Jack Ryan: Shadow Recruit


2014年2月15日(土)「エージェント:ライアン」

JACK RYAN: SHADOW RECRUIT・2014・米/露・1時間46分(IMDbでは105分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、樋口武志、日本語字幕監修:池上 彰/シネスコ・サイズ(レンズ、in Panavision、一部デジタル)/ドルビー・デジタル、DATASAT(IMDbではSDDS、ドルビー・サラウンド7.1も)

(米PG-13指定)

公式サイト
http://www.agentryan.jp
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

ジャック・ライアン(クリス・パイン)はイギリス、ロンドンのスクール・オブ・エコノミクスの学生時代、9.11のニュースをTVで目の当たりにして、陸軍に入隊。少尉としてアフガニスタンに出兵し、情報分析により危険地域を割り出すと、自ら志願して掃討任務に付くが、ヘリが撃墜され重傷を負ってしまう。どうにか一命をとりとめ帰国したライアンはウォルター・リード米軍医療センターでリハビリを受けることに。担当は研修生のキャシー・ミューラー(キーラ・ナイトレイ)。3年後、海軍のトーマス・ハーパー中佐(ケヴィン・コスナー)がやって来て、高い情報分析能力が生かせるCIAの自分のユニットに来ないかと誘う。そして10年後、ライアンは表向きニューヨークのウォール・ストリートの投資銀行のアナリストとして、テロ組織につながる資金の流れを監視していた。そして、ロシアのモスクワにある巨大投資会社チェレヴィン社に怪しい動きがあることに気付く。

74点

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 なかなか良くできた物語。現実世界の動きも反映して、いかにも実際にありそうな話でありながら、だぶんない話。そこは映画、作り物の世界。でもありそうな感じが良かったし、情報分析の専門家らしく、アクションを絡めながらも、情報を的確に分析して敵を追い詰めていくところが見事。かなりのハラハラドキドキ感。むしろアクションが不足しているくらいの印象。普通のスパイ・アクションとはひと味違う。ただ、最近あてにならないIMDbでは6.5点と低評価。

 映画としては007的な世界スケールの話だが、話の構成としてはビンラディン暗殺の実話の映画化「ゼロ・ダーク・サーティ」(Zero Dark Thirty・2012・米)のようでもあるし、ロバート・レッドフォードの「コンドル」(Three Days of the Condor・1975・米)のようでもあった。どちらもCIAの情報分析官の話だ。本作も含め、主人公が情報分析により大発見をする。つまりは、過去にヒットしたという実績がある内容でないと、銀行なんかがお金を出してくれないのかもしれない。ハリウッドの映画はれっきとしたビジネスで、危険な賭けはできないと。

 やはり、本作のような作品は悪役が憎たらしいとがぜん良くなる。そして本作はロシア人のチェレヴィンが、監督でもあるケネス・ブラナーが演じていて憎たらしく、しかも怖くていい。片腕なのかお目付け役なのか、チェレヴィンをサポートしているレムコフもかなり怖い。そして、もっと不気味なのが政治家、大臣のソローキン。良くできた構造だ。

 ジャック・ライアンは、クリス・パイン。つい最近「スター・トレック イントゥ・ダークネス」(Star Trek Into Darkness・2013・米)に出ていたばかり。若くてはつらつとして雰囲気が良い感じだが、ちょっと雰囲気は「バトルシップ」(Battleship・2012・米)のテイラー・キッチュに似ている気もする。2人とも2枚目だが、どこかインテリな役があわない感じ。本作は情報分析官なので、ちょっと違和感なくもない。

 ジャックの恋人キャシー・ミューラーはキーラ・ナイトレイ。気の強い女性役がピッタリというところ。たくさんの映画に出ているが、「パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド」(Pirates of the Caribbean: At World's End・2007・米)以降、アート系の小さい作品が多い印象。本作は久々のハリウッド作品という感じ。「パイレーツ……」以降10本くらいの作品に出ているが、日本ではいずれも小劇場公開。うむむ。

 トーマス・ハーパー中佐はケヴィン・コスナー。つい最近「マン・オブ・スティール」(Man of Steel・2013・米/加/英)に育ての親役で出ていたが、さらに歳を取ったなあと。そのため貫録が出て本作には良かったのかも。ただ、最後に良かったなあと思ったのは自身が監督も務めた西部劇の「ワイルド・レンジ 最後の銃撃」(Open Range・2003・米)で、それ以降はパッとしない感じだった。

 チェレヴィンは監督でもあるケネス・ブラナー。シェークスピア役者というイメージが強いが、ハリウッドでボク的には残念だった「マイティー・ソー」(Thor・2011・米)も監督している。うまい人なのに、あまり作品に恵まれていない気はする。小劇場公開で「パイレーツ・ロック」(The Boat That Rocked・2009・英/独/仏)は見ていないが、その前のハリウッド大作、トム・クルーズの「ワルキューレ」(Valkyrie・2008・米/独)は良かった。監督作では、ボク的にはミュージカルの「恋の骨折り損」(Love's Labour's Lost・1999・英/仏/米)が良かったかなと。

 怖かったレムコフは、スウェーデン出身のペーター・アンデション。強烈だったオリジナル版の「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」(Man som hatar kvinnor・2009・スウェーデンほか)で、せこい弁護士を演じていた人。どうりで。

 原作はなく、トム・クランシーの「ジャック・ライアン」シリーズからキャラクター設定だけをいただいた映画オリジナル・ストーリー。脚本はアダム・コザッドとデヴィッド・コープの2人。アダム・コザッドは本作が初の劇場長編映画の脚本、第1作目らしい。デヴィッド・コープは「スパイダーマン」(Spider-Man・2002・米)や「パニック・ルーム」(Panic Room・2002・米)を書いた人だが、それ以降「宇宙戦争」(War of the Worlds・2005・米)、「ザスーラ」(Zathura: A Space Adventure・2005・米)などとパッとしない。最近では「天使と悪魔」(Tenshi to akuma・2009・米/英)といまひとつ。過去には「ジュラシック・パーク」(Jurassic Park・1993・米)も書いているのだが……。

 登場した銃は、冒頭のアフガンのシーンではM16A4/A5。モスクワの監視役はサウンド・サプレッサー付きの、スクリーン初登場ではないかと思われるCZ100。護衛兵はAKS-74U。ジャックが中佐から渡されるのはベレッタM92。中佐が狙撃に使うのがサウンド・サプレッサー付きのL96A1。チェレヴィンが使っていたのはUSP。FBIの特殊部隊とNYPDの特殊部隊はM4カービン。

 公開初日の初回、新宿の劇場は全席指定。前売りはなかったので、ポイントで金曜に確保。当日は12〜13分前に開場。ほとんど中高年で、最初30人くらいいたうち女性は5〜6人。遅れて入ってくるヤツが多く、最終的に何人くらいいたかは不明だが、127席でもガラガラの印象。さすがに朝一は辛いというところか。

 半暗になって始まった予告で気になったのは……「ノア 約束の船」は新予告へ。聖書の物語がこんなにドラマチックになるとは。面白そう。ラッセル・クローとジェニファー・コネリー、エマ・ワトソンとという顔合わせ。6月公開。

 まだPOVでやるかというダメ映画の象徴のような主観撮り映画「パラノーマル・アクティビティ 呪いの印」4/11公開。この手法、いい加減にしてくれ。

 「ジャッカス クソジジイのアメリカ横断チン道中」は、まあトンデモ映画のシリーズ最新作らしい。こういうのは日本受けするのだろうか。3/29公開。

 上下マスクの「キッス・アス ジャスティス・フォーエバー」は新予告に。面白そうだが、ちょっとやばそうな雰囲気も。第1作が良かっただけに、第2作は滑る可能性も高い。はたして……2/22公開。

 字幕が斜体になるとジャーギーが酷い。読みにくい。デジタルの時代にこんなに解像度が低いというのはどういうことだろう。予算を掛けていないということか。ブルーレイディスクどころか、DVDでもこんな酷いことはない。昔の海賊版のVHSやβのビデオ・テープか。こんなにみっともないことは、早くあらためて欲しい。


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