Eien no Zero


2013年12月21日(土)「永遠の0」

2013・東宝/アミューズ/アミューズソフトエンタテインメント/電通/ROBOT/白組/阿部秀司事務所/ジェイ・ストーム/太田出版/講談社/双葉社/朝日新聞/日本経済新聞社/KDDI/TOKYO FM/日本出版販売/GyaO!/中日新聞社/西日本新聞社・2時間24分

日本語字幕:手書き書体下/シネスコ・サイズ(デジタル、RED)/ドルビー・デジタル


公式サイト
http://www.eienno-zero.jp/
(全国の劇場リストもあり)

2004年、祖母の葬式を機に、フリー・ライターの佐伯慶子(吹石一恵)は、司法試験に失敗し落ち込んでいる弟の佐伯健太郎(三浦春馬)をアルバイトに雇い、ほとんど何も知らない血のつながった本当の祖父、特攻でなくなった宮部久蔵(岡田准一)について取材を始める。手始めにあちこちに戦友会に手紙を出し、知っている人はいないか問い合わせて話を聞くが、ほとんど「海軍一の憶病者で、戦闘から逃げていた」という話ばかり。2人は気落ちして、取材をやめかけたとき、末期癌で入院中の井崎(橋爪功)から思わぬ話を聞く。宮部は自分の小隊長で、空戦はいつも避けていたが、腕は立ったと言う。そしてゼロ戦の話、1941年の真珠湾攻撃から1942年のミッドウェー海戦、ラバウル航空隊への配属、ガダルカナル島での激戦などを話して聞かせるのだった。そして祖父が祖母に「必ず生きて帰る」と約束していたことを知る。

83点

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 泣いた。両目から涙が…… 恥ずかしい。3カ所くらいそんなところがあって、自然と涙があふれてしまった。当時、この主人公のような考え方をする人はほとんどいなかったと思うが、説得力があって、実話の映画化のように思わされてしまう。2時間24分はちっとも長くない。

 基本的には戦争映画で、しかも1941年の太平洋戦争の開戦から終戦後までを、順を追って描いている。しかしそれよりも感じたのは、夫婦愛であり、親子愛だ。妻を、そして娘を守りたいという強い思い。それがメインで、戦争という極限状況を舞台に、巧妙にテーマを織り込んでいったと。夫婦愛や親子愛を前面に出した普通のドラマよりすっと入ってくるし、強く訴えかけてくる。そして考えさせられる。非常にうまいと思う。

 原作は読んでいないが、たぶん読んでいない方が楽しめるのではないだろうか。若い人が自分の祖父のことを知りたいと、かつて関わった人や場所を訪ねるというのはよくあるパターンで、「男たちの大和/YAMATO」(2005・日)でも全く同じ導入だった気がする。そして見どころの1つとなるのが、原寸や模型、そして3D-CGで作られた兵器(本作では零戦)。空中戦をリアルに、スリリングに、アクロバティックに再現しているが、残念なマイケル・ベイの「パール・ハーバー」(Pearl Harbor・2001・米)ほどやりすぎていない。そこも好感が持てる。

 もちろん兵器や戦闘シーンに関しては突っ込みどころはあるだろう。しかし、ボクはほとんど気にならなかった。ムスタングなんかはちゃんと発砲した薬莢をばらまいていたし、リアルだった気がした。ただ、一部、明らかにCGだろうというところも何カ所かあった。空母も、実際の船を走らせてそこに合成したものはリアルだったが、一部実写の海の上に張り付けただけのようなカットもあり、人間も明らかにCGという感じだったり、やっぱりハリウッドにはかなわないのかとか残念だったり、CGの同じシーンがあったり、現実に引き戻される感じがしてそちらのほうが気になった。それ以外は非常にフォトリアリスティックで素晴らしいのに。時間切れだったのだろうか。

 宮部久蔵は岡田准一。本作のイメージにピッタリの感じ。ただ、戦闘に参加しないというのは、どうなんだろう。やはり当時ではあり得ない気がするが、家族を守りたいというのは良く伝わってきた。つい最近「図書館戦争」(2013・日)に出ていたばかり。その前の「SP」(2010・日)で格闘技をものにしていて、本作ではあまり関係ないが、アクションはおまかせという感じ。NHKの2014年の大河ドラマ「軍師官兵衛」で主演を演じる。大活躍で、今一番の注目俳優だろう。

 その妻、松乃は井上真央。貧しい暮らしでも凛とした感じがあって良かった。「謝罪の王様」(2013・日)にも出ていたらしいが見ていない。TVの「花より男子」(2005)のようなコメディから「八日目の蝉」(2011・日)のような暗いドラマまで、なんでも演じている。ボク的には「怪談」(2007・日)が印象に残っている。

 祖父の佐伯健一郎は夏八木勲。今年5月に亡くなったので、本作が遺作となるのだろうか。2013年は本作のほかに「脳男」(2013・日)、「ひまわりと子犬の7日間」(2013・日)、「そして父になる」(2013・日)と合計4本もの作品に出ている。かつての角川映画に良く出ていて、注目されたのは「白昼の死角」(1979・日)あたりではなかっただろうか。

 その娘で母の清子は風吹ジュン。NHK大河ドラマ「八重の桜」(2013)で八重の母親を演じていた。この人もベテランだが2013年、「八重の桜」のほかに「そして父になる」など映画4本に出ている。

 あまり活躍しないが姉のフリー・ライター佐伯慶子は吹石一恵。まあ美人だこと。「あの、夏の日 〜とんでろ じいちゃん〜」(1999・日)が強く印象に残っている。たしかデビュー作ではなかったか。

 佐伯健太郎は三浦春馬。これまた役柄にピッタリの雰囲気。子役としてデビューしたというから若くても芸歴は長い。TVが多いようで、ちょっとイメージとして岡田将生とダブるものがある気もするが……。

 末期癌で入院中の井崎は橋爪功。もちろんいい味を出していて、泣かせるが、特に良かったのはヤクザの親分らしい特攻隊の護衛をやっていた景浦の田中泯。ヤクザの親分らしい剣呑な感じというのか、殺気のような放たれる雰囲気が尋常ではなかった。残念な中華テイストのハリウッド時代劇「47RONIN」(47 Ronin・2013・米)でアサノタクミノカミを演じていたが、同じ人とは思えない。「外事警察 その男に騙されるな」(2012・日)の在日2世役も強烈で良かった。

 ほかに予備士官で「リアル〜完全なる首長竜の日〜」(2013・日)の染谷将太、生き残って病院でインタビューに答える井崎に「謝罪の王様」(2013・日)の濱田岳、後にヤクザになる景浦に、目つきが実に怖かった「アウトレイジビヨンド」(2012・日)新井浩文。まあ豪華。

 原作は放送作家にして、ベスト・セラー作家の百田尚樹。本作がデビュー作らしい。この前に「ボックス!」(2010・日)と「モンスター」(2013・日)が映画化されている。脚本は、監督でもある山崎貴と林民夫。林民夫はアニメやTVから映画も手掛けるようになり、面白かった伊坂幸太郎原作のアクション・ミステリー「ゴールデンスランバー」(2009・日)や、木内一裕原作の「藁の楯」(2013・日)を書いている。「藁の楯」はともかく、原作者を映画化するのがうまい人なのかもしれない。

 監督・脚本・VFXは山崎貴。SFXから「ジュブナイル」(2000・日)で監督デビューし、「ALWAYS 三丁目の夕日」(2005・日)シリーズの大ヒットで一気に有名に。なんだかファミリー的なイメージが強い感じだが、ボク的には「RETURNER リターナー」(2002・日)や「K-20(TWENTY) 怪人二十面相・伝」(2008・日)などのアクション系もいけると思う。また「BALLAD 名もなき恋のうた」(2009・日)や「SPACE BATTLESHIP ヤマト」(2010・日)はちょっと……。奥さんは、SFXを手掛けた「エコエコアザラク WIZARD OF DARKNESS」(1995・日)の佐藤嗣麻子。

 ゼロ戦は3D-CGだけではなく、1/1も作られている。世の中に図面もいろいろ出回っているが、あえて実機を採寸しているらしい。出来は素晴らしくいい感じ。詳しく知っているわけではないが、色つやも見事と思えた。そして射爆照準器もちゃんと点灯している。

 岡田准一は装備として十四年式拳銃を携帯していたようだが、スチールを見るとマガジン底部に注入ノズルがあるようで、マルシンのガスガンかもしれない。

 公開初日の初回、新宿の劇場は全席指定で、金曜に確保。当日は15分前くらいに開場。20代くらいから中高年まで、観客層は幅広く、男女比は4.5対5.5くらいでやや女性の方が多い感じ。戦争映画は概して中高年ばかりということが多いが、本作は特に若い女性が目立ち、これは岡田准一ファンだろうか。最終的には607席の8割くらいが埋まった。さすが話題作。

 気になった予告編は……上下マスクの「アメイジングスパイダーマン2」は新予告に。禁断のリブートで「1」は予想どおり大したことなかったが、「2」の予告編はなかなか凄そうだ。期待できるかも。4/25公開。

 上下マスクの「エージェント・ライアン」は、かつてハリソン・フォード主演で映画化されたトム・クランシー原作のアクション「今そこにある危機」(Clear and Present Danger・1994・米)のあのCIA情報官ジャック・ライアンの活躍を描く最新作。今回のジャック・ライアンは「スター・トレック」(Star Trek・2009・米/独)のクリス・パイン。面白そう。2/15公開。

 山の映画らしい「春を背負って」は山の物語らしい。監督・撮影は「劔岳 点の記」(2008・日)の木村大作。6/14公開。

 上下マスクで「ターミネーター2」(Terminator 2: Judgment Day・1991・米/仏)風に全裸の阿部寛が現れるのは「テロマエ・ロマエII」。4/26公開。

 「小さいお家」は新予告に。古っぽい画質はわざとやっているのだろうか。ティーザーの予告とは印象の違う内容のようだ。1/25公開。

 対照的に画質が良いのは「トリック劇場版ラストステージ」。内容も展開もいつものパターンで、「本当に最後です!」と言っているので、またやるのだろう。1/11公開。

 スクリーンが左右に広がってから、またやるのかのハリウッド版「ゴジラ」。ただ渡辺謙が出ているからなあ。心配要素は3Dだということ。そこを売りにするようじゃあ……。7/25公開。


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