Time Scoop Hunter


2013年9月1日(日)「劇場版タイムスクープハンター安土城最後の1日」

2013・NHKエンタープライズ/P.I.C.S./ギャガ/クオラス/フリップアップ・1時間42分

ビスタ・サイズ/音響表記なし


公式サイト
http://timescoop.jp/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

タイムスクープ社の第2調査部所属、時空ジャーナリスト、沢嶋雄一(要潤)は、歴史的な大事件の陰で翻弄された名もなき人々を取材するため「本能寺の変」後の1582年6月13日の城下町にタイムワープした。街は無法地帯と化し、人々は難民として御所に避難しており、織田家の侍、矢島権之介(時任三郎)はあえて逃げずに、人々の面倒を見ていた。そこに負傷した織田家の侍が現れ、博多から織田家に茶の客人として招かれていた島井宗叱(上島竜兵)を博多へ送り届けてくれないかと頼まれる。沢嶋はしばらく付いて行くことにするが、島井は国宝級の茶器を持っていたことから、未来の武器であるフリーズガンを持った謎の人物に襲われ、茶器を川に落としてしまう。

71点

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 これって、コメディ? それとも歴史バラエティ? それともSFドラマ? あるいはどれでもないところをねらったもの? TVを見ていないので良くわからない。とにかくタイム・トラベルが可能な世界で、未来人のそのままの格好で、普通に現地人というかその時代の人と極秘の「特殊交渉術」によりカメラを向けて普通にインタビューしてしまうという設定。TV番組なら良いとしても、お金を払ってわざわざ劇場まで行って見る映画として、これが受け入れられるかどうか。ここが微妙。

 画像はデジタルっぽい気がする。非常に高画質。やや色が浅めのところもあるが、力強い絵。音響も音楽もメリハリが利いて、クリアで力強い。CGもたくさん使っている。しかし全体としては、やはり低予算という印象が強い。途中、琵琶湖を船で渡ったあとは、豪雨に強風で嵐のようになっているが、雲が動くカットをはさんで、強引に天気の良いカットにつないでいる。現場を知っていると、かわいそうとしか思えないが、観客には関係ないことだし……。

 ボクはてっきりサブ・タイトルにあるように「安土城の最後の1日」の真実に迫ろうとするものかと思ったら、そうではなかった。もちろんそれも描かれてはいるが、どうでも良い感じ。エクンド・クレジットのロールの横で流される程度のもの。それに、そうであるならば、最初に、歴史的に「安土城の最後の1日」がどう伝えられているか詳細に説明するはずだろう。それがない。それとも、誰でも知っているという前提なのだろうか。それはちょっと辛いなあ。

 雰囲気的にはトム・クルーズとスピルバーグの「マイノリティ・リポート」(Minority Report・2002・米)に似たものがある。スパイダーカムなんてまさにそんな感じ。

 ただ、タイムスクープハンターがゴーグル型カメラや手持ちカメラで撮影しているという設定なので、例の悪習、主観ショットが多い。冒頭はカメラが動きまくり、ちょっと目が回る。やがてカメラはあまり動かなくなり、どこで誰が撮っているんだという感じになるが、後半はそれがほとんど気にならない。やはり主観ショットはできるだけ押さえるべきだろう。

 時代が、戦国時代だけではなく、喫茶店のテーブル・ゲームが流行っていた1985年や、終戦間近の1945年5月29日(大空襲は3月10日ではないのか、爆撃機が超低空で飛んでいるなど、気になる部分は多いが)、メリハリがあっていい。そして、あまり有名人俳優を多く使わないのも良いと思うが、お笑い系の人を使うと、どうしても緊張感は生まれにくい。この辺もスパイス的な使い方が良いのでは。まあこれがコメディということなら良いのかもしれない。

 銃はもちろん火縄銃ということになるのだが、銃だけ敵から手に入れて、連射している。ちゃんと早合のようなものでリロードしている。ただ、それをどこから手に入れたんだろう。ほかに「てつはう」(手りゅう弾のようなもの)も使っていた。もちろんお約束の、投げられたものを拾って投げ返すシーンも。フリーズガンはいろんなパーツの寄せ集め的オリジナル・デザイン。火縄銃を向けられて「武器を捨てろ」と言われて、本当にフリーズガンを捨てるとは信じられない。火縄銃はロック・タイム(引き金を引いてからタマが飛び出すまでの時間)が長いので、未来銃なら圧倒的に有利なのに。

 主演の要潤は「謎解きはディナーのあとで」(2013・日)など映画にも良く出ているが、TVにもよく出ている。雰囲気的には本作にピッタリの感じ。

 未来人に何ら不信感を持たない武士、矢島権之介は時任三郎。さすがの貫録で、説得力がある。本作の前に「BRAVE HEARTS海猿」(2012・日)に出ている。

 また悪役として迫力と説得力があるのは伴山三郎兵衛役の嶋田久作。TVよりも映画で活躍している感じだ。どうしてもボクには「帝都物語」(1988・日)の加藤保憲のイメージが強い。最近「図書館戦争」(2013・日)に刑事役で出ていた。

 監督・脚本は中尾浩之。NHKの「タイムスクープハンター」シリーズすべての脚本と監督を手掛けているという。2000年にカンヌ広告祭で世界の新人監督8人の1人に選ばれているのだとか。実写とCGを組み合わせた映像を得意とするらしい。本作で劇場長編映画監督デビュー。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で金曜に確保、10分前ほどに開場となった。小学生低学年くらいの子供連れファミリーもちらほら。上は中高年まで幅広いのはTVの延長だからか。男女比はほぼ半々で、最終的には232席がほぼすべて埋まった。この完成度でどうなんだろう。さすがTVと言うべきか。

 気になった予告編は……「人類資金」は新予告に。ただどうにもアイドルのセリフ回しが気になって……。

 「釣りバカ日誌」を前面にフィーチャーした「あさひるばん」は、「釣りバカ日誌」の原作者が監督する、全く別の物語らしい。ただ雰囲気的には「釣りバカ日誌」のよう。11/29公開。

 「凶悪」はミステリーのようで面白そうなのだが、雰囲気がとにかく暗くてウンザリという感じ。うむむ。上下マスクの「共喰い」はさらに暗い感じでエロまで入ってくるらしい。

 「Dianeダイアナ」は あの美女ナオミ・ワッツが、たぶん特殊メイクでかなり顔を似せて演じるらしい。ちょっと驚き。「クィーン」(The Queen・2006・英/仏/伊)のバリエーションという感じもするが、でも面白そう。10/18公開。

 とにかく場内で堂々とケータイを付けるヤツが多い。遅れて来て、ケータイを懐中電灯代わりに使うヤツまで。液晶が明るくてまぶしいって。遠くでもすごく気になる。歩きスマホ、場内で帽子を被っているヤツ、すぐ靴を脱ぐヤツ……これが日本の民度ということなのだろう。


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