Pacific Rim


2013年8月11日(日)「パシフィック・リム」

PACIFIC RIM・2013・米・2時間10分(IMDbでは131分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、松崎広幸/ビスタ・サイズ(デジタル、Red)/ドルビー・デジタル、DATASAT、SDDS(IMDbではドルビー・サラウンド7.1、ドルビーAtmosも)

(米PG-13指定)(日本語吹替版、3D上映もあり、IMAX 3D版もあり)

公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/pacificrim/
(音に注意。メニューが英語でわからない。全国の劇場リストもあり)

ある日、太平洋の海溝に時空の裂け目ができ、KAIJUが現れる。それはサンフランシスコに上陸し街を破壊するが、6日後に軍の攻撃によって倒された。しかし2体めがマニラ、3体めがメキシコに上陸、さらに4体めも現れるにいたり、人類はイェーガー(ドイツ語で狩人)計画により巨大な戦闘用ロボットを建造して対処することにする。しかし操縦するパイロットに大きな負担がかかるため、右脳と左脳に別れて2人の人間が力を合わせて操縦する方式とされた。2人の脳をシンクロナイズさせることが重要で、兄弟や親子などがパートナーを組んだ。ベケット兄弟の兄ヤンシー(ディエゴ・クラテンホフ)とローリー(チャーリー・ハナム)も「ジプシー・デンジャー」に乗り込み活躍していたが、出現するごとに進化するKAIJUに手を焼いていた。そしてアラスカ沖の戦いでヤンシーがやられ、ローリーも重傷を負う。5年後、世界各国の首脳はイェーガーが役に立たず、巨大な防護壁で都市を守る方が効率的と判断、イエーガー計画の最後の任務として香港の防護を任せる。司令官のペントコスト(イドリス・エルバ)は、森マコ(菊地凛子)の復旧計画により残った4体のイェーガーを整備し、パイロット候補者を集めトライアルを行う。そこにローリーもいた。

75点

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 驚きの怪獣映画。とにかくビジュアルがスゴイ。スゴ過ぎる。かつて漫画やイラストでしか描けなかった怪獣や巨大ロボット、とんでもなく巨大な秘密基地。緻密なメカニズムなどが、あたかも本当にそこにあるかのようにフォト・リアリスタィックに描かれている。3D上映の立体感も、いままで見た中でトップ・クラスの見事さ。音響もクリアーで立体的で、大きくて、それでいて歪んでいないという素晴らしさ。怪獣映画の世界を堪能できる。ただビスタ・サイズだったのは惜しい。予算の関係もあったのだろうが、シネスコの巨大な画面で見たかった。IMAX 3D版はどんなにかスゴイことだろう。これはIMAX 3Dで見る映画だ!

 すべてがシリアスというわけではなく、お笑いパートを担当するマッド・サイエンティスっぽいオタッキーな博士が2人も登場し、笑わせる。しかもおふざけだけじゃなく、ちゃんと展開に重要な関わりを持っていて、チームのために命がけで貢献する。そして人体の臓器売買のように怪獣の臓器売買をする怪しい男も笑わせてくれる。

 もっとも感動的だったのは、森マコの回想シーンで幼い日の森マコを演じた芦田愛菜ちゃん。怪獣から逃げる様子が本当に怖そうで、赤い靴が脱げてしまうのも、しっかりと印象に残る。思わず涙がこぼれそうに。

 ほかは、感動的なエピソードもいくつかあるのだが、あまりにビジュアルがスゴ過ぎるせいが、ちょっとかすんでしまって、伝わって来にくかったかもしれない。それと、ちょっとつじつまの合わないようなところも……。生まれたばかりの赤ちゃんに記憶があるってのはどうなんだろう。クローンで赤ちゃんがいるって……よくわからない。が、これは科学的な映画ではない。ファンタジーSFアクションなのだ。

 ただ、内部メカや搭乗員のスーツのデザインはいいけれど、ロボット自体のデザインは、日本人的には今ひとつかも。日本人のデザイナーか漫画家、またはイラストレーターを雇ってデザインさせれば良かったのに。設定にはもちろん日本のアニメも影響しているようで、「エヴァンゲリオン」的なものも感じられたし(パイロットが暴走してプラズマ砲が勝手に起動するシーンはハラハラした。司令部の電源喪失とかも良かったし、2体出現とか、刀も使うし、羽根をバッと広げる感じとかも)、パイロットがまず分離した頭部に乗り込んで、それが本体に送り込まれていく感じは「サンダーバード」的でもあった。香港をメインの舞台にしたのは「ブレードランナー」(Blade Runner・1982・米/香/英)っぽく撮りたかったからだろうか。いつも雨が降っているし。

 司令官のペントコストはイドリス・エルバ。イギリス生れで、最近は「プロメテウス」(Prometheus・2012・米/英)に出ていた。その前は2013年になってやっと公開された残念な「ゴーストライダー2」(Ghost Rider: Spirit of Vengeance・2011・米/アラブ首長国連邦)で、武闘派の僧侶を演じていた。本作は司令官というより、お父さんっぽい感じが良かった。

 ローリーはチャーリー・ハナム。兄がいる間は良くなかったが、その後1人で出てきたら良かった。イギリス生れで、過去に「トゥモロー・ワールド」(Children of Men・2006・米/英)や「コールドマウンテン」(Cold Mountain・2003・米/英ほか)にも出ているようだが、なんとなく見た感じ。

 森マコの菊地凛子は「バベル」(Babel・2006・仏/米/メキシコ)以降、映画に出まくり。ちょっと日本語がおかしい感じだったが、吹替か。このあとキアヌー・リーブスと共演した「47 RONIN」(47 Ronin・2013・米)が控えている。

 お笑いパート担当のニュートン博士はチャーリー・デイ。ゴッドリーブ博士はバーン・ゴーマン。そして臓器売買のハンニンバル・チャウはロン・パールマン。チャーリー・デイは主にアメリカのTVで活躍している人で、映画は「モンスター上司」(Horrible Bosses・2011・米)に出ていたらしいが見ていない。バーン・ゴーマンは「ダークナイトライジング」(The Dark Knight Rises・2012・米/英)に出ていた人で、不気味さが素晴らしい。ロン・パールマンはもうデル・トロ監督作品には欠かせない人で、最近は「ドライヴ」(Drive・2011・米)にも出ていた。

 オペレーター役のテンドー・チョイはクリフトン・コリンズJr.。悪役の多い人で、本作は意外。明るくて陽気な感じ。さすが役者。つい最近「PAKER パーカー」(Parker・2013・米)でギャングを演じていたばかり。「アドレナリン:ハイ・ボルテージ」(Crank: High Voltage・2009・米)なんか相当のワルだった。

 森マコの幼い頃を演じた芦田愛菜ちゃんは、TVばかりか映画にも良く出ているが、ついらハリウッド・デビュー。どんどん活躍して欲しいが、速くに成功した子役にありがちなワナにはまらないことを祈るばかり。ハリウッドで言うとダコタ・ファニングに匹敵するだろうか。汚れ役もやっちゃうんだろうなあ。スキャンダルにまみれず、ナタリー・ポートマンみたいに大人になってからも活躍してくれればいいが。

 脚本は監督のギレルモ・デル・トロと、原案のトラヴィス・ビーチャム。トラヴィス・ビーチャムは、残念なリメイク神話映画「タイタンの戦い」(Clash of the Titans・2010・米)の脚本を書いた人。ということは、ギレルモ・デル・トロのおかげか。

 ギレルモ・デル・トロは脚本と監督のほか、プロデューサーもやっている。世界的に注目されるようになった初の劇場長編映画「クロノス」(Cronos・1992・メキシコ)からずっとロン・パールマンを使い続けている。怖くて悲しい「デビルズ・バックボーン」(El espinazo del diablo・2001・西/メキシコ)などのホラー系から、「ブレイド2」(Blade II・2002・米/独)のアクション、「パンズ・ラビリンス」(El laberinto del fauno・2006・西/メキシコ/米)の悲しいファンタジーなど、何でも撮れる人。ただ「ダーク・フェアリー」(Don't Be Afraid of the Dark・2010・米/豪/メキシコ)の脚本は……。日本のアニメや怪獣映画のファンだったと知ってなんだか嬉しい。ちょっと外見的にも、オタッキーな感じも、ニュージーランド生れのピーター・ジャクソン監督に似ている気がする。プロデューサーとしての活躍が一番多いが、監督の方に期待したい。

 香港の怪しげな臓器売買のギャングたちが持っていた銃はP226。ラストのSWATはM4にポンプ・ショットガン。エンド・クレジットが始まるとすぐ出ていく人がいるが、本作はラストにオチの映像あり。ロン・パールマンが笑わせて、良いところをすべて持っていく。

 タイトルのパシフィック・リムは太平洋のヘリ、太平洋沿岸諸国ということらしい。

 公開3日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、金曜に確保。11〜12分前に開場。若い層から中高年まで幅広くいたが、若〜中年層が一番多い感じ。男女比は6対4で男性がちょっと多かった。最終的には301席の9.5割くらいが埋まった。さすが、みごと。

 気になった予告編は……上下マスクの「エリジウム」は新予告に。どうもスラムに暮らす主人公が病気になり、治療するためエリジウムを目指すらしい。しかしそこに病気の子供も絡んできてと。AKにはエアー・バースト弾を使うとか。9/20公開。

 上下マスクの「許されざる者」はチャンバラだけでなく、銃も出てくるようだ。使われていたのはM73のよう。期待していいのだろうか。9/13公開。

 上下マスクの「黒執事」は水嶋ヒロと剛力彩芽の顔合わせ。原作を知らないが、「謎解きはディナーのあとで」的な臭いがしないでもないけど……2014年1/18公開。

 3Dメガネを掛けるように指示があって……うーん、ちょっと曇りがあるが、磨いている間がない! 上下マスクの「マン・オブ・スティール」はどこに立体感があるのか。まだ一部ライトが点いていて、メガネに反射して見にくい。速く消せ。カットが速い予告に3Dは向かない。明るいし。字幕が一番飛び出ていた。


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