Killing Them Softly


2013年4月27日(土)「ジャッキー・コーガン」

KILLING THEM SOFTLY・2012・米・1時間37分

日本語字幕:丸ゴシック体下、川又勝利/シネスコ・サイズ(レンズ、in Panavision、IMDbでは1.85、一部デジタル)/ドルビー・デジタル、DATASAT

(米R指定、日R15+指定)

公式サイト
http://gacchi.jp/movies/jackie-cogan/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

ジョニー・アマト(ヴィンセント・カラトーラ)は、マフィアが運営する賭場を襲って現金を強奪し、しかも疑われない計画を思いつき、チンピラのフランキー(スクート・マクネイリー)に声をかける。フランキーはかつてヤクの売人だった犬泥棒のラッセル(ベン・メンデルスゾーン)と共に、賭場を襲いまんまと成功する。組織は殺し屋ディロン(サム・シェパード)を雇うが病気で、代理としてジャッキー・コーガン(ブラッド・ピット)がやって来る。まず疑われたのは、過去に一度同じ手で賭場を襲ってバレずに成功したことがある雇われ支配人のマーキー(レイ・リオッタ)だったが、ジャッキーはすぐに別人の仕業と探り当てるものの、すでにマーキーは過去に間違いを冒しており、マーキーが死ねば賭場を再開できると、部下を殺しに差し向ける。さらに、ヤク中のラッセルが口を滑らしたことで、ジョニーとフランキーのこともジャッキーに知られることになる。

71点

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 うーむ……ストーリーはあるのだが、起承転結というか構成があってないような感じ。どうでもいいディテールがじっくり描かれているのに、ストーリーの展開は実に大味。本筋に関係のないどうでもいいことが延々と続き、すっきりしない終わり方。バスンスが非常に悪い。描き込むところが違うんじゃない?

 ひょっとしたらタランティーノの傑作「レザボアドッグス」(Reservoir Dogs・1992・米)みたいにしたかったんだろうか。だったとしたら失敗だろう。俳優陣は豪華で、怖い雰囲気がずっと底辺に流れている演出は良いが、脚本に問題ありか。ハリウッド・システムに乗りたくなくて、外したら外れ過ぎて脱線してしまった?

 とにかく暴力でいっぱい。それも悪意のある暴力。チンピラ、マフィアなんかが使う暴力。そしてプロの殺し屋が使う容赦ない暴力。大量に流れる血。そして、犬男のセックスの話とか、大雨の話とか、ジャッキー・コーガンが顔が割れているからと新たに呼び寄せた殺し屋のミッキーのくだりとか、どうでもいいわ。一切ストーリーに関係がない。聞いていると胸糞が悪くなるだけ。もっとストーリーに関係あるところをじっくりと描け。

 殺し屋のジャッキー・コーガンはブラッド・ピット。本作では製作も兼ねている。プロ野球映画「マネーボール」(Moneyball・2011・米)やテレンス・マリックの「ツリー・オブ・ライフ」(The Tree of Life・2011・米)とは正反対のような本作。ドラマの反動からだろうか。使っていたのは、ボトルネックのようなブランク・カートリッジが排莢されていたFNハイパワーとS&Wのチーフスペシャル。しかしチーフのシリンダーを振って入れてはいけないだろう。シロートか。ジョニー・アマトを撃つピストル・グリップのショットガンはモスバーグらしい。

 昔賭場を襲ったことがあるマーキーはレイ・リオッタ。この人は悪役がうまい。泣いて命乞いをするところなどとてもリアル。このところ日本劇場未公開となっている作品が多いようで、この前に見たのはハリソン・フォード「正義の行方I.C.E.特別捜査官」(Crossing Over・2009・米)あたり。

 殺し屋ディロンはサム・シェパード。どちらかといえば悪役の多い人。古くは宇宙開発歴史ドラマ「ライトスタッフ」(The Right Stuff・1983・米)にチャック・イエーガー役で出ており、戦争映画「ブラックホーク・ダウン」(Black Hawk Down・2001・米/英)では作戦の命令を下した将軍を、最近だとデンゼル・ワシントンのスパイ・アクション「デンジャラス・ラン」(Safe House・2012・米/南ア)ではCIAの作戦副本部長を演じていた。

 頼りにならない殺し屋ミッキーはジェームズ・ガンドルフィーニ。ブラッド・ピットとは「ザ・メキシカン」(The Mexican・2001・米)で似たような雰囲気で共演している。悪役の多い人だが、つい最近「ゼロ・ダーク・サーティ」(Zero Dark Thirty・2012・米)でCIA長官を演じていた。

 組織との連絡係ドライバーはリチャード・ジェンキンス。この人も悪役の多い人。最近トム・クルーズのミステリー・アクション「アウトロー」(Kack Reacher・2012・米)でヒロインの父親の検事を演じていた。ブラッド・ピットが製作総指揮を務めた「食べて、祈って、恋をして」(Eat Pray Love・2010・米)に出演している。

 原作はジョージ・V・ヒギンズの同名小説(早川書房)。これを脚本にしたのは監督も務めるアンドリュー・ドミニク。ニュージーランド出身で、前作の「ジェシー・ジェームズの暗殺」(The Assassination of Jesse James by the Coward Robert Ford・2007・米/加/英)でブラッド・ピットと仕事をしている。暴力表現は似ていると思うが、本作はだいぶ落ちるのでは。雰囲気を作るのは実にうまい。ただ、どうなんだろう。

 襲撃したチンピラが使っていた銃は、たぶんチャーター・アームズのブルドッグ。3インチ・バレルのように見えたが。それと、もう1人がショット・シェルが見えるほど切り詰めた水平二連。マーキーを拉致する男はS&Wの.357マグナム2.5インチ。

 公開2日目の2回目、六本木の劇場は全席指定で、前日にムビチケで予約して確保。当日は15分前くらいに開場して場内へ。ほぼ中高年で、若いカップルが1組という感じ。最初は男性15人に女性3人ほど。最終的に若いカッブルが3組ほどになり、148席に30人くらいの入りはかなりさびしいが、この内容だとしようがないだろう。これから増えるとも思えない。

 気になった予告編は……明るいままトピックでやっていたのがリドリー・スコット監督の「ザ・カウンセラー」。まだティーザーで内容はほとんどわからない。公式サイトもまだない模様。

 上下マスク「華麗なるギャツビー」は新パターンでの予告。キャリー・マリガンが本当に奇跡のようにきれいで魅力的。ますます見たくなる。6/14公開。

 上下マスクの「L.A.ギャングストーリー」も新予告に。実話の映画化で、刑事が「これは捜査じゃない、戦争だ」というところがすごい。こんなことがあったなんて。5/3公開。

 ようやく暗くなってスクリーンが左右に広がって本編へ。


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