Maniac


2013年6月1日(土)「マニアック」

MANIAC・2012・仏/米・1時間30分(IMDbでは89分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、田中和香子/シネスコ・サイズ(デジタル、Panavision(IMDbではRed))/ドルビー・デジタル

(仏16指定、日R15+指定)

公式サイト
http://www.maniacthemovie.com/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

アメリカ、ロサンゼルスのダウンタウンで若い女性が惨殺され、頭の皮をはがされるという猟奇連続殺人事件が発生。犯人はマネキン修復師のフランク(イライジャ・ウッド)。彼は被害者の頭の皮を持ち帰ると、マネキンにかぶせ、彼女の格好をさせて話しかけながら一緒に暮らしていたのだ。そんなある日、彼の店を写真家のフランス人女性アンナ(ノラ・アルネゼデール)が通りかかり、マネキンの写真を取らせてくれという。やがて2人はいつしか惹かれあうようになるが……。

68点

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 またPOV。この時点でかなりのマイナス・ポイント。しかも、この映画は、本来、異常者による殺人の猟奇的恐怖を描いたものだと思うのだが、POVにしてその主観を殺人者であるフランクにしたため、異常者の視点・心理になってしまい、観客は殺される側の恐怖や、それを追い詰める側怒りなどは無く、異常な考えと猟奇的殺人の気持ち悪さばかりが強調され、物語の進行に無理がある。ときどきPOVから外れたショットもあって、一体誰の視点なんだと。だったら無理しないで普通に撮ればいいものを。

 ただ、特殊メイクだけは良くできている。冒頭、女に叫ぶなよと言っておいて、叫ばれそうになってアゴの下から頭にナイフを刺すワンカットなどは、スゴイとしか言い様がない。デジタルならではの表現だろう、過去にはこんなことはできなかった。なにしろ本当のようにリアルなのだ。

 本作は「マニアック」(Maniac・1980・米)のリメイクで、前作もトム・サビーニとロブ・ボッティンの特殊メイク以外見るところなしと言われたが、本作もPOVにした以外に違いはない。そしてむしろPOVにしたことで恐怖感が無くなってしまった。つまり犯人が感じる恐怖は捕まるというものだけなので、観客が望むものとは正反対で、まったく違うものになってしまう。

 しかも、主人公の設定がずさん。無精ヒゲ、手は赤く擦り傷だらけで、目の下には隈ができている。どう見ても異常者にしか見えない。こんなヤツに男であっても普通の人が寄って行くとは思えない。まして年ごろの女性が、娼婦であっても、よほど大金を持っていない限り寄っていかないだろう。これが、もし一見正常そうでイケメンというのなら、理解できるのだが。それでイライジャ・ウッドを選んだのではないのか。無害そうな感じ。それをこんな設定にしてしまうとは。ただIMDbでは6.2点と高評価。

 しかも、現代ならあちこちに監視カメラが取り付けられているので、こんなに堂々と通りで犯行に及んでは捕まらない方がおかしいのに、なぜか犯人はなかなか捕まらない。警察がちゃんと捜査している気配さえもない。これもいかがなものか。

 凶器は特注らしい革のショルダー・ホルスターに入れた大型のボウイ・ナイフ。女性に襲いかかる時、車の下に隠れてアキレス腱を切るのは恐ろしかった。ラスト、突入してくるSWATが装備していたのはM4カービン。

 いかにも異常者というメイクでフランクを演じたのはイライジャ・ウッド。子役時代から活躍していて、たぶんキャリアは大ベテラン。「バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2」(Back to the Future Part II・1989・米)の未来のダイナーのゲーム・コーナーでゲームをやっていた子供がイライジャ・ウッド。悲しく恐ろしい傑作ファンタジー「ラジオ・フライヤー」(Radio Flyer・1992・米)では幼い兄弟の兄を演じていた。たぶん広く知られるようになったのは「ロード・オブ・ザ・リング」(The Lord of the Rings: The Fellowship of the Ring・2001・ニュージーランド/米)シリーズだろう。売れっ子のようで、公開を控えている作品が何本もある。

 ヒロインはフランス生れのノラ・アルネゼデール。ノーブラというところに作為を感じるが、なかなかの美女。1989年生れの24歳。つい最近デンゼル・ワシントンとライアン・レイノルズが共演したアクション「デンジャラス・ラン」(Safe House・2012・米/南ア)に、たしかレイノルズの恋人役で出ていたのではないか。これからの活躍が楽しみではある。

 脚本は、1980年のオリジナル版がジョー・スピネルで、フランクを演じ製作総指揮も務めていた。2012年版の脚本は製作も務めるアレクサンドル・アジャ。あの残酷シーンだけが売りのスプラッター映画「ハイテンション」(Haute tesion・2003・仏)の監督と脚本、キーファー・サザーランド主演で韓国映画をハリウッドでリメイクした「ミラーズ」(Mirrors・2008・米/ルーマニア)監督と脚本を務めた人。「ミラーズ」でも書いたが、なぜこの人が作品を撮れるのだろう。2人目はアジャと、長年のパートナーだというグレゴリー・ルヴァスール。そして3人目はC.A.ローゼンバーグ。どうも本作が初めての脚本らしい。

 監督は役者としての参加本数の方が多いフランク・カルフン。「ハイテンション」にも出ていたらしい。監督としては残酷描写とヒロインの顔が怖かったスプラッター「P2」(P2・2007・米)を手掛けた人。本作は当然の結果か。

 公開初日の2回目、六本木の劇場は全席指定で、金曜に確保。15分前くらいに開場し場内へ。20代くらいから40代という感じ。高齢者は少なかった。男女比は……女性が1/3くらい。最終的に108席に9割りくらい入ったのには驚いた。それほどの映画とは思えないが。

 10分前くらいから音楽が流れ、明るいままCM・新作ニュースへ。気になった予告編は…… 上下マスクの「終戦のエンペラー」は新予告か長いバージョン。マッカーサーがトミー・リー・ジョーンズで、捜査にあたる将校は「LOST」のジャック役マシュー・フォックス。日本の役者もたくさん出ていて、面白そう。7/27公開。

 バカ女のバカ騒ぎという印象の、上下マスク「スプリング・ブイレカーズ」は何とジェームズ・フランコが出ている。グロック18も出てくるようで、意外と面白いかも。R15+指定だし。でもエロかも。うむむ。6/15公開。

 上下マスクの「G.I.ジョー バック2リベンジ」は新予告。「1」のニセ大統領が出てくるようだが、「1」はほとんど子供向けの荒唐無稽なものだったからなあ……もともとベースの話が子供向けの人形の設定だから……。しかも「ハイパーはんぱねえ」じゃあ……ブルース・ウィリスとドウェイン・ジョンソンが出ているところが救いか。6/7公開。

 場内が暗くなり、スクリーンが左右に広がって本編へ。場内はちょっと暑かった。


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