Gambit


2013年5月19日(日)「モネ・ゲーム」

GAMBIT・2013・米・1時間30分(IMDbでは89分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、林 完治/シネスコ・サイズ(デジタル、Arri Alexa)/ドルビー・デジタル、DATASAT、SDDS

(米PG-13指定)

公式サイト
http://monetgame.gaga.ne.jp/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

イギリス、ロンドン、超ワンマン経営シャバンダー・メディアの社長ライオネル・シャバンダー(アラン・リックマン)の元で、不快な思いとイジメを受けながら務めていた美術スタッフのハリー・ディーン(コリン・ファース)は、我慢の限界。復讐するため友人の元アフリカ銃隊の少佐で、現在は贋作アーティストのネルソン(トム・コートネイ)と組み、印象派の絵のコレクターのシャバンダーに、にせもののモネの「積みわら」を高価な価格で売りつける計画を立てる。そして本物と信じさせるため、第二次世界大戦時、「積みわら」を所持していたゲーリングから奪ったとされるプズナウスキー軍曹と同じ名字を持つテキサスのバリバリのカウガール、PJ・プズナウスキー(キャメロン・ディアス)を見つけ、仲間に引き入れる。しかし、自由奔放なPJの振るまいと、用心深いシャバンダーの行動により、計画はどんどん違う方向ヘ展開して行く。

72点

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 痛快どんでん返しピカレスク・コメディなんだけれど、前半というかほぼ全編に近い部分が振りで、それをラストにくつがえしてみせるのだが、不快で下品でおバカ。そのため全体の印象として、悪い方のパーセンテージが大き過ぎ、バランスが悪い。ラストに得られるカタルシスに対して、掛けられるストレスが半端なく大きい。

 天才詐欺師を気取ったアホなイギリス人の2人組、コンニチワ・メディア・グループの不快な日本人たち、自由奔放で言うことを聞かないテキサス娘、ことごとく失敗してうまくいかない作戦……というか雑な思いつき。結末を見るまで、ストレスがたまる。居心地が悪い。どんでん返しは鮮やかなのに。IMDbでは5.6点といいう低評価。ちょっと厳し過ぎでは?

 アメリカ映画だがイギリスが舞台で、イギリス式のギャグだと思うが、ちょっとお下劣なものが多く、普通に笑えるものあるのだが、バランスで全体的にお下劣に感じてしまう。それが残念。たぶんギャグとしてはTVの「ミスター・ビーン」(Mr.Bean・ 1990〜1995・英)系にはなるのだろう。面白いのだが「ミスター・ビーン」ほどは笑えない。たぶん微妙なバランスでそこが実に惜しい。

 一見ダメ男のハリー・ディーンを演じたのはコリン・ファース。「ブリジット・ジョーンズの日記」(Bridget Jones's Diary・2001・米/英ほか)や「ラブ・アクチュアリー」(Love Actually・2003・英/米/仏)に出ていた人で、最近出は「英国王のスピーチ」(The King's Speech・2010・英/米/豪)でジョージ6世をやっていた人。どちらかというとラブ・コメが多い感じ。アクションはやっていない模様。ミュージカル「マンマ・ミーア!」(Mamma Mia!・2008・米/英/独)では歌も披露している。

 とんでもなく嫌な男ライオネル・シャバンダーはアラン・リックマン。「ハリー・ポッター」シリーズのセブルス・スネイプス先生役が有名だが、やっぱり「ダイ・ハード」(Die Hard・1988・米)が強烈だった。「ギャラクシー・クエスト」(Galaxy Quest・1999・米)や「ドグマ」(Dogma・1999・米)などのコメディにも良く出ている。名わき役といった感じ。

 紅一点のカウガール、PJ・プズナウスキーはキャメロン・ディアス。南部訛りなのか、いかにもカウボーイ(ガール)風のしゃべり方が、おのぼりさん的な感じと物おじしない感じを出していた。デビュー作がジム・キャリーのコメディ「マスク」(The Mask・1994・米)だったからかコメディが多い。「チャーリーズ・エンジェル」(Charlie's Angels・2000・米/独)ではアクションもやっている。ちょっと前トム・クルーズの「ナイト&デイ」(Knight and Day・2010・米)でも銃をぶっ放していた。

 ちらっと出てくるドイツ人の美術品鑑定家マーティン・ザイデンウェーバーはスタンリー・トゥッチ。「プラダを着た悪魔」(The Devil Wears Prada・2006・米)などコメディが多い反面、「ラブリーボーン」(The Lovely Bones・2009・米/英/ニュージーランド)では一転して変質的な殺人鬼を演じて怖かった。ダーク・サイドではちょっとマーク・ストロングとイメージが似ているかも。

 日本人の実業家タケガワは伊川東吾。「ラスト・サムライ」(The Last Samurai・2003・米)や「SAYURI」(Memories of Geisha・2005・米)とか「ジョニー・イングリッシュ気休めの報酬」(Johnny English Reborn・2011・米/仏/英)に出ていた人だ。

 脚本はジョエル・コーエンとイーサン・コーエンの兄弟。このコンビは数々の傑作の監督・脚本を手掛けてきた。ショッキングなものが多く、特に「ミラーズ・クロッシング」(Miller's Crossing・1990・米)や「ファーゴ」(Fargo・1996・米/英)、「ノーカントリー」(No Country for Old Men・2007・米)は強烈だった。最近だとリメイク西部劇「トゥルー・グリット」(True Grit・2010・米)を手掛けている。コメディはあまり向かないのかもしれない。

 監督はハワイ出身のマイケル・ホフマン。オックスフォード大学に進んだことから、監督デビューはイギリスだったらしい。「ソープディッシュ」(Soapdish・1991・米)や「終着駅トルストイ最後の旅」(The Last Station・2009・独/露/英)を監督しているというが、どれも見たことはない。コメディには向かなかったのかも。

 タイトルは昔のハリウッド映画のようなアニメによるもの。その雰囲気を意図したのだろう……。担当したのはボブ・カーツ。「ジュラシック・パーク」(Jurassic Park・1993・米)のアニメのDNA説明シーンや、「フォー・ルームス」(Four Rooms・1995・米)、残念なリメイク「ピンク・パンサー」(The Pink Panther・2006・米/チェコ)のタイトルなどを手掛けている。

 登場する銃は、第二次世界大戦時のエピソードで、アメリカのパットン第1軍団のG.I.たちがトンプソンM1/M1A1を持っている。

 原題のGAMBITとは「優位に立つための策」とか「先手」、チェスの「序盤の仕掛け」のことなんだそう。

 公開2日目の初回、六本木の劇場は全席指定で、金曜にムビチケで予約して行ったら、なんと「マシン・トラブル」とかで初回の上映がキャンセルに。長いことならばされて、払い戻しか別の時間に振り替えに。あまりに時間が掛って、あちこちから対応が悪いと声が上がっていた。こんなの、すぐ誰かがツイッターとかブログに書いて、あそこの劇場はダメだとすぐ広まるわよねえ、という女性の声もあちこちから。2時間以上時間を無駄にした。

 たとえば新宿ピカデリーなどは、上映中、映像と音声が1〜2秒とぎれて真っ暗になっただけで、終了時、出口付近でスタッフが立っていて「すみませんでした」と1人1人にお詫びして、招待券を1枚ずつ配る気遣い。いまの言葉で言うなら「神対応」か。ボクなんかトラブルという気もしなかったので、とても得した気分になった。この劇場はスゴイと。一方、六本木の劇場はそういったトラブル時の対処が何一つなされていなかったため、ただ払い戻しか振り替えといった処理だけで終わったのだろう。場所が良いもんだから、それにあぐらをかいちゃったかなあ。常日ごろから気取った感じはあったけど。

 2回目の上映は初回と劇場が変わって、このシネコンでたぶん最悪の1つに。座席に傾斜はついてるのに、スクリーンが低いためたぶん真ん中より後方は前席の人の頭がじゃまになってスクリーン下、つまり字幕がほとんど見えない。しかも座席が千鳥配列ではないから逃げようがない。隣の席が空いていたので体を曲げて、ひねって…… それで作品の評価が厳しくなったかもしれない。

 15分前くらいに開場になって場内へ。若い人から中高年までいたが、やはりメインは中高年。男女比は4対6で女性の方が多い感じ。最終的に369席に8〜9割くらいの入りは、たぶん初回の振り替えがあったからではないだろうか。こんなに混む作品とは思えない。

 気になった予告編は……いつもながら、明るいまま上映されるTOHOニュースは良く見えなくて、ストレスがたまる。暗くしろ! 半暗になって始まった「ガッチャマン」はなかなかカッコいい予告編。ティーザーのため内容は全くわからなかったが、期待できそうな雰囲気。8/24公開。

 「リアル 完全なる首長竜の日」は試写会で見てしまったが、ちょっと怖くてミステリーな雰囲気がすばらしい。6/1公開。

 「ハングオーバー!!!最後の反省会」このシリーズはもういいだろ。まだ作るのか。キャッチコピーが「もうしません」。なら止めろ! 絵だけはチープではなくなった気も。6/28公開。期待はリドリー・スコットの「ザ・カウンセラー」。一体どんな作品なのか。まだ公式サイトはない模様。

 上下マスクの「マニアック」はマネキンしか愛せない男の猟奇殺人を描く1980年版のリメイク。なんと主演はイライジャ・ウッド。はたしてどうなのか。6/1公開。


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