200階建てのピーチ・ツリー・タワーで3人の他殺死体が発見される。さっそく近くにいたドレッドとアンダーソンが向かうが、そこはマデリン・マドリガル(ヘナ・レディ)、通称ママが支配するギャングだらけのビルだった。

76点

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 SFアクションで、コミック・ヒーローもので、過去に「ジャッジ・ドレッド」(Judge Dredd・1995・米)でシルヴェスター・スタローンが演じているので、そういう系のものかと思いきや、どうしてどうして、暴力満載の、徹底した悪と正義の力のぶつかり合いだった。完全なる大人向けの、SF味付けのリアル・ヴァイオレンス・アクション。血が飛び、頭が吹っ飛び、銃弾が貫通し、ナイフが突き刺さる。銃声も凶悪で恐ろしくなるほど。この徹底ぶりがすごい。さすがイギリス系の映画。

 ただ、タワー・ビルに敵がいて、警察がそのビルを制圧していくと言う話だと、見ていないのだが「ザ・レイド」(The Raid・2011・インドネシア/米)に設定が似ている気はする。そこが気になると言えば気になるか。

 スゴイのは、とにかく主人公のドレッドが最後まで一切顔を出さないこと。ほかのジャッジも、プロテクターと言う設定で装着しているから外すことはないが、それにしても主人公だったらひと息ついたときとか、汗を拭くとかして、1回はヘルメットを脱ぎそうなもの。もしくはヒロインとキスするシーンがあるとか。ところが、そんなそぶりは一切見せない。かたくななほどヘルメットを手放さない。まるで呼吸マスクで外すと死んでしまうかのよう。おかげで、かろうじて見える口元はヘの字に引き結ばれていて、スタローンと似ていること。もっと深く考えれば、口元だけで色んな感情を表現したのだから(そう見えるということなのかもしれないが)、スゴイ演技力だとも言えるのかも。それゆえ、ちょっと「ロボコップ」(Robocop・1987・米)っぽい感じもする。

 これに対比させて、ヒロインのカサンドラ・アンダーソンは一切ヘルメットを被らない。初めから終わりまでずっと顔出し。危険なシーンでも、顔をさらしている。理由は超能力を発揮するのにじゃまになるから。確かに納得できる理由だ。

 SFっぽいアイテムとしては、空を飛んでいる飛行機のような乗り物と、ジャッジたちが乗るバイクなどもあるが、一番良いのはジャッジが持っている銃、ロウギヴァー(Lawgiver)だろう。音声認識装置が着いていて、声でガス弾、焼夷弾、徹甲弾、サイレント・モードなどに早変わりする。しかも掌紋認識なのか、持ち主でないと撃てないようになっているらしい。なので、敵に取られて使われることはない分、味方の銃でも拾って使うことはできない。マガジンだけは共用できるらしい。もちろん残弾などがデジタルで表示される。デザインはイマイチの気もするが、機能は素晴らしい。ベースはグロックで、面影があるのはトリガーあたりとグリッブくらいしかないのにスクリーンではほとんど握られていて見えない。imfdbではどうやってデコレーションされているのか解説されている。

 それと、応急キットも便利。傷にチューブからジェルみたいなものを充填し、ホチキスで留める方式。SFだからすぐに効く。

 ほかに使われている銃は…… 冒頭のギャングが撃っていたサブマシンガンはイングラムに似ているなあと思っていたら、南アフリカのメケヘムBXPらしい。またピーチ・ツリー・タワーのギャングたちが持っているのはグロック、M870っぽいポンプ・ショットガン、MP5、15か20mmくらいありそうなヴァルカン砲3門(トレーサー入りで射撃し、スゴイ迫力)、子供ギャングがリャマM82のような銃を持っていて、M14EBRやSCAR、ガリル、FNミニミのパラトルーパー、マイクロ・ウージーなどもあったような気がする。

 ジャッジたちは、裁判所内のセキュリティ・ガードが南アフリカのヴェクターCR-21を撃たないが持っている。ドレッドはSPASっぽい角張ったショットガン、ベネリのM3?も使う。ブーツに隠しているのはノーリンコのナイフ・ピストル。.22口径が4発撃てるヤツ。カサンドラはMP5も使う。

 ウェポン・マスター(キー・アーマラー)はオリー・スティール。ビックリのヴァイオレンスSF「第9地区」(District 9・2009・米ほか)でウェポン・マスターを務めた人。イギリスで高い評価を得ているTVの特殊部隊ドラマ「Strike Back」(2010〜)のアーマラーも担当している。さすがにこれだけの銃が出てくるとなると1人では無理だったようで、アシスタントとしてほかに2人クレジットされている。1人がフリップ・ベスター。この人も「Strike Back」を手掛けていて、映画では、これまた強烈アクションだった「ドゥームズデイ」(Doomsday・2008・英/米ほか)の特殊効果をやっている。もう1人、ティム・カーショーは大人気TVドラマ「24」を手掛け、映画では「マシンガン・プリーチャー」(Machine Gun Pleacher・2011・米)のセカンド・アーマラー、南アフリカ・パートを担当している。たぶんどの人も、何かしら南アフリカと関係しているようだ。銃も南アフリカのあまり見慣れないものが多かったし。

 ドレッドを演じ、最後まで顔を出さなかったのはカール・アーバン。悪役が多い人で、「ボーン・スプレマシー」(The Bourne Supremacy・2004・米/独)では殺し屋を演じていた。ゲームの映画化「DOOMドゥーム」(Doom・2005・英ほか)では特殊部隊の隊長を、面白かった新生「スタートレック」(Star Trek・2009・米/独)ではドク・マッコイを演じていたが、SFヴァンパイア「プリースト」(Priest・2011・米)では裏切るプリーストを演じていた。

 カサンドラ・アンダーソンはオリヴィア・サールビー。ティーンの妊娠を描きアカデミー賞脚本賞を受賞した「JUNOジュノ」(Juno・2007・米)で主人公の友達を演じていた人。その後、小さい作品に出ていたようで、日本では劇場公開されないか、小劇場での公開ばかり。本作が初の大作ということになるのではないだろうか。ボクは初めて見た。アクションもそつなくこなしていたようだが、どうだろう。

 凶悪な女ボス、ママを演じたのは美人のレナ・ヘディ。凶悪さを出すため、ヒモにナイフできられたという設定の大きな傷跡を頬に作っていた。すばらしかった「300〈スリーハンドレッド〉」(300・2007・)のあと、パッとしなかった感じ。主演のTV・SFアクション「ターミネーター:サラ・コナークロニクルズ」(Terminator: The Sarah Connor Chronicles・2008〜2009・米)は今ひとつで尻すぼみだったし。それであえてこういう役に挑んだのかも。

 原作は英国コミックの「ジャッジ・ドレッド」。ジョン・ワーグナーが創造し、スペイン人アーティスト、カルロス・エズキエラが視覚化したのだとか。本作の脚本はアレックス・ガーランド。旅行者が巻き込まれる悲劇を描いた「ザ・ビーチ」(The Beach・1999・米/英)の原作や、イギリスのゾンビもの「28日後...」(28 Days Later...・2002・英)の脚本、時間軸バラバラドラマ「テッセラクト」(The Tesseract・2003・日/タイ/英)の原作、SFアドベンチャー「サンシャイン2057」(Sunshine・2007・英/米)など、割と過酷なものが多い。本作もかなり過酷。

 監督はピート・トラヴィス。イギリスのTVで活躍していたが、時間軸バラバラ・アクションの「バンテージ・ポイント」(Vantage Point・2008・米)で劇場映画デビューをかざった人。その後の南アフリカが舞台の「エンドゲーム 〜アパルトヘイト撤廃への攻防」(Endgame・2009・英)は日本では劇場公開されなかったが、本作で再びすごいアクションを撮ったと。次作にも期待したい。

 ボクは2D字幕版で見たが、充分に楽しめた。3Dにする意味なんてあったのだろうか。入場者プレゼントで「RAIZN」というエナジー・ドリンクをもらった。

 公開初日の初回、新宿の劇場は全席自由で、25分前くらいに着いたら誰も並んでいなかった。15分前開場の札が出ていた。20分前くらいに1Fのドアが開き、階下へ。この時点で中高年が5〜6人。女性は1人。まもなく開場となって、時点では12〜13人。暗くなる前は588席に50人くらいの感じ。若い人は5〜6人、女性が3〜4人。あとは中高年男性。

 場内は最初から暗く、ボクのような老眼だと本も読めないほど。また場内が寒かった。暖か過ぎるのは困るが、この時期寒いというのも……。

 暗くなってカーテンが左右に開いて始まった予告編で気になったのは……ジャッキー・チェン最後のアクションという「ライジング・ドラゴン」は世界の3大財宝を盗む話らしい。4/13公開。六本木か新宿かで悩むなあ。

 上下マスクの「逃走車」は車内のカメラだけで撮影したというカー・アクション。ポール・ウォーカーの主演。面白そう。2/23公開。

 スクリーンが左右に広がってシネスコ・サイズになって本編へ。


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