Kiyosu Kaigi


2013年11月10日(日)「清須会議」

2013・フジテレビ/東宝・2時間18分

シネスコ・サイズ(デジタル、Red)/ドルビー・デジタル


公式サイト
http://www.kiyosukaigi.com/
(全国の劇場リストもあり)

「本能寺の変」で織田信長(おだのぶなが、篠井英介)が死ぬ。羽柴秀吉(はしばひでよし、大泉洋)はすぐに兵を出し、謀反の首謀者、明智光秀(あけつみつひで、浅野和之)を討つ。このままでは秀吉に織田家を乗っ取られると、重臣の1人、丹羽長秀(にわながひで、小日向文世)は、筆頭家老の柴田勝家(しばたかついえ、役所広司)をたき付け、跡を継ぐ者を決めるため、清洲城に家来が集まって評定を開くことにさせる。しかし秀吉の提案により、大勢では混乱を来すので重臣4人で決めることになる。ただ四天王の1人、滝川一益(たきがわかずます、阿南健治)は戦場にいたため会議に出席することが難しいことから、かわりに池田恒興(いけだつねおき、佐藤浩市)が出席することになる。秀長と勝家は信長の三男、信孝(のぶたか、坂東巳之助)を推すが、秀吉は次男の信雄(のぶかつ、妻夫木聡)を推し、池田は立場を表明していなかった。そしてついに会議が開かれることに。

74点

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 よく出来た話。歴史を知っていないと楽しめないかと思ったが、さすが三谷作品だけあって、ちゃんとわかりやすくまとめられていた。それでも登場人物が多く、わからなくなるところはあったが。

 ギャグは結構笑えるし、2時間以上あるのでヒネリも効いている。単純な話ではないところが良い。ただ、やっぱり歴史を知っていたらもっとずっと楽しめたことは間違いない。

 単なる、ギャグをちりばめたコメディではなく、裏取引的展開が、現代の社会にも通じているようで楽しめる。武力によらず(って、身内の話なんだから当然なんだろうが)、交渉決裂にならずに、話し合いだけで収めると。そんなパワー・ゲーム。

 ただ、冷静に考えてみると、明るく屈託のないフランクな感じのさわやかキャラクター秀吉が、相当腹黒く、計算高いヤツだということ。そうでなければ天下など取れないだろうが、前半があまりにも良いヤツの感じなので、ラストではちょっと残念な感じも。感情移入しにくい。

 ボク的に良くわからなかったのは、最初だけちょっと出てきた中村勘九郎が演じる武将(信忠)が、どういう人なのか(後で公式サイトで見たら、信長の長男で、本能寺で父とともに死んだらしい)。それと「三谷ファミリー」の戸田恵子はどこに出ていたんだろう。ゲスト的な出演で、「ステキな金縛り」(2010・日)の更科六兵衛(西田敏行)も出てくる。

 一番面白かったのはメイク。小田家の一族は皆、コントの外国人のように鼻がでかい。それに対して木下家は耳が大きく、秀吉の妻、寧(ねい)だけは眉毛を剃っておらずイモト並に太く、お歯黒もなし。おみやげのラッキョウも良かった。

 傑作な「旗取り大会」で合図に使われているのはもちろん火縄銃。ほとんどビーチ・フラッグスだよなあ。笑ったけど。

 1人、遅れてくる滝川が出てくると、なぜか西部劇風の音楽になるのも笑わせてくれた。あと、たまに現代語調になるところもおかしかった。

 いつもの「三谷映画」のようにキャストは有名な人ばかりで、ほとんどオール・スター・キャスト状態。ちょい役で主役級の人が出ていたりする。今回も実に豪華。ただ、そのために端役にも意味があると思ってしまうところがこの方式のいただけないところ。芽が出ていない役者さんにもチャンスを上げられないし。

 羽柴秀吉は大泉洋。とぼけた味がたまらないが、さわやかな雰囲気なキャラなのに腹黒い役なので、どこかアンバランスだった。同じ年に「探偵はBARにいる2ススキノ大交差点」(2013・日)もやっていて、すごいなあと。

 柴田勝家は役所広司。最近では、ボク的には「聯合艦隊司令長官 山本五十六 -太平洋戦争70年目の真実-」(2011・日)が強く印象に残っているが、コメディもいける人で、ダイワハウスのCMはシリアス路線を逆手に取ったコンセプトで笑わせてくれる。ダイハツのCMも鈴木京香が出ていて「三谷」っぽい。ボク的にはやっぱり「KAMIKAZE TAXI」(1995・日)が忘れられない。もっと海外作品、ハリウッド作品にも出ていいと思うのだが、英語が問題なんだろうか。

 お市様は「三谷映画」常連という感じの鈴木京香。悪い役で、なかなかの存在感。メロドラマっぽいイメージがあって、本作の前の三谷映画は「ザ・マジックアワー」(2008・日)。

 お市様の対局にあるような秀吉の妻、寧は中谷美紀。中谷というと静かで小さな声で話すようなイメージ。どちらかといえば「陰」。ところが、狙いなのだろうが本作は「陽」。実に明るい。眉を太くし、カッペ感を増強している。このあと調シリアスな「利休にたずねよ」(2013・日)に出ているのだからすごいなあと。ただ古くはTVドラマ「ケイゾク」(1999)からコメディエンヌぶりは発揮していたが。

 そして、同じく狙いだろうが、お市様の侍女に瀬戸カトリーヌ。彫りが深い顔立ちで、和装になじまず浮いている感じがおかしかった。秀吉の貢ぎ物を平気で投げ捨てるのは笑えた。

 驚いたのは中村勘九郎。ほんの1シーンしか出ていないのでカメオ出演的。てっきり重要な役かと思った。

 脚本・監督は三谷幸喜。時代物も結構やっていてNHKの大河ドラマの「新撰組!」(2004)も前半は面白かったよなあ。本作の前の劇場作品が「ステキな金縛り」。だいたい2〜3年おきに作っている感じだろうか。過去に三谷作品の舞台がNHKで3本ほど放送されたことがあって、どれも面白かったが特に役所広司が宮本武蔵を演じた「巌流島」(1996)は面白かった。笑いすぎておなかが痛くなり、涙まで出た。あれくらいはじけているのは、もう作れないのかなあ。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で金曜に確保。当日はやっぱり10分前くらいの開場。遅いって。下は小学生くらいからいたが、メインは中高年。男女比は半々くらい。最終的に287席がほぼすべて埋まった。これは妥当なところだろう。もっと大きいスクリーンでも良かったかも。シネスコ・サイズなんだし。

 気になった予告編は……上下マスクの「土竜の唄 潜入捜査官REIJI」は、いきなり全裸の生田斗真が車のボンネットに縛り付けられて登場するというショッキングなもので、脚本:宮藤官九郎、監督:三池崇史という顔合わせで、高橋のぼるの「土竜の唄」漫画が原作だという。「土竜」は「もぐら」と読むらしい。まあ、かなりぶっ飛んでいるようだ。2/15公開。

 遅れて入ってくるヤツが多く、携帯を煌々と光らせてライト代わりに入ってくるって……あきれるばかり。

 スクリーンが左右に広がってから「永遠の0」の新予告。なかなかの迫力で、だんだんストーリーがわかってきた。原作を読んでいる人には先刻ご承知だろうが。おじいちゃんのことを調べていて、海軍一の憶病者だったといわれて…… しかし「何があっても、最後まで生き残る努力をしろ」とか、サザンの曲が心に響いて、予告だけで泣いてしまいそう。12/21公開。

 暗くなって本編へ。巻物を使って状況を説明するあたりは見事な手法。それがアバンになっていてかなり長いが、タイトルが出るときにはジャーンという高揚感がある。うまい。画質も音質も良い。


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