The Secret Life of Walter Mitty


2014年3月22日(土)「LIFE!」

THE SECRET LIFE OF WALTER MITTY・2013・米・1時間55分(IMDbでは114分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、栗原とみ子/シネスコ・サイズ(一部レンズ、Arri、Panavision)/ドルビーATMOS、DATASAT

(米PG指定)(日本語吹替版もあり)

公式サイト
http://www.foxmovies.jp/life/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

ウォルター・ミティ(ベン・スティラー)は「LIFE」マガジンを発行するNYのライブ・マガジン社のフィルム管理部の主任で独身。パートナー紹介サイトに登録したばかりで、同じ会社の経理部の新入社員、バツイチの子持ちシェリル(クリスティン・ウィグ)も登録していることを知るが、会社で話しかけることができないでいた。そんなある日、会社が買収され、人員整理が行われ、雑誌の発行も次の号が最後になると告げられる。そして、ちょうどメインのフォトグラファー、ショーン(ショーン・ペン)から表紙用の写真が送られてきたのに、その1枚だけが見当たらない。ウォルターはクビにならないよう、他の写真を丹念に調べ、ショーンが今どこにいるのか探ろうとする。同時に、経理のシェリルにも事情を話し、ギャラの振込先から居所を探ろうとする。そしてついにグリーンランドにいるらしいことを掴み、行く決心をする。

78点

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 いやあ、ベン・スティラー作品なのに(と書くと失礼だが)感動した。いままでのベン・スティーラー作品とはちょっと毛色が違う。もちろんコメディ系ではあるのだが、なんと正面から人生とはというテーマに切り込んで行っている。しかも、明確な(安直でありきたりな)答はないのにぐいっと本質に迫ってくる。それがコメディというベースで語られるので、比較的受け入れやすい。それもありがちな、大げさな感じがあまりないので良い。その上、ハッピー・エンドとは言えないのに、希望があるような終わり方。伏線も良く張られて生かされているため、細かな展開をちゃんと覚えておく必要はある。

 タイトルの「LIFE!」は有名なアメリカのグラフィック・マガジンの「LIFE」であり、人生のライフでもある。そしてその発行元であるライフ・マガジン社のモットー、社是が心を打つ。“To see the world, things dangerous to come to, to see behind walls, draw closer, to find each other, and to feel. That is the purpose of life.”字幕では「世界を見よう」「壁の裏側を見よう」「感じよう」「それが人生の目的だから」など。ヒロインのシェリルはこれが好きで入社したと言う。もちろんそれは主人公にも大きく影響している。そして、たぶんこれが映画のテーマでもある。

 しかし現実は、仕事を失い、パートナー紹介サイトも会費が払えないと退会し、父が母に贈った大切なピアノを売り、……身につまされる。人生は厳しい。それでもグリーンランド、アイスランド、アフガニスタンまで旅行する。「世界を見よう」。ラストの「LIFE」最終号の表紙が泣かせる。

 音楽も良い。主題歌っぽい「ステップ・アウト」は耳に残るし、心にしみる。なんだか旅に出たくなる感じ。トム少佐のことを歌うデヴィッド・ボウイの「スペース・オディティ」もいい。サウンド・トラックの選曲には監督・主演を務めるベン・スティラーがこだわったらしい。このサントラは買いかも。

 自然も雄大。すばらしい風景というか、世界の絶景が収められている。心が解放される感じ。旅は良いなあと。つまり「世界を見よう」なんだ。

 そして、1つのアイテムとして、愛用品のたぶんゼロ・ハリバートンのアタッシュ・ケースが出てくる。たぶん5〜6万円。軽くて上部で、密閉性も高い。おかげで命拾いする。乾いた服と交換してなくなってしまうが……。

 そういえば、藁しべ長者的な要素もある。アタッシュ・ケースが乾いた服になり、誕生日プレゼントにもらった伸びる人形をスケートボードと交換する。そして、それは少年へのプレゼントになる。

 タイトルの文字の出し方もシャレていて、町の壁などに溶け込んでいるのだ。これは本編でも会社のモットーなどが同じ手法で出てくる。エンド・クレジットもフィルムのフレームを使い本人と名前を対比させるなど凝っている。デザインはプロローグ・フィルムのケイト・ベリー。「トータル・リコール」(Total Recall・2012・米/加)のタイトルや、「ワールド・ウォーZ」(World War Z・2013・米/マルタ)のタイトルを手掛けている。うまい。

 気になったのは画質で、狙いなのかもしれないが、画質が粗く、一昔前の映画みたい。解像度も低いし、シズル感もない。カメラはデジタルではなく、フィルムを使ったようだ。作品の内容から言っても、合成も多いのだからデジタルで撮れば良かったのに。

 銃は、アフガニスタンの族長が銃剣を装着したAKで、ウォルターのママが作ったケーキを食べるシーンで使われている。

 ウォルター・ミティは監督と製作も務めるベン・スティーラー。この人はもともとコメディ系の人なのだが、ふざけ過ぎないと良いようだ。何とスクリーン・デビュー作はスティーヴン・スピルバーグの「太陽の帝国」(Empire of the Sun・1987・米)。ちよっと記憶にないが……。「リアリティ・バイツ」(Reality Bites・1994・米)もそうだが、自身が監督した作品の評価は高いようだ。最近だと「トロピック・サンダー/史上最低の作戦」(Tropic Thunder・2008・米/英/独)も監督していて評価が高かった。その次の監督作品が本作になる。

 あこがれの女性シェリルを演じたのはクリステン・ウィグ。TVの「サタデー・ナイト・ライブ」に出ていたというからコメディ系の人。アニメの吹き替えも多いようだが、Sはコメディの「宇宙人ポール」(Paul・2011・米/英)にも出ていたらしい。小劇場公開だったので残念ながら見ていない。

 名フォトグラファーとしてちょっとだけ出てくるのはショーン・ペン。やっぱり存在感がある。1980年くらいから35年近く第一線で活躍している。これはすごい。最近出ていたのは「L.A. ギャング ストーリー」(Gangster Squad・2012・米)で、怖いギャング役。

 ほとんど存在感はないが、ウォルター・ミティの母はシャーリー・マクレーン。芸能一家に生れ、弟はあの2枚目ウォーレン・ベイティ。スクリーン・デビュー作はヒッチコックの「ハリーの災難」(The Trouble with Harry・1955・米)。そしてビリー・ワイルダーの傑作コメディ「アパートの鍵貸します」(The Apartment・1960・米)にも出ていて、「愛と追憶の日々」(Terms of Endearment・1983・米)でアカデミー主演女優賞を受賞している。精神世界にのめりこみ書いた本「アウト・オン・ア・リム」はボクも興味深く読んだ。最近では、日本は劇場公開されたTVムービー「ココ・シャネル」(Coco Chanel・2008・伊/仏/英)で話題になっていた。

 オリジナル版はダニー・ケイ主演の「虹を掴む男」(The Secret Life of Walter Mitty・1947・米)。ボクが見たのはNHKだったかのTV放送だったが、もうずいぶん昔のことでほとんど忘れてしまった。ただ、とても面白かったことは覚えている。そして、「ポキタ、ポキタ」というパターンのリズムを聞くと想像が始まるということも覚えている。本作とは展開が大分違うような気はする。ぜひ、もう一度見直してみたくなった。ちなみにダニー・ケイというと「5つの銅貨」(The Five Pennies・1959・米)も良かった。泣いた。

 原作はジェームズ・サーバーの「虹をつかむ男」(早川書房)。本作の脚本はスティーヴン・コンラッド。あの感動作、ウィル・スミス親子が出た「幸せのちから」(The Pursuit of Happyness・2006・米)を書いた人だ。

 公開4日目の初回、渋谷の劇場は全席指定、ムビチケでオンラインで確保。当日は15分前くらいに開場。観客層は若い人から中高年まで割りと幅広く、男女比はほぼ半々くらい。これは渋谷だからだろうか。最終的には154席に9割りくらいの入り。まあこのサイズなら当然か。ただ、床が安普請なのか、人が歩くたびにドンドンと振動して不快だったし、いざとなったと気強度があるのか不安になった。

 場内が明るいまま始まったPICK UPはほとんど絵が良く見えなかった。CMも明るいままで、お金を取っているはずだがこれでいいのか。予告も明るいまま。カーテンのない湾曲した板のようなスクリーンで、反射率が低いのかスクリーン自体が暗い感じ。

 左右のほかに上下もマスクの「ゴジラ」は今までどおりのティーザー。渡辺謙が良い感じ。7/25公開。

 木村大作監督はまた山の映画で、上下左右マスクの「春を背負って」は6/14公開。

 ダジャレみたいな矢口史靖監督の「ウッジョブ」は、「シコふんじゃった。」(1991・日)的な雰囲気。5/10公開。

 上下左右マスクの「テルマエ・ロマエII」は新予告に。阿部寛はすごいと思うが、前作と全く同じ印象。どうなんだろう。4/26公開。

 左右マスクのBBCの「ネイチャー」は、3Dカメラで撮ったという絵が美しく、しかも高画質。すばらしい迫力。ナレーション(ナビゲーター)は滝川クリステルで、5/2公開。これはIMAXで見たら感動だろう。

 予告が終わったところでやっと暗くなったものの、足下の階段を照らすLEDライトのようなものが明る過ぎ。通路側に席を取ったら気になってしようがなかった。


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