The Berlin File


2013年7月14日(日)「ベルリンファイル」

THE BERLIN FILE・2013・韓・2時間00分

日本語字幕:丸ゴシック体下、根本理恵/シネスコ・サイズ(デジタル、Red Epic)/トルビー・デジタル

(韓15指定、日PG12指定)

公式サイト
http://berlinfile.jp/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

北朝鮮の腕利き諜報員ピョ・ジョンソン(ハ・ジョンウ)は、ドイツのベルリンでロシアの武器ブローカーから新型ミサイルを買い入れようとしていたが、それを追うモサドが突入したため銃撃戦となり、その場から逃走。監視していた韓国国家情報院ベルリン支部のチョン・ジンス(ハン・ソッキュ)が追うが、逃げられてしまう。作戦の失敗で北サイドは保安監視員のドン・ミョンス(リュ・スンボム)が送り込まれることになり、南サイドはチョンが任務から外され、支援を得られなくなるが、あくまでもピョの監視を続ける。そんな中、北のメンバーの中に亡命疑惑が持ち上がる。ドンはピョの妻のリョン・ジョンヒ(チョン・ジヒョン)を疑い、夫のピョも疑い始めるが……。

74点

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 すごいアクション。銃撃戦も格闘戦もとにかく徹底している。韓国映画らしく、これでもかというくらいまで追い込む。とんでもない悲惨な状況も。そして、スパイ活劇なのだが、いかにも現実にありそうなネタと構成。感情を揺さぶり、ラストには大きな感動。しかも、ハリウッドなみというか、007ばりのスケールの大きさ。過去にも「デイジー」(Daisy・2006・韓/香)や「マイウェイ12,000キロの真実」(My Way・2011・韓)のように海外が舞台のアクションはあるが、あれらと同じ位置づけと言っても良いだろう。日本でこういった国際的な作品を作るのは難しいと思う。あえてあげると、織田裕二の「アマルフィ女神の報酬」(2009・日)シリーズくらいだろうか。

 ただ、ストーリーが大筋はわかるのだが、細部がわかりにくい。名前もなじみがないし、誰が誰とどういう関係なのか。北の諜報工作員、南のスパイに、アラブのテロリスト、ロシアの武器ブローカー、イスラエルのモサド、CIAに、舞台はドイツで、しかも北の中には亡命しようとしているヤツがいてそれが誰なのか……。ますます混乱する。これは字幕で理解するのは厳しいかも。公式サイトの人物関係を見るとわかりやすいが、映画を見る前に見ても把握しづらいしなあ。

 北のスパイ、ピョ・ジョンソンはハ・ジョンウ。実話に基づいた血も凍るような恐ろしい猟奇殺人を描いた「チェイサー」(The Chaser・2008・韓)の犯人を演じた人。それ以降は見ていないのでわからないが、やっぱりすごい人だったことが良くわかる。「チェイサー」では感情を表に出さず淡々と殺しを実行していたが、本作は後半、感情向き出しで、素晴らしい。使っていた銃はワルサーP99。サウンド・サプレッサーも使う。

 南のスパイ、チョン・ジンスはハン・ソッキュ。この人と言えばボク的にはスパイ・アクションの「シュリ」(Swiri・1999・韓)。あれでもスパイだった。誠実な感じがするのが良いのではないかと思う。ただ本作では、観客とともに事件を監視するようなサブ的な役なので、あまり存在感はない。使っていた銃はグロック。ラストの銃撃戦では、アメリカだとAmazonでも375ドルで買えるCAA RONIのカービン・コンバージョン・ストックに組み込む。ただ、これで狙撃というのは、どうなんだろうなあ。スコープも暗視タイプということになっているが、どう見てもデイ・スコープという感じだったけど。

 ピョ・ジョンソンの妻で、なぜか名字の違うリョン・ジョンヒはチョン・ジヒョン。大ヒット作「猟奇的な彼女」(Yeopgijeogin geunyeo・2001・韓)以降、良い作品に続けて出ている。ボク的にはスナイパー・アクションの「デイジー」(Daisy・2006・韓/香)が良かった。日本の原作「ラスト・ブラッド」(Blood: The Last Vampire・2008・香/仏/中)でのアクションも意外に良かったが、本作ではずっと悲劇の女のままだったのが残念。

 ただ妻が高いビルの屋根から壁面を逃げるシーンは圧巻。ちょっとヒッチコックのような雰囲気も。デジタルなんだろうが、非常にリアルで怖かった。北のスパイ同士は007のように落ちてるし!

 ロシアの武器商人はPPK、モサドはグロック、CIAはS&Wのシルバーのオート、北のスパイはMP5、TMP(MP9)ウージー・マシン・ピストル、ポーランド版AKのKA Wz88、テロリストたちはデザート・イーグルやAK74、AKMSなど。

 脚本・監督はリュ・スンワン。ボクが見たのは香港並のワイヤー・アクションによるカンフー映画「ARAHANアラハン」(Arahan jangpung daejakjeon・2004・韓)だけだが、やはりアクションはお得意分野のようだ。本作は「アラハン」より現実的な話で、リアリティがあって良かった。次も期待したい。

 武術監督(IMDbではアクション・コーディネーター)はチョン・ドゥホン。「シュリ」のアクション監督で、「ARAHANアラハン」でもアクション監督を務めている。韓国版西部劇「グッド、バッド、ウィアード」(Joheunnom nabbeunnom isanghannom・2008・韓)でマーシャル・アーツ・コーディネーター、そしてついに「G.I.ジョー バック2リベンジ」(G.I. Joe: Retaliation・2013・米)でハリウッド進出。アクション・コーディネーターと、イ・ビョンホンのスタント・ダブルを演じている。本作も素晴らしいアクションで、ホチキスを使って首に針を打つところなど意外性もあって良かった。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、金曜に確保。40分前くらいに着いたらビルがまだ開いておらず、30分前くらいに開いた。15分前くらいになって開場し、場内へ。中高年がメインで、韓国とぎくしゃくしているからか、いつものオバチャン連はいなかった。最初は20人くらいのうち女性が4〜5人。最終的には127席に6割ほどの入り。作品は良いけれど、昨今の状況からこれはしかたないか。

 気になった予告編は……上下マスクの「マン・オブ・スティール」は日本語吹替での予告。8/30公開。公式サイトは50%から進まないが……。

 「凶悪」はノンフィクションだそうで、暗くて怖そうな雰囲気。9/21公開。

 スクリーンが左右に広がって、暗くなって本編へ。おっ、となりのオヤジが靴脱ぎやがった。なんだか字幕が大きかったような気がしたが、ボクだけか。


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