Jack the Giant Slayer


2013年3月23日(土)「ジャックと天空の巨人」

JACK THE GIANT SLAYER・2013・米・1時間54分

日本語字幕:丸ゴシック体下、岸田恵子/シネスコ・サイズ(Panavision、Arri、Red、デジタル)/ドルビー・デジタル、DATASAT、SDDS

(米PG-13指定)(3D上映、日本語吹替版もあり)

公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/jackthegiantslayer/
(入ったら音に注意。全国の劇場リストもあり)

14世紀のイギリス、農民の子供も、王族の子供も、魔法の豆から伸びたツタの木をよじ登って雲の上にある巨人の国ガンチュアに行って、巨人と戦ったエリック王の話を寝物語に聞いて育っていた。貧しい農民の子だったジャック(ニコラス・ホルト)は18歳になって1人で、城下にある市場へ荷車と馬を売りに行く。そしてつい見せ物小屋に惹かれて中に入ると、1人でお城から出てきたお姫さまのイザベル(エレノア・トムリンソン)が柄の悪いやつらに絡まれている場面に出会い助けようとするが、すぐに騎士のエルモント(ユアン・マクレガー)たちがやって来て救出する。見せ物小屋から出てくると荷車が盗まれている。探していると、ロデリック卿(スタリー・トゥッチ)の部屋から、隠されていた魔法の豆を盗み出した僧侶が近づいてきて、馬を譲ってくれという。現金はないが形としてこれを預けるといって魔法の豆を渡す。これを修道院に持って行けばお金を渡してくれると。ただし、絶対に水につけては行けないと注意して消える。しかたなく魔法の豆を持って帰ると、天気が崩れ雨が降り出す。その夜、再び城を抜け出したイザベル姫だったが、道に迷い、1軒の家を見つけ入ると、そこはジャックの家だった。ちょうど、たまたま魔法の豆を床に落とし、1粒だけが床下に転がり、雨水が迫っていたところ。豆は雨水に触れると、すぐに成長を初め、小屋ごと天空に向かって伸び始める。ジャックはイザベル姫を助けようとするが振り落とされ、イザベル姫だけが天空に連れて行かれる。

72点

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 うーむ、とてもブライアン・シンガー作品とは思えない完成度。中途半端。残酷表現や悪役の巨人たちのリアルさは気持ち悪いほどで、完全な子供向けのおとぎ話とは言いにくい。かといって、大人向きかというとストーリー展開は子供向けで、どうにも納得しにくい、笑いもちりばめられているのだが、残酷描写が結構きついので、笑えない。どうにも中途半端。

 見どころはまるでそこに居るかのようにリアルなCGの巨人だけ。動きも自然。ギコチ無さやわざとらしい動きはない。しかし物語の進行はどこかメリハリに欠け、予定調和というのか、強引に展開するので、予想通りの展開(原作が有名だからしようがないのかもしれない)から結末へ。途中で興味を失ってしまい、何度も気を失いそうになった。

 3D上映も、一部では効果が出ているシーンもあるものの、せいぜい1/3くらいで、ほとんどは平面的。特に驚くほど立体感があったのは、引きで俯瞰目に映したショット。後処理ではない本当の3Dカメラで撮影していて、ワイド系のレンズで、パン・フォーカスになっていたからではないか。想像だが、本当の3Dカメラで撮影するあとでCG合成がむずかしくなるから、2Dで撮影してCGと合成の時3D処理していったとか……。そして、わざとらしい斜め配置ショットか、あえてカメラ前に前景となる物体(猫とかイスとか)を置かないと3D感が出ない気がする。ここにわざとらしさがあって、スムーズなドラマ進行をじゃましているかも。やっぱりドラマを楽しむには2Dの方が良いのでは。

 主役のジャックはニコラス・ホルトジャック。二枚目だが、ちょっと大冒険をするには優し過ぎる感じ。「アバウト・ア・ボーイ」(About a Boy・2002・英/米/仏)でトニ・コレットの息子を演じていた人。すっかり大人になった。ほかに残念な「タイタンの戦い」(Clash of the Titans・2010・米)や「X-MEN:ファーストジェネレーション」(X-Men: First Class・2011・米)に出ている。

 美人のお姫さまイザベルはエレノア・トムリンソン。素晴らしいラブ・ストーリーの「幻影師アイゼンハイム」(The Illusionist・2006・チェコ/米)で、ジェシカ・ビールが演じたヒロインの少女時代を演じていた人。その後TVで活躍して、最近では「アリス・イン・ワンダーランド」(Alice in Wonderland・2010・米)に出ていたらしい。この人も6年ですっかり大人になった。

 騎士のエルモントはユアン・マクレガー。最近「砂漠でサーモン・フィッシング」(Salmon Fishing in the Yemen・2011・英)に出ていたが、このところちょっと作品に恵まれていない感じ。ボク的には最近良かったのは「彼が二度愛したS」(Deception・2008・米)あたり。うむむ。

 陰謀を企てているロデリック卿はスタリー・トゥッチ。アメリカ生れで、「プラダを着た悪魔」(The Devil Wears Prada・2006・米)のようなコミカルな役から、「ラブリーボーン」(Lovely Bones・2009・米/英/ニュージーランド)のような変質者の役まで何でもこなす人。本作もこすい感じがよく出ていた。

 その部下ウィックはとぼけた味が魅力のスコットランド出身のユエン・ブレムナー。「ブラックホーク・ダウン」(Black Hawk Down・2001・米/英)で、近くで銃を撃たれて耳が聞こえなくなるマシンガナーを演じていた人。

 頭が2つある巨人のリーダーの声を出していたのは、ビル・ナイ。ドラマからSF、コメディ、大作からアート系までいろんなものに出ている大ベテラン。つい最近リメイク版の「トータル・リコール」(Total Recall・2012・米/加)に出いて、実はアニメの吹替も多い。

 キャストはほとんどイギリスの人。イギリスの物語ということでこだわったのだろうか。

 脚本はダーレン・レムケ、クリストファー・マッカリー、ダン・スタッドニーの3人。ダーレン・レムケはTVの「ロスト」の脚本家。映画ではアニメの「シュレック フォーエバー」(Shrek Forever After・2010・米)を書いている。

 クリストファー・マッカリーは傑作ミステリー「ユージュアル・サスペクツ」(The Usual Suspects・1995・米/独)でブライアン・シンガーと組んだ人。ほかに監督も務めたクライム・サスペンスの「誘拐犯」(The Way of the Gun・2000・米)、トム・クルーズ主演でブライアン・シンガーが監督した戦争ミステリー「ワルキューレ」(Valkyrie・2008・米/独)、ジョニー・デップのミステリー「ツーリスト」(The Tourist・2010・米/仏/伊)、そして最近、監督も務めたアクション・ミステリーの「アウトロー」(Jack Reacher・2012・米)を手掛けている。ミステリーの名手で、アクション系の監督もいけるという人。しかし、本作は……。

 ダン・スタッドニーはTVの人で、ほとんど日本では知られていないものばかり。本作が初の長編劇場映画ということになるらしい。

 監督はブライアン・シンガー。とにかく「ユージュアル・サスペクツ」は衝撃的だった。「ゴールデンボーイ」(Apt Pupil・1998・米/仏)や「X-メン」(X-Men・2000・米)シリーズも強烈で、外れは少ない人。ただTVの「Dr.ドクター・ハウス」(2004〜2012・米)シリーズの製作総指揮をやっているが、ボクはあまり好きではない。「スーパーマン・リターンズ」(Superman Returns・2006・米)はつまらなくはないが、あまり関心もできない感じ。「ワルキューレ」があって、そして本作だ。どうなんだろう。

 絵本が絵になって昔の話を説明するオープニングは、プロローグ・フィルムズのカイル・クーパー。「スーパーマン・リターンズ」や「ワルキューレ」、「X-MEN:ファーストジェネレーション」も手掛けている。手掛けたタイトルは数知れず、という名人。イマジナリー・フォースを作った人。

 公開2日目の初回、銀座の劇場は初回のみ全席自由で、金曜にチケット交換しておいて40分前ほどに到着。エレベーターがいつ劇場のある階に止まるようになるのか、案内も無くわからないが、30分前くらいに人が多く乗るようになったので乗ったら止まった。20分くらい前で7人。中年男性2人、中年女性1人、あとは高齢の男性。「ジャックと豆の木」なのに?

 最終的には女性も増え6〜7人に。若いカップルも来たものの、メインは高齢者。幼稚園くらいの子供を二人連れた母親もいたが、あの子たちは字幕が読めるんだろうか。469席に45人くらいの入りはかなり少ない。皆お花見に行ったにちがいない。ただ、この出来では今後増えるとは思えない。

 スクリーンはシネスコで開いていて、直前にビスタになって始まった予告編で気になったのは……上下マスク、3兄弟の実話ギャング映画「欲望のバージニア」は、トム・ハーディ、ゲイリー・オールドマン、ガイ・ピアース、ジェシカ・ジャスティンといった豪華な顔ぶれ。ただ、いつから公開か出なかったが……公式サイトでは6/29公開。

 アニメ「劇場版銀魂完結篇万事屋よ永遠なれ」は描きおろし完全新作エピソードだそうで、ファンにはたまらないだろう。7/6公開。

 上下左右に広がってシネスコ・サイズになってから、またまたギャング映画「L.A.ギャグストーリー」。これは取り締まる側の話だが、実話で、法律違反もいとわずギャングに挑んだと。ガン・ベルトにSAAを入れていたりするかと思えば、トンプソンがミリタリーのM1だったような……。いつの時代の話なんだろう。5/3公開。

 3Dめがねを掛けての案内の後、3Dのdoremiのデモ、DLPのデモのあと、本編へ。


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