Welcome to the Punch


2013年5月5日(日)「ビトレイヤー」

WELCOME TO THE PUNCH ・2013・英/米・1時間39分

日本語字幕:丸ゴシック体下、安本熙生/シネスコ・サイズ(デジタル、Arri)/ドルビー・デジタル

(米R指定)

公式サイト
http://www.finefilms.co.jp/betrayer/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

とあるビルから4人の男達によって大金が強奪される。その計画を勘付いた刑事のマックス・ルインスキー(ジェームズ・マガヴォイ)は、本部の制止も聞かず単身乗り込む。そして一味の1人ジェイコブ・スターンウッド(マーク・ストロング)を捕まえそうになるが、逆襲され足を撃たれたうえ逃げられてしまう。3年後、若い男が腹を撃たれて空港で逮捕される。その直前、若い男は隠遁生活を送るスターンウッドに電話していたことがわかり、息子のルアン(エリス・ガベル)であることが判明する。マックスは女性刑事のサラ(アンドレア・ライズブロー)と組んで捜査にあたることになり、ルアンが入院した病院へ向かう。ところが、その病院には刺客の元軍人ディーン・ウーズ(ジョニー・ハリス)と、父のスターンウッドも向かっていた。

76点

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 B級アクションかと思ったら、意外に重厚で、イギリスが舞台でありながら銃撃戦も満載。男の意地と意地がぶつかり合うアクションで、なかなかのミステリー。タイトルがネタばらしになっているが、どんでん返しがあって、なるほどそういう結末かと。原題は「パンチへようこそ」。パンチの意味は映画の後半で明らかになる。邦題でありながら英語だが、ビトレイヤーは「裏切り者」とか「密告者」という意味。そのとおりだが、こういうタイトルを付けるかなあ。

 基本は、イギリスは銃の法規制厳しく、銃は所持できないという点。日本と同様、刑事でも普段から銃を携帯しているわけではないということ。日本ではパトロール警官は常時銃を携帯しているが、イギリスでは普段は携帯していないらしい。そういうお国柄で、起こる事件だということ。銃による犯罪が増えるほど喜ぶヤツがいると。

 最初、美人の女刑事と組んでいて、ちょっといい雰囲気で、恋愛もの的パターンかなと思ったら、さすがにイギリス映画はハリウッドのようなパターンにはハマらない。そして憎みあう男同士が(そういう意味ではないと思うが)、命をかけて戦ううちに友情のようなもので結ばれる。そして一番悪いヤツの最後は描かれない。どうなるのか。

 物語は複雑な構成で、若干、わかりにくいところはある。絵では説明できず、どうしてもセリフだけの説明になると、たぶん字幕では充分理解できない。そこだけが残念。あとはハラハラドキドキ、怖い状況が連続して行く。演出もリアルさが徹底していて、緊張感が持続する。見終わって、なぜもっと多くの劇場でやらないのかという気がした。

 マックス・ルインスキー刑事はジェームズ・マガヴォイ。「ナルニア国物語/第1章:ライオンと魔女」(The Chronicles of Narnia: The Lion, the Witch and the Wardrobe・2005・米/英)のタムナスさんだが、衝撃の実話の映画化「ラストキング・オブ・スコットランド」(Last King of Scotland・2006・英/独)の若い医師、ファンタジー・ラブ・ロマンス「ペネロピ」(Penelope・2006・英/米)の二枚目役も良かった。超大作シリーズ「X-MEN:ファースト・ジェネレーション」(X-Men: First Class・2011・米)ではチャールズ・エグゼビアの若い頃を演じていた。しかしこんなハードボイルドなアクションを演じられるとは。今後にも期待したい。使っていた銃はUSPコンパクト。

 マックスの相棒の女性刑事サラ・ホークスはアンドレア・ライズブロー。1981年生れというからすでにベテランの年齢だと思うが、あまりスクリーンで見たことはない。デビューが遅かったのだろうか。舞台からTVへ、そして2009年頃から映画に出るようになったらしい。マドンナが監督した「ウォリスとエドワード 英国王冠をかけた恋」(W.E.・2011・英)にウォリス役で出演、そのあと「シャドー・ダンサー」(Shadow Dancer・2012・英/アイルランド)にも出ているが、日本では小劇場での公開でどちらも見ていない。まもなく公開されるトム・クルーズのSF「オブリビオン」(Oblivion・2013・米)にも出ているらしい。今後も注目したい。

 強盗の1人ジェイコブ・スターンウッドはマーク・ストロング。悪役が多い人で、人気シリーズ第1作目「シャーロック・ホームズ」(Sherlock Holmes・2009・米/独)のブラックウッド卿や、痛快なりきりヒーロー・アクション「キック・アス」(Kick-Ass・2010・英/米)の悪党役などが強烈だった。最近は「ゼロ・ダーク・サーティ」(ZERO DARK THIRTY・2012・米)でCIAの上司を演じていた。本作は意外なアクションで、なかなか頑張っていた。メインで使っていた銃はベレッタのM92。冒頭の強盗シーンではMP5K、中盤でシュタイアTMP、ラストではM4カービンも使う。

 悪役でちょっとだけ「X-MEN:ファースト・ジェネレーション」でアザゼルを演じたジェイソン・フレミングでが出ている。使っていた銃はシルバー・スライドのP226。

 ほかに出ていた銃はG36K、G36C、ガバメント、UMPサブマシンガン、AK、チーフ、たぶんレミントンM870ショットガンなど。アーマラーは3人クレジットされていたと思うが、IMDbには2人だけ。ジョン・ベーカーとダン・オズボーン。ジョン・ベーカーはヴァンパイア・アクション「アンダーワールド」(Underworld・2003・英/独ほか)、シリーズ中の傑作「ダークナイト」(The Dark Knight・2008・米/英)、最近では「レ・ミゼラブル」(Les Miserables・2012・米/英)を手掛けている。ダン・オズボーンは「キック・アス」、シリーズ2作目の「シャーロック・ホームズ シャドウゲーム」(Sherlock Holmes: A Game of Shadows・2011・米)、ジョン・ベーカーの後を引き継いだシリーズ2作目「ダークナイトライジング」(The Dark Knight Rises・2012・米/英)、そしてジョン・ベーカーと一緒に「レ・ミゼラブル」を手掛けている。

 監督・脚本はエラン・クリーヴィー。ダニエル・クレイグのギャングもの「レイヤー・ケーキ」(Layer Cake・2004・英)などに助手として関わり、2008年から脚本と監督として抜擢され、間があいて本作になるらしい。なかなかの演出力。今後が楽しみだ。

 光の帯が流れてきて、それが集まって行って事件現場のブラインドになるというオープニング・タイトルはリチャード・モリソンとディーン・ウォーレスの2人。リチャード・モリソンは「バンテージ・ポイント」(Vantage Point・2008・米)やアクション・コメディの「スコット・ピルグリムVS.邪悪な元カレ軍団」(Scott Pilgrim vs. the World・2010・米/英ほか)のエンド・タイトル、最近ではジョニー・デップのヴァンパイアもの「ダーク・シャドウ」(Dark Shadows・2012・米)を手掛けている。ディーン・ウォーレスはリチャード・モリソンと一緒に主にタイポグラフィーを担当しているらしい。

 公開2日目の初回、豊洲の劇場はショッピング・センターの中にあり、センター内のお店より先に開くため、システムがわからないと入りにくい。エスカレーターが動いていないからだ。エスカレーターは10時から動き始め、劇場は9時から。エレベーターで上がるらしい。それに気付かず出遅れてしまった。40〜45分前くらいに前売り券を当日の指定席券と交換したが、埋まっている席が確認できないシステム。いちいち座席表から選んで、開いているかどうか聞かなければならないし、まわりの状況がわからないから、空いているのに中央付近だけがぎゅっと混んでいるという妙なことになる。コンピューターを使っているはずだから、モニターに埋まっている状況を見せて決めさせればいいのに。

 30分前くらいに行ってみたら、すでに開場していた。希望の席が埋まっていて、その前を勧めてくれたのだが、ボクにはちょっとスクリーンが近かった。うむむ。観客層は、下は中学生くらいからいたが、ほとんどは中高年。CM・予告が始まった時点では15〜16人で、女性は5〜6人。最終的には109席に30人くらいの入り。もっと入っても良い作品なのにCMが少な過ぎではないだろうか。劇場も小さいところばかりだし。

 スクリーンはシネスコで開いており、明るいまま始まった予告で気になったのは……枠付きシネスコの「フッテージ」は屋根裏で謎の8mもフィルムが見つかるというもので、なかなか怖そう。見たいが、何と前売り券が作られていないとか。5/11公開。

 枠付きシネスコの「ファインド・アウト」はアマンダ・セイフライドのホラーなのかミステリーなのか、怖そうな雰囲気。面白そうだが小劇場のみで6/15公開。

 枠付きシネスコの「G.I.ジョー バック2リベンジ」は、ブルース・ウィリスのメッセージ付き。どうなんだろう。「1」のようでなければ良いのだが。6/8公開。

 左右マスクの「水滸伝」は、ズバリあの梁山泊の物語。どうもTVドラマのようだが6/5のDVD発売前に劇場公開するらしい。全86話3,870分が100分に集約されているのだとか。5/25公開。

 枠付きシネスコの「ビヨンド・ザ・パインズ/宿命」はライアン・ゴズリングの犯罪ドラマらしい。ただ、非常に重苦しい雰囲気が半端じゃない。なんだこれ。5/25公開。


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