The Messenger


2013年3月16日(土)「メッセンジャー」

THE MESSENGER・2009・米・1時間52分(IMDbでは113分と105分)

日本語字幕:フチ付き丸ゴシック体下、(株)インジェスター/シネスコ・サイズ(マスク、Arri、Super 35)/ドルビー・デジタル

(米R指定、日R15+指定)

公式サイト
http://www.messenger-movie.jp/
(全国の劇場リストもあり)

イランから負傷して帰国した陸軍の二等軍曹ウィル・モンゴメリー(ベン・フォスター)は、 恋人から別な男と結婚することを告げられる。そして失意の中、上官から除隊までの残りの3カ月をトニー・ストーン大尉(ウディ・ハレルソン)の下で、兵士の戦死を家族に伝えるメッセンジャーをやるように命じられる。

72点

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 うーむ、テーマがテーマだけに、さすがに重い。これは応える。血も出ないし、銃も撃たないし、爆発もないけれど、これも戦争映画だろう。死という厳しい現実。どこかにそれを伝える役目の人がいるのは事実だ。しかも、ルールで、それを伝える人は、決まったセリフ以上の慰めを言ったり、肩を抱くなど触ることは許されないという。そして、相手は取り乱し暴言を吐いたり、つばを吐きかけてきたり、暴力を振るってくる者までいるという。それらにもメッセンジャーは黙って堪えなければならない。これは辛い。だから重い。

 ただ、物語として、起承転結はない。ずっと続く時間の中の、ある一定期間をパッと切り取ったような形。主人公が負傷してイラクから戻ったウィル二等軍曹が負傷して帰国してから、命令によりメッセンジャーとなっての数ヶ月。あまりドラマとして作り込まず、リアルに見せたいと言うことなのだろうが、それならむしろドキュメンタリーの方が強烈で、真実が良く伝わったのでは。もちろん、メッセンジャーはもちろん、伝えられる親族も出たくない、撮られたくないという人がほとんどだろうけど。それでも、この再現ドラマのような手法しかなかったのだろうかとは思ってしまう。

 これを劇場でお金を出して見るのは……。TV番組か、2本立てのもう1本というのなら見るだろうけど……。むずかしいなあ。辛い。

 ウィル・モンゴメリーはベン・フォスター。傑作リメイク西部劇「3時10分、決断のとき」(3:10 to Yuma・2007・米)で、ボスを助けに来る若いガン・マンを演じていた人。公開順は逆になったが、最近リメイク・アクションの「メカニック」(The Mechanic・2011・米)で、若い殺し屋を演じていた。その尖った感じがあって、本作でも(何もないが)何か起こしそうで怖かった。

 上司のトニー・ストーン大尉はウディ・ハレルソン。古くは「ナチュラル・ボーン・キラーズ」(Natural Born Killers・1994・米)のおそろしい殺し屋があるが、「ノーカントリー」(No Country for Old Men・2007・米)でも出番は多くないが怖かった。同じ年に出演している「ゾンビランド」(Zombieland・2009・米)は素晴らしかった。

 魅力的な未亡人オリヴィアはエマ・モートン。スピルバーグのSFアクション「マイノリティ・リポート」(Minority Report・2002・米)で予知能力者を演じていた。また時代劇「エリザベス:ゴールデン・エイジ」(Elizabeth: The Golden Age・2007・英/仏ほか)では、スコットランド王女メアリーを演じていた。

 出番は少ないが、メッセンジャーを罵倒する父親でスティーヴ・ブシェーミが出ている。何と言ってもギャング映画「ミラーズ・クロッシング」(Miller's Crossing・1990・米)が強烈だったし、犯罪映画「ファーゴ」(Fago・1996・米/英)も強烈だった。ちょっとジョン・タトゥーロと被る部分もある気がする。最近あまり見かけなくなった感じだが……。

 脚本はアレサンドロ・キャモンと監督も兼ねるオーレン・ムーヴァーマン。アレサンドロ・キャモンはプロデューサーで、脚本を手掛けたのは4作ほど。本作は2本目。プロデューサーとしては、話題となった「サンキュー・スモーキング」(Thank You foe Smoking・2006・米)や、ニコラス・ケイジのリメイク「バッド・ルーテナント」(Tha Bad Lieutenant: Port of Call - New Orleans・2009・米)などに関わっている。

 脚本も書いた監督のオーレン・ムーヴァーマンはイスラエル出身で、4年間軍務に就いた経験が本作に活かされているらしい。脚本家としての活躍の方が多く、ボブ・ディランを描いた「アイム・ノット・ゼア」(I'm Not There・2007・米/独/加)なども書いている。監督は本作が初めてらしい。

 登場する銃は、礼砲として葬儀で空砲が発砲される軍のM14。

 公開8日目の2回目、新宿の劇場は全席指定だったが、当日30分くらい前でも余裕で席が取れた。10分前くらいに入れ替えになって、場内へ。何と、新しい劇場だというのに床の傾斜が少なく、前席の頭が微妙にじゃまになるという昔の作り。座高の高い人が前に座るとアウト。しかも千鳥配列になっていない。スクリーンは小さく低く、字幕は下に出る。最悪の一歩手前。前売り券をもらったので見たが、自腹では見たくない劇場。

 ほぼ中高年で、最終的には78席に20人ほどの入り。女性は7〜8人。意外に多い印象。

 予告なしの本編からの上映。


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