Tantei wa Bar ni Iru 2


2013年5月11日(土)「探偵はBARにいる2ススキノ大交差点」

2013・東映/テレビ朝日/木下工務店/東映ビデオ/アミューズ/CREATIVE OFFICE CUE/東映チャンネル/北海道新聞社/北海道テレビ放送/メ〜テレ/朝日放送/広島ホームテレビ/九州朝日放送/早川書房・1時間59分

ビスタ・サイズ/ドルビー・デジタル



公式サイト
http://www.tantei-bar.com/
(全国の劇場リストもあり)

札幌ススキノのショー・パブ「トムボーイズ・パーティ」のマサコちゃん(ゴリ)が、マジック・コンテスト全国大会の決勝戦で優勝した2日後、何者かに惨殺される。しかし3ヶ月経っても警察は犯人を逮捕することはできず、事件は人々から忘れられようとしていた。友人だった私立探偵の俺(大泉 洋)は、自分で犯人を探し始めると、仲間のはずだったショー・パブ関係者も口を閉ざし、客引きたちも逃げてしまうありさま。両刀づかいのブンヤ松尾(田口トモロヲ)に聞くと、二世議員の政治家が関わっていて、ヤバイのだという。そんな時、俺の前にマサコちゃんが大ファンだったというヴァイオリニストの川島弓子(尾野真千子)が現れる。彼にために犯人を捜したいという。こうして依頼人を得たオレは正式に捜査を始めるが……。

74点

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 ほぼ期待を裏切らない前作並みの感動ドラマ。たっぷりの暴力と、エロ、昭和テイストなギャグ、そして謎とどんでん返し。ほぼ2時間の間、異次元の札幌へイメージ・トリップしたような感覚が味わえる。

 なによりは魅力的なキャラクターだろう。それは原作が持つものであり、巧妙な脚本によるもので、絶妙な演出のなせる技で、演者と融合した味なんだろう。実に魅力的。

 そしてニュー・ハーフ、オカマが事件の中心人物で、過酷な人生を生きてきたという部分が感動的だ。あやうく泣きそうになった。主人公のオレも、助手というか相棒の高田も、一切オカマを特別視していないし、もちろん差別もしていない。人間として認め、普通に付きあっている。そこがまたいい。

 ただ、滑り気味の過剰な昭和ギャグと、不必要な裸だけはもっとよく検討すべきだったのではないだろうか。プロデューサーの趣味か、監督の趣味か。なんだかマンガっぽい。裸が出ると観客の注意は大きくそれてしまう。物語の真ん中に連れ戻して再び集中させるのはかなり困難となる。そこまでの価値がこの裸にはあったのか。むしろ前作のように(今回も出ているが)喫茶「モンデ」のエロ・ウェイトレス(この人、安藤玉恵というらしい。すばらしい個性。案の定、上智を中退して早稲田に行ったという才女)で充分だろう。それにタイトルが出るまでのアバンが長過ぎ。だから、微妙なところなのだが、前作に比べるとバランスが良くない感じ。

 前作から引き続き、ポンコツ車、エロ・ウェイトレスとか、花岡組の即天道場の元副長とか、北海道日報の記者とか、桐原組の若頭とか出てくるのは、覚えている人にはたまらないだろう。ボクはほとんど忘れかけていて、TVで「1」を見てから劇場に行けば良かったなあと思った。

 探偵の俺は大泉 洋。とぼけた感じが絶妙。冒頭は滑り気味だったが、これは演出か脚本のせいだろう。NHKの大河ドラマ「龍馬伝」(2010)もいい味を出していた。

 相棒の高田は松田龍平。あまりTVに出ず、映画をメインに活動している感じだが、「悪夢探偵」(2006・日)や「伝染歌」(2007・日)などの印象的な作品もありつつ、本作シリーズがいちばん良い魅力を引き出している気がする。最近作は「舟を編む」(2013・日)。

 今回の依頼者となる川島弓子は尾野真千子。大阪弁がなんだか気になったが、独特の雰囲気を持っている人。二世議員の橡脇(とちわき)を演じた渡部篤郎とともにNHKの異色TVドラマ「外事警察」(2009)に出ていた人。劇場映画版「外事警察 その男に騙されるな」(2012・日)にも出ていた。薄幸な感じが抜群。

 花岡組の即天道場の元副長佐山は波岡一喜。よく映画に出ていて悪役が多い感じだが、実際にはかなり陽気な人のようで、本作のようなテイストが向いているのかも。「SP革命篇」(2011・日)や「一命」(2011・日)などのシリアスものから、「忍たま乱太郎」(2011・日)の子供向けコメディまで、多くの作品に出ている。「舟を編む」で松田龍平と共演している。

 桐原組の若頭は、なんだか第二の遠藤賢一のようになってきた感のある松重豊。いろんな役をやっているが、どうも最近ヤクザ系が多く、それを逆手にとった面白い人とか良い人的な役割。「アウトレイジビヨンド」(2012・日)では刑事をやっているが、「リアル 完全なる首長竜の日」(2013・日)では、リゾート開発に翻弄された島の父を演じていた。しかし松田龍平の弟、松田翔太と共演したTVドラマ「ドン★キホーテ」(2011)でも本作と似たような面白いヤクザだった。

 原作は東直巳の「ススキノ探偵シリーズ」の5作目にあたる「探偵はひとりぼっち」(1998)だとか。本人は、ラスト探偵の俺が入院した病室に、ほかの入院患者として出演している。

 脚本は前作同様、プロデューサーでもある須藤泰司と古沢良太。須藤はプロデューサーとしてTVドラマ「相棒」シリーズを手がけている。古沢は「相棒」シリーズのほか「外事警察」も大ヒットシリーズ「ALWAYS三丁目の夕日」(2005・日)シリーズもすべて手掛けている。素晴らしい才能でないだろうか。

 監督も前作から引き続き東映の橋本一。同じ監督なのに、なぜ本作はこうなってしまったのか不思議。前作の雰囲気のままで行けば良かったのに。「相棒」シリーズ、「臨場」(2009)も手掛ける。映画は「新仁義なき戦い/謀殺」(2002・日)や「極道の妻たち情炎」(2005・日)を手掛ける。なるほどヤクザの描写がうまいわけだ。ほかに「茶々 天涯の貴妃」(2007・日)や、まもなく公開される「桜姫」(2013・日)などの姫ものも手掛けている。ヤクザものの反動だろうか。

 登場した銃は、オカマ・バーで暴れる男が持っているのが、ピンクのグリップを付けたシルバーのM92。途中襲ってくくる即天道場の元副長佐山はイングラム。銃器特殊効果はF&Tの会田文彦。銃ではないが、川島弓子が護身用にスタンガンを持っていて、探偵が股間にこれを喰らうところは笑った。

 素晴らしいのは、前作に引き続き、多人数による乱闘シーン。それも長い。これをちゃんと振り付け、リアルに見せるのは半端な技じゃないと思う。電車の中のぎゅうぎゅう詰め乱闘シーンも然り。すばらしい。先に外へ落ちた方がいいとは思ったが、それだとこのシーンが成り立たない。アクション・コーディネーターは前作から引き続き諸鍛冶裕太。「阿修羅城の瞳」(2005・日)などの時代劇から、「ワイルド7」(2011・日)のように現代劇まで何でもこなす。

 前作はカルメン・マキが歌う曲が良かったが、本作は鈴木慶一とムーンライダースのエンディングの曲「スカンピン」が良い。エンドロールの後、ラストのギャグあり。

 公開初日の3回目、銀座の劇場は全席指定で、金曜に確保。30分ほど前に着いたら、銀座の劇場は第2回目の舞台挨拶付きの上映が終わったところで大混乱。失敗した。初回が舞台挨拶付きだと思ったら、意表をつく2回目だった。初回にしておけば良かった。

 20分前くらいに開場というか入れ替え。2階席が空いていたのでそこにしたら最終的には15〜16人。たぶん1階も舞台挨拶の影響で少なかったのではないかと思う。舞台挨拶の回が終わって出てきた人々は中年女性が多かったが、3回目はやや男性が多い感じで、メインは中高年。若いカップルが2〜3組。チケットを交換したとき、アドバイスで前から2列目にしたら、本当に見やすかった。さすが。親切。

 スクリーンはビスタで空いていて、チャイムの後アナウンスがあってから半暗になり、CM・予告の上映。気になった予告編は…… 監督・脚本宮藤官九郎という上下マスク「中学生円山」は中学生の妄想を描くコメディらしい。なんだか銃も出てくるようで、一体どうなっているんだか。5/18公開。

 上下マスク「利休にたずねよ」はなんだかミステリーの雰囲気。主演は市川海老蔵。ほかに中谷美紀、伊勢谷友介、大森南朋。12月公開。

 なんと国民的TVドラマ「おしん」が映画化。これはびっくり。オリジナル・キャストの小林綾子、泉ピン子も出ているらしい。世界的に人気だからだろうか。10/12公開。

 上下マスク「キャプテンハーロック」は実写のように見えたが、良く見ればフル3D-CGのようだった。小栗旬と三浦春馬は声の出演だろうか。それともモーション・キャプチャーだろうか。情報が少なすぎてわからなかった。でも、絵の力はみなぎっていた。フォトリアリスティック。9/7公開。

 「二流小説家シリアリスト」は原作が海外版の「このミス」1位の作品なんだそう。なぜ日本で映画化? よくわからないが、面白そうだったのは確か。なんでも、書いた小説が本当に事件として起こるとか何とか。6/15公開。

 暗くなって、海賊版のCMから本編へ。雨でじめじめと暑い日で、隣のヤツが汗臭くて困った。


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