Oblivion


2013年6月2日(日)「オブリビオン」

OBLIVION・2013・米・2時間04分

日本語字幕:手書き風書体下、戸田奈津子/シネスコ・サイズ(デジタル、Arri Alexa)/ドルビー・デジタル、DATASAT、SDDS

(米PG-13指定)

公式サイト
http://oblivion-movie.jp/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

2077年、地球はエイリアン「スカヴ」の侵略を受け月を破壊されるも、人類はからくも勝利。しかし戦闘によって地球が激しく荒廃したため、人類は地球を捨てて土星の衛星タイタンに移住した。そして、スカヴ軍団の残党退治と水をタイタンに届けるための採水プラントの管理業務のため、地球にはテットと呼ばれる前哨基地を中心にわずかの人間を派遣していた。その1人であるジャック・ハーパー(トム・クルーズ)も、過去の記憶を消されテック49というタワーにコミュニケーション・オフィサーのヴィクトリア(アンドレア・ライズブロー)とともに派遣されていた。そして任務もあと2週間で終了するというある日、採水プラントでメルトダウンが発生、大爆発する。そして未確認信号がある廃虚のビルから発信されているおり、ジャックが調査に向かうと、信号はある座標を繰返し発信していることが判明する。

75点

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 いやあ、ある程度の展開は予想できたのだが、ここまで感動するとは思わなかった。涙が出ると言うのとは違うが、深く感動し、心に残った。トムさん、いい映画に出てるなあ。

 ただ、話はちょっと複雑。どういう時間関係になっているのかが、わかりにくい。そこが惜しいが、現実離れしたようないかにもSF的な白系の清潔で無機質で機械的な整った美しい映像と、荒廃して砂漠のようになってしまった死に絶えたような地球の映像、ごく一部に残る湖と緑と青空の、生命を感じさせる美しい映像、そして過去のセピア調のモノトーンの映像が、見るものを2時間の間別世界に連れて行ってくれる。

 どんでん返しは、たぶんほとんどの人が想像できると思う。そこからどう驚きと意外な展開を見せることができるか。そこが腕の見せ所という感じ。本作はしっかり最後まで、いや尻上がりに物語に惹きつけていって、ラスト、最後の最後のどんでん返しの驚きと大きな感動と1つの安らぎを得ることができる。

 タイトルのオブリビオンとは「忘れ去られている状態」のことだという。

 余談だが、予告映像は変なつなぎ方をしていたようで、ヒロインのジュリアが乗っているカプセルは、予告ではNASAのマークと日本の旗の後に出るが、本編ではそれはほかの人が乗っていたもので、ジュリアのものはちゃんとNASAとロシアの旗になっていた。

 ジャック・ハーパーのライフルはブッシュマスターのACRにカバーを付けてSFチックにしたもの。スリングはマグプルのMS3。ハンドガンは完全なオリジナル・プロップのようだ。アーマラーはアンドレス・セプルヴェーダ。脱税の島を描いた「ヘイブン」(Haven・2004・英/独ほか)などを手掛けている。新作では近く公開される「エリジウム」(Elysium・2013・米)のメキシコシティのアーマラーらしい。セカンド・アーマラーはラリー・ザノフ。たくさんの映画に関わっていて、「コラテラル」(Collateral・2004・米)と「宇宙戦争」(War of the Worlds・2005・米)でトム・クルーズと仕事をしている。最近作では「エンド・オブ・ホワイトハウス」(Olympus Has Fallen・2013・米)。なぜセカンドなのだろうか。

 ジャック・ハーパーはトム・クルーズ。しっかり本物の訓練を受けているだけあって、本当に銃の撃ち方がうまい。前作「アウトロー」(Jack Reacher・2012・米)でもプロの動きだった。以前からうまかったが、たぶん本格的になったのは「コラテラル」からではないだろうか。たぶん研究熱心な人なのだ。「ラストサムライ」(The Last Samurai・2003・米)ではチャンバラもかなり練習したらしい。

 相棒の女性ヴィクトリアはアンドレア・ライズブロー。ついこの前、イギリスの刑事アクション「ビトレイヤー」(Welcome to the Punch・2013・英/米)に出ていた。あれとは全く感じが違う。さすが女優。

 過去から現れる女性ジュリアはオルガ・キュリレンコ。ゲームの映画化「ヒットマン」(Hitman・2007・仏/米)で注目され、「007/慰めの報酬」(Quantum of Solace・2008・英/米)で堂々たる活躍ぶり、タイトルがいかにも残念だがなかなか楽しめたアーロン・エッカートのアクション「陰謀のスプレマシー」(The Expatriate ・2012・米/加ほか)でもいい印象。本作も良かったので、今後にも期待が持てそう。

 人類のボス、ビーチは名優モーガン・フリーマン。人気シリーズ「ダークナイトライジング」(The Dark Knight Rises・2012・米/英)でもいい味を出しているし、「RED/レッド」(Red・2010・米)のようなアクションでも、コミカルで深いドラマ「最高の人生の見つけ方」(The Bucket List・2007・米)でも輝いている。「許されざる者」(Unforgiven・1992・米)あたりからクリント・イーストウッドとの仕事が多い気がする。

 テック49の連絡先のサリーはメリッサ・レオ。デンゼル・ワシントンのアル中映画「フライト」(Flight・2012・米)や、「エンド・オブ・ホワイトハウス」では気丈な女性国防長官役で、暴行を受けまくっている。

 原作・製作・監督を兼ねたのはジョセフ・コシンスキー。建築学科から映像クリエーターになったそうで、CMやゲームソフトのプロモーション映像がピクサーの「トイ・ストーリー」(Toy Story・1995・米)シリーズなどでしられるクリエーター、ジョン・ラセターに高く評価され「トロン:レガシー」(TRON: Legacy・2010・米)の監督に抜擢されたらしい。物語はともかく、ビジュアルは抜群に良かった。本作はストーリーもビジュアルもともに良い。この人はストーリーも自分で作った方が良いのでは。次作にも期待したい。

 脚本はカール・ガイダシェクとマイケル・デブラインの2人。カール・ガイダシェクはこの前にニコラス・ケイジとニコール・キッドマンの侵入者対決映画「ブレイクアウト」(Trespass・2011・米)を書いている。マイケル・デブラインは「トイ・ストーリー3」(Toy Story 3・2010・米)(マイケル・アーント名)や「リトル・ミス・サンシャイン」(Little Miss Sunshine・2006・米)(マイケル・アーント名)を書いている。いわばベテラン。

 公開3日目の2回目、新宿の劇場は全席指定で、金曜に確保。10分前くらいに開場となって場内へ。下は中学生くらいからいて、上は中高年までと幅広い。男女比はほぼ半々くらい。最終的には607席の9割くらいが埋まった。さすが。出来も良いし、これは当然という気もする。

 下品なマナーCMのあとでもケータイを使っているヤツはチラホラ。ほとんど効果なし。それにしても、NHKも広告をやるとは、「八重桜」。そして歯車からカメラが遠ざかっていくオメガのCMの素晴らしいこと。一見の価値あり。

 気になった予告編は…… 上下マスクの「ローン・レンジャー」は新予告に。まじめなのかふざけているのか、微妙なところが気になるけど、おもしろそう。8/2公開。

 上下マスクの「スター・トレック イントゥー・ダークネス」は東宝のニュース版からようやくらしき予告版になった感じ。やや暗い中で見られるので絵がキレイ。ニュース版は明るいまま上映されて良く見えずストレスがたまった。8月公開。

 スクリーンが左右に広がってから「ワールド・ウォーZ」の予告。これもニュース版ではまわりが明るくて良く見えなかったが、正式予告版は画質も良く、特に音がクリアですごい迫力。でも、ちょっとスケールの大きなゾンビ映画のような印象だが……。

 「ワイルド・スピード ユーロ・ミッション」もシネスコだとすごい迫力。やっぱり音がすごい。日本映画で音がすごいと思ったものって、……うむむ。


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