Carrie


2013年11月9日(土)「キャリー」

CARRIE・2013・米・1時間40分

日本語字幕:フチ付き丸ゴシック体下、稲田嵯裕里/シネスコ・サイズ(マスク、with Panavision、IMDbではデジタル)/ドルビー・デジタル、DATASAT、SDDS

(米R指定、日PG12指定)

公式サイト
http://www.carrie-movie.jp/
(音に注意。入ると画面極大化。情報少ない。全国の劇場リストもあり)

極端に内気な女子高校生のキャリー・ホワイト(クロエ・グレース・モレッツ)は、クラスに溶け込めずにいたが、ある日、体育の後シャワーを浴びていると生理が始まり出血。生理を知らないキャリーは驚いて叫びを挙げ、クラスメイト達からタンポンを投げつけられ「栓をしろ」とはやし立てられる。クラスのいじめっ子のクリス(ポーシャ・ダブルデイ)はそれをケータイのビデオで撮影し、ネットに流す。自体は学校でも問題となり、クリスは停学となってしまう。クラスメイトのスー(ガブリエラ・ワイルド)は、自分もいじめに加わったことを悔やみ、償いをするため彼氏のトミー(アンセル・エルゴート)に、プロムにキャリーを誘うように頼む。一方、異常に厳しい母のマーガレット(ジュリアン・ムーア)に育てられたキャリーは、感情が高ぶるとものを動かすことができることに気付き、超能力の本を借りてきて研究を始める。

71点

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 うーむ。このリメイクで良いのか。キャリーの「イジメ」がいまひとつ描き足りない感じ。なにしろ美人なので、いじめられる実感がなく、もう少し描き込まれていないと、かわいそうさが出てこない。むしろ描かれているのは母親の異常さ、怖さで、全体として感じるのは、キャリーよりもキャリーの母親の方が立っている。とにかくこの母は怖い。

 そして、出てくる必要のない、事件の原因のような金髪の少女スーが、とにかくうざい。なんなんだ、この女は。そしてプロムに誘うイケメンのトミーがバカ男にしか見えなくて、ちっとも魅力的じゃない。IMDbでは6.4点。

 超能力も、それが初めて発現し、一番身近で見ている母にリアクションがないため、驚きや怖さがない。なにしろ母はそれ以上に怖いし。まるで普通のことのように母は受け入れている。エスカレートも早すぎて、すぐに何でもできるようになってしまうし。こういう話は小さなエピソードをじっくり描いて積み重ねていかないといけないのではないのかと思わされた。どんどんエスカレートしていって、最後に大団円を迎えるはずが、今ひとつの印象。ただ母だけはじっくり描かれていて、バランスが悪い。この映画は「キャリー」というより「キャリーの母」という感じ。

 キャリー・ホワイトはクロエ・グレース・モレッツ。本作の前に吸血鬼コメディの「ダーク・シャドウ」(Dark Shadows・2012・米/豪)に出ていたが、ブレイクした「キック・アス」(Kick-Ass・2010・英/米)以降は、同じ吸血鬼ものでもリメイクの「モールス」(Let Me In・2010・英/米)の方が強烈だった。「ヒューゴの不思議な発明」(Hugo・2011・米)以外、あまり良い作品に恵まれていない気も。「キック・アス2」に期待したい。

 ものすごい存在感の母マーガレットはジュリアン・ムーア。ここでは欧米人に多いそばかすさえもが怖さを増強している感じ。髪を振り乱した感じなど、とにかく怖い。SFアクションの「トゥモロー・ワールド」(Children of Men・2006・米/英)や謎の感染症によるパニックを描いた「ブラインドネス」(Blindness・2008・加/ブラジル/日)でも怖かった。

 まったくウザい存在でいない方がましな金髪美女キャラ、スーはガブリエラ・ワイルド。こんな役をやらされるなんて不幸だ。残念な「三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船」(The Three Musketeers・2011・独/仏ほか)で侍女のコンスタンスを演じていた人。作品に恵まれていない。

 原作はもちろんスティーヴン・キングの同名小説。そして最初にブライアン・デ・パルマ監督で「キャリー」(Carrie・1976・米)として衝撃的な作品になった。主演のシシー・スペイセクがまた何かにとり憑かれたようで良かった。それを同じ脚本家ローレンス・D・コーエンと、ロベルト・アギーレ=サカサが書いている。ローレンス・D・コーエンは「キャリー」のあともスティーヴン・キング作品を主にTVで「It/イット」(It・1990・米/加)など、作り続けている人。ロベルト・アギーレ=サカサはTVのガクエンミュージカル・コメディ「Glee」(Glee・2009〜・米)シリーズを書いている人。学園ドラマの部分を描き込みたかったのか。

 監督はキンバリー・ピアース。女性監督で、日本劇場公開されたものだと実話に基づいた「ボーイズ・ドント・クライ」(Boys Don't Cry・1999・米)があるが、その後はパッとしない感じ。本作に向いていたんだろうか。

 銃は出ない代わりに刃物はたくさん登場する。そして怖い。キャリーにぶっかける豚の血もナイフでやる。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、金曜に確保。当日は10分くらい前の開場で、ちょっと遅い。もっと早めに開けてくれないと。それでなくても遅れてくるヤツが多いんだから。232席に3.5割くらいの入りはちょっと少ない。若い人から中高年までわりと幅広い感じだった。女性は3割ほどか。関係者らしい人が1人いたが、この入りにがっかりしたのではないだろうか。まあこの出来では……。オリジナル版を見た人がもっと来るかと思ったんだけど。

 気になった予告編は……上下マスクの「エンダーのゲーム」はSFファンタジーでアクションということになるらしい。原作は有名な小説なんだとか。最弱ファンタジー「エラゴン遺志を継ぐ者」(Eragon・2006・米/英/ハンガリー)みたいなことにならないと良いが。1/18公開。

 上下マスクの「ゼロ・グラビティ」は、あたかも宇宙で撮影したようなリアル映像がスゴイが、ほとんどサンドラ・ブロックしか出てこない。ラストくらいでちょっとジョージ・クルーニーの声がするくらい。何か意味があるんだろうか。これはIMAX版があればそれで見た方が良いかも。12/13公開。

 あとはだいたい見慣れたものばかり。スクリーンが左右に広がり、暗くなって本編へ。


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