Trance


2013年10月12日(土)「トランス」

TRANCE・2013・英・1時間41分/font>

日本語字幕:丸ゴシック体下、松浦美奈/シネスコ・サイズ(デジタル、ARRI)/ドルビーATMOS、DATASAT、SDDS

(米R指定、日R15+指定)

公式サイト
http://www.foxmovies.jp/trance/
(音に注意。クッキーをオンにしないと先が見られない。全国の劇場リストもあり)

ロンドンのオークション会社の社員で競売人のサイモン(ジェームズ・マカヴォイ)は、名画の盗難などに対処するため訓練を重ねていたため、オークションで2,750万ポンド(約40億円)の価格が付いたゴヤの「魔女たちの飛翔」が、突然、武装した乱入してきた男たちに強奪されそうになったときも、手順通りバッグに入れて地下の金庫へ速やかに運搬するが、直前で賊のリーダー、フランク(ヴァンサン・カッセル)に奪われる。とっさにスタンガンで応酬するが、ショットガンで殴られ気絶してしまう。サイモンが気付いたのは病院。やがて傷も治り退院することができたが、一部の記憶を失っていた。一方、アジトに戻ったフランク一味は、絵を入れたバッグを開けるが、中に入っていたのは額縁だけで、肝心の絵はなかった。すぐにサイモンの監視を始め、退院と同時に拉致し、拷問で吐かせようとするのだったが……。

73点

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 どんでん返しの、どんでん返し。二転三転する物語は面白いが、時間軸がバラバラな上、さらに催眠状態の世界と現実世界が入り交じっているため、実にわかりにくくなっている。それは公式サイトの写真が切り刻まれていることからもわかる。アメリカ版のメイン・ビジュアルもそんな感じだ。もうすこし普通に構成すればわかりやすくなっただろうが、この監督はそうしなかった。アートっぽくないし、チープになってしまう。どの辺で妥協するか。

 そしてどぎつい表現が満載。不快までは行かないが、ギリギリのライン。そして途中ちょっと中だるみもあって、眠たくなったが、衝撃的な作品ではある。やっぱりスゴイ監督ということになるだろうか。

 劇中主人公によって語られる「かつて絵画は女性のアンダー・ヘアーを描かなかった。ゴヤがそれをやり、以降アンダー・ヘアーが描かれるようになった」というのは興味深かった。そうなんだ。でも主人公はそれが気に入らないと。それでロザリオ・ドーソンが全裸でそれをガンバっているが、本当なのかデジタル処理なのかは絵が不鮮明でよくわからなかった。ボカシが掛かっていたのかもしれない。

 随所で出てくる高速道路のジャンクションの夜景は、脳の中の迷路を象徴しているのかもしれない。そして、バイオレンスにあふれていて、怖くて、だけどファンタジーという物語。タイトルの「トランス」とはトランス状態のトランスと同じで、催眠などで普通ではない精神状態になったことをいうらしい。ラストに出てくるのも「トランス」のボタン。押すのか、押さないのか。

サイモンはジェームズ・マカヴォイ。「ナルニア国物語/第1章:ライオンと魔女」(The Chronicles of Narnia: The Lion, the Witch and the Wardrobe・2005・米/英)のタムナスさんとは正反対のような役。さすが役者で、どちらも説得力があるのだからさすが。まあ実話に基づいてアミン大統領を描いた「ラストキング・オブ・スコットランド」(Last King of Scotland・2006・英/独/米)も強烈な映画だったが。つい最近、刑事アクション「ビトレイヤー」(Welcome to the Punch・2013・英/米)に出ていた。これから公開される作品が4本も控えている。

 催眠療法を用いる精神科医のエリザベスはロザリオ・ドーソン。「メン・イン・ブラック2」(Men in Black II・2002・米)でヒロインを演じた人だ。痛快B級アクションの「ランダウン ロッキング・ザ・アマゾン」(The Rundown・2003・米)や「シン・シティ」(Sin City・2005・米)、「グラインドハウス」(Grindhouse・2007・米)などに出ている。しかし全裸にまでなったのは本作が初めて。スタイル抜群。新作が短編も含めて10本もあるのだからスゴイ。

 フランクはヴァンサン・カッセル。悪役が多い人だから本作はピッタリ。意外さが生きる。古くは「ドーベルマン」(Dobermann・1997・仏)が強烈で、ミステー・アクション「クリムゾン・リバー」(Les rivieres pourpres・2000・仏)や、リアル・スパイ・アクション「スパイ・バウンド」(Agents secrets・2004・仏/伊/)などに出ている。最近では実話の「ジャック・メスリーヌ フランスで社会の敵(パブリック・エネミー)No.1と呼ばれた男 Part 1 ノワール編」(L'ennemi public n°1・2008・仏/加)、ナタリー・ポートマンがアカデミー主演女優賞を受賞した「ブラック・スワン」(Black Swan・2010・米)にも出ている。奥さんはイタリアの宝石モニカ・ベルッチ。

 脚本はジョー・アヒアナ(公式サイトの表記、ジョー・アハーン)とジョン・ホッジの2人。ジョー・アヒアナは主にTVで活躍している人で、脚本家としてより監督としての本数の方が多い人。劇場長編映画は初めての模様。ジョン・ホッジは「シャロウ・グレイブ」(Shallow Grave・1994・英)から「ビーチ」(The Beach・2000・米/英)までダニー・ボイル監督作品を多く書いている人。最近パッとしない感じだったが、本作でダニー・ボイル作品に復帰か。

 監督はダニー・ボイル。良くも悪くも強烈な印象を残す作品が多い。「トレインスポッティング」(Trainspotting・1996・英)で広く注目され、「スラムドッグ$ミリオネア」(Slumdog Millionaire・2008・英)でアカデミー賞監督賞を受賞。2012年のロンドン・オリンピックでオープニングの監督も務めた。

 登場する銃は、強盗シーンでヴァンサン・カッセルが使うのがポンプ・アクション・ショットガン。M870だったろうか。ストックに何かスペア弾かパイプ状のものがあった気がするが……。後半ではS&Wのゴム・グリップ付き4インチ・リボルバー。.357のM19かM27か。頭が吹っ飛ぶシーンは壮絶だった。

 公開2日目の初回、予定していた劇場での公開がなく、しかたなく銀座の劇場に。銀座の劇場も全席指定で、3館あるうちでは一番見やすい劇場だったので安心した。ムビチケで予約して、当日は20分前くらいに着いたらすでに開場済み。劇場は3Fだが、1Fのチケット売り場で予約番号を言ってチケットを発行してもらった。実は3Fの劇場にvitの機械があるのだが、1台しかないので行列になる。窓口の方が早いのだ。名前も言わなければならないけど。

 観客層は、やっぱり中高年メイン、やや高多めで、若い人は少々。男女比は半々くらい。10分前では224席に4割ほど。来るのが遅い人が多く、それからぞろぞろと増えていって最終的には8.5割ほどに。これは立派。ただ、もっと速く来いよ。10分前くらいからCM・予告が始まるんだから。

 半暗になって始まった予告編で気になったのは……まあ、とにかくタイトルが最後に一回一瞬出るだけのものが多すぎる。「予告」の意味をどう考えているんだろうか。作っている人の自己満足としか思えない。大事なのは「タイトル」「公開日」、めったに表示されないが「上映劇場」だろう。それが一瞬や出ないなんて……。

 上下マスクの「メイジーの瞳」はナレーションが日本語。両親が離婚したとかいう少女の物語らしい。ジュリアン・ムーアが出ている。

 上下マスクの「鑑定士と顔のない依頼人」は鑑定士が主人公のミステリーらしい。面白そうだが、劇場がなあ。12月公開。

 「ウォールフラワー」は「ハリー・ポッター」シリーズのエマ・ワトソンが出ている青春ものらしい。どうもコテコテの感じが気になるが……11/22公開。

 上下マスクの「ある愛へと続く旅」は、ペネロペ・クルス主演で、ジェーン・バーキンも出ている代理母の物語だとか。11/1公開。

 スクリーンが左右に広がってシネスコサイズになって本編へ。


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