Elysium


2013年9月22日(日)「エリジウム」

ELYSIUM・2013・米・1時間49分

日本語字幕:黒フチ丸ゴシック体下、松浦美奈/シネスコ・サイズ(レンズ)/ドルビー・デジタル、ドルビーATMOS、dts、SDDS(IMDbではAuro 11.1も)

(米R指定、日PG12指定)(IMAX版もあり)

公式サイト
http://www.elysium-movie.jp/
(入ったら音に注意。全国の劇場リストもあり)

2154年、人類の内、富裕層はエリジウムと呼ばれるスペース・コロニーに住み、高度に進化した医療ポッドで、病気もなく怪我もすぐ治る生活を送っていた。一方、それ以外は荒廃しスラム化した地球に住んでいた。L.A.に住むマックス・ダ・コスタ(マット・デイモン)は、元は有名な自動車泥棒だったが、今は巨大産業アーマダイン社のロボット部門で組立工として働いていた。しかし態度が悪く警官とトラブルになり、警棒で腕を折られてしまう。治療のため病院に行くと、孤児院時代の友人で、看護師になっていたフレイ(アリス・ブラガ)と再開する。そんなある日、マックスは作業中の事故で大量の放射線を浴びてしまう。5日の命と診断されたマックスは、5日間苦しみを感じずに働くことができる薬をもらう。そしてエリジウムに違法移民を送り込む商売をやっているスパイダー(ワグネル・モウラ)に会いに行く。すると、スパイダーはちょうど「エリジウムの住人の脳からデータを盗む」ミッションをやってくれる男を探していたことから、マックスにドロイド並みの力を発揮できる第3世代のスーツを装着し、エリジウムに送り込んでやるという。

74点

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 猥雑な感じ、とんでもないカオス。あちこちにゴミが散らかっていて、建物は廃虚と化し、いたるところに暴走族のいたずら書きのようなモノがある、南アフリカのスラム街のような地球がとにかく生活感が合って、リアルで素晴らしい。街にはチンピラのような、ストリート・ギャングのような若者があふれ返り、どこにも夢なんてないような世界。人々を何を楽しみにしているのか。こんな未来にはしたくないものだ。一方、リッチな人々は、「機動戦士ガンダム」で描かれていたスペース・コロニーのような、宇宙空間にある高級住宅街のようなところに住んでいるという対比。病気や怪我も、医療ポッドを使ってほとんどすべて簡単に治すことができる。

 しかもなぜか未来世界の主要原語はスペイン語と英語のようで、「ブレードランナー」(Blade Runner・1982・米/香/英)で日本+香港的な要素が氾濫していた様に、スペイン語があちこちで飛び交っている。法執行官(警官)はロボットで、「ロボコップ」(RoboCop・1987・米)よりは日本のアニメ系ロボットや「TIGER & BUNNY」なんかに近い感じ。傭兵たちは「メタルギア」的な雰囲気。リーダーのクルーガーなんか背中に日本刀背負ってるし。

 宇宙ステーション(スペース・コロニー)も、地球と結ぶシャトル、ヘリ、ロボット警官、パワード・スーツなど、デザインが魅力的。観察官をあえてブリキのおもちゃみたいにしたのは、憎たらしさがより際立って良かった。警官や観察官は機械的という皮肉か。しかしすべてがリアルで実写に良く溶け込んでいた。素晴らしい。一体どこまでが実写でどこからがCGなのか。ただ、シネスコで手持ちカメラはやめろ。揺らすな。目が回る。気持ち悪くなる。フィクスト・ショットはとてもよく、効果的に撮れているのに。なぜ動かす?

 マックス・ダ・コスタはマット・デイモン。「ボーン・アイデンティティー」(The Bourne Identity・2002・米/独/チェコ)シリーズなどアクション系に良く出ている。また「オーシャンズ11」(Ocean's Eleven・2001・米)シリーズや「コンテイジョン」(Contagion・2011・米/アラブ首長国連邦)などスティーヴン・ソダーバーグ監督作品にも良く出ている。この人の場合、良い人そうな雰囲気が漂うのがいい。そしてアクションのキレもいい。使っていた銃は、エア・バースト弾を使うという設定のAKMベースのカスタム、FN SCAR-L、ChemRailというSFプロップ・ガン。

 エリジウムの防衛を司るデラコート長官はジョディ・フォスター。珍しく悪役だが、上流階級の雰囲気出まくり。さすが本物のセレブ。子役時代から活躍し続け、イェール大学を卒業した才女で、監督を務めることもある。ただ最近は作品に恵まれなかったようで、残念なファミリー・コメディ「幸せの1ページ」(Nim's Island・2008・米)以降、あまり名前を聞かなかった。本作は久々印象に残った。

 マックスの孤児院での幼なじみフレイはアリス・ブラガ。ブラジルの子供の犯罪者を描いた「シティ・オブ・ゴッド」(Cidade de Deus・2002・ブラジル/仏)で注目され、以後多くのハリウッド大作に出ている。ウィル・スミスのリメイクSFアクション「アイ・アム・レジェンド」(I Am Legend・2007・米)、ハリウッドではないがSFパニックの「ブラインドネス」(Blindness・2008・加/ブラジル/日)、不法移民を描いたハリソン・フォードの「正義のゆくえ I.C.E.特別捜査官」(Crossing Over・2009・米)、ジュード・ロウのSFアクション「レポゼッション・メン」(Repo Men・2010・米/加)、同じくSFアクション・シリーズの「プレデターズ」(Predator・2010・米)、アンソニー・ホプキンスの実話に基づくホラー「ザ・ライト[エクソシストの真実]」(The Rite・2011・米/ハンガリー/伊)と、そうそうたる作品がならぶ。美人で、アクションもできる芯の強さのようなものがある人。

 傭兵のボス、クルーガーはシャートル・コプリー。衝撃的なSFアクションの「第9地区」(District 9・2009・米/ニュージーランド/加/南ア)で主役を演じた人。その後ハリウッド大作の「特攻野郎Aチーム THE MOVIE」(The A-Team・2010・米)などを経て、本作へ至る。使っていた武器は、背中に担いだ日本刀、プロップのSF4連ミサイル・ランチャーなど。手榴弾で顔が飛ぶところはスゴイ。

 脚本・監督はニール・ブロムカンプ。1979年、南ア生れの34歳。劇場長編デビュー作が「第9地区」で、本作は2本目。この年齢でこれだけの大予算映画を動かすとは、まるで熟練のベテラン監督のよう。恐ろしいほどの才能の持ち主といえるだろう。どうも日本のロボットものとか、チャンバラが好きなような気がする。監督になる前は3Dのアニメーターをやっていたらしい。

 ほかに登場した銃器類は、警備部隊がM16A2らしきライフルとM4カービン、ガバメント、ベレッタM92など。アンダー・グラウンド組織はベレッタM93R、ミニミ、ポンプ・ショットガンなど。

 ちょっと気になったのは、字幕の解像度が低いようで、ジャギーが見えた。特に斜体になると目立っていた。ビデオじゃないんだから……。

 公開3日目の初回、新宿の劇場は全席指定で10分前くらいに開場。観客層は、下は中学生くらいから、若い人も結構いたがメインは中高年。男女比は6対4くらいで男性。最終的には301席に8割くらいの入りはさすが。

 気になった予告編は……上下マスク「ウルフ・オブ・ウォールストリート」はレオナルド・ディカプリオ主演で、とんでもない成金のことを描いたものらしい。26歳で49億円かせいだ? らんちき騒ぎに、金に、女に、銃……。いけすかない雰囲気。でも監督はマーティン・スコセッシ。12/20公開。

 上下マスク「47 RONIN」は新予告に。しかし内容というかいろいろなビジュアルが明らかになるほどに、日本ではなく中華の雰囲気が強くなってくるのが気になる。攻城戦風のシーンで攻める武者たちの鎧がどうにも中華風に見えて……。帆船が集まっているところも香港みたいな感じがするし……。これがアメリカ人の日本感ということなのだろうか。12/6公開。

 スクリーンが左右に広がり、やや上下が狭くなってから「キャプテン・フィリップス」は実話の映画化で、ソマリア沖の海賊を描いたものらしい。主演はトム・ハンクス、監督は9.11の実話を描いた「ユナイテッド93」(United 93・2006・仏/英/米)のポール・グリーングラス。予告だけで海賊に腹が立ってくる。11/29公開。

 「キャリー」は従来の長いバージョン。しかしシネスコだと迫力がある。オリジナル版を見た人は多いだろうが、このリメイク版は展開がわかってもなかなか怖そう。11/8公開。


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