Vehicle 19


2013年2月24日(日)「逃走車」

VEHICLE 19・2013・米・1時間25分(IMDbでは82分)

日本語字幕:細丸ゴシック体下、松崎広幸/シネスコ・サイズ(マスク、Arri、Hawk Scope)/ドルビー・デジタル

(英12指定)

公式サイト
http://tousousha.com/
(全国の劇場リストもあり)

南アフリカのヨハネスブルグの飛行場に着いたマイケル(ポール・ウォーカー)は、すぐにアメリカ大使館に勤める彼女のアンジーに電話を入れ到着したことを伝えると、必ず時間通りに来てくれと念を押される。ところが、ます予約したはずのレンタカーがセダンではなく、なぜかミニバンに。慣れない右ハンドルで地図を見ながら車を進めていると、すぐに渋滞に巻き込まれてしまう。さらに床にケータイが落ちていて、誰にも知られるなというメッセージが届く。そしてサイレンサー付きのオートマチック・ピストルまでが出てきて、ついにケータイにスミス刑事と名乗る男から電話がかかってきて、その車には本当はアンダーカバーの刑事が乗るはずだったが、手違いがあったため、申し訳ないがスマース通りの78番倉庫まで車を運んでほしいと頼まれる。ところがスマース通りがなかなかわからず、悪路に入って車が大きくバウンドした拍子に、後部座席の後ろから、さるぐつわをはめられて足を縛られた女が転がり出てくる。

74点

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 男が空港に着いてから、指定の裁判所に到達するまでの、わずか数時間から半日ほどの話。だからカメラはずっとレンタカーの中で、ラストに物語が終わってレンタカーがきれいにされて再び貸し出される準備ができたところで、カメラはワン・カットで外に出て、俯瞰になり、神の視点で多数のレンタカーが並ぶ駐車場全体を見渡して終わる。だから車内のカメラは主人公の焦燥感、追い詰められた感じ、あれこれ束縛された感じを良く出している。観客はそれを共感できる。前半はかなりイライラさせられる。そして後半、ドラマは一気に動き始め、最悪の結末に向かって加速するかに見えたが……。

 なかなかよくできたドラマ。ほほポール・ウォーカーの1人芝居のようでもある。最初、主人公はチンピラのようなダメ男、刑務所から出てきたばかりの男、元彼女(どうも元奥さんだったらしい)とよりを戻そうとしている男、時間が守れない男、約束が守れない男……というイメージが植え付けられる。それをこのドラマを通して徐々にひっくり返していく。さすがにポール・ウォーカー、そんなダメ男じゃないと。

 そして、南アフリカの怖さが良く伝わってくる。本当にこんなところなのか、それとも実際にはもっと怖いのかわからないが、白人地区と黒人地区、貧民街、信号で止まった車から物をかっぱらっていく子供、ナイフを持った強盗、銃を持ったギャング……なんでもあり。SFアクションの「第9地区」(District 9・2009・米ほか)でも、実話の「インビクタス/負けざる者たち」(Invictus・2009・米)でも描かれていたが、恐ろしいほどの貧困。

 銃は、車に積まれているのが、たぶんサイレンサー付きのスター・モデルBM。裁判所のセキュリティが持っているのはベレッタM92。スミス刑事が持っているのもベレッタM92。

 ポール・ウォーカーは主演のほか、製作総指揮も兼ねている。人気シリーズでは第1作に続いて面白かった第5作「ワイルド・スピードMEGA MAX」(Fast Five・2011・米)が良かった。B級アクションでもなかなか良い作品が続いていたが、本作も大作ではないがなかなかのでき。カー・スタントの多くを自身で行ったらしい。「ワイルド・スピード」第6作にも期待したい。

 女性検事のレイチェルは歌手でもあるナイマ・マクリーン。アメリカ生れで、南アフリカ育ち。イギリスのTVドラマ「Wild at Heart」(2006〜)に2010年から2011年まで出ていたらしい。

 脚本・監督はムクンダ・マイケル・デュウィル。南アフリカ出身で、CMの世界で活躍し、2011年に「Retribution」(南ア)で劇場長編映画デビューしたのだとか。南アの恐ろしさが実に良く伝わってくる。スタッフのほとんどは南アの人らしい。今後注目かも。

 原題の「車両19」はレンタカーの車両番号。タイトルなどの文字が町中に溶け込んでいるように登場するのはピクチャー・ミルとコンピューターカフェが手掛けた「パニック・ルーム」(Panic Room・2002・米)スタイル。真っ白になるシーンがいくつかあり、白い字幕がところどころ読めなかった。黒フチを付けてほしかったなあ。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席自由。30分くらい前に着いたらオヤジが2人。まだ入口の灯も点いていなかった。暗くて本すら読めない。5分ほどして開場となり、20分前で12人ほど。ほぼ中高年、女性2人。座席がフラットなので、スクリーンが高めでも、前の席に人が座ると、字幕が下に出る映画は読みにくくなる劇場。最終的には209席に30人くらいの入りで、助かった。

 スクリーンはシネスコで開いており、チャイムが鳴ってアナウンスの後、暗くなるとビスタへ。気になった予告編は……ギャングとLA市警の戦いを描いた上下マスクの「L.A.ギャングストーリー」は、ショーン・ペンがギャングのミッキー・コーエンで、それを追う警察側のリーダーがジョッシュ・ブローリン。法律なんか関係なく追い詰めていくらしい。すごそう。エマ・ストーンがとてもきれい。上映劇場が気になるが、見たい。5/3公開。


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