The Serialist


2013年6月16日(日)「二流小説家 シリアリスト」

NIRYUU-SHOUSETSUKA・2013・東映/木下グループ/キングレコード/東映ビデオ/アサツーディ・ケイ/ギルド/フィールズ/ドワンゴ/アップサイド/ゼロライトイヤーズ/ライクロ/ソニーPCL/早川書房・1時間55分

ビスタ・サイズ/音声表記なし



公式サイト
http://www.shousetsuka.com/
(全国の劇場リストもあり)

赤羽一兵(あかばいっぺい、上川隆也)はアメリカ出張中の兄の家を借り、女子高生の姪、小林亜衣(こばやしあい、小池理奈)と一緒に暮らしながら、エロ雑誌にエロ小説を連載して生計を立てていた。そこへ、12年前連続猟奇殺人事件の犯人として死刑宣告を受けた死刑囚、呉井大悟(くれいだいご、武田真治)からの手紙が届く。いままで誰にも語らなかった事件や自分のことを語るから、告白本を書いて欲しいというのだ。にわかには信じられない赤羽は、呉井の顧問弁護士、前田礼子(まえだれいこ、高橋恵子)に確認を取り、助手の鳥谷恵美(とりたにえみ、平山あや)の案内で面会に行く。すると呉井は刑務所に送られてくるファンレターの中から、熱狂的な3人の信者を選んだので、彼女たちを主人公にした官能小説を書けば、1本書き上げるごとに質問に答えてやると条件を出す。一流小説家をめざす赤羽は、きっかけとなるヒット作になるだろう告白本を書くため、しかたなく1人ずつインタビューして官能小説を書くことにする。

74点

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 なかなかの衝撃的な物語。ミステリーとして面白い。裸もあるし首のない死体や冷蔵庫の生首なども出て、乱暴な言葉遣いもあるのに、G指定か。

 振りの部分が長すぎる気がする。じっくり描こうとしたことはわかるが、クライマックスに向かって次第にピッチが速くなっていくとかの演出があっても良かったのではないだろうか。後半あきてくる。だいたいどんでん返しも大方の予想は付く。だからインチキや、あえて隠そうとしているようなこと、後半になっていきなり判明する事実もない。そこは高く評価できるだろう。

 ただ、暗い物語を、暗い雰囲気で、暗いトーンで描いてしまうのはいかがなものか。たとえば「探偵はBARにいる」(2011・日)などのようにコミカルな部分と対比させられると、より悲劇が立つしメリハリがあって見る方も感情移入しやすく集中が切れない。しかし一本調子はどうしても飽きる。「探偵は……」と似てしまうとか、よくあるパターンになってしまうかもしれないが、監督、俳優、脚本も違い、必ず違う味になると思う。せっかく親戚の元気な女子高生とか身近にいて、しかも主人公がエロ雑誌のライターなのに、これを利用しないなんて。笑いは一個もなし。原作の雰囲気を活かしたのだろうか。原作の主人公を取り巻く環境はどうなんだろう。

 気になったのは、主人公の小説家の前にいきなり遺族会を名乗る人々が現れること。そして警視庁の町田刑事がいきなり現れること。どこからわかったんだ。出版が決まってもいないのに、出版しないでくれなんて。そして、ちょい役なのに、有名な俳優が出過ぎ。何か意味がある役なのかと思ってしまう。まさかそれが狙いではないだろう。そして中村嘉葎雄が演じている政治家かなんかの大物。彼は一体何者だったんだろう。ちょっと舌足らずだったかなと。

 二流小説家の赤羽一兵は上川隆也。赤羽の悩みは人事では無いので、このシチュエーションは笑えなかった。自信がなさそうな感じがキャラにピッタリあっていた。TVが多い人で、「遺留捜査」(2011〜2013・日)は3シーズンめが終わったばかり。「龍馬伝」(2010・日)では中岡慎太郎を演じていた。

 呉井大悟は武田真治。普通のようでいきなり異常な感じになるところが素晴らしい。映画はこの前に「インシテミル7日間のデス・ゲーム」(2010・日)に出ている。意外にアクションもいけて、「今日からヒットマン」(2009・日)はなかなか良かった。コメディもシリアスもいける。注目されたのは、やっぱり豊川悦司と共演した深夜番組「NIGHT HEAD」(1992〜1993・日)だろう。

 警視庁捜査一課長の町田邦夫は伊武雅刀。まあドスが効き過ぎ。実際こういう刑事もいるだろうけど。つい最近「藁の楯」(2013・日)や「奇跡のリンゴ」(2013・日)に出ている。近日公開のハリウッド作品「終戦のエンペラー」(Emperor・2012・米/日)にも出ているらしい。さすが「太陽の帝国」(Empire of the Sun・1987・米)のハリウッド俳優。

 めいの小林亜衣は小池理奈。コミカルな存在だが、あまり生きていなかったかも。惜しいというかもったいない。深夜のTVバラエティくらいしか見ていないが、ほぼ同時期に公開された「極道の妻たちNeo」(2013・日)にも出ているらしい。

 原作はデイヴッド・ゴードンの「二流小説家」(早川書房)。「このミス」2012年版の海外編1位だという。脚本は尾西兼一、伊藤洋子、三島有紀子、猪崎宣昭の4人。

 尾西兼一は「太陽にほえろ!」でデビューし、「臨場」や上川の「遺留捜査」を書いているらしい。伊藤洋子はやはり「遺留捜査」を書いていて、三島有紀子は監督でもあり「しあわせのパン」(2011・日)を脚本・監督している。

 猪崎宣昭は監督でもあり「相棒」や「遺留捜査」を監督している。ということは多くは「遺留捜査」スタッフで、これはテレビ朝日系か。ただし製作委員会にテレビ朝日は入っていない。

 登場した銃は、警官たちはチーフだろうか、アップにならなかったので良くわからない。狙撃に使われた凶器は改造銃という設定らしく、リボルバーだがバレルが太く、シリンダーとともにシルバー色になっていた。銃器特殊効果はBIG SHOT。

 劇中、黒澤明のように(というかそれを真似たスピルバーグのように)回想シーンでモノトーンになり赤いコート、赤い炎だけがカラーという手法も使われていたが、残念ながらなぜ赤なのかという説明は一切なし。赤が呉井の心に深く残った理由があるはずなのに。赤が血につながるからとか、もっと説明してくれないとなあ。母の赤だから赤いバラの花びらを写真に散らしたとか。

 公開2日目の初回、銀座の劇場は全席指定で金曜に確保。20分前くらいに開場し、2F席へ。開場時6〜7人で、中高年というより高寄り。女性は1人。あまりの宣伝もプローモーションもしていなかった感じだしなあ。5分前で、2F席からのぞいた感じでは、1F席に20人くらい。2Fは2人。初日は舞台あいさつがあったというから、その反動だろう。509席あるのに……。

 半暗で始まった予告編で気になったのは……壇密主演の「甘い鞭」はSM映画らしい。かなり過激っぽい。R18+指定。9/21公開。

 なかなかタイトルが出ず、イライラしたのは「エンド・オブ・ウォッチ」。5分に1回犯罪が発生するロサンゼルスのLAPDの警官をリアルに(また手持ち?)描くものらしい。ジェイク・ギレンホールとマイケル・ペーニャの共演。8/17公開。

 日本の予告もなかなかタイトルが出ない。何のための予告なんだか。「利休にたずねよ」面白そうなのだが、そうでないかもという気も。はたして……12月公開。

 「キャプテン・ハーロック」はフル3D-CGで、人物以外はリアルで素晴らしいが、どうにも人物が……動きはモーション・キャプチャーらしくリアルなんだけど。ジェームズ・キャメロンはほめていたらしい。うむむ。9/7公開。


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