The Grandmaster


2013年6月1日(土)「グランド・マスター」

一代宗師・2013・香/中/米・2時間10分(IMDbでは123分、香港版130分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、水野衛子/シネスコ・サイズ(Arri、ハイスピードはデジタル)/ドルビー・デジタル

(日PG12指定)

公式サイト
http://grandmaster.gaga.ne.jp/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

1936年、中国・広東省沸山。1929年に中国武士会を作って中国武術をまとめた北の宗師(グランドマスター)のゴン・パオセン(宮宝森、ワン・チンシアン)は引退を決意し、継承者を決めるため武術会を開催することに。ゴン・パオセンには形意拳の一番弟子マーサン(馬三、マックス・チャン)がいたが、人格に問題があると対象にしなかった。南の代表として詠春拳のイップ・マン(葉問、トニー・レオン)が選ばれ、ゴン・パオセンと手合わせをして後継者と認められる。しかし納得できないゴン・パオセンの娘、八卦拳の奥義を極めたゴン・ルオメイ(宮若梅、チャン・ツィイー)が戦いを挑む。そして納得して東北へ戻るが、その戦いでお互い惹かれあい、手紙を交わす仲となる。そんなとき、日本軍が東北を占領、沸山も占領するとイップ・マンの家も押収され、日本軍への協力を断ったため、貧困にあえぐことになる。

72点

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 アクション満載。ほとんど全編カンフーで戦っている。しかも、ちゃんと流派ごとに構えや戦い方が違い、それがシロートの観客にもわかるようになっていた。それでいて、描かれているのは単にカンフーということではなく、格闘家の半生を描いた一代記。まさに原題の「一代宗師」という内容。そして中国のカンフーの歴史。ラストにブリース・リーの言葉が出る。日本語のタイトルだと単に格闘技の映画のようであまりふさわしくないと感じ。まあ「宗師」=グランドマスターということなんだろうけど……。でもなぜ日本語タイトルはグランドとマスターの間にナカグロを入れたんだろうか?不思議。

 同じ中国人同士で流派の違いによる争いがあり、それがせまりくる中日戦争のために1つにまとまろうとし、実際に戦争が起きて多くの人が多くを失いまたバラバラに。しかし戦後、それぞれのマスターが香港から流派を広め、あるいは継ぐ者を失って流派が失われてしまったと。大きな時の流れ。そして炭火のように密かに、しかし長く燃え続ける愛……。アクションでありながら、恋愛映画のセリフが多く語られる。しかし、それがかなったら不倫になっちゃうけど。

 ただ、アクション・シーンは、ところどころアップとスロー・モーション、俯瞰などさまざまな工夫を凝らして撮られていながら、寄り過ぎのため何が起こっているのかわからないことも多い。引き過ぎも良くないが、微妙なバランスがちょっと残念かも。監督がアクションに向いていなかったのか。

 主人公となるイップ・マン(葉問)はドニー・イェンの主演で「イップ・マン」(葉問・2008・香)からシリーズ3本が作られ、日本でも公開されている。ただ劇場が小さかったので見ていないが。あらためて見てみたい気はする。なんでも「詠春拳」の達人で、ブルース・リーの唯一の師匠なんだとか。

 一瞬、一瞬、カッコいいカットはあったが、本編になるとあまり印象に残らなかった。予告編ではものすごくカッコ良かったのに、なぜなんだろう。黒澤明とは正反対のシャロー・フォーカス。それがいい雰囲気を出していたものの、チャン・イーモーやチェン・カイコーではないと。

 旧日本軍が登場するので、三八式歩兵銃(たぶん)が登場する。ただ、やっぱり怖いのは青竜刀的や短刀などの刃物。

 イップ・マンはトニー・レオン。最近、日本映画に出るのをやめたというので話題になった。政治問題は色んなところに影を落とす。多くの作品に出ている大ベテランだが、最新作「大魔術師“X”のダブル・トリック」(大魔術師・2011・香)は小劇場公開で見ていない。監督のウォン・カーウァイとは、すばらしい出世作「恋する惑星」(重慶森林・1994・香)から、「ブエノスアイレス」(春光乍洩・1997・香/日)や「花様年華」(花様年華・2000・香)、「2046」(2046・2004・香)などで仕事をしている。ボク的にはコミカルなオネエを演じた「ゴージャス」(玻璃樽・1999・香)がいいけど。

 ゴン・ルオメイはチャン・ツィイー。もちろん美しいが、さすがに結婚すると落ち着きが出て、顔の印象も変わった感じ。本作のため、格闘技の特訓をやったらしいが、いままでにも「グリーン・デスティニー」(Crouching Tiger, Hidden Dragon・2000・米/中)、「HERO」(英雄・2002・香/中)や「LOVERS」(Lovers・2004・中)で激しい殺陣は演じている。ウォン・カーウァイとは「2046」で仕事をしている。

 カミソリはチャン・チェン。「グリーン・デスティニー」でチャン・ツィイーの恋人役を演じた人。「ブエノスアイレス」や「2046」にも出ていて、「レッドクリフPart 1」(赤壁・2008・米/中ほか)シリーズではトニー・レオンとも共演している。

 マーサンはマックス・チャン。中国の武術大会でチャンピオンとなり、本作で武術指導を務めるユエン・ウーピンの武術チームに参加したという。そして「グリーン・デスティニー」で武術指導を務め、それにより「HERO」ではチャン・ツィイーの推薦でドニー・イエンのスタントを務めたのだとか。なかなかのイケメンで、今後は俳優として活躍するらしい。本作ではチャン・ツィイーと決闘を演じている。

 原案は監督・脚本・製作も務めるウォン・カーウァイ。「恋する惑星」は抜群に素晴らしいと思ったけれど、それ以降はあまりピンと来なかった。キムタクの出た「2046」(2046・2004・香/中ほか)もなあ……。いずれもIMDbでは高評価だが。

 脚本はほかに「単騎、千里を走る。」(千里走単騎・2005・中/日)のチョウ・ジンジ。そして日本劇場公開作は内容だが、監督でもあるシュー・ホーフェン。

 武術指導、IMDbではスタント・コーディネーターとアクション・コレオグラファーになっているのが、世界的にも知られるユエン・ウーピン。ジャッキ・チェンの「スネーキーモンキー/蛇拳」(蛇形刀手・1978・香)と「ドランク・モンキー/酔拳」(酔拳・1978・香)を監督した人で、「マトリックス」(The Matrix・1999・米/豪)からハリウッドに進出。「キル・ビル」(Kill Bill: Vol.1・2003・米)も手掛けている。本作では、シロートにもわかる感じで流派の違いまでも見事に演出。さすが。

 公開2日目の初回、六本木の劇場は全席指定で金曜にムビチケで確保。12〜13分前に開場となり場内へ。小1くらいの小さな子供を連れたおババがいてうるさかったが、だいたい若い層から中年くらいがメイン。高齢者は少なかった。男女比はほぼ半々くらい。最終的には265席の4.5割くらいが埋まった。まっ、こんなものか。

 気になった予告編は……明るくて良く見えないムービー・ゴーイングやムービー・トピックは置いておくとして……上下マスクの邦画「謝罪の王様」は謝り屋の話で、宮藤官九郎のオリジナルらしい。おもしろそうだけど、ボクはてっきり「漫画ゴラク」に連載中の「謝男」かと思った。9/28公開。

 上下マスク「サイレントヒル リベレーション3D」はシリーズ第2作で、なかなかよかった前作のイメージをそのまま受け継ぎ、それだけで怖そうな感じ。期待できるかも。ただ、タイトルに3Dと入っているのにムビチケを買ったら「2D」と書いてあった。なんでだろう。7/12公開。

 「モンスターズ・ユニバーシティ」は日本語ナレーションでの予告。大学ということになってはいるが、どうも子供向きの雰囲気。うーむ。7/6公開。

 上下マスクの「アフター・アース」は新予告に。良い感じなのだけれど、親子の役で本当に親子というのは……本当に実力があるのなら何の問題もないが、ちょっと引っかかるものが。6/21公開。

 場内が暗くなり、スクリーンが左右に広がって本編へ。


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