Side Effects


2013年9月7日(土)「サイド・エフェクト」

SIDE EFFECTS・2013・米・1時間46分

日本語字幕:影付き細丸ゴシック体下、川又勝利/ビスタ・サイズ(デジタル、Red)/トルビー・デジタル、DATASAT

(米R指定、日R15+指定)

公式サイト
http://www.side-effects.jp/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

グラフィック・デザイナーのエミリー(ルーニー・マーラ)は、インサイダー取り引きで服役し出所する夫マーティン(チャニング・テイタム)を迎えに行く。しかしマーティンは再び昔の仲間と組んでビジネスを始めようとしており、住み慣れたこの街から引っ越しすると言い出す。やがて精神不安定となったエミリーは車を運転中、駐車場の壁に突っ込み自殺未遂事件を起こす。警察で取り調べに立ちあった精神科医のジョナサン・バンクス医師(ジュード・ロウ)は、病気かもしれないと思い、診療所にきて治療を受けるようにアドバイスする。数日後、診療所に来たエミリーは、以前にもうつ病になりヴィクトリア・シーバート医師(キャサリン・ゼタ=ジョーンズ)から薬を処方されていたことを明かす。そこでバンクス医師はシーバート医師と相談し、新しい薬を処方する。それで症状が改善したかに見えたのだが、3ヶ月後、薬の副作用で夢遊病を併発し夫を刺し殺してしまう。裁判でエミリーは心神喪失のため無罪とされ治療のため精神病院に入院、薬を処方したバンクス医師は責任を問われ、信用を失い、仕事を失い、ついには家族をも失ってしまう。

72点

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 うーむ、普通のミステリーかと思いきや、かなり暗く、陰湿な物語だった。どんでん返しというか、逆転してやり返すのにカタルシスが無く、ちっとも痛快じゃない。後味も悪い。ずっと人間の嫌な面を見せられているような不快さ。見てはいけないものを見たような居心地の悪さ。良くできてはいると思うが、なんでこんなネガティブなものにまとまってしまうのだろう。

 しかも冒頭から中盤になるくらいまで、何を描きたいのか全くわからない。タイトルの意味が「副作用」とわかれば予想は付くのだが、薬と関係のない、騙しのテクニックか何かのような気がしていたので、まったく違う雰囲気に戸惑った。最初はヒッチコックの「サイコ」(Psycho・1960・米)のように、街からビル、ビルからある窓へとズームして行くオープニングで、室内に血の跡があってこれはミステリーかと思ったら、すぐに3ヶ月前に飛んで、そこで刑務所にいるダメ男と、彼を迎えに行くもう醒めたような妻のどろどろのメロドラマのようになり、うんざりしていると薬がやたら写るようになって、どうも精神異常の気が重くなるような患者視点の話になってそれがかなり長く続く。すると今度は裁判の話になって、これも切れが悪く、なんだかすっきりしないまま判決が下ると、やっとここからがミステリー。急展開を始めるが……。結局、女は怖いということくらいしか伝わってこなかったし、深いため息が出た。

 これが「鬼才の最後の劇場作品」なんだとか。

 解決を阻むのがアメリカのダブル・ジョパディ禁止というアメリカ合衆国憲法修正第5条。同じ罪で二度裁かれることはないというもの。二重処罰の禁止。つまり一度判決が出てしまうと、後でそれが間違っていたとわかっても、再び裁かれることはないということになるらしい。これは映画「ダブル・ジョバディー」(Double Jeopardy・1999・米/独/加)でも描かれていた。古くはビリー・ワイルダーの傑作「情婦」(Witness for the Prosecution・1957・米)もそうだろう。

 エミリーを演じたルーニー・マーラはすごい。うつ病がとても自然に感じられ、もうそうとしか見えなくなってくる。劇中「女は早くからウソをつくことを学ぶ」と言っているが、だから名女優が多いのかもしれない。本当に怖い。TVから映画に出るようになり、「ソーシャル・ネットワーク」(The Social Network・2010・米)で主人公のマーク・ザッカーバーグがあこがれる女の子エリカを演じ、続いてハリウッド・リメイク版の「ドラゴン・タトゥーの女」(The Girl with the Dragon Tattoo・2011・米ほか)では、ドラゴン・タトゥーの女リスベットを演じた。本作とは全くイメージが違う。全裸での演技など熱演だったが、ほとんどオリジナルのままのリメイクでは……。本作はこの人の美しさも良く出ており、もちろん全裸での熱演で、はまっていたのではないだろうか。今後が楽しみ。

 ジョナサン・バンクス医師はジュード・ロウ。歳を取ったなあという感じ。つい最近「アンナ・カレーニナ」(Anna Karenina・2012・英)に出ていたらしい。ちょっと暗いものが多い印象。ソダーバーグ監督の感染爆発を描いた怖い「コンテイジョン」(Contagion・2011・米/アラブ首長国連邦)にも出ている。

 夫役は最近、映画に出まくりのチャニング・テイタム。つい最近「G.I.ジョーバック2リベンジ」(G.I. Joe: Retaliation・2013・米)と「ホワイトハウス・ダウン」(White House Down・2013・米)に出ていたばかり。本作のスティーヴン・ソダーバーグ監督がこの前に撮った「マジック・マイク」(Magic Mike・2012・米)にもタイトル・ロールを演じている。

 女医のシーバート医師はキャサリン・ゼタ=ジョーンズ。さすがに最盛期の美しさはなくなったが、どこが変わったんだろう。顔のパーツはあまり変わっていない気がする。ひょっとすると、地球の大陸のように、顔のパーツも年齢とともに動いているんだろうか。そしてある一瞬だけ最高のバランスを見せると。まっ、いずれにしても最近はアート系の作品が多い感じ。本作の前にこれから公開される「ブロークンシティ」(Broken City・2013・米)に出ているが、日本では公開が逆になって先に「スマイル、アゲイン」(Playing for Keeps・2013・米)が公開されている。

 脚本はスコット・Z・バーンズ。本作ではプロデューサーも兼ねている。大ヒット・アクション・シリーズの第3作「ボーン・アルティメイタム」(The Bourne Ultimatum・2007・米/独)の脚本や、アート系公開で見ていないが、同じマット・デイモンとソダーバーグ監督による「インフォーマント!」(The Informant!・2009・米)や、ソダーバーグ監督の「コンテイジョン」の脚本を書いている。ミステリー系のものが得意の人らしい。

 監督はスティーヴン・ソダーバーグ。プロデューサーとしても活躍していて、わずかに2本ほど監督作品の方が多い。話題作、大作、アート系といろいろ撮っているが、「イギリスから来た男」(The Limey・1999・米)や「エリン・ブロコビッチ」(Erin Brockovich・2000・米)など昔のものの方が良い気がする。最近のものは、日本ではどれも小劇場、アート系での公開。どうなんだろう。本作の後はTV作品を手掛けるらしい。

 テクニカル・アドバイザーは、共同プロデューサーでもあるサシャ・バーディ医学博士。ニューヨーク大学メディカルセンターの法精神医学部副部長だそうで、ライカーズ島の精神衛生センターの所長でもあるらしい。なるほど、患者や業界のリアルさは、この人のお陰か。TVシリーズの「LAW & ORDER」でもテクニカル・アドバイザーを務めているんだとか。

 公開2日目の初回、六本木の劇場は全席指定で、ムビチケで事前予約。15分前くらいに着いたら、ちょうど開場したところだった。観客層は30代くらいから中高年といった感じで、20人くらい中、女性は7人ほど。男女とも若い人とが少し増えて、最終的には124席の7割ほどが埋まった。

 明るいまま始まったニュースでは……「ブリングリング」は日本語いっさいなしで、タイトルもわからず、どういう内容なのかもわからず、公開日も出ないという、何のための予告なんだろう。調べたら監督はソフィア・コッポラだった。アメリカ版「ショッピング」(Shopping・1994・英/日)だろうか。

 上下マスクの「ゴースト・エージェントR.I.P.D」は10/18公開なのに、ちゃんとした予告はどこでもやっていない印象。DVD & BDを出すためのアリバイ作り的公開か。

 上下マスクの「47 RONIN」は忠臣蔵がモチーフになっているらしいが、ハリウッド解釈はどんなことになっているのか不安。ちょっと中華っぽいが……。キアヌー・リーヴス、真田広之、浅野忠信、菊地凛子、柴咲コウ、赤西仁らが出ている。12/6公開。

 ベン・スティーラーが主演する「シークレット・ライフ・オブ・ウォルター・ミティ」はコメディっぽくなく、LIFEマガジンの記者が大冒険に出かける話……かと思ったら、調べてみると、どうもダニー・ケイの「虹を掴む男」(The Secret Life of Walter Mitty・1947・米)のリメイクらしい。ポキタ、ポキタ、ポキタ……。オリジナル版は素晴らしく大好きだが、果たして。

 「猿の惑星2(Dawn of the Planet of the Apes)」は写真のみの構成で、一体どんなものになるのやら。もちろん猿の支配が進んでいたというお話なんだろうけど。

 上下マスクの「永遠の0」は新予告に。すでに感動的で、泣きそう。「男たちの大和YAMATO」(2005・日)みたいな構成だけが気にかかる。12/21公開。

 上下マスク「清須会議」は、オールスターキャストによる三谷幸喜コメディ。予告だけで笑える。かなりおもしろそう。11/9公開。

 上下マスク「悪の法則」はリドリー・スコットによるクライム・ムービーらしい。なんだかすごそうな雰囲気。キャストはマイケル・ファスベンダー、ペネロペ・クルス、キャメロン・ディアス、ブラッド・ピットと超豪華。11/15公開。

 上下マスク「スティーブ・ジョブス」にはびっくり。アシュトン・カッチャーか。「最低な男が、最高の未来を創った」というキャッチ・コピー。11/1公開。

 「ダイアナ」は新予告に。世界が知らない〈真実のダイアナ〉かあ。見たい。10/18公開。

 「クロニクル」は超能力のアクション作品らしいが、あまり大きくないところでの上映で、しかも2週間限定公開の不思議。確かにまた手持ちカメラでというところもあるが、やっぱりアリバイ作り的公開か。見たいけど、前売り券もないようだし。9/27公開。


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