42


2013年11月2日(土)「42 世界を変えた男」

42・2013・米・2時間08分

日本語字幕:手書き書体風影付き下、松浦美奈/シネスコ・サイズ(デジタル、with RED)/ドルビー・デジタル、DATASAT、SDDS

(米PG-13指定)

公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/42movie/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

1945年、メジャー・リーグのブルックリン・ドジャースのGM、ブランチ・リッキー(ハリソン・フォード)は、UCLAで活躍する有望な黒人選手、ジャッキー・ロビンソン(チャドウィック・ボーズマン)を入団させる決心をし、まず3Aのモントリオール・ロイヤルズに入団させる。しかし当時は野球は白人のスポーツという概念が強く、特に南部では全く受け入れられなかった。リッキーは専属の記者として黒人のウェンデル・スミス(アンドレ・ホランド)を付けるが、彼も記者席に入ることすらできなかった。チーム・メイトからも一緒にプレーできないと署名嘆願書が出る始末。さまざまな嫌がらせや差別の中、ロビンソンはリッキーとの約束を守り、やり返さずプレーで実績を重ねていく。

73点

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 実話の映画化で、感動の物語。スポーツでも差別はあるし、かつてはグランドでは誰でも平等、ということはなかったと。いまでは完全に無くなったのか、それはわからない。しかし『全員が「42」の背番号をつければ、見分けは付かなくなる』というセリフが泣かせる。「やり返さない勇気」を持つ選手になれというセリフにも。そして実際にドジャースでは4月15日(初めて42番をつけてグラウンドに出た日)に、選手全員が42番の背番号をつけてプレーする。そのことだけでも泣ける。ほとんど新人のような主演のチャドウィック・ボーズマンもマジメでまっすぐそうな感じがして、ピッタリのイメージ。

 ただ、どうにも芝居がかっているというか、わざとらしいというのか、日本人的にはオーバーな感じがして、いまひとつ溶け込めない。壮絶な差別があって、トイレも別ならシャワーも別。野球は白人のゲームだと州によっては法律で試合をさせてもらえないとか…… かつては日本人も「カラード」のトイレを使わなければいけなかったとか、南アでは「名誉白人」で特別に白人用がOKだったとか、いろいろあるようだが。たしか「オーストラリア」(Australia・2008・豪/米)でも「犬と有色人種お断り」のバーが描かれていたりした。人種差別はアメリカだけの話ではない。本作では今ひとつ伝わってこなかった。戦争映画「セントアンナの奇跡」(Miracle at St. Anna・2008・米/伊)も差別は強烈だった。

 もちろん主人公であるジャッキー・ロビンソンという人が差別に耐え、ただ全力で良いプレーをすることによって、野球における黒人の地位を確立したという話なのだが、結局は太っ腹な白人GMのブランチ・リッキーがお膳立てをし、それを陰で推進していったということではないのか。本作は1945年から1947年の話。あとはエンド・ロールの時に文字でその後が出るだけ。そもそもマーティン・ルーサー・キング牧師のアフリカ系アメリカ人公民権運動によって公民権法が成立したのは17年も後の1964年だ。

 ジャッキー・ロビンソンを演じたのはチャドウィック・ボーズマン。舞台からTVへ出るようになり、「The Kill Hole」(2012・米)で劇場作品へ進出したものの、IMDbで2.6点という信じられないような低評価。その後が本作で、ほとんど新人に近い人。それが本作では良かったのかもしれない。このあと2本の作品が動いている。

 GMのブランチ・リッキーはハリソン・フォード。何だか特殊メイクで付け眉毛などをしていたようだが、やっばり老けた印象はある。1942年生れということは71歳だもんなあ。ちょっと前にSFアクションの「カウボーイ&エイリアン」(Cowboys & Alien・2011・米)で町の有力者を演じていた。このあと「インディー・ジョーンズ5」や「エクスペンダブルズ3」、「スター・ウォーズ7」が控えているらしい。すごいなあ。

 ドジャースのショート、ピーウィー・リースはルーカス・ブラック。どこかで見たなあと思ったら「ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT」(The Fast and the Furious: Tokyo Drift・2006・米/独)で主演していた人(高校生!)だった。

 脚本・監督はブライアン・ヘルゲランド。脚本がメインで、ときどき監督もやるという感じか。名作がたくさんある。たとえばレニー・ハーリン監督の出世作「エルム街の悪夢4/ザ・ドリームマスター最後の反撃」(A Nightmare on Elm Street 4: The Dream Master・1988・米)、アカデミー脚本賞を受賞した「L.A.コンフィデンシャル」(L.A. Confidential・1997・米)、監督もやった痛快中世騎士物語「ROCK YOU![ロック・ユー!]」(A Knight's Tale・2001・米)、イーストウッド監督作品の「ミスティック・リバー」(Mystic River・2003・米/豪)、痛快アクション「マイ・ボディガード」(Man on Fire・2004・米/英)など、など。ただ、その後がいまひとつというところ。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で金曜に確保。当日は10分ほど前に開場。観客のほとんどは中高年で、男女比は6対4くらいで男性の方が多かった。遅れてくるヤツが多く、確実にはわからなかったが、半暗になってCM・予告が始まった時点では232席に7割ほどの入り。まあまあというところか。

 気になった予告編は……ほぼ見たものばかりで新しいものはなかった。あえて挙げると「スクリーン・ビューティーズ」と題して、オードリー・ヘプバーンに続いてカトリーヌ・ドヌーヴの3本がデジタル・リマスター版で上映されるらしい。「暗くなるまでこの恋を」「恋のマノン」「シェル・ブールの雨傘」の3本。ベレッタM1934とは時代を感じさせる。

 エンド・クレジットで「42」番の本人の写真が出る。


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