The Lone Ranger


2013年8月4日(日)「ローン・レンジャー」

THE LONE RANGER・2013・米・2時間29分

日本語字幕:手書き風書体下、林 完治/シネスコ・サイズ(レンズ、Arriflex、Panaflex、一部デジタル)/ドルビー・デジタル、DATASAT(IMDbではドルビー・サラウンド7.1も)

(米PG-13指定)(日本語吹替版、IMAX版もあり)

公式サイト
http://www.disney.co.jp/loneranger/home.html
(全国の劇場リストもあり)

1933年、サンフランシスコ。ローン・レンジャーの格好をした1人の少年(メイソン・クック)が、カーニバルの見せ物小屋、ワイルド・ウエストに入る。薄暗い内部は人影も少ない。バッファローやグリズリー・ベアのはく製、インディアンの人形に並んで、高潔なる野蛮人の人形もある。かなり高齢なその人形を少年がじっと見ていると、いきなり動き出す。驚いた少年は腰のおもちゃのピストルを抜いて撃つが、老人は「交換しないか」と話しかけてくる。そして少年のポップコーンとネズミの死骸を交換すると「マスクは取るな」とマスクにまつわる昔話を始める。それは1869年、テキサス州、コルビーでの話……。

72点

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 まさに連続活劇、ジェットコースター・ムービー。次から次へとピンチに次ぐピンチ。豪華絢爛で、3D-CGも使いまくり。これでもかの大予算。遊園地のライドに乗った感覚で楽しめる。どんなにすごいシーンでも観客に危害が及ぶことはなく、主人公たちも絶対に死なない。安心して見られる。

 ただ、その分、感情が伝わってこず、まさにライド感覚で驚きとかはあっても感動はなく、ふーん、スゴイなあと見終えてしまう。悪役は凶悪で、結構憎たらしいのに、なぜなんだろう。キャラクターも、特にトントは「ジャック・スパロー」みたいで魅力的なのに。

 広大なグランドキャニオン、列車の暴走、爆発、撃ち合い、インディアンの襲撃、騎兵隊、バッファーローの大群、ガトリング・ガン……西部劇というか映画的な要素満載。画質も良く、サラウンドも素晴らしい。ノリノリの曲に合わせて、主人公たちが大暴れ。もはや漫画の世界。このスケール感、臨場感、迫力といったものは大スクリーンで見ないと伝わりにくいかも。でも3Dでなくて良かった。

 ギャグもたくさんちりばめられているが、日本人的には笑いにくいものが多く、さらにこのギャグによって緊張感が失われてしまっている。でこぼこコンビのセリフのやりとりで笑わせるのではなく、シチュエーションまで笑わせるものになっているので、ナビゲーター役の少年が言っているように「すべてがトントの作り話」のような感じになってしまっている。ポップコーンの紙バケットを死体と一緒に埋めようとするし。

 先住民のトントはジョニー・デップ。なにやら引退もほのめかしているらしいが、この人が出ているから見にきている人も多いだろう。本当に引退したら多くのファンが悲しむことになる。本作ではカラスを頭に乗せたり、顔を白塗りにしたりしているが、デップが○○からインスパイアーを受けて提案したらしい。ラストにクレジットが出る。が、メモしきれなかった。やはりエキセントリックな役が似合う。しかしはまり役は「パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち」(Pirates of the Caribbean: The Curse of the Black Pearl・2003・米)のジャック・スパロウだろう。本作もなかなか良く、人気キャラになるかも。ただ西部劇というのが今の若い人たちにはどうなのか。

 ローン・レンジャーのジョン・リードはアーミー・ハマー。面白かった「白雪姫と鏡の女王」(Mirror Mirror・2012・米/加)の王子様を演じていた人。ちょっと頼りない感じだが、「J・エドガー」(J. Edgar・2011・米)ではまじめな青年だった。来日していたようだが、今後の活躍に期待したい。

 娼館の女主人レッド・ハリントンはヘレナ・ボナム=カーター。ティム・バ2012ートンの奥さん。この人もエキセントリックな役が多い人で、「ダーク・シャドウ」(Dark Shadows・2012・米/豪)でジョニー・デップと共演している。「レ・ミゼラブル」(Les Miserables・2012・米/英)でもセコイ女主人を演じていた。「アリス・イン・ワンダーランド」(Alice in Wonderland・2010・米)の赤の女王も強烈だったが。意外とジョニー・デップとの共演が多い。

 イベントに合わせて処刑される予定だった悪党のブッチ・キャベンディシュはウィリアム・フィクトナー。特殊メイクで悪党面になっているのでわかりにくいが、「ブラックホーク・ダウン」(Black Hawk Down・2001・米/英)で特殊部隊員を演じていた人。

 悪の親玉、鉄道会社のコールはトム・ウィルキンソン。ぼうぼうのヒゲでわかりにくいが、この人も良く出ている人で、会社の重役などが多い。最近は「ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル」(Mission: Impossible - Ghost Protocol・2011・米ほか)にIMFの長官役で出ていた。

 テキサス・レンジャーズのリーダーで、ジョン・リードが密かに思いを寄せるルースの夫、ダンはジェームズ・バッジ・デール。衝撃的なTVドラマ「ザ・パシフィック」(The Pacific・2010・米)でメインの1人を演じていた人。それが評価されて、最近は映画に出まくり。「アイアンマン3」(Iron Man 3・2013・米/中)にも「ワールド・ウォーZ」(World War Z・2013・米/マルタ)にも出ている。

 その奥さん、ルースはイギリス生れのレベッカ・リード。「アンナ・カレーニナ」(Anna Karenina・2012・英)に出ているらしいが見ていない。それまでは主にTVで活躍していたようで、「刑事ジョン・ルーサー」(Luther・2010〜・英)はずっと出ているが、見たことがない。見たのは「プリズナーNo.6」(The Prisoner・2009・英)。印象に残る。

 騎兵隊のフラー大尉はバリー・ペッパー。「プライベート・ライアン」(Saving Private Ryan・1998・米)でレフティのスナイパーを演じていた人。ちょっと前、リメイク西部劇の「トゥルー・グリッド」(True Grit・2010・米)にも出ていた。

 脚本はジャスティン・ヘイス、テッド・エリオット、テリー・ロッシオの3人がクレジットされている。ジャスティン・ヘイスは「レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで」(Revolutionary Road・2008・米/英)を書いた人。本作とあまり繋がらない好きがするが……。テッド・エリオットとテリー・ロッシオはよく一緒に仕事をしている人で、代表作は「パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち」シリーズ。まさに本作はその1本という感じ。

 監督もまた「パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち」シリーズのゴア・ヴァービンスキー。本作の前に「ランゴ」(Rango・2011・米)でアニメだが西部劇を撮っている。しかも主役の声がジョニー・デップ。そのに前の「ザ・メキシカン」(The Mexican・2001・米)が、もう少しシリアスだがアクション物だった。意外にも日本のホラーのリメイク「ザ・リング」(The Ring・2002・米/日)も撮っているように、実は何でも撮れる人。

 銃は西部劇の定番コルトSAAなのだが、鉄道にこだわって大陸横断鉄道がつながった1869年にしたため、いろいろと無理が出てしまった。水平二連ショットガンは良いとしても、ローン・レンジャーのSAAは1873年以降でないとおかしいし、ブッチが脱走に使うS&WのNo.3も1870年以降だし、追手のウインチェスターM73も1873年以降。娼館の女主人レッドが使う3連バレルのデリンジャー(たぶん骨董品の本物だろう、撃たない)は1864年以降だからOK。先住民に変装したヤツから襲撃してくるシーンで使われるコルトM1860アーミーらしいリボルバーはOKでも、レミントンM1875はアウト。 騎兵隊が使うスプリングフィールドのトラップ・ドアもM1873だから1873年以降。ガトリング砲は1861年に登場したのでセーフ。ホルスターはループ・ホルスターなのでリアル。最近早撃ちガン・ベルトが出ることはなくなった。

 まあシリアス物ではないし、これを言い出すとキリがなくて楽しめなくなる。ただ、ジョン・リードが使うSAAのバレルの付け根には.45 COLTの文字があったものの、最初の銀行を襲うシーンでは、ハンマー・ノーズが変な方向に曲がっていて奇妙だった。ポスターではハンマー・ノーズがないし……呪われた銀の山に銀の弾丸。銀の弾丸って狼男か。

 アーマラーはハリー・ルー。「パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち」シリーズを手掛けてきた人。ほかに「M:i:III」(Mission: Impossible III・2006・米/独/中)や「ダークナイト」(The Dark Knight・2008・米/英)シリーズも手掛けている。

 トントがいうキモサベは「友」という意味だと思っていたのだが、劇中でトントは「WRONG BROTHER」と言っている。字幕は「劣った弟」。確かに立場的にいきなりトントがジョン・リードを友達と呼ぶのはおかしいから、この方が納得は行く。愛馬シルバーを走らせる名ゼリフ「ハイヨー、シルバー」を最後にジョン・リードが言うと、トントはあきれた顔で「二度とやるな」と言い放つ。そういえば「白人すぐ嘘付く、インディアン嘘付かない」というセリフも流行ったなあ。これは劇中出てこなかったが。

 公開3日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、金曜に確保。当日は40分前くらいに着いたらまだビルが開いていなかった。30分前くらいにビルの入り口が開き、15分前くらいに開場。若い人から中高年まで、比較的幅広い感じだったが、目立っていたのは白髪。TV版の「ローン・レンジャー」を見ていた人たちだろうか。男女比は6対4で男性が多かった。最終的に607席の7割くらいが埋まった。西部劇としては驚くほど多いのでは。ジョニー・デップの「パイレーツ」つながりか。

 気になった予告編は……「人類資金」は、アイドルを使ったのはどうなんだろう。予告を見る限り良かったとは思えない感じだが……。10/19公開。

 上下マスクの「許されざるもの」は西部劇の日本リメイク版で、武器は刀だけかと思っていたら、ウインチェスターも出てくるらしい。どんな展開になるんだろう。9/13公開。

 「パシフィック・リム」は新予告。とにかくすごいビジュアル。芦田愛菜ちゃんがまたスゴイ。8/9公開。

 なんとあの痛快作の続編が公開される。上下マスクの「REDリターンズ」は引退したスパイが大暴れする映画。またまた楽しそう。11/30公開。

 ディズニー・アニメ、上下マスクの「アナと雪の女王」は、ちょっと「シュレック」(Shrek・2001・米)の匂いもするが、正統派のおとぎ話、ファンタジーらしい。また3D……2014年3月公開。

 スクリーンが左右に広がって本編へ。


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