Flight


2013年3月2日(土)「フライト」

FLIGHT・2013・米・2時間18分

日本語字幕:手書き風書体下、菊地浩司/シネスコ・サイズ(デジタル、Red Epic)/ドルビー・デジタル、DATASAT(IMDbではSDDSも)

(米R指定、日PG12指定)

公式サイト
http://www.flight-movie.jp/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

サウスジェット航空の機長ウィップ・ウィトカー(デンゼル・ワシントン)は、ホテルでキャビン・アテンダントのカテリーナ・マルケス(ナディーン・ヴェラスケス)と目覚めると、2人でヤクを決め、オーランド発アトランタ行のフライトへと向かう。乗客102人を乗せて飛び立ったST227便は、まもなく乱気流に突入し、ウィトカー機長の機転で手動操縦に切り替え危機を乗り越える。その後、自動操縦に入り、ウィトカー機長はこっそりジュースにウォッカを混ぜて飲み、寝てしまう。ところが、間もなく到着というとき、自動操縦を解除しようとした副操縦士のケン・エヴァンス(ブライアン・ジェラティ)は機のコントロールが利かないことに気付くが、既に手遅れで、機体は急速に落下を始める。事態に気付いたウィトカー機長はどうにか手動操縦に切り替え、とっさの判断で背面飛行に入って速度を落とし、原野に胴体着陸させる。死亡者6名の大事故となり、その中にはカテリーナ・マルケスも含まれていた。すぐにNTSB(国家運輸安全委員会)の調査が始まり、あの状態ではウィトカー機長しか機を着陸させられなかったことが判明するものの、ウィトカー機長の血液からアルコールとコカインが検出される。

74点

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 やられた。タイトルにも、キャッチ・コピーにも、予告編にもやられた。ボクはてっきり航空機墜落のミステリーだと思っていた。謎解き。「彼は英雄か犯罪者か」「多くの命を救った高度3万フィートからの奇蹟の緊急着陸」……これはほんの映画の導入で、実際にはその事故によって明らかになった機長のアル中(ヤク中の気も)との戦い、顛末を描いたものだった。だから、見終わるとかなり落ち込む。アルコールに溺れ、他人にからみ、迷惑を掛け、それでいてすがろうとする。ウソにウソを重ね、自分の回りからどんどん人々が消えていく恐ろしさ。わかっていながら止められないもどかしさ。それに打ちのめされる。

 おそらくアメリカには日本よりもアル中に悩む人が多いのではないだろうか。アル中まで行かなくても、アルコール依存症?とかいうやつ。アメリカの映画には良く出てくる。だから日本よりもずっと重く感じられるのではないだろうか。しかも自覚していないだけに重症で、観客もイライラさせられる。止めるチャンスは何回もありながら、主人公は振りきることができず、ついつい手を出してしまう。そして観客も見捨てるほどの情けなさ。大切な仲間であるはずのキャビン・アテンダントにまで偽証を頼むような体たらく。途中まではアル中、ヤク中は恐ろしいと思うが、ラストの方ではもうどうでもよくなり、勝手にしろと思ってしまう。そして、ラストのラストに……。

 この手の話は、ボクが知るだけでも、レイ・ミランドがアカデミー主演男優賞を受賞した「失われた週末」(The Lost Weekend・1945・米)の昔からある。本作は、それにヤクと女(セックス)まで絡んでくる。救いようがない。

 それにしても、なぜシネスコ・サイズなのか。アル中から逃れられない感じならビスタの方が適しているのではないか。ファンタジーやアクション、アドベンチャーやSF、スペクタクルでもなんでもないのだから。確かに墜落シーンはスゴイが、そこは物語では重要ではない。しかも、冒頭の導入部分が女性の胸のアップごしの目覚まし時計というのもどうかと思う。しかもスッポンポンでカメラの前を横切るし、デンゼル・ワシントンは別れた妻と電話しながら、屈んだ真ッパの尻を覗いているし。エロ出し過ぎ。こういう男だというところを見せたかったんだろうが、CGの世界から実写にもどってきたら、いきなり女性の裸が撮りたくなったか。

 日本ではPG12指定だが、これは未成年にはトラウマになりそうな作品ではないかと思う。エロとアルコール、ヤク。中毒、ジャンキー。タバコもすぱすぱ。18禁じゃないかなあ。銃は、撃たないが、農場の実家の壁に掛けてあった水平二連ショットガン。

 アル中のパイロットを熱演したデンゼル・ワシントンは、結構悪役もやっているので驚きはしないが、悪役で面白かった記憶はない。悪い作品ではないが、楽しくないという感じ。それに対して、いい人のほうが面白い作品が多い。批評家の評価は別にして。「トレーニング・デイ」(Training Day・2001・米/豪)や「アメリカン・ギャングスター」(American Gangster・2007・米)はもう一度見たいという気にならない。けれど「マイ・ボディガード」(Man on Fire・2004・米/英)や「デジャヴ」(Deja Vu・2006・米/英)ならもう一度見たい。つい最近「デンジャラス・ラン」(Safe House・2012・米/南ア)で、良くはないが悪くもない役を演じていた。

 弁護士のヒュー・ラングはドン・チードル。どこか人の良さそうな感じがする人。話題となった「ホテル・ルワンダ」(Hotel Rwanda・2004・英/米ほか)でアカデミー賞主演男優賞にノミネートされている。「アイアンマン2」(Iron Man 2・2010・米)や「オーシャンズ11」(Ocean's Eleven・2001・米)シリーズなどの娯楽大作のほか、「クラッシュ」(Crash・2004・米/独)や「クロッシング」(Brooklyn's Finest・2009・米)などのドラマ系の出演も多い。

 パイロット組合の先輩チャーリー・アンダーソンはブルース・グリーンウッド。「13デイズ」(Thirteen Days・2000・米)でケネディ大統領を演じた人。最近、見事にリスタートさせたSF大作「スター・トレック」(Star Trek・2009・米/独)に出ていた。「デジャヴ」でデンゼル・ワシントンと共演している。

 病院で出会う癌の末期患者はジェームズ・バッジデール。「THE GREY凍える太陽」(The Grey・2012・米)に出ていた人だが、衝撃の戦争TVドラマ「ザ・パシフィック」(The Pacific・2010・米)で、心を病んで夜尿症になってしまうロバート・レキシーを演じていた人。

 奇抜な風体のヤクの売人ハーリン・メイズはジョン・グッドマン。コメディからシリアスな悪役までこなす人。つい最近イーストウッドの野球スカウトマン映画「人生の特等席」(Trouble with the Curve・2012・米)やアカデミー作品賞を受賞した「アルゴ」(Argo・2012・米)に出ている。ちょっとしか出なくてもしっかり印象に残る。

 ヤク中の若い女性ニコールはケリー・ライリー。ヤクに溺れる感じが実に見事だった。まさにそんな雰囲気。「シャーロック・ホームズ」(Sherlock Holmes・2009・米/独)シリーズで、ワトソンの婚約者を演じていた人。

 脚本はジョン・ゲティンズ。脚本家としてより役者としての活躍の方が多いが、「陽だまりのグラウンド」(Hard Ball・2001・米/独)や「コーチ・カーター」(Coach Carter・2005・米/独)などスポーツ・テーマの話題作を手掛ける。競争馬と調教師を描いた「夢駆ける馬ドリーマー」(Dreamer: Inspired by a True Story・2005・米)やSFロボット格闘技「リアル・スティール」(Real Steel・2011・米/印)もスポーツものと言えなくもない。

 監督はロバート・ゼメキス。ロマンチック・アドベンチャーの「ロマンシング・ストーン/秘宝の谷」(Romancing the Stone・1984・メキシコ/米)や「バック・トゥー・ザ・フューチャー」(Back to the Future・1985・米)は抜群に良かった。最近はプロデューサーとしての活躍の方が多いが、「キャスト・アウェイ」(Cast Away・2000・米)を最後に実写から3D-CG映画に移行してしまったのではなかったか。しかし「ポーラ・エクスプレス」(The Polar Express・2004・米)や「ベオウルフ/呪われし者」(Beowulf・2007・米)、「Disney'sクリスマス・キャロル」(A Christmas Carol・2009・米)などそのどれもが残念なものばかり。本作から実写へもどったのか。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、金曜に確保。ガンダム・アニメの公開でごったがえすロビーで待っていると、10分前くらいに開場。やはりほとんど中高年で、若い人は少しで、それも若い女性がぱらぱら。男女比は5.5対4.5くらいでやや男性が多い感じ。10分しかないので、遅れて入ってくるヤツが多い。まず座るとケータイを点ける。外で切ってこいよ。ああ、ケータイを点けて懐中電灯代わりにして入ってくるバカ女まで……。最終的には301席に6割くらいの入り。この内容だと、これから増えるとは思えないなあ。

 気になった予告編は……マリオン・コティヤールが両足を失ったシャチの調教師を演じる上下マスクの「君と歩く世界」は、予告だけでも辛くなる感じ。4/6公開。

 「ハッシュパピー バスタブ島の少女」は幼い少女が主人公らしい。内容は良くわからなかったが、とにかくこの少女がかわいい。そしてどうやら猪みたいな巨大モンスターも登場するようだ。4/20公開。

 スクリーンが左右に広がってシネスコ・サイズになってから「スタートレック イントゥー・ダークネス」の予告。さすがに迫力がある。公開は8月?9月?


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