Chinese Zodiac


2013年4月13日(土)「ライジング・ドラゴン」

十二生肖(CHINEASE ZODIAC)・2012・香/中・2時間04分(IMDbでは120分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、林 完治/シネスコ・サイズ(マスク、Super 35、一部デジタル、Red)/ドルビーATOMOS(IMDbではドルビー・デジタル)

(香IIA指定)

公式サイト
http://www.rd12.jp/pc/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

19世紀、清の時代の中国・円明園は英仏軍の襲撃を受け、様々なものが略奪されたが、その中に十二支の彫像の頭部も含まれていた。2004年、その持ち去られた十二支の頭部の一部がオークションに出品される。そんな中、骨董品の価値を高めるためなら、手段を問わない強引なやりかたでオークション市場を操作するマックス・プロフィット(MP)社は、祖国のためにと十二支の頭部に高額を払う人がいることを知り、すべての十二支の頭部を集めるため、腕利きのトレジャー・ハンター、JC(ジャッキー・チェン)のチームに高額の報酬で依頼する。JCはナショナル・ジオグラフィックのフォトグラファーに化けると取材と称して本物のありかをつきとめ、巧妙な複製と入れ替えて行くのだったが……。

73点

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 うーむ、なんだか良くも悪くも全盛期の香港映画、ジャッキー・チェン映画を見た感じ。命がけのアクション満載で、それでいて笑いをふんだんに盛り込み、世界を股にかける荒唐無稽なほどの大冒険。日本人的には見ている方が恥ずかしくなるようなコテコテのギャグや勧善懲悪的予定調和。銃での撃ち合いもあるが、血も飛ばないし、死んだりしていない(たぶん)。黒焦げになっても、口から煙を噴いたり、気絶するレベル。つまり漫画的世界。とにかく明るく元気で、何も考えず、安心して頭を空っぽにして楽しめる作品。

 テーマというか、主張もしっかり盛り込まれていて、単なるノーテンキ映画ではない。それは世界各国の遺跡から先進諸国などによって持ち帰られた歴史遺産の問題。日本から韓国に古文書が返還されたことも触れられている。ただ、強奪とか返還という問題はいま非常にホットで、領土問題とも関わってきて、日本人的には100%娯楽作品として楽しめない部分はある。これはジャッキー作品だが、その前に香港・中国作品だ。そして日本人は現在の海賊として登場する。ただ、ことさら強調はしていない。

 それにしても、ラストでジャッキー自身がナレーションで「最後のアクション作品」と言っていながら、なぜ日本での扱いはこじんまりしていて、ジャッキー自身の舞台挨拶がないのか。これまでに大作の時はジャッキーいつも日本に来て舞台挨拶していた。「最後」だよ「最後」。しかも2012年製作で、1年遅れ。配給会社ができに満足していないということか、やはりテーマが気になったか。何かあると考えざるを得ない。

 90〜100分のありがちな作品ではないので、1つのクライマックスの後、もうひと山ある。だから見ごたえは充分。ただ、そこまでテンションを維持して観客を連れて行くのはちょっとむずかしい。中だるみ的なものはある。見どころは、とにかくジャッキーの超絶アクション。恒例のエンディングのNG集を見ると、さらにその凄さが良くわかる。

 監督・製作・脚本・主演はジャッキー・チェン。1954年生れなので今年59歳。映画製作時は58歳だとしても、間もなく還暦。さすがに肉体を使ったアクションはキツイだろう。特にNG集からわかる香港的な撮り方では体がもたない。2011年に日本公開された「1911」(辛亥革命・2011・中/香)が確か映画出演100作目だった。最近は作品に恵まれていない感じで、「新少林寺/SHAOLIN」(新少林寺・2011・香/中)なんて、いつどこで公開されたかも良くわからない。アンディ・ラウ、ニコラス・ツェー、ファン・ビンビンといったスターが出ていてもだ。

 チームのメンバーでスタイル抜群、すらりとして足も長く、180度開脚など体も柔らかい美女のポニーはジャン・ランシン。2004年の中国テコンドー・チャンピオン。その後タレントになりTVで活躍して、本作が長編劇場映画デビューなんだとか。

 チームのサイモンは韓国のクォン・サンウ。ボクがこの前に見たのは刑事アクションの「美しき野獣」(Beast・2006・韓)だったと思う。主役をはれるイケメン韓流スター。本作が初の海外作品になるらしい。

 MP社の社長ローレンスはハリウッド俳優のオリヴァー・プラット。コミカルな役からシリアスな役、悪役までこなす名わき役。実話に基づく「フロスト×ニクソン」(Frost/Nixon・2008・米/英/仏)でも良い味を出していたが、最近は「X-MEN:ファースト・ジェネレーション」(X-Men: First Class・2011・米)に出ていた。

 また、最後のアクション作品ということでだろう、ゲスト出演的なキャストもチラホラ。離婚の危機にあるサイモンの妻役で最後に登場するのはスー・チー。最近あまり見ていなかった気がする。傑作アクション「ゴージャス」(Gorgeous・1999・香/台)でジャッキーと共演し、その後これまた痛快で魅力炸裂の「クローサー」(So Close・2002・香)やフランス映画の大ヒット作「トランスポーター」(The Transporter・2002・仏/米)で活躍していたんだけど。最近はほとんど日本未公開。

 病院の医師でちょっとだけ出ているのはダニエル・ウー。ジャッキーがプロデュースした新人スターを揃えた「ジェネックス・コップ」(Gen-X Cops・1999・香)あたりから活躍している。最近ジャッキー主演の「新宿インシデント」(・2009・)でも共演していた。本作の前に日本公開された主演作は、小劇場で見ていないが「トリプル・タップ」(Triple Tap・2010・香)。

 脚本はジャッキー・チェンのほかに、スタンリー・トンとエドワード・タン、フランキー・チェンの3人。スタンリー・トンはスタントマン出身で、脚本家と言うより監督として活躍しており、ジャッキーの人気シリーズ「ポリス・ストーリー3」(警察故事III:超級警察・1992・香)や北米で高い評価を得た「レッド・ブロンクス」(Rumble in the Bronx・1995・香/加)などを監督している。最近ではジャッキーの「THE MYTH/神話」(The Mith・2005・香/中)を監督している。

 エドワード・タンは「ポリス・ストーリー3」や「レッド・ブロンクス」の脚本を書いており、それよりも古い「プロジェクトA」(Project A・1983・香)や「スパルタンX」(Wheels on Meals・1984・香/西)などの多くのジャッキー作品を書いている。本作の前はやはりジャッキーの「ナイス・ガイ」(Mr. Nice Guy・1997・香)。しばらく仕事をしていなかったようだが、本作で久々の復帰。サモ・ハン・キンポーとの仕事も多い。

 フランキー・チェンは脚本、監督、俳優としても活躍していて、もっともクレジットが多いのが作曲家。ジャッキー作品では「拳精」(Spiritual Kung Fu・1978・香)や「龍拳」(Dragon Fist・1979・香/台)の曲を担当している。監督としては金城武の作品も手掛けているが、どの作品も日本では劇場公開されていない。

 銃は、アバン・タイトルの研究所のようなところの警備員がAK47、日本人の海賊がタンジェント・サイト付きのハイパワー、AK、ウージー、銃じゃないがちょっとデフォルメしたようなRPG、ブレン・マシンガンなど。

 自動車はいつものジャッキー作品のように三菱で、カメラはキヤノン。

 白バックだと白い字幕のジャギーが目立っていた。それと、一部画質がかなり悪かったのは合成のせいだろうか。確かに暗いシーンだったが、気になった。あと、香港映画伝統の吹替はしようがないのだろうが、英語、フランス語、中国語、日本語などが乱れ飛ぶ中、口と合わない声には、大スクリーンだと違和感があった。

 公開初日の初回、六本木の劇場は全席指定で、金曜の夜にムビチケでインターネットで予約し、劇場へ。10分前くらいに開場となって場内へ。メインは中高年ながら3.5対6.5くらいで女性の方が多い。ファン・クラブのオバサンといった一団がいたが、始まる直前までぺちゃくちゃとうるさかった。下は小学生くらいの男の子と女の子。字幕は読めたんだろうか。最終的には644席に50〜60人くらいの入りは少ない。ジャッキー作品なのに。

 気になった予告編は……トニー・レオンとチャン・ツィイーが共演するアクションは上下マスクの「グランド・マスター」。1937年が舞台で復讐劇ということは、敵は日本軍か。素晴らしい絵は、さすがのウォン・カーウァイ監督。5/31公開。

 上下マスクの「アイアンマン3」は新予告に。単純に面白そう。「アベンジャーズ」(Avengers・2012・米)がかなり残念だったから心配はあるが……。4/26公開。

 暗くなり、スクリーンが左右に広がって本編へ。


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