The Wolverine


2013年9月14日(土)「ウルヴァリン:SANMURAI」

THE WOLVERINE・2013・豪/米・2時間05分(IMDbでは126分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、松崎広幸/シネスコ・サイズ(デジタル、ALEXA)/ドルビー・デジタル、DATASAT、ドルビーATMOS

(米PG-13指定)(日本語吹替版、3D上映もあり)

公式サイト
http://www.foxmovies.jp/wolverine-samurai/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

1945年8月9日、第二次世界大戦の長崎、捕虜収容所。独房にいたウルヴァリン(ヒュー・ジャックマン)はB29の空襲で捕虜を逃がした将校、矢志田(ハル・ヤマノウチ)の命を救う。現代、ジーン(ファムケ・ヤンセン)を殺したことで悩み、カナダの山にこもっていたウルヴァリンは、町でハンターとトラブルになったとき、ユキオとなのる若い日本人女性(福島リラ)に助けられる。彼女は矢志田の依頼で、ウルヴァリンを探しに来たという。矢志田は高齢で末期癌により死にかけており、命の恩人であるウルヴァリンに会って直接、礼を言いたがっているという。しかたなく1日の約束で、プライベート・ジェットで東京に向かうと、矢志田は日本の代表的な巨大産業の社長となっており、すべてを息子のシンゲン(真田広之)ではなく、孫のマリコ(TAO)に継がせたがっていた。そしてウルヴァリンに、不死の能力が辛ければ、矢志田産業の技術力で、ほかの者にその能力を移植してやることができると告げる。

75点

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 125分間、まるで別世界へ行って来たような感じ。ほとんど日本が舞台でありながら、まるで想像を超えた物語・展開で、圧倒される。驚きの連続。普段の生活などを忘れで、たっぷりと別世界というか異世界を堪能できる。実に映画らしい映画。

 もちろん、ちょっと微妙に違う日本感とか、日本語のヘタな日本人とか、ウルヴァリンの超治癒力とか、現実を超えた技、設定、戦いなどはあるものの、最大がウルヴァリンの超治癒力でそれを超えるとんでもない能力は出てこない。空を飛んだり、壁を抜けたり、火を吹いたりとかはない。せいぜい毒を吐いたり、未来を見たりする程度。押さえられている。ここがまた良い。適度な笑いも入れつつ、できるだけリアルに作ろうとしているのだろう。

 ただ結局は、日本人が事件を起こして、外国から助けが来て解決したと。「ラストサムライ」(The Last Samurai・2003・米)的な展開でもある。帯を結んでやって、変な雰囲気になってキスするし。しかも本作は、日本人が欲に目がくらんだという展開。うむむ。ウルヴァリンに感情移入して見るからあまり感じないが、冷静に考えると、そういうことだろう。

 主演のヒュー・ジャックマンは「リアル・スティール」(Real Steel・2011・米/印)でも日本絡みのネタだったが、「レ・ミゼラブル」(Les Miserables・2012・米/英)で見事な歌も披露し、驚かせてくれた。いま絶好調の大活躍。オーストラリアのTVで活躍し、「X-メン」(X-Men・2000・米)でハリウッド・デビューを飾りブレイク。この人のおかげで「ウルヴァリン」シリーズのスピンオフが誕生したといっても過言ではないだろう。ボク敵には「ソードフィッシュ」(Swordfish・2001・米/豪)や「ニューヨークの恋人」(Kate & Leopold・2001・米)が好きだが。本作ではとにかくすっごい筋肉。そして前作に引き続き本作でもプロデューサーを務めている。

 矢志田はハル・ヤマノウチ。東京外国語大卒業し、イタリア語、英語、中国語、タガログ(ピリピノ)語に堪能で、1970年代からイタリアのTVなどで活躍。日本ではビデオで話題となったロボット格闘映画「ロボ・ジョックス」(Robot Jox・1989・米)や残念なSFアクション「ニルヴァーナ」(Nirvana・1997・伊/仏)にも出演している。

 孫のマリコはTAO。14歳でデビューした国際的なファッション・モデルで、本作でスクリーン・デビュー。まあ、きれい。英語も全く問題なく、本格的な演技が初めてとは思えない存在感。今後も期待したい。

 超強烈な個性を放って光っていたのは、ユキオ役の福島リラ。本作に欠かせない重要なキャラクターとなっている。やはり国際的なファッション・モデルで、本作で長編劇場映画デビュー。しかも素晴らしいアクション。これだけやれれば今後あちこちからオファーが来るのではないだろうか。

 一方、あまり重要な役でなく残念だったのはシンゲン役の真田広之。さすがに殺陣は抜群で、この人を生かせなかったというのはプロデューサーのせいか、脚本家か、監督か。キアヌー・リーヴスの新作「47RONIN」にも出ているらしい。

 ジーンは夢のシーンでしか出てこないが、もちろんファムケ・ヤンセンが演じている。つい最近「96時間/リベンジ」(Taken 2・2012・仏)に出ていたが、こちらのほうがずっと魅力的だ。

 ドクター・グリーンこと、毒を扱う謎の美女ヴァイパーはロシア生まれの女優スヴェトラーナ・コドチェンコワ。出演はほとんどロシアのTVと映画だが、日本ではアート系で公開された「裏切りのサーカス」(Tinker Tailor Soldier Spy・2011・仏/英/独)にも出ていたらしい。まさに毒婦という感じが見事。今後の活躍にも期待したい。

 意外なところでは、セリフはなかったが、ヤクザ役で格闘家の小川直也が松山鷹志と一緒に出ていた。

 武器は、日本刀のほかにボウガン、アーチェリー、ヤクザがM92、ポンプ・ショットガン、マイクロ・ウージー、シュタイアーTMPかMP9。アーマラーはジョン・ボウリングだと思ったが、IMDbではギデオン・マーシャル。ボクが見たのは第2班だったかもしれない。日本ロケ部分はどうしたんだろうか。ギデオン・マーシャルはTVの方の比率が多い人で、SF航空アクションの「ステルス」(Stealth・2005・米)や、ヒュー・ジャックマンが出た「オーストラリア」(Australia・2008・豪/米/英)、前作「ウルヴァリン:X-MEN ZERO」(X-Men Origins: Wolverine・2009・米)のアーマラーを担当している。

 脚本はマーク・ボンバックとスコット・フランクの2人。マーク・ボンバックはホラーの「アダム -神の使い 悪魔の子-」(Godsend・2004・米/加)、人気アクション「ダイ・ハード4.0」(Live Free or Die Hard・2007・米/英)、ヒュー・ジャックマンが出たエロティック・ミステリー「彼が二度愛したS」(Deception・2008・米)、リメイクSFの「ウィッチマウンテン/地図から消された山」(Race to Witch Mountain・2009・米)、実話に基づく「アンストッパブル」(Unstoppable・2010・米)、スケール・ダウンしたリメイクSF「トータル・リコール」(Total Recall・2012・米/加)などを書いている。

 スコット・フランクはサスペンス「冷たい月を抱く女」(Malice・1993・加/米)、これまたサスペンスの「ヘブンズ・プリズナー」(Heaven's Prisoners・1996・米/英)、ソダーバーグのアクション「アウト・オブ・サイト」(Out of Sight・1998・米)、スピルバーグのSFアクション「マイノリティ・リポート」(Minority Report・2002・米)、リメイク・アクション「フライト・オブ・フェニックス」(Flight of the Phoenix・2004・米)、ボク的には面白かったサスペンス「ザ・インタープリター」(The Interpreter・2005・英/米ほか)などを書いた人。最近はあまり名を聞かなくなっていたが。

 監督はジェームズ・マンゴールド。IMDbでの評価は6.2点とやや低いがボク的には好きな「ニューヨークの恋人」を監督した人で、警察の裏側を描いた「コップランド」(Cop Land・1997・米)、アンジェリーナ・ジョリーがアカデミー賞を受賞した「17歳のカルテ」(Girl, Interrupted・1999・米/独)、傑作群像ミステリー「“アイデンティティ”」(Identity・2003・米)、傑作リメイク西部劇「3時10分、決断のとき」(3:10 to Yuma・2007・米)、痛快コミカル・アクション「ナイト&デイ」(Knight and Day・2010・米)なども監督している。ジャンルを問わず、面白い映画を撮れる天才的な監督なのではないだろうか。

 冒頭は、カメラが揺れることが多く、ちょっと酔いそうになったが、後半安定した。3Dで見なくて良かった。

 エンド・クレジットの後、ビックリの映像が。マグニートーとエグゼビアが!

 公開2日目の初回、六本木の劇場は9スクリーンあるうち唯一、スクリーンが低くて前席の人の頭がじゃまになるスクリーンでの公開。観客層は、小学校低学年くらいの子供を連れた(字幕が読めるんだろうか)母子もいたが、おおむね中高年。開場時は25人くらいいて、女性が5〜6人。のちに若いカップルなどもきてやや年齢層は広がった。最終的には369席の9.5割くらい、ほぼ満席となった。さすが話題作。

 しじいが大声で、前の席の頭がじゃまで見えないとか、騒いでいた。このシアターだけ唯一スクリーンが低くて、後半の席は見にくい。最新の劇場では珍しいところ。

 気になった予告編は……なんと正式な予告を見る前に、日産の広告で「タイガーマスク」をやると。主演はウエンツ瑛士。はたしてどうなるのか。11/9公開。

 上下マスクの「スティーブ・ジョブス」は、不思議なことに、アシュトン・カッチャーがスティーブ・ジョブスに見えてきた。11/1公開。

 作らないと宣言していた映画版の続編が作られ、なんと前後編の2回になるという。どうなってんの。観客をバカにしているのか。上下マスクの「劇場版SPEC結」は「漸ノ篇」が11/1、「爻ノ篇」が11/29公開。読み方もわからない。

 上下マスク「RED 2」(REDリターンズ?)は、やっぱりアクション満載の作品になる模様。バカな熟年がバカな若造をやっつける、痛快。小型核爆弾を取り返す話とか。イ・ビョンホンも出演。ヘレン・ミレンがまたカッコいい。11/30公開。

 上下マスクの「2ガンズ」は新予告に。デンゼル・ワシントンとマーク・ウォールーグが撃ちまくっている。おもしろそう。11/1公開。

 上下マスク、続編の「パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々:魔の海」はどうなんだろう。3Dということは、内容がないということか。主演の男の子はだいぶ大人っぽくなってしまったが。11/1公開。

 驚いたのは、予告の最後のCM。真っ暗な中にエッジだけ光るシルエットをねっとりと見せて、何かと思ったら、アップルの新製品のMacPro。秋発売と。カッコいい。


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