The Counsler


2013年11月17日(日)「悪の法則」

THE COUNSELOR・2013・米・1時間58分(IMDbでは117分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、松浦美奈/シネスコ・サイズ(デジタル、With Red)/ドルビー・デジタル、DATASAT

(米R指定、日R15+指定)(日本語吹替版もあり)

公式サイト
http://www.foxmovies.jp/akuno-housoku/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

若くて有能な弁護士でカウンセラーと呼ばれる男(マイケル・ファスベンダー)は、愛する女ローラ(ペネロペ・クルス)のためにわざわざアムステルダムまで行き、最高級の3.9カラットのダイヤの指輪を購入すると、結婚を申し込む。大金が必要になるため、法律顧問を務める実業家のライナー(ハビエル・バルデム)から、麻薬の仲買人ウェストリー(ブラッド・ピット)を紹介してもらい、麻薬ビジネスに投資することを決める。そんなとき、刑務所に収監されている女ルーシー(ロージー・ペレス)から息子がバイクのスピード違反で捕まったので保釈金400ドルを支払って欲しいと依頼され、借りがあったことからその保釈金を支払う。そしてメキシコから汚水処理社のトラックの中に隠して密輸された大量の麻薬が運ばれてくる。トラックのキーをルーシーの息子がバイクで運ぶが、何者かの待ち伏せで殺害され、キーを盗まれ、トラックも持ち去られてしまう。ウェストリーはライナーとカウンセラーに、すぐに逃げるように連絡する。組織は言い訳など聞いてくれないというのだ。みんな道連れになると。そして殺戮が始まる。

72点

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 悪でも、上には上がある。そしてシロートが悪に手を出すととんでもないことになる。とくにメキシカン・マフィアなどが絡む麻薬絡みで大金の動くヤバい山には近寄るなと。ちょっとしたことで引き返せなくなる。人生が終わってしまう。半端な悪など簡単に飲み込まれて、言い訳どころか説明さえ聞いてもらえないと。まさに破滅への道。そして、死を身近で見つめることになる。

 あまりに壮絶すぎて、気持ちが悪くなる。前振りがあって、マフィアにはこんな処刑の仕方があって恐ろしいとか話しておいて、それが後で実行されるのだ。ボリート、スナッフ・フィルム……かなりの残酷度。

 ただストーリーがわかりにくい。ボクの頭では付いていけない。弁護士であるカウンセラーは、どんな犯罪に手を染めているのか。何に関わっているのか。そして、キャメロナ・ディアスは誰と話しているのか。映画の後、コロナンビアン・マフィアと戦争になるのか。

 そして怖がらせるためなのだろうが、前振りが長く、ちょっと眠くなる。バランスが悪い。前振りが長くて、良くわからないまま物語が展開し、もわっと終わる。起承転結が明確でなく、良く言えば流れるように進んで終り、悪く言えばだらだらと進んで終わる。よく名監督となった人が老齢となって作るパターンという気がした。過激さは残っているがキレが悪いというか。そんな印象。

 カウンセラーはマイケル・ファスベンダー。何と言っても整った顔の二枚目。父がドイツ人で母が北アイルランド人なんだとか。豪華なスピルバーグのTVドラマ・シリーズ「バンド・オブ・ブラザース」(Band of Brothers・2001・英/米)にドイツ兵役で出ていたらしい。そして「300 <スリーハンドレッド>」(300・2007・米)でスクリーン・デビュー。大きく注目されたのはタランティーノ監督の「イングロリアス・バスターズ」(Inglourious Basterds・2009・米/独)から。すでにベテランの雰囲気。つい最近、同じリドリー・スコット監督の「プロメテウス」(Prometheus・2012・米/英)にアンドロイド役で出ていた。

 その彼女ローラはペネロペ・クルス。トム・クルーズと噂になったこともあったが、ハビエル・バルデムと結婚している。結構際どいベッド・シーンはやりにくかったのでは。スペイン映画で活躍し、「オープン・ユア・アイズ」(Abre los ojos・1997・西)などを経てハリウッド映画デビュー。「コレリ大尉のマンドリン」(Captain Corelli's Mandolin・2001・英/仏/米)や「サハラ死の砂漠を脱出せよ」(Sahara・2005・英/西ほか)などに出て、「パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉」(Pirates of the Caribbean: On Stranger Tides・2011・米)の後はアート系の作品が続いた。「それでも恋するバルセロナ」(Vicky Cristina Barcelona・2008・西/米)でハビエル・バルデムと共演。本作と同じ原作者の「すべての美しい馬」(All the Pretty Horses・2000・米)にも出ている。

 実業家のライナーはハビエル・バルデム。いかにもスペインの俳優という感じ。見ていないがスペイン時代にも「ハモン・ハモン」(Jamon, jamon・1992・西)でペネロペ・クルスと共演している。しかし、とにかく強烈だったのは、本作と同じ原作者の「ノーカントリー」(No Country for Old Men・2007・米)。そして「007スカイフォール」(Skyfall・2012・英/米)も素晴らしい悪役で強烈だった。

 その彼女、チータだか豹だかジャガーだかわからないが(IMDbのスタッフ・リストにチーター・ハンドラーという役の人がいた)、飼っている猛獣に似たメイクが異様な雰囲気のマルキナはキャメロン・ディアス。ジム・キャリーの「マスク」(The Mask・1994・米)でスクリーン・デビュー。同じくコメディの「メリーに首ったけ」(There's Something About Mary・1998・米)でブレイク、「チャーリーズ・エンジェル」(Charlie's Angels・2000・米/独)シリーズでもコミカルな役をやっている。「オープン・ユア・アイズ」のハリウッド・リメイクの「バニラ・スカイ」(Vanilla Sky・2001・米/西)でペネロペ・クルスと共演している。最近「モネ・ゲーム」(・2012・)でテキサスの芋ネーチャンを見事に演じきっている。本作に笑いは全くなし。むしろ恐ろしい。プール・サイドでのカットを見るとかなり胸が大きそうに見える。それにしても車とファックって。しかもヘアを剃っていて、ナマズのようだったって。

 麻薬の仲買人ウェストリーはブラッド・ピット。最近は製作も兼ねることが多いが、その「ジャッキー・コーガン」(・2012・)は今ひとつで、意外なゾンビ映画「ワールド・ウォーZ」(World War Z・2013・米/マルタ共和国)は良かった。製作総指揮のみで出演していない「食べて、祈って、恋をして」(Eat Pray Love・2010・米)ではハビエル・バルデムが出演している。製作を務めた「キック・アス」(Kick-Ass・2010・英/米)もスマッシュ・ヒット。続編がまもなく公開される。使っていたパソコンはiMac。

 ちょい役で「ヒトラー〜最期の12日間〜」(Der Untergang・2004・独/墺/伊)のブルーノ・ガンツ、「セントアンナの奇跡」(Miracle at St. Anna・2008・米/伊)のジョン・レグイザモもノンクレジットで出ている。

 脚本・製作総指揮はコーマック・マッカーシー。1933年生れの80歳。現代アメリカ文学の巨匠だそうで、映画化された作品も多い。「すべての美しい馬」、「ノーカントリー」、驚くほど暗くてバッド・エンディング・ムービーの10作品に入った「ザ・ロード」(The Road・2009・米)などの原作を書いている。本作は初の劇場長編映画の脚本ということになるらしい。この年齢でこの過激な内容。ただ、わかりにくい気はする。

 製作・監督は巨匠リドリー・スコット。つい最近、大傑作の正統続編「プロメテウス」(Prometheus・2012・米/英)を監督したばかり。本作は撮影途中で弟のトニー・スコットが自殺するという悲劇が起き、しばらく中断したと聞く。そんなことがありながら、ちゃんとまとめるのはさすがプロ。監督作よりプロデューサーとして手掛けた作品の方が2.5倍くらいにもなる。「エイリアン」(Alien・1979・米/英)や「ブレードランナー」(Blade Runner・1982・米/香/英)はもはやクラシックの名作。「ブラックホーク・ダウン」(Black Hawk Down・2001・米/英)も戦争映画の傑作の1本だろう。日本人的には「ブラック・レイン」(Black Rain・1989・米)も忘れられない。3.11のドキュメンタリー「JAPAN IN A DAY [ジャパン イン ア デイ]」(Japan in a Day・2012・英/日)の製作総指揮もリドリー・スコットだ。

 銃は、トラックをニセパトカーが遅うシーンでは、タウルスPT92シルバー、マイクロ・ウージー、たぶんM1911シルバー。なかなか怖い撃ち合い。変にカッコつけていない分、リアルで本当に弾が飛んでいる感じ。ハビエルが撃たれるのはたぶんベレッタM92。メキシコの軍の装甲車にはM2重機。アーマラーはロケ地によって違うと思うが、ジュアン・アレドとかいう名前しか読み取れなかったが、名前の感じだとスペイン担当だろうか。IMDbではリード・アーマラーがリチャード・フーパー。これから公開される「REDリターンズ」(Red 2・2013・米/仏/加)や、「007スカイフォール」(Skyfall・2012・英/米)を手掛けている人。クレジットなしだが「プロメテウス」で監督と仕事しているらしい。もう1人のアーマラーはジョス・スコットウ。ほぼリチャード・フーパーと組んで仕事をしているようだ。

 オープニングのクレジットの文字が黒バックで、特定の文字だけ残ってズレていくというしゃれた見せ方。IMDbにはないがエンド・クレジットにはMOMOCOとあった。

 タイトルのカウンセラーは、日本では悩みなどの相談にのってくれる人のことだが、アメリカでは弁護士のこともさすらしい。

 公開3日目の初回、六本木の劇場は全席指定で、ムビチムケで金曜に確保。当日は10分前に開場。若い人から中高年までと意外に幅広く、男女比もバイオレンスものなのに半々くらい。最終的には369席の6割くらいが埋まった。

 気になった予告編は……上下マスクの「47 RONIN」は、ビデオ・メッセージ付きの新予告に。しかし見れば見るほど「中華」な雰囲気が漂う。うーむ、どうなんだろう。ヤバイ雰囲気。ハリウッドの勘違い映画でなければいいが。「ラスト・エンペラー」じゃないんだから……。字幕監修は冲方丁とあったと思う。12/6公開。

 上下マスクの「RUSHプライドと友情」も新予告に。カー・レース好きな人にはたまらないだろう。ただ、ボクのような人間には重そうな感じで、いまひとつピンと来ない。2/7公開。

 上下マスクの「ホビット2」は正しくは「ホビット 竜に奪われた王国」だそうで、竜を「スター・トレック イントゥ・ダークネス」のベネディクト・カンバーバッチが演じるだとか。でもなあ、やっぱり「ロード・オブ・ザ・リング」ファン向きという気も。2/28公開。

 絵はないが「アメイジング・スパイダーマン2」も公開されるそう。悪役はエレクトロでジェイミー・フォックスが演じる。どうだろう。4/25公開。

 「ジュラシック・パーク4」こと「ジュラシック・ワールド」も絵なし、3Dで夏に公開予定(2015年?)。スピルバーグといっていたが……。監督するんだろうか。

 もっと信じられないのは「トランスフォーマー4」となる「トランスフォーマー ロスト・エイジ」。またまたマイケル・ベイ。アメリカでは受けるのか。子供に人気?とか……。理解できない。夏公開。監督のツイッターだかフェイスブックで写真を公開しているらしい。どうでもいいけど。

 なんだか前作は大騒ぎしていたような気がする続編「神様のカルテ2」は3/21公開。

 アニメの「ルパン三世VS名探偵コナンTHE MOVIE」は子供に大受けだろう。12/7公開。

 少し上下マスクの「LIFE!」も新予告に。ダニー・ケイのポキタポキタ「虹を掴む男」(The Secret Life of Walter Mitty・1947・米)のリメイク。なんだか人生とか、ドラマの方のシフトしての予告はどうなんだろう。3月公開。

 スクリーンが左右に広がって、海賊版の後、暗くなって本編へ。


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