Cloud Atlas


2013年3月16日(土)「クラウド アトラス」

CLOUD ATLAS・2012・独/米/香/シンガポール・2時間52分

日本語字幕:手書き風書体下、野口尊子/シネスコ・サイズ(マスク、Super 35)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS(IMDbではdtsはDATASAT)

(米R指定、日本PG12指定)

公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/cloudatlas/index.html
(入ったら音に注意。全国の劇場リストもあり)

星空の下で、顔に大きな傷のある老人(トム・ハンクス)が子供たちに悪や悪魔の話をしている。別な場所で、緑色のビートルを女(ハル・ベリー)が走らせている。また若い男(ベン・ウィシー)はルガー拳銃を取り出し、自殺しようとしている。シルクハットの男(ジム・スタージェス)は太平洋の島におり、小説家(ジム・ブロードベント)は作品が書けず、取調室のようなところでは、女(ペ・ドゥナ)があなたの視点からの話をしてくれと言われている。

74点

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 うーむ……感動的な物語で、愛とか、人生とか、運命とか、絆、そういったものを感じさせ考えさせてくれる……けれど、あまりにも同時進行する話が多過ぎて(6つ!)、しかもそれらがバラバラに組み合わされていて、つながりはあるものの、わかりにくく、感情移入が中途半端でしにくく、同じ人物が全く違う人(善人と悪人とか)を演じていたりするから、どうしていいかわからなくなる。むずかしい。これは頭の良い人向きか。

 人生は突き詰めると、偶然の積み重ねなどでは無く、自分ではどうにもならない何かによって操作というか作られているのではないかというようなところへ行くと言っているのか。輪廻転生のようなものも感じられるのだが、魂の成長のようなものはなく、前世で出来なかったことをもう一度やるとか言うことも無く、何も学ばずまた別な人生を繰り返しているだけという感じもした。同じ失敗を繰返し、ついには地球の破滅へと至る。「魂」みたいなものは、ここにはないのだろう。これだと意味がないような。宗教観の違いか、日本人だからなのか、ボクだけなのか。

 これは物語に感動するとか言う類いのものではなく、それぞれの時代の世界観からなるクラウドアトラスの世界観を楽しむというか、疑似体験する映画かもしれない。

 また、正直、6つの話を細切れにして混ぜているからわかりにくくなっているけれど、これをそれぞれ1つにして、順番につないだら、たぶんもっとわかりやすくなる。ただ、それだとオムニバスになってしまう。それじゃいけないのか。なぜわかりにくくミックスしたのか。それがキー・ワードのひとつの「シックス・ミックス」か。

 普通は、細切れにしてミックスするのは、バラバラに見えた物語が、ある瞬間にシンクロして1つに収束するとか、最後に話が1つに繋がるため、より感動が大きくなったり驚きがあったりする。本作の場合、そんな感じはしなかった。バラバラのままという印象。ボクには良く理解できなかった。

 トム・ハンクスはプロデューサーや監督もやるようになった。「フィラデルフィア」(Philadelphia・1993・米)と「フォレスト・ガンプ/一期一会」(Forerest Gump・1994・米)でアカデミー賞主演男優賞を2回も取っている人。最近は「幸せの教室」(Larry Crowne・2011・米)で製作・監督・脚本・主演をやっていた。

 その相手役はハル・ベリー。白人からインド人まで実に千変万化。アカデミー賞主演女優賞を「チョコレート」(Chocolate・2001・米)で受賞している。ここ5〜6年はパッとしない感じ。久々に見た。

 最初、小説家で登場するのはジム・ブロードベント。憎たらしい悪役も、人の良いおじいさんもどちらもリアルに演じられる人。「ハリー・ポッターと謎のプリンス」(Harry Potter and the Half-Blooded Prince・2009・英/米)でホラス・スラグホーンを演じていた。最近では見ていないが「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」(The Iron Lady・2011・英/仏)にサッチャーの夫役で出ていたらしい。

 基本的に悪役が多く、ウォシャウスキー作品の常連はヒューゴ・ウィービング。「マトリックス」(The Matrix・1999・米/豪)のエージェント・スミス役でブレイク。つい最近ピーター・ジャクソン監督の「ホビット 思いがけない冒険」(The Hbbit: An Unexpected Journey・2012米/ニュージーランド・)に出ていた。

 最初シルクハットの男として登場するのはジム・スタージェス。「ラスベガスをぶっつぶせ」(21・2008・米)で気弱なインテリ学生を演じていた人。本作でもナイーブな感じの役が多い。一重のつり目にしたヘジュ・チャンはびっくり。これで結構二枚目。

 ソンミを演じたのはペ・ドゥナ。メキシコ人女性は特殊メイクで全く別人だったが、ソンミは実にいい雰囲気。韓国の女優で、「グエムル 漢江の怪物」(The Host・2006・韓)で怪物と戦っていた女学生。こんなに大きくなって。日本映画の「空気人形」(2009・日)にも出ている。イメージは本作と一緒か。

 最初、自殺しようとしている男で登場するのはイギリス生れのベン・ウィショー。本作では女性も演じているらしい。ナイーヴな感じが絶妙。「パフューム ある人殺しの物語」(Perfume: The Story of a Muderer・2006・独/仏ほか)で主役の調香師を演じていた人だ。なんと「007スカイフォール」(Skyfall・2012・英/米)ではいかにも今風のオタク的な武器係のQを演じ、まったく印象が違う。

 自殺しようとしている男の男の愛人を演じたのはジェイムズ・ダーシー。同性愛的な感じがスゴイ。この人もイギリス生れで、古くは第一次世界大戦を描いた「ザ・トレンチ塹壕」(The Trench・1999・仏/英)に出ていた。その後、帆船アクション「マスター・アンド・コマンダー」(Master and Commander: The Far Side of the World・2003・米)や、残念な続編ホラー「エクソシスト ビギニング」(Exorcist: The Beginning・2004・米)で神父を演じていた。最近はTVが多かったよう。

 あまり目立たないが、「ラブソングができるまで」(Music and Lyrics・2007・米)のヒュー・グラントも何役かで出ていて、食人族の男は強烈だった。また「テルマ&ルイーズ」(Thelma & Louise・1991・米/仏)のベテラン女優のスーザン・サランドンも、男性役まで演じているのだとか。わからなかった。また「Mr.&Mrs.スミス」(Mr. & Mrs. Smith・2005・米)などの黒人俳優のキース・デイビッドも何役かで出ている。

 脚本と監督は、ラナ・ウォシャウスキー(女性の性転換してラリーからラナになった)と弟のアンディ・ウォシャウスキー、そしてトム・ティクヴァの3人。セグメントごとに分担して演出して行ったのだろうか。気になるところだ。3人で1つの作品としてまとめるというのはかなりむずかしいのではないだろうか。ウォシャウスキー姉弟は「マトリックス」シリーズが白眉で、それ以降はあまりピンとこないもの多かった感じ。マニアックな作品作りはわかるが本作の前の「スピード・レーサー」(Speed Racer・2008・米/豪/独)も……。

 トム・ティクヴァは日本では小劇場公開された「ラン・ローラ・ラン」(Lola rennt・1998・独)で世界的に知られるようになったドイツの監督。他にベン・ウィショーが主演したエロティック・ミステリー「パフューム ある人殺しの物語」や、ポリティカル・アクションの「ザ・バンク 堕ちた巨像」(The International ・2009・米/独/英)などを撮っている。「ザ・バンク」にもベン・ウィショーが出ているから、常連俳優ということか。

 登場する銃は……自殺で使われるルガーにはDWMの刻印があった。そしてサイレンサーをつけたP9Sのような銃、ガバメント、S&WのM13っぽい3〜4インチくらいのリボルバーなど。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で金曜に確保、35分前くらいに着いたら9時前ということもあり、ビルが開いていなかった。20分前くらいにビルが開き、10分前くらいに開場。上映時間が長いので、念のため2回トイレに行った。

 やはり観客層は中高年で、男女比は意外なことに7対3くらいで圧倒的に男の方が多かった。女性向きの話かと思ったのだが、「マトリックス」(The Matrix・1999・米/豪)シリーズのウォシャウスキーということで男性向きと思われたか。9時からは早過ぎたのか、最終的に301席に4〜4.5割くらいの入り。

 気になった予告編は……上下マスクの「ラストスタンド」は新予告に。だんだん内容がわかってきた。麻薬組織のボスが移送中に逃亡、国境沿いの小さな町、シュワルツェネッガーが保安官をしている町に向かった。で、あまりに小さな町で充分な武器も人員も無く、武器マニアなど住民の協力を得て戦うと。そういう話らしい。知事時代にかなり厳しい銃規制をやっておきながら……。4/27公開。

 上下マスクの「リンカーン」も新予告に。早く見たい。4/19公開。

 上下マスクの「華麗なるギャツビー」も新予告に。かつてのハリウッドを思わせる豪華な映像。すごそう。ドラマなのに3D上映って。6/14公開。

 上下マスクの「藁の楯」は、生きる価値もないような極悪非道な殺人鬼を護衛して東京まで運ぶ任務で、被害者の家族がヤツ殺したら10億円払うと公言したため、いろんなヤツが襲ってくるという話。USPを使っていた。ただその犯人が藤原竜也だと、極悪非道に見えないが……。4/26公開。


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