Zero Dark Thirty


2013年2月23日(土)「ゼロ・ダーク・サーティ」

ZERO DARK THIRTY・2012・米・2時間38分(IMDbでは157分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、佐藤恵子/ビスタ・サイズ(Panavision、IMDbではArri)/ドルビー・デジタル、DATASAT、SDDS

(米R指定、日PG12指定)

公式サイト
http://zdt.gaga.ne.jp/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

2001年9月11日のアメリカ同時多発テロから2年、CAIのダン(ジェイソン・クラーク)は新しくワシントンから送り込まれて来たCIA情報分析官のマヤ(ジェシカ・チャステイン)とともに、ビン・ラディンの一味と関係がある捕虜アマール(レダ・カテブ)からビン・ラディンや次のテロにつながる情報を得ようとしていた。しかし何も得られないまま2004年5月29日、サウジアラビアのホテルで外国人を狙った乱射テロ事件が発生する。マヤはこれを利用して睡眠時間を与えられずもうろうとしているアマールからビン・ラディンの連絡員であるアブ・アハメドの名前を引き出す。しかしそれはアハメドの父という意味で、真偽は不明。捜査が進められる内、2005年7月7日ロンドンの地下鉄と二階建てバスで爆破テロが発生。さらに2008年9月20日、今度はパキスタンで、チーム・メイトの分析官ジェシカ(ジェニファー・イーリー)とともにマリオット・ホテルで食事しているときに爆破テロに巻き込まれるが、九死に一生を得る。そんなとき、ついにヨルダンのスパイから、アルカイダ内に裏切り者の医師がいるという情報がもたらされ、ジェシカが担当することになる。その医師に2,500万ドルを支払い、ビン・ラディンの潜伏先を聞き出そうというのだ。ちょうどその頃、捕虜の拷問が問題となり、オバマ大統領が拷問は行わないと宣言したことから、捜査は行き詰まっており、その情報に掛けるしかなかった。ところがそれはアルカイダの罠で、2009年12月30日、自爆テロによりジェシカを含むCIA局員7名死亡、ほかに7名が負傷する。そして別の捕虜からアブ・アハメドはすでに死んでいて、オレが埋葬したという情報ももたらされる。そんなとき、新人の女性分析官が7年前の古い情報からアブ・アハメドはイブラヒム・サイードだと見つけ出す。その資料を調べると、死んだのは良く似た兄だという可能性が浮上し、クェートの王族をランボルギーニで買収しサイードの母の家の電話番号を手に入れる。はたしてサイードはビン・ラディンの連絡員なのか。

76点

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 158分間の5分の4ほどが、CIAによる調査のシーン。拷問、買収、電話の盗聴、監視カメラ、監視衛星などを駆使してアルカイダによる次のテロを探り、首謀者のビン・ラディンの居場所をつきとめる地道な積み重ねの分析・情報収集が描かれる。しかも確かな証拠はどこにも無く、最終的には勘に頼って、居場所を特定する。世界を股に調査するわけだが、いわばここは静的パート。ラストの30分ほど(20分ほど?)が対テロ特殊部隊DEVGRU(海軍特殊作戦開発グループ、かつてのネービー・シールズ・チーム6)の出動から、ヘリ1機の墜落、侵入、捜索、交戦、任務完遂、証拠押収、撤収までを描くアクション・パート。

 静的パートの比重が大きく、だからこそ女性が主人公となりえたわけだが、実話であり、テロの首謀者の所在を明かし、追い詰め、殺害しようとする執念は半端ではない。ここに男女の差はないのかもしれないが、5年前の書類から重要な事実を掘り出すことができたのは、女性ゆえかもしれない。ただ、映画的には退屈な部分が多く、ちょっと気を失いそうになった。テロが何回もあったり、拷問があったり、大金を投じていながらなかなか成果が上がらないことによる苛立ち、組織内部のあつれきがあったりはするものの、特殊なケースで感情移入はしにくい。

 しかも、あえて狙ったのだろうが、ほぼ100%カメラは手持ち撮影で、微妙に揺れる。ドキュメンタリー・タッチを狙ったのか。シネスコほどではないので、あまり目は回らないが、それでも軽いめまい、船酔い状態にはなる。だから気持ち悪い。特に拷問シーン、ラストの襲撃シーンはとてもリアルに描かれているので、余計に気持ち悪くなる。

 ラストのアクション・シーンは、まさにタイトルの深夜の0時30分(作戦開始時間)どおり、漆黒の闇。しかも月の出ていない日を選んだそうで、ナイト・ビジョンなしでの行動は不可能。カメラは正にそのナイト・ビジョンを通したやや緑がかった映像になっている。だから観客は一緒に突入したような気分になる。スナイパーを全体が見渡せるところに配しての突入、サイレンサーのリアルな音、存在しないことになっていたという映画「ブルーサンダー」(Blue Thunder・1983・米)のようなステルス版ブラックホーク・ヘリ(実際にはUH-60ブラック・ホークの大幅改造型サイレント・ホークだったらしいが、そっくりと言う説も)、肉眼ではみえないIR(赤外線)レーザー・ポインター(?)、最新の4本レンズのパノラマ・ナイト・ビジョンといった、ディテールのリアルさが怖さを一弾と盛り上げている。暗闇にかすかに光るナイト・ビジョンGPNVG-18はモンスター、悪夢のようだ。攻撃される側はさぞかし恐ろしいことだろう。IMDbのトリビアによると、実際のミッション時間より数分短いだけらしい。

 実際にこのミッションに関わった人にインタビューして脚本はまとめられていったらしいが、ただ、若干、特殊部隊の雰囲気があらくれ者過ぎる気はした。現役の本物隊員が出演した「ネイビーシールズ」(Act of Valor・2012・米)を見ると、そんな雰囲気ではないことがわかる。家族を思い、国を思い出撃していく。わずかにそれが欠如していた気がした。

 CIA情報分析官のマヤはジェシカ・チャステイン。TVで活躍していたが、テレンス・マリック監督の「ツリー・オブ・ライフ」(The Tree of Life・2011・米)でブラッド・ピットの妻の役を演じ注目された。ただ。そのスタートからしてアート系で、その後も「英雄の証明」(Coriolanus・2011・英)、「ヘルプ 〜心がつなぐストーリー〜」(The Help・2011・米ほか)などアート系の作品が多い感じ。

 CIAのパキスタンの上司ブラッドリーはカイル・チャンドラー。なんだか昔のハリウッド・スターといった趣のある人で、最近では残念なリメイクSF「地球が静止する日」(The Day the Earth Stood Still・2008・米/加)やSFジュブナイル「SUPER 8/スーパーエイト」(Super 8・2011・米)のお父さん、アカデミー作品賞を受賞したベン・アフレックの「アルゴ」(Argo・2012・米)にも出ている。

 そのさらに上司に当たるジョージにはクールな雰囲気のマーク・ストロング。よく悪役をやっている人。ほとんどの場合はスキンヘッドだ。本作はカツラか。「シャーロック・ホームズ」(Sherlock Holmes・2009・米/独)や「キック・アス」(Kick-Ass・2010・英/米)の悪役は強烈だった。

 登場した銃器は……イスラマバードのアメリカ大使館の護衛は、軍の兵士がM4カービン、地元の警備がAK。サウジアラビアのホテルでの乱射テロで使われたのはAKMSU。パキスタン警察はAKMS、足に爆弾を巻いた黒い服装のテロリストたちはAK。自爆テロでやられるCIAやPMC(配役ではブラックウォーターの護衛)がM4カービン。携帯の信号を追っていて「白人の来るところじゃない」と言ってくる男が持っているのは、シルバー・スライドのグロック。マヤを襲撃するテロリストたちが持っているのは、MP5とハンガリー版AKのAMD-65。ヒット・チームのDEVGRUが使うのは、マグプル・ストック、イオテック付きのHK416、スナイパーがHK417、機銃手がFNミニミの特殊作戦軍向け7.62mm版。隊員は敵を倒したら、必ず留めを差している。たいていは心臓に2発。ミッション中に背後から撃たれたりしないためだ。このへんが軍のやり方の違い。怖い。しかも撃つのが早い。銃に手を伸ばす女、ドアの陰から一瞬顔を出す敵など、瞬時に撃っている。たぶんブルーレイなどが発売されてからコマ送りなどで見ると、ちゃんと確認して撃っているのがわかるのだろう。特殊部隊のプロなら一瞬で判断して撃つ訓練を重ね、それができるはず。

 脚本はプロデューサーでもあるマーク・ボール。キャスリン・ビグロー監督の前作「ハートロッカー」(The Hurt Locker・2008・米)の脚本、プロデューサーも務め、アカデミー作品賞と脚本賞を受賞している。次の作品もキャスリン・ビグロー監督と組むらしい。

 そのキャスリン・ビグロー監督は、「ハートロッカー」で女性として初のアカデミー監督賞を受賞した。もともとアクション作品が多い人で、「ブルースチール」(Blue Steel・1989・米)や「ハートブルー」(Point Break・1991・米/日)は評判にとなったものの、ボク的にはいまいちの感じで、やはり「ハートロッカー」がずば抜けて良かったのではないだろうか。ただ、完全な娯楽作品ではないので、わかりやすさや、すっきり爽快と言うのとはちょっと違ったが。

 ちなみに、タイトルの深夜の0時30分を表す「ゼロ・ダーク・サーティ」は軍の用語だそう。ゼロ・ダークが24時間制の真夜中の0時。サーティが30分。

 公開8日目の初回(といってもほぼ午後2時スタート)、六本木の劇場は全席指定で、金曜に確保。15分前くらいに開場となり場内へ。ほとんど中高年というか、高齢者より。男女比は半々くらい。最終的に148席ほぼすべてが埋まった。若い人は7〜8人。まあ、とにかくケータイを光らせているヤツが多い。まぶしいって。電源を切らずにただオフにするだけだし。

 気になった予告編は……明るいままハリウッド最新情報という形で上映されたのは、上下マスクの「ワイルド・スピードEURO MISSION」は戦車まで登場することになるらしい。まるで戦争映画のよう。7/6公開。

 なんと、というかやっぱりか、「ジュラシック・パーク」の4作目は3Dで作られるそうで、それを記念して第1作を3Dで公開するらしい。3Dで撮影していないのに……。3D版ブルーレイ製作のついでか。

 「ウルヴァリンSAMURAI」は舞台が日本。忍者やら何やらが出てきて、一体どんな作品になるのか。9/13公開。

 半暗になってから、上下マスクの「図書館戦争」は新予告。なかなか面白そう。

 あの村上隆が実施や映画を監督をするらしい。「めめめのくらげ」は子供向けなのだろうか。

 キーラ・ナイトレイの上下マスク「アンナ・カレーニナ」はアカデミー衣装デザイン賞を受賞した作品。本当に「白雪姫と鏡の女王」の石岡瑛子を超える衣装なんだろうか。3/29公開。


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