Dead Man Down


2013年10月26日(土)「デッドマン・ダウン」

DEAD MAN DOWN・2013・米・1時間58分

日本語字幕:丸ゴシック体下、翻訳者表記なし/シネスコ・サイズ(デジタル、Arri)/ドルビー・デジタル

(米R指定)

公式サイト
http://deadmandown.jp/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

不動産を転がして利益をあげているギャングのボス、アルフォンス(テレンス・ハワード)の部下が殺される。部下の手の中には「おまえは知ることになる」というメモ、口の中には写真の一部が押し込まれていた。アルフォンスはメモの筆跡から、部下のダーシー(ドミニク・クーパー)やヴィクター(コリン・ファレル)を連れ、麻薬を扱うギャングを襲い全滅させる。どうにか無事部屋に戻ったヴィクターが窓の外に目をやると、向かいのビルの女性、ベアトリス(ノミオ・ラパス)と目が合い。お互い手を振る。やがて一緒に食事をすることになるが、ベアトリスはヴィクターが殺人を犯すところを目撃し、ビデオも録っていたと告げる。そして飲酒運転で自分の顔をこんなにした男を殺してくれと、そうでなければ警察に訴え出る、と言う。しぶしぶ引き受けざるを得なくなったヴィクターだったが、彼には内に秘めた秘密があった。

74点

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 悪党どもが登場し撃ち合いが始まって、ギャング映画かと思ったら、そこに交通事故で顔に醜い傷を負った女が登場し、恋愛ものらしい展開へ。ところが一転、それはミステリーの様相になり、徐々に謎が明かされていく。そしてついには復讐劇となり、そこに恋愛ものとしての要素が強く関わり、とんでもないアクションとなって大団円を迎える。そこには強い感情が流れ、強烈な映画に仕上がっている。驚いた。

 それぞれの要素がちゃんとうまく絡むようになっていて、ギャングの話で、出てくるのはほとんど悪党だとしても、どうにか感情移入できる。人によっては出来ない人もいるかもしれない。その辺で評価が分かれるかもしれない。問題解決に暴力を使うのだから。それも、正当防衛などではなく、明らかに違法な暴力。そこに目をつぶれればかなり楽しめる。良くできた物語だと思う。主役のヴィクターにも、ヒロインのベアトリスにも強い感情があふれている。それが良く伝わってくる。ただアルフォンス役のテレンス・ハワードが上品な感じで極悪人には見えないのが残念。

 しかもアクションが強烈だ。銃声は怖いし、容赦なくぶっ放す。ヨーロッパ系のギャングということで、通常のアメリカ映画ではあまり見かけない銃も出てくる。ベレッタM92やグロックに加えて、ハイパワー、ジェリコ941、AKのレール・カスタム(実際にはノリンコらしい)、イサカM37、ドラグノフという設定のルーマニアのFPKのレール・カスタム、TEC-9、クリス・ヴェクター、FN SCAR、S&Wの短銃身の大型リボルバー、スペインのスター・ファイアスターなど。アーマラーは映画のクレジットでは見当たらなかったが、IMDbによるとサム・アーサーズ。「アウトロー」(Jack Reacher・2012・米)を手掛けた人だ。かなかな面白い銃を持ってくる。

 ヴィクターはコリン・ファレル。アイルランドのダブリン出身で、そのせいなのか、どこか悪そうな雰囲気を秘めている人。2000年代に入ってから多くの話題作に出るようになって、一気に有名になったが、最近はB級が多いような感じ。ハリウッド・デビューは意外なことにジョウル・シューマカー監督の8mm作品のようなベトナム戦争新兵訓練映画「タイガーランド」(Tigerland・2000・米/独)。「S.W.A.T.」(S.W.A.T.・2003・米)や「マイアミ・バイス」(Miami Vice・2006・米/独ほか)に主演したが、最近の話題作は「トータル・リコール」(Total Recall・2012・米/加)くらい。なんだかリメイクものが多いのでは。使っていた銃はTEC-9、ドラグノフ(という設定のルーマニアのFPKカスタム)、クリス・ベクター、グロックなど。

 ベアトリスはノミオ・ラパス。最近はあちこちに引っ張りだこという感じ。「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」(Man som hatar kvinnor・2009・スウェーデンほか)で世界的に知られるようになったため、エキセントリックでキツイ役が多い。つい最近「パッション」(Passion・2012・独/仏)に出ていたばかり。確かに何かが起きそうな雰囲気を持っている。

 アルフォンスはテレンス・ハワード。ちょっと上品な感じで、ギャングのボスにはどうなのか。TVで活躍し、劇場長編映画デビューは感動音楽映画「陽のあたる教室」(Mr. Holland's Opus・1995・米)から。戦争ミステリー「ジャスティス」(Hart's War・2002・米)でコリン・ファレルと共演している。TVの「LAW & ORDER: LA」(Law & Order: Los Angeles・2010〜・米)では検事を演じ、その雰囲気がピッタリだった。

 ちょい役だが、大きな組織のボスはアーマンド・アサンテ。「探偵マイク・ハマー/俺が掟だ!」(I, the Jury ・1982・米)でマイク・ハマーを演じた人。カッコよかったが、最近は日本劇場未公開作品が多く、悪役が多いような。

 プロデューサーと脚本はJ.H.ワイマン。最初は役者としてTVに出演しており、それからTVの脚本やプロデューサーをやるようになり、有名なところではTVの「FRINGE/フリンジ」(Fringe・2008〜2013・米)を手掛けている。

 監督はデンマーク出身のニールス・アルデン・オプレヴ。ノミオ・ラパスの「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」を監督した人。どうりで強烈に迫ってくるわけだ。アメリカで「アンフォゲッタブル完全記憶捜査」(Unforgettable・2011〜・米)のパイロット版など3本の監督を務めて、本作に至るらしい。今後のハリウッド作品に期待したい。たぶん予算が増えていろんなことができるようになるだろうから。

 公開初日の初回、新宿の劇場は全席自由で、40分前位に着いたらまだ入口が開いていなかった。たむろっている人たちがいて、どこが先頭なのかわからない感じだったが、全員違ったようだ。30分前くらいにドアが開き、そのまま開場。最初は節電のためか場内が非常に暗く、本も読めないくらい。10分くらいしてやっとちょっと明るくなって、人が入って来始めた。予告が始まって暗くなった時点では588席に50人くらいいただろうか。中高年がメインで、ちょっと高寄り。若い人は数人という感じ。女性は1/6くらいいたか。

 関係者らしい一団が7〜8人ほど。多いって。ぺちゃくちゃしゃべってて、うるさいし。入りが少ない分、余計に目立っていた。

 暗くなって始まった予告編で気になったのは……前作は残念な感じだったが、アメリカでは受けたようで早くも続編が公開される。上下マスクの「マイティ・ソー ダーク・ワールド」は予告では前作よりもおもしろそうな感じ。ただ武器がハンマーっていうのが弱い気がするが、予告では前作より強そうに見えた。ひょっとすると……。ただ3Dだからなあ。2/1公開。

 巨大タンカーという監獄からの脱走を描く「大脱出」はシルベスター・スタローンとアーノルド・シュワルツェネッガーが共演するアクション。なかなか面白そう。1/10公開。

 上下マスクの「オーバードライブ」はドゥエイン・ジョンソンの主演アクションで、実話の映画化らしい。息子を助けるため、麻薬組織に潜入する父親を描くらしい。映画的な演出はあるにしても、こんなことがあったなんて。11/30公開。

 日本映画の「1000taku」というのは、どこで見ても1,000円らしい。ただ「風俗行ったら人生が変わった」、「I am ICHIHASHI」、「完全なる飼育」、「ケンとメリー」というのは、どれも食指が伸びないなあ……。

 上下マスクの「ゼロ・グラビティ」は非常にリアルな絵で、衛星軌道上のスペースシャトルの事故が描かれる。サンドラ・ブロックとジョージ・クルーニー。アメリカでは大ヒットしているようだ。緊張感があって非常に面白そう。監督はSFアクション「トゥモロー・ワールド」(Children of Men・2006・米/英)のアルフォンソ・キュアロン。この3Dは意味があるかも。12/13公開。


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