Wara no Tate


2013年4月28日(日)「藁の楯」

2013・日本テレビ放送網/ワーナー・ブラザース映画/オー・エル・エム/講談社/Yahoo! JAPAN/ジェイアール東日本企画/讀賣テレビ放送/札幌テレビ放送/宮城テレビ放送/静岡第一テレビ/中京テレビ放送/広島テレビ放送/福岡放送・2時間05分

シネスコ・サイズ/ドルビー・デジタル



公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/waranotate/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

元経団連の会長、蜷川隆興(山崎努)の7歳の孫娘が乱暴されたうえ惨殺される事件が発生する。犯人は8年前にも同様の事件を起こして逮捕され、最近出所したばかりという清丸国秀(藤原竜也)。しかし逃亡を続けており、警察は行方すらつかめていなかった。そんなとき、新聞に「清丸を殺してください。10億円をお支払いします」という全面広告が載る。また清丸サイトが立ち上げられ、同様の告知が載る。その影響で隠れていられなくなった清丸は助けを求めて福岡南署に自首してくる。そこで、検察に送致するため48時間以内に警視庁に連行しなければならなくなり、警視庁捜査一課から奥村武(岸谷五朗)と神箸正貴(永山絢斗)、警護課からSPの銘苅一基(大沢たかお)と白岩篤子(松嶋菜々子)が派遣される。そして福岡県警の関谷賢示(伊武雅刀)が加わり、5人が担当することに。しかし、留置場に清丸がいるうちから警官が襲いかかる事態になる。

73点

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 アクション作品とは言え、さすがに原作が重いテーマだけに、映画も重い。事件が解決して単純に痛快とは行かない。そして血まみれ。やっぱり刃物の方が怖い。自分ならどうするか、考えさせられるテーマでもある。クソのようなヤツのために命をかけられるか。よくできた話で、どうやって護送を成功させるのか、ぐんぐん引き込まれて行く。ただ、やはり原作の方が惹きつけ度は強いと思う。

 それにしても、仕事だからあくまでもやりとげるというのは、どうなのか。それを理由にしてはいけないのではないだろうか。つまり仕事を理由にして通るなら、内部告発は絶対に悪ということになり、地上げとか、取り立てとか、隠ぺい工作とかも、仕事ならOKということにならないだろうか。仕事だからじゃなく、正しいと信じることだからやるのでなければいけないのでは? まあ、ここも見終わったら一緒に見た人と話してほしいと言うことなんだろう。

 そして、もう1つ。とにかく連続幼児暴行殺人鬼の清丸役の藤原竜也が、やっぱりさわやかな印象で、それを利用したギャップの怖さを狙ったものなんだろうけど、どうにも変態の極悪人には見えないこと。怖いのはラストで、「後悔しています。どうせ死刑になるのだったら、もっとやっとけばよかった」というのは、ゾッとしたけど。絵に描いたような変態とか、あざとい変人ではチープ過ぎるとしても、やっぱり「ラブリーボーン」(The Lovely Bones・2009・米/英/ニュージーランド)の犯人のミスター・ハーヴィを演じたスタンリー・トゥイッチとか、「羊たちの沈黙」(The Silence of the Lambs・1991・米)のバッファロー・ビルを演じたテッド・レヴィンくらい、異常な感じを出してほしかった。そうでないと、単純に次々と襲われる清丸の方ががかわいそうに見えてしまう。むしろ襲ってくるやつらの方が異常な演出。原作ではそんなことはないのに。レイティングの関係もあるのだろうが、冒頭の少女が襲われるシーンもない。どれだけ残虐だったのか、セリフと足と血だけでは……。

 また、銃の撃ち方が、SP役の2人ともヘタでまるでシロート。気になってしようがなかった。いまどきカップ&ソーサーって。きっと警察監修とかの人がアドバイスしているんだろうけど……。しかもハリウッド・レディが不自然で、カッコ悪いったらありゃしない。やっぱりリアルならロウ・レディかチェスト・レディでしょ。日本は1970年代でストップしているんだろうか。いまだにハリウッドでもあることはあるけど。銃声は大きくリアル。でも護送車で襲われたとき、みんな近くにいたのに撃たれた銘苅だけが耳がキーンとして聞こえなくなるなんて。どういう設定なんだろう。

 映画が終わって聞こえてきた声は、「なんでSPの白岩は防弾チョッキを着てないの?」というもの。確かに、そのとおり。おかしい。パートナーの銘苅は着ていて、護送車ではそれで助かっているのに。

 初めて日本のSPが銃を撃つかもというセリフがあるが、ここでSPの使う銃はP230JPではなくてUSPかと思ったら、P2000だそうだ。国内の撮影はこのプロップで行われたものの、台湾ロケではUSPコンパクトが使われたらしい。警視庁捜査一課の刑事はS&Wのチーフかニュー・ナンブ。SPはヒップ・ホルスターだったが、刑事はショルダーのようだった。オレンジっぽい新幹線で襲ってくるヤクザのような男達はグロック。新神戸駅で包丁男を撃つ県警の関谷もたぶんS&Wのチーフかニュー・ナンブ。

 SPの銘苅は大沢たかお。つい最近「ストロベリーナイト」(2013・日)ではインテリ・ヤクザを演じていた。時代劇の「桜田門外ノ変」(2010・日)もなかなかよかった。TVの出演は少なく、映画俳優という感じ。

 女性SPの白岩は松嶋菜々子。原作は男だったと思うが、映画では女性でも仕方ないかなと。ただ、シングル・マザーという時点で結末は見えた気が。そもそも子持ちでSPになれるのかどうか。TVドラマ「家政婦のミタ」(2011)が話題となったばかり。映画ではハリウッド作品をリメイク(!)した「ゴーストもう一度抱きしめたい」(2010・日)に出ていた。

 警視庁一課の若手刑事、神箸は永山絢斗。尖っていて、突っ張っている感じが良かった。アップで耳ピアスの穴が気になった。ハリウッドでも多いことだが……。ボクは余り見たことがないが、今後の活躍にも期待したい。

 原作は木内一裕の同名小説デビュー作。それを脚本にしたのは林民夫。あの傑作「ゴールデンスランバー」(2009・日)の脚本を書いた1人。ただアクション物はあまり書いていないようだが……。

 監督は、すきやきウエスタンからバイオレンス、ホラー、時代劇、コメディ、ミュージカル……どんなジャンルでも手掛ける職人、三池崇。「愛と誠」(2012・日)は賛否あったようだが、さすがに「悪の教典」(2012・日)は強烈だった。こんなに作品を撮っている監督もそういないのではないだろうか。

 警察監修は古谷謙一、国内のガン・エフェクトはBIG SHOT。

 公開3日目の2回目、新宿の劇場は全席指定で金曜に確保。混みあうのか当日は15分前くらいに開場。観客層は大学生くらいから中高年までという感じ。下は小学生くらいからいた。レイティングはどうなっているのだろう。男女比はほぼ半々くらい。最終的には607席に9割くらいの入り。さすが話題作。久しぶりにこんなに入っているのを見た気がする。

 気になった予告編は……上下マスク「許されざる者」はイーストウッドの西部劇のリメイクというか、日本の話に置き替えたもの。イーストウッドがやった役を渡辺謙が演じ、モーガン・フリーマンを柄本明がやるらしい。日本だから銃が刀ということになるのだろう。渡辺謙は引退した人斬りということのようだ。監督は「フラガール」(2006・日)の李相日。9/13公開。

 上下マスク「マン・オブ・スチール」はダークな雰囲気のスーパーマン映画。ブライアン・シンガーが撮った「スーパーマン リターンズ」(Superman Returns・2006・米)に近い気がするが、どうなんだろう。ブライアン・シンガーをもってしてもうまくできなかったものをリセットできるのか。ケヴィン・コスナーがお父さんらしい。8/30公開。


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