The Conjuring


2013年10月13日(日)「死霊館」

THE CONJURING・2013・米・1時間52分

日本語字幕:手書き風書体下、佐藤真紀/シネスコ・サイズ(レンズ、in Panavision)/ドルビー・デジタル、DATASAT、SDDS

(米R指定、日PG12指定)

公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/theconjuring/index.html
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

1971年、アメリカ・ロードアイランド、ハスヴィルの野原の中の一軒家に娘5人と父のロジャー(ロン・リヴィングストン)母のキャロリン(リリ・テイラー)の7人家族が引っ越してくる。しかし愛犬のセイディは家に入ろうとせず、階段の下に地下室へと通じる階段が隠されているのが見つかり、夜中にドアが勝手に開いたり、下から二番目の娘のシンディ(マッケンジー・フォイ)は夢遊病を再発し、キャロリンの体には朝になるとアザができているなど、怪奇現象が続発する。それが次第にエスカレートしていく中、キャロリンは、マサチューセッツのウエスタン大学で霊と悪魔の講義をしていたエド・ウォーレン(パトリック・ウィルソン)とロレイン・ウォーレン(ベラ・ファミーガ)夫婦に「私の家を見て。このままでは殺される」と訴える。

74点

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 邦題はチープな超B級を思わせるもので、監督が「ソウ」(Saw・2004・米/豪)シリーズのジェームズ・ワンということで心配があったが、IMDbでは7.6点の超高評価。それで見ることに。そうしたら、実にていねいに撮ったホラーだった。第1作の「ソウ」の責任ではないのかもしれないが、2作目以降の「ソウ」シリーズにあったわざとらしい仕掛けや、単なる大きな音とかいきなり飛び出るとかの脅しで、それはホラーの怖いじゃないだろうというものが、本作ではあまりない(やっぱりいくつかはある)。しかも実話だ。

 実話ホラーというと、かつてのブームの時に「エクソシスト」(The Exorcist・1973・米)、本作でも少し触れられているが「悪魔の棲む家」(The Amityville Horror・1979・米)、最近だと「エミリー・ローズ」(The Exorcism of Emily Rose・2005・米)などたくさんあるが、だいたい実話系はおもしろい。

 発端があり、展開は徐々にエスカレートしていき、対決を経てすっきりさわやかな朝、青空になって解決を迎える。定石通りの堂々たるホラー。定石通りでもちゃんと最後まで引っ張っていって見せる。

 アメリカだと歴史がそれほど古くないから因縁話めいたホラーはないかと思うと、ヨーロッパでもあったように、魔女狩りというのがかつてあったらしい。それが一部で有名な「セイラム魔女裁判」。1692年、今のマサチューセッツ州のセイラム村で始まったらしい。100名を超える村人が告発されたという。それが1つのモチーフというか、本作の発端になっている。

 ただ、その魔女から悪魔へとつながり、悪魔が霊を操っているという話になり、結局は悪霊より悪魔が怖くて、神父のエクソシズムによって追い払われて解決に至るというところが、日本人的にはしっくりこない。そこが残念。実話だからしようがないのかもしれないが、霊だけにしてくれた方が怖くて良かった。ただ西洋人というかキリスト教徒は悪魔が一番怖いのかもしれない。

 出てくるだけで怖い感じが漂うキャロリンはリリ・テイラー。残念なホラー「ホーンティング」(The Haunting・1999・米)で似たような役を演じていた人。まさにホラーにピッタリ。ちょっとTV「NCIS:LA〜極秘潜入捜査班」(NCIS: Los Angeles・2009〜・米)シリーズのヘティ役などで知られるリンダ・ハントとか、007映画の中でも評価の高い「007/ロシアより愛をこめて」(From Russia with Love・1963・英)のナイフを仕込んだ靴で襲ってきたロッテ・レーニャなどと雰囲気が似ている。

 エド・ウォーレンはパトリック・ウィルソン。ショッキング・スリラー「ハードキャンディ」(Hard Candy・2005・米)で悪いフォトグラファーをやっていた人。旅客機墜落事故を描いたミステリー「パッセンジャーズ」(Passengers・2008・米/加)でも印象的な役を演じていた。ちょっと雰囲気がケヴィン・コスナーに似ている気も。最近見かけないなあと思っていたら、本作で見ることができた。

 その妻の霊能者ロレイン・ウォーレンはベラ・ファミーガ。エロティックな感じとホラーな感じと、クールな感じも持っていて、切り替えられる人のように見える。「15ミニッツ」(15 Minutes・2001・米/独)では娼婦役だったし、アクション・サスペンス「ワイルド・バレット」(Running Scared・2006・独/米)でも色っぽい人妻だった。「エスター」(Orphan・2009・米/加ほか)ではホラーな母親、SFミステリーの「ミッション:8ミニッツ」(Source Code・2011・米)やスパイ・アクション「デンジャラス・ラン」(Safe House・2012・米/南ア)では、女だてらのクールな役。

 三女のクリスティーンはジョーイ・キング。つい最近「ホワイトハウス・ダウン」(White House Down・2013・米)にチャニング・テイタムの娘役で出ていたばかり。

 実話を脚本にしたのは、チャド・ヘイズとケイリー・W・ヘイズの双子の兄弟。16歳の時から2人で脚本を書いているらしい。主にTV映画で脚本を担当し、リメイク・ホラーの「蝋人形の館」(House of Wax・2005・豪/米)で劇場長編映画を書いたようだ。続いてイナゴ少女の「リーピング」(The Reaping・2007・米)、南極を舞台にしたサスペンス「ホワイトアウト」(Whiteout・2009・米/加)を書いて本作に至る。同系統を一直線という感じ。ボク的には好きな作家。

 監督はジェームズ・ワン。「ソウ」を監督し一気にメジャーへ。しかしその後は製作総指揮が多く、あまり面白いものは作っていない。監督としては残念なホラーの「デッド・サイレンス」(Dead Silence・2007・米)、アクションらしいリメイクの「狼の死刑宣告」(Death Sentence・2007・米)と、パトリック・ウィルソンが主演したホラー「インシディアス」(Insidious・2010・米/加)は見ていない。だいたい人形を使うのが好きなようで、本作でも出てくる。またシネスコでも手持ちカメラをやっているが、ステディカムを使っているので、他の手持ちよりは気持ち悪くならずに見られるが、それでもやっぱり最低限に抑えるべきだろう。

 公開3日目の初回、新宿の劇場は全席指定で金曜に確保。当日は10分前くらいに開場になって場内へ。若い人から中高年まで割と幅広く、意外と若い人が多い。男女比は7対3くらいで男性が多かった。最終的に232席に4割ほどの入り。もっと入ってもいい気はする。

 気になった予告編は……特に新しい予告はなかった。もう何回も見たものばかり。せいぜいアニメの「劇場版魔法少女まどか・マギカ」が新しかったか。10/26公開。


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