Gravity


2013年12月15日(日)「ゼロ・グラビティ」

GRAVITY・2013・米・1時間31分

日本語字幕:シャドー付き丸ゴシック体下、松浦美奈/シネスコ・サイズ(デジタル、Arri Alexa)/ドルビー・デジタル、DATASAT、SDDS(IMDbではドルビーAtmosも)

(米PG-13指定)(3D上映、日本語吹替版、IMAX版もあり)

公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/gravity/
(音に注意。全国の劇場リストもあり。情報少ない)

スペース・シャトル「エクスプローラー」は、地球上空600kmでハッブル望遠鏡の修理を行っていた。実際の作業は、これが初ミッションとなるエンジニアのライアン・ストーン博士(サンドラ・ブロック)が行い、それを今回が最後のミッションとなるベテラン宇宙飛行士のマット・コワルスキー中尉(ジョージ・クルーニー)がサポートしていた。そのときNASAのミッション・コントロール(声:エド・ハリス)から無線連絡が入り、ロシアが自国の衛星をミサイルで破壊したため、その破片がほかの衛星に当たり、連鎖反応を起こして大規模な破片群となり、まもなくシャトルを襲うからすぐに船内に避難しろという。船外にいた2人はもどれないまま破片群に襲われてれ、シャトルは大破。2人とも宇宙空間に飛ばされてしまうが、セルフレスキュー用推進装置を付けたマットにより救われてシャトルにもどる。ところがほかの乗組員は全員死亡。生存者は2人のみだった。地球に帰還するため、2人は宇宙ステーションISSに向かうことにする。

85点

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 絵がすごい! そして感動的で怖い映画。あまりにもリアルな宇宙空間。宇宙飛行士ってこんなに危険なことをやっていたんだと、実感できたような感じ。終わって、出て行く観客から聞こえてきたのは「宇宙こえー、絶対、行きたくねえ」という声。確かに、ボクもそんなふうに思った。主人公もラストにそう言っているし。とにかく命綱が大事。何をやるにも、先ず命綱をつないでからやるべきだし、手に持つものはすべてヒモを付けて、手に縛りつけておいた方が良さそうだ。そして慣性の恐ろしさ。ちょっと押しただけで止まらなくなってしまうんだぁ。スペース・デブリ、銃弾以上に威力があって、怖過ぎ。

 ただ、それでも宇宙に行く人はいるし、日本人でも何回も行っている人もいるし、長期間滞在している人もいるし。だふん宇宙飛行士の皆さんは、これくらいの怖い思いはされているのではないだろうか。本当に命がけの仕事だ。あらためて尊敬してしまう。

 一体どうやって撮ったのか。凄いビジュアル。カメラが固定点から捕えていたかと思うと、被写体と一緒に回転を始めたり、カメラが接近していって、ヘルメットの中に入って向きを変え主観になったり。美しく、本当に宇宙から見た地球のような映像。そしてその場で撮ったようなリアルなスペース・シャトルに宇宙ステーション。ヘルメットのシールドに写り込む地球やシャトル……息でくもるし。本当に目が回るような感覚になる。

 音の使い方も実にうまい。実際には宇宙空間では空気がないので音は聞こえないはずだが、まったく違和感がない。そしてタイミング良く音が無くなって、いきなり不安を感じさせたり、爆発が起きて大音響が響いたり。さらにNASAとの通信や、宇宙飛行士同士の通信はサラウンドで、あちこちから声が聞こえてくる。

 ただ、3Dの立体感はほとんどなし。スペース・シャトル内や宇宙ステーション内はせまく、宇宙空間は近景と遠景しかない。だから立体感が出にくい。たぶん3Dカメラで撮影していないのではないだろうか。後付けでCG処理したのではと思わせるくらい、立体感はない。あえていえば、めまい状態には3D上映の方がなりやすいだろう。それによって主人公の不安感はより伝わってくる。字幕が最も立体感があった。あるいはIMAX劇場か2D上映館で見た方がいいのかも。

 似たような映画は「アポロ13」(Apollo 13・1995・米)や「宇宙からの脱出」(Marooned・1969・米)などがあるが、本作が臨場感がある分、一番怖いかも。これは技術が進歩した今だからこそ作れた映画かもしれない。

 劇中、ロシアが衛星をミサイルで破壊したために破片がたくさん生じて事件が起きるが、実際に衛星を破壊して問題になったのは中国だったのでは? 本作では助けを求める宇宙ステーションが中国魔いうことになっているけど……。

 最も感動したのは、何度も困難を乗り越えたのにまた困難が襲い、諦めて酸素をカットして眠ってしまうライアンにマットが言うセリフ。「そうやって、いつまでも船内にいれば安全だし、誰も君を傷つけない。しかしそれで生きている意味はあるか。もう逃げるのはよせ」これは心に響く。

 ほとんど独り芝居のライアン・ストーン博士はサンドラ・ブロック。「女なのにライアンとはな」とコワルスキーに言われる。「スピード」(Speed・1994・米)の大ヒットで一躍スターに。2000年くらいからプロデューサーもやるように。「デンジャラス・ビューティー」(Miss Congeniality・2001・米/豪)などアクション・コメディ系が多いような。役柄どおり、美人なのに飾らない感じで、日本に来て相手が名乗った後、自己紹介するときは「クレイジーなアメリカ人よ」と良く言っている。ラジー賞を受賞したときは、ちゃんと会場へ行ってトロフィーを受け取ったことでも知られる。偉いなあ。最後にスクリーンで見たのは、ちょっと残念な「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」(Extremely Loud & Incredibly Close・2011・米)のママ役か。

 映画の大原則、途中で死ぬ役はカッコよくておいしい。本作も同様。ぺちゃくちゃよくしゃべるのが複線になっているところもまた憎い。マット・コワルスキー中尉はジョージ・クルーニー。やはり2000年くらいからプロデューサーや監督、脚本まで手掛けるように。TVドラマ「ER緊急救命室」(ER・1994〜2009・米)で注目され、以降多くの作品に出ている。最近では話題作「スーパー・チューズデー〜正義を売った日〜」(The Ides of March・2011・米)で監督、製作、脚本、出演と4役をこなしている。

 脚本は、監督も務めるアルフォンソ・キュアロンと息子のホナス・キュアロン。そしてクレジットはされていないが、IMDbによるとジョージ・クルーニーも脚本に協力しているらしい。コワルスキー中尉のしゃべりまくるエピソードなどがそうなのかもしれない。ホナス・キュアロンは本作が初めての大作の脚本らしい。どの程度関わっているのか、良くわからない。

 製作・監督・脚本・編集はアルフォンソ・キュアロン。1961年のメキシコ生れ。話題作「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」(Harry Potter and the Prisoner of Azkaban・2004・英/米)も撮っているが、子供が産まれなくなった未来を描く「トゥモロー・ワールド」(Children of Men・2006・米/英)は衝撃的だった。本作も衝撃的。

 設定はリアルで、スペース・シャトルは1981年の初飛行STS-1から始まっているそうで、本作ではSTS-157となっている。実際には2011年の135回で終了している。船外活動の最長記録は2001年のスーザン・ヘルムズとジャニス・ヴォスによる8時間56分が最長らしい。また2008年、中国の宇宙飛行士が初の宇宙遊泳を行ったのは神舟7号からだそうで、本作で中国の宇宙ステーションは「天宮」で、宇宙船は「神舟(シェンズー)」。

 公開3日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、金曜に確保。当日は10分前くらいに開場。観客層は若い人から中高年まで幅広く、下は小学生くらいからいた。スペース・デブリが当たって顔に穴が開いた死体も出るが、大丈夫なのか。男女比はほぼ半々。607席に、予告が始まった時点で6.5割くらいの入り。

 3D上映のためメガネを渡されたが、いままでのものと替わって、同じ液晶式でもちょっと安っぽいものになり、差額は400円に。それはありがたいことだが、メガネにカーブが着いていないのでフィット感が良くない。そして電源スイッチは自分で入れなければならないのだが、目印のようなものが何もないので、オンになっているかどうかわからない。オンにして渡せば良いではないか。それとも電気消費量が激しいのか。あちこちで「めんどう」とか「入っているかわからない」という声が聞こえた。しかも、レンズに指紋が付いていて汚い。眼がねクリーナーで拭いたが、300円安くなるとセルフ・クリーニングか。これだったら300円だったかのお持ち帰りOKのメガネの方が、袋入りだし、効果も変わらないし、良い。

 気になった予告編は……上下マスクの「黒執事」は新予告に。なんだかガバメントをぶっ放していた。剛力彩芽はちょっと違和感があるが、なかなかおもしろそうな雰囲気。うむむ。1/18公開。

 スクリーンが左右に広がってから「レゴムービー」は以前からネットなどで話題になっていたレゴ社の動画が劇場版になったような感じか。いろんなキャラクターが登場するらしい。3月公開。

 3Dメガネを掛けてから「ホビット 竜に奪われた王国」は新予告に。ティーザーではわからなかったが、意外と面白そう。ほとんど「ロード・オブ・ザ・リング」という感じだけど。2/28公開。


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