Olympus Has Fallen


2013年6月9日(日)「エンド・オブ・ホワイトハウス」

OLYMPUS HAS FALLEN・2013・米・2時間00分

日本語字幕:手書き風書体下、松浦美奈/シネスコ・サイズ(マスク、Arri 、Super35)/ドルビー・デジタル、DATASAT(IMDbではドルビー・デジタルのみ)

(米R指定、日PG12指定)

公式サイト
http://end-of-whitehouse.com/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

クリスマス、アメリカ合衆国大統領の別荘「キャンプ・デービッド」ではアッシャー大統領(アーロン・エッカート)と妻のマーガレット(アシュレイ・ジャッド)、息子のコナー(フィンリー・ジェイコブセン)が政治献金集めのパーティに出かける準備をしていた。警護に当たるシークレット・サービスのマイク・バニング(ジェラルド・バトラー)はコナーのお気に入りで、大統領ではなくコナーの車に乗ることになる。しかし途中の橋の上で大統領夫妻の乗った車がスリップ、マイクが駆けつけるが大統領1人を救い出すのがやっとで、車は川へ転落、マーガレットを死なせてしまう。18ヶ月後、責任を感じたマイクは心に傷を負い、現場を離れて財務省での書類仕事に就いていた。そして独立記念日の翌日、ホワイト・ハウスで米韓首脳会談が行われることになり、厳重な警備の中、イ首相が到着する。そのころ、国籍不明の輸送機がホワイト・ハウスに向かっていた。

74点

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 徹底したパワー対パワーのバイオレンス・アクション。ちょっと一部ファンタジーっぽいところもあるが、基本はリアル路線の男臭い気骨あふれる映画。悪党はとことん悪いし残忍。これに対して主人公も情け容赦なく反撃し、力でねじ伏せていく。当然、絶対諦めないし、どんなに怪我をしても最後まで喰らいついて行く。まさに「300〈スリーハンドレッド〉」(300・2007・米)並。そこに圧倒される。完全に「北」のテロリストは世界を敵に回す悪の権化。

 最近はホワイトハウスが乗っ取られるという設定の映画が多いようで、「G.I.ジョー バック2リベンジ」(G.I. Joe: Retaliation・2013・米)もそうだったし、これから公開される「ホワイトハウス・ダウン」(White House Down・2013・米)もそう。本作も入れて3本が次々と公開されると。ハリウッドって、と思ったら、日本もちょっと前、「小惑星探査機はやぶさ」の映画が3本(CG作品も入れれば4本)も同時期に作られたっけ。

 もちろんCGもたくさん駆使されていて、スタッフ・ロールのSFXがすごいことになっている。ちょっと前はニュージーランドとかオーストラリアのSFXスタジオ名をよく見た気がするが、最近は中華系の名前も良く見るようになった。たぶんインド系の名前も増えてきているのではないだろうか。ただガンシップのようなC-130と、スクランブル発進したF-22は一部、不自然な感じもあった。

 とはいえ、ガンガン血が飛び、人がバッタバッタと死んで、ナイフがぐさりと突き刺さってR指定を喰らおうとも、徹底して戦う姿を見せたことで骨太な1本スジの通った作品に仕上がっている。悪は許さない、テロリストとは絶対に交渉しない、みなで団結して国を建て直す。これは勇気をくれる力強いメッセージになっている。劇中では、殴る蹴るでボコボコにされた女性の国防長官に「私は墓石に戦わずに死んだとは書いて欲しくないの」とまで言わせている。

 主人公は元特殊部隊の腕利きシークレット・サービス。どうしても現代のリアル・ヒーローは元特殊部隊でないと成立しなくなってしまったようで、どの作品でもみなそんな設定なのが、しようがないとしても気になるところ。かろうじて「ダイ・ハード」のジョン・マクレーンが普通(?)の刑事であるくらい。つまり、普通の人は格闘技もちゃんとできないはずだし、銃の使い方も限られていて、カービンにショットガン、ハンドガンを使いこなし、マガジン・チェンジも鮮やかにやって、確実に命中させるなんてことはできないはずだから。それがでリアルでできるのは特殊部隊だと。

 そのマイク・バニングを演じたのはジェラルド・バトラー。コメディからシリアスまで、いろんな作品に出ている人で、アクションものは多い傾向。「300〈スリーハンドレッド〉」(300・2006・米)は抜群に良かった。「GAMER」(Gamer・2009・米)はメインがアクションという感じだったが、実話の「マシンガン・プリーチャー」(Machine Gun Preacher・2011・米)やシェイクスピアの「英雄の証明」(Coriolanus・2011・英)はちょっと重いアクション・ドラマだった。本作は久々の痛快アクションか。まあいずれも男臭い映画。ただ、銃の撃ち方はそんなにうまくない。やっぱりトム・クルーズでしょ。訓練は受けているんだろうけど……。本作では製作も担当。使っていた銃は、グロック、P229、MP5など。

 大統領はアーロン・エッカート。超大作「ダークナイト」(The Dark Knight・2008・米/英)のトゥー・フェイスが良かった。IMDbの評価は低いがボクはほとんどアクションのみの「世界侵略:ロサンゼルス決戦」(Battle Los Angeles・2011・米)がなかなか面白かった。でも最近では小劇場公開ながら「陰謀のスプレマシー」(The Expatriate・2012・米/加ほか)が良かった。

 大統領が捕えられ、副大統領が殺され、指揮をとることになる下院議長トランブルはモーガン・フリーマン。本当にこの人は存在感があっていい。つい最近「オブリビオン」(Oblivion・2013・米)で生き残り人類のリーターを演じていた。「ダークナイト」でアーロン・エッカートと共演している。

 マイク・バニングの女性上司、シークレット・サービス長官はアンジェラ・バセット。ティナ・ターナーを描いた「TINAティナ」(What's Love Got to Do with It・1993・米)で注目された人。名門イェール大の出で、最近見ていなかった気がするが、SFコミックの残念な映画「グリーン・ランタン」(Green Lantern・2011・米)で研究所の女ボスを演じていた。

 もとシークレット・サービスの同僚フォーブスはディラン・マクダーモット。「34丁目の奇跡」(Miracle on 34th Street・1994・米)では人の良い役だったのに、まさかこんな役とは。TVドラマの「ザ・プラクティス/ボストン弁護士ファィル」(The Practice・1997〜2004・米)シリーズでも、主役の熱血弁護士を演じているし。使っていた銃はP229。

 テロリストのレーダー、カン・マンソクは「007/ダイ・アナザー・デイ」(Die Another Day・2002・英/米)で007によって顔にダイヤがちりばめられてしまった男ザオを演じていた人。憎たらしい役がうまい。

 テロリストのC-130ガンシップは7.62mmのミニガンを搭載。ブーンという唸るような銃声はリアル。ほかにFN MAG、RPGなど。攻めるアメリカ側はFN P90、ACOG付きM4、スナイパーはレミントンM700といったところ。アーマラーとミニガン・オペレーターはラリー・ザノフ。「オブリビオン」や「ラストスタンド」(The Last Stand・2013・米)、「ジャンゴ」(Django Unchained・2012・米)などを手掛け、「アイアンマン2」(Iron Man 2・2010・米)ではミニガン・オペレターも務めている。ウェポン・ハンドラーはチャーリー・グアンチIII。本作がデビュー作ということになるらしい。

 脚本はクレイトン・ローゼンバーガーとカトリン・ベネディクト。2人とも映画の脚本は初めてらしい。

 製作・監督はアントワーン・フークア。アクションを良く手掛けている人で、チョウ・ユンファの「リプレイスメント・キラー」(The Replacement Killers・1998・米)、デンゼル・ワシントンの「トレーニングデイ」(Training Day・2001・米/豪)のあと、感動した特殊部隊の救出劇を描いた「ティアーズ・オブ・ザ・サン」(Tears of the Sun・2003・米)、人気小説の映画化で期待を裏切らなかった「ザ・シューター/極大射程」(Shooter・2007・米)などがある。本作の前にはダークな「クロッシング」(Brooklyn's Finest・2009・米)を撮っている。ボクはどうもダークな作品は好きになれない。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で金曜に確保。11〜12分前に開場となって9階へ。ほとんどが中高年で、女性は1/3ほど。最終的には232席にたぶん5割くらいの入り。まあまあか。

 気になった予告編は……同じくホワイトハウスが攻撃されるらしいローランド・エメリッヒ監督、テイタム・チャニング主演、上下マスクの「ホワイトハウス・ダウン」は、なかなか面白そう。でもエメリッヒだからリアルなものではないかも。8/16公開。

 韓国映画、上下マスクの「ベルリンファイル」はハリウッド作品にひけをとらないアクションの雰囲気。真似をすることはないと思うが、日本はどうしてこういう作品が作れないのだろう。グロック、PPS、P99などが出ていた。


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