The Last Stand


2013年4月27日(土)「ラストスタンド」

THE LAST STAND・2013・米・1時間47分

日本語字幕:丸ゴシック体下、林 完治/シネスコ・サイズ(デジタル、Arri、Alexa Plus)/ドルビー・デジタル、DATASAT

(米PG-13指定、日R15+指定)

公式サイト
http://laststand.jp/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

アリゾナ州の国境近くの町、ソマートンでは、近くの町でフットボールの試合が行われるということで、町のほとんどの人がバスで観戦に出かけ、留守番の人がわずかに残る状態でゴースト・タウンのようになっていた。そこへ見慣れない男達がトラックでやって来たため、かつてロス市警の麻薬取締班で活躍した保安官のレイ・オーウェンズ(アーノルド・シュワルツェネッガー)は、保安官助手にナンバーを調べるように命じる。その頃、ラスベガスでは麻薬カルテルのボス、ガブリエル・コルテス(エドゥアルド・ノリエガ)を移送するため、コンボイを組んで厳重な監視体制で車を出発させる。

75点

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 予告ではアーノルド・シュワルツェネッガーのスクリーン復帰ばかりがグローズ・アップされていたが、どうして、ちゃんと見せ場は作ってあるが、意外とシュワルツェネッガーのワンマン映画という作りではなく、面白いアクション映画に仕上がっている。ほとんど西部劇のような構成。定番の要素を盛り込み、コテコテと言えばコテコテだが、楽しめるし、どうやってハッピー・エンドに持って行くのかが読めないので楽しめる。しかも期待を裏切らない。

 とにかく、悪党が徹底的に悪いのが良い。現代的なヒネリも入れつつ、保安官とその助手、よそ者、武器マニア、FBI、留置場に入れられているよっぱらいだが実は良いヤツ、気の強いばあさま、悪党軍団対保安官軍団の対決……しかも、笑いの要素もたっぷりと盛り込み、それでいて血が飛び、腕が飛ぶ、残酷表現のリアルさと怖さ。このバランスが絶妙。ただ、監督が韓国の天才的監督キム・ジウンだと知ると、ハリウッド・システムにハマってしまっている気は少しするが。

 痛快なアクションとほどよい笑いの絶妙バランス。それでいてストーリー展開はコメディに逃げず、リアルに、そして映画的にちょっと誇張して解決して見せている。各登場人物それぞれキャラが立っていて実在感があり、多彩で広がりがある。演出もさることながら、脚本も良く練り込まれていて完成度が高いということだろう。

 かつてロス市警の麻薬取締班で活躍し、いまは国境近くの小さくて平和な町の保安官をやっているレイ・オーウェンズはアーノルド・シュワルツェネッガー。2003年にカリフォルニア州知事に当選して、二期7年務める。ジャッキー・チェンの「80デイズ」(Around the World in 80 Days・2004・米/独ほか)にゲスト出演して以降、シルヴェスター・スタローンの「エクスペンダブル」(The Expendables・2010・米)とその続編に出ただけで、本作が初の復帰主演作となる。なんと、このあと7本もの新作が公開を控えている。メインで使う銃は1911ガバメント。M500やM870ショットガンも使う。

 ゲスト出演的じゃなく。ちゃんと存在感のあるFBI捜査官のボス、ジョン・バニスターはフォレスト・ウィティカー。冷血な悪人もやるが、熱血捜査官も演じられる人。何と言っても「クライング・ゲーム」(The Crying Game・1992・英/日)が強烈だったが、「葉隠れ」を愛読する殺し屋を描いた「ゴースト・ドッグ」(Ghost Dog: The Way of the Samurai・1999・仏/独ほか)もショッキングで、さらに実在の恐怖の人喰い大統領を演じた「ラストキング・オブ・スコットランド」(Last King of Scotland・2006・英/独)はゾッとするほどの恐ろしさ。うまいなあ。最近では強烈な悪党を演じた「キリング・ショット」(Catch .44・2011・米)がまたまたショッキングだった。

 人質となってしまう女性FBI捜査官エレン・リチャーズはジェネシス・ロドリゲス。「崖っぷちの男」(Man on a Ledge・2012・米)でジェイミー・ベルの恋人役を演じていた人。今後、スクリーンで見かけることが多くなりそうだ。

 麻薬カルテルのボス、ガブリエル・コルテスはエドゥアルド・ノリエガ。トム・クルーズがハリウッドでリメイクした「バニラ・スカイ」(Vanilla Sky・2001・米/西)のスペインの元ネタ、アレハンドロ・アメナバールのサスペンス・ホラー「オープン・ユア・アイズ」(Abre Los Ojos・1997・西)で主演し、ハリウッドのサスペンス・アクション「バンテージ・ポイント」(Vantage Point・2008・米)でフォレスト・ウィティカーと共演している2枚目。本作はかなり凶悪。カー・レース好きという設定で、モーター・ショーの会場から盗んだという最速時速400kmというGMシボレー・コルベットZR1を乗り回す。

 その右腕らしいブレルを演じるのが、悪役の常連名わき役ピーター・ストーメア。最近ではメル・ギブソンの「キック・オーバー」(Get the Gringo・2012・米)に出ていた。映画でまくり。使っていた銃はカートリッジ式に変更したコルト・ドラグーン。ガン・ベルトで腰に下げている。

 保安官助手で都会に出たがっているジェリー・ベイリーはザック・ギルフォード。TVで活躍していた人で、日本公開作品はないようだが、なかなかいい味を出しており、今後注目かも。M500マグナムの強烈な反動で跳ね上がった銃が顔に当たり鼻血を出す。バスケット・パターンのホルスターに入れているのはグロック。

 先輩保安官助手のフィギーはルイス・ガスマン。コミカルな役が多い人で、最近「センター・オブ・ジ・アース2神秘の島」(Journey2: The Mysterious Island・2012・米)に出ていたようだが見ていない。その前は名作のリメイク「サブウェイ123激突」(The Taking of Pelham 123・2009・米/英)に出ていた。銃器博物館のトンプソンM1928を撃ちまくる。

 女性の保安官助手サラ・トーランスはジェイミー・アレクサンダー。やはりTVメインで活躍していた人で、劇場映画は「マイティ・ソー」(Thor・2011・米)に出ている。やはり銃は標準装備らしいグロック。銃器博物館から持ち出して使うのはレミントンM700。

 もう1人、目立っていた女性はダイナーのウエイトレス、クリスティーはクリスティアーナ・ローカス。この人もTVからで、2010年からは映画に出ているようだが、これからの人だろう。本作ではいい味を出していた。

 まさに西部劇にありがちな、酔っぱらって留置場に入れられていた保安官助手ジェリーの親友フランク・マルチネスはロドリゴ・サントロ。ブラジル出身で、「チャーリーズ・エンジェル/フルスロットル」(Charlie's Angels: Full Throttle・2003・米)や「ラブ・アクチュアリー」(Love Actually・2003・英/米/仏)、そして「300〈スリー・ハンドレッド〉」(300・2007・米)などに出ている。最近はパッとしない感じで、本作は久々の大作。

 武器マニアで銃器博物館を運営しているルイス・ディンカムはジョニー・ノックスヴィル。「メン・イン・ブラック2」(Men in Black II・2002・米)で小さな頭が生えている宇宙人を演じていた人。とぼけた味が抜群で、本作でもお気に入りの銃には名前をつけているという変な人ぶりが実に良かった。S&WのM500マグナムを持っていて保安官助手たちに撃たせる。のちに保安官もそれを使う。銃に愛称を付けていて、M500はジョルジェッタ。バスからシュワちゃんが撃つヴィッカース・マシンガンはヴィッキー。ヘンリエッタというものあったが、なんだったか。

 ちらりと出ていただけだが、土地から出て行かない頑固な農夫、西部劇のじいさま役ミスター・パーソンズはハリー・ディーン・スタントン。名作ホラーSF「エイリアン」(Alien・1979・米/英)に出ていた人。「パリ、テキサス」(Paris, Texas・1984・独/仏ほか)では主演を務めている。最近では「アベンジャーズ」(・2012・)に出ていた。1926年生れというから87歳。まさにじいさまにピッタリ。本作では水平二連ショッガンで抵抗し、派手に頭をぶっ飛ばされている。

 FBIの特殊部隊はM4カービンを装備。FBI捜査官は基本グロックで、P229もまじっていたようだった。敵は大物ではカール・グスタフ無反動砲。そしてMP5、M14のEBR、ブレイザーR93スナイパー・ライフルなど。

 手が飛んだり、額に穴が開いたりと、残忍シーンもあるが、近距離で頭を撃って穴が開くだけですむだろうか。頭の一部が吹っ飛んでしまうのではないだろうか。残酷過ぎるけど。

 脚本はアンドリュー・クノアー。本作が初めての劇場長編映画のようで、ハリウッドのありがちなパターンの作品ながら、面白く、バランスよくまとめられているのではないだろうか。このあとの作品がどうか。

 監督は韓国出身のキム・ジウン。衝撃的だったホラー・コメディの「クワイエット・ファミリー」(The Quiet Family・1998・韓)に始まり、プロレス・コメディ「反則王」(The Foul King・2000・韓)、血まみれのホラー「箪笥」(A Tale of Two Sisters・2002・韓)、イ・ビョンホンのバイオレンス満載ギャング・アクション「甘い人生」(A Bitter Sweet Life・2005・韓)、アジアが部隊の痛快西部劇「グッド・バッド・ウィアード」(The Good, the Bad, The Weird・2008・韓)までの監督と脚本を担当している。そして監督だけだが「悪魔を見た」(I Saw the Devil・2010・韓)は身の毛もよだつほどの猟奇殺人鬼とそれにまけない復讐の鬼となった刑事の復讐譚。ものすごい才能だ。本作はハリウッド・システムでその才能が多少削がれた気はするが、やはり個々まで自分の味を出してくるとはさすが。これからが楽しみだ。

 日本語字幕はあまり解像度が高くないようで、白バックになるとジャギーが目立って気になった。


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 公開初日の初回、新宿の劇場は全席指定で、金曜に確保。当日は20分前ほどに開場、観客層はほぼ白髪の男性という感じ。女性は30人で2〜3人。関係者らしき人が2人いたが、みごとに高齢者ばかりで驚いたような感じだった。最終的には157席に4.5割くらいの入り。もっとはいってもいい作品だと思うが、シュワちゃんの予告のセリフ「オールド(歳だ)」が、老人映画のような印象を与えてしまったのでしないか。実際にはばりばりのアクション映画なのに。

 気になった予告編は……ギレルモ・デル・トロ監督が日本向けビデオ・メッセージで登場したのは「パシフィック・リム」の予告。侵略してきた凶悪な宇宙人と、巨大なロボットが戦うという話らしい。監督が尊敬する日本の漫画、ロボット、怪獣映画の伝統を尊重して作り上げたという。ものすごい迫力。ハリウッドらしいスケールの大きな絵の中に、芦田愛菜ちゃんがいるのはちょっとした驚きだった。しかも大勢の中に交じっているのではなく、1ショットなのだ。まるで主役みたい。ただ音が小さくて迫力がなかったのは残念。8/9公開。

 上下マスクの「華麗なるギャツビー」も監督のバズ・ラーマンが登場。とにかく絵がキレイ。そしてキャリー・マリガンと、レオナルド・ディカプリオが美形。6/14公開。

 上下マスクの韓国映画「私は王である」は実話に基づくらしいが、どうにも「王子とこじき」のように思えてならなかったが……。5/11公開。

 上下マスク「死霊のはらわた」は結構予告をやっているのに、前売り券を作っていないらしい。5/3公開。

 トム・クルーズの上下マスク「オブリビオン」は新予告に。オルガ・キュリレンコが入っているカプセルには日本の国旗があったんだ。設定は、なんだか3D-CGアニメの「ウォーリー」(WALL・E・2008・米)みたい。人類がいなくなった後、地球に残されたただ1人の男。持っている銃はブッシュマスターのACRに外装を施したものらしい。5/31公開。

 「はじまりの道」は生誕100年となる木下恵介を描くものらしい。高齢者向きという気もするがどうなのか。6/1公開。

 シルベスター・スタローンの「バレット」は新予告に。なんと監督はウォルター・ヒル。先日初来日したらしい。ただ、スタローンの刺青がどうにも不快で……。6/1公開。


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