Saving Mr. Banks


2014年3月22日(土)「ウォルト・ディズニーの約束」

SAVING MR. BANKS・2013・米/英/豪・2時間06分(IMDbでは125分)

日本語字幕:手書き風書体下、松浦美奈/シネスコ・サイズ(レンズ、in Panavision)/ドルビー・デジタル、DATASAT

(米PG-13指定)

公式サイト
http://ugc.disney.co.jp/blog/movie/category/walt
(全国の劇場リストもあり)

1961年、ロンドン。自分が書いた本が売れずお金に困っていた「メリー・ポピンズ」の原作者P.L.トラヴァース(エマ・トンプソン)は、20年も前から映画化を望んでいたウォルト・ディズニー(トム・ハンクス)から具体的な映画化の話を聞くためハリウッドを訪れる。しかし、打ち合わせをする前から「メリー・ポピンズが陽気な人物で、パッピー・エンドなんてありえない。ましてアニメなんて絶対ない」と決めていたトラヴァースは、脚本のト書きや、設定、セリフ、家や服のデザイン、キャストにまで、ことごとくダメ出しをして行く。実は「メリー・ポピンズ」は彼女自身の物語であり、辛い過去が反映された彼女の人生そのものだったのだ。

84点

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 広告では『映画「メリー・ポピンズ」誕生秘話』ということになっていて、邦題も「ウォルト・ディズニーの約束」とディズニーがメインになっているが、ボクの独断偏見では、これは「メリー・ポピンズ」原作者のP.L.トラヴァースの物語だ。そして彼女の人生をそのまま反映させた「メリー・ポピンズ」と、そこに登場する自分の家族を象徴する銀行家の一家「バンクス家」の物語。原題は「SAVING MR. BANKS」でディズニーの名はない。意味としては「バンクスさん救出」ということだろうか。トム・ハンクス主演の大ヒット映画「プライベート・ライアン」(Saving Private Ryan・1998・米)のパロディのようだ。ディズニーの出番はそれほど多くなく、物語の一部だ。もちろんディズニーの約束なんて重要なものではない。

 とにかく頑なで、口が悪く、ネガティブで、いつも眉間にしわを寄せているような、意地悪でさえある女性の、過去が徐々に明らかになって行き、それはほとんど映画の製作と同期していて、進行して行くに従いきつく閉ざされていた心のトビラが、少しだけ開き、笑顔がもどってくるというそんな物語。

 観客も彼女以外の登場人物たちも、最初はとまどい、そして彼女を嫌いになるというか拒みたくなるが、彼女の悲しく辛い生い立ちを知るに従い、しだいに理解できるようになり、その悲しみを共有できるようになる。それが実に巧みでうまい。感動する。久々に両目から涙が流れてしまった。幼いときにこんな辛い経験をすると、人はこんなになってもしようがないだろうと。むしろ、よく道を踏み外さなかったものと思えるし、よく作家として才能を発揮できたものだと。

 しかもラストには本人の写真が出て、残されていた本物らしい録音テープも再生され、まったく映画の中と同じ状況だったことがわかる。ディズニーも脚本家も、音楽を担当したシャーマン兄弟も、本当に苦労したんだろうなと。

 超気難しいP.L.トラヴァースはエマ・トンプソン。いつも眉間というか額に皺を寄せていて、いかにも神経質な感じがみごと。本作の成功はこの人のおかげと思えるほど。「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」(Harry Potter and the Prisoner of Azkaban・2004・英/米)以降のシリーズの先生役が有名で、最近だと「メン・イン・ブラック3」(Men in Black 3・2012・米/アラブ首長国連邦)にも出ていた。

 気の良い運転手のラルフはポール・ジアマッティ。こんな良い役か、悪党かどっちかという感じ。最近は「それでも夜は明ける」(12 Years a Slave・2013・米/英)でせこい奴隷商人を演じていた。

 トラヴァースの優しい父はコリン・ファレル。ちょっと影のある二枚目で、本作でもその影がうまく生かされている。つい最近「デッドマン・ダウン」(Dead Man Down・2013・米)でギャングを演じていた。

 その妻マーガレットはルース・ウィルソン。父が娘たちを甘やかすから、ついつい口うるさいお母さんになってしまうあたりも見事だった。ラジー賞の最悪リメイク賞に輝いた「ローン・レンジャー」(The Lone Ranger・2013・米)に出ていた人。今後が楽しみ。

 トラヴァースの少女時代を演じたのはアニー・ローズ・バックリー。TVに出たことはあったようだが、劇場長編映画は本作が初めて。素直な良い子だった感じが絶妙だった。

 ディズニーはトム・ハンクス。ディズニー(タッチストーン)の「スプラッシュ」(Splash・1984・米)で注目された人だから、本作はやりがいがあったのではないだろうか。最近「キャプテン・フィリップス」(Captain Phillips・2013・米)に出ていたばかり。

 脚本はケリー・マーセルとスー・スミスの2人。ケリー・マーセルはイギリス生れの女性で、劇場長編映画はこれが初めて。この前にTVドラマの脚本を手掛けていて、その前は女優だったよう。スー・スミスもTVの人で、劇場長編映画は本作で2本目。

 監督はジョン・リー・ハンコック。イーストウッド作品の「パーフェクト ワールド」(A Perfect World・1993・米)や「真夜中のサバナ」(Midnight in the Garden of Good and Evil・1997・米)の脚本を書いている。「オールド・ルーキー」(The Rookie・2002・米)や「アラモ」(The Alamo・2004・米)では監督も務め、最近は残念な「スノーホワイト」(Snow White and the Huntsman・2012・米)の脚本を書いている。なぜ自分で本作の脚本を書かなかったのだろう。もちろん結果オーライではあるけれど。

 それにしても、ゴフ家は3姉妹だったはずで、ほかの2人の妹がどうなったのか、とても気になった。
 公開2日目の2回め、銀座の劇場は全席指定で、これまたムビチケのオンラインで確保。劇場へ行かなくていいので電車代がかからない。100円高くても結局はお得。これは便利でいい。時間の節約にもなる。当日券との引き換えは、機械のvitよりも窓口の方が早くて簡単。20分前くらいに開場し場内へ。観客層は若い人は少しで、だいたい中高年。男女比は3対7くらいで女性が圧倒的に多かった。そしてだいたい女性の方が若め。最終的に224席がほぼすべて埋まった。

 明るいままTOHOニュースヘ。良く見えない。ケータイ点けてるジジイはいるし。半暗になって予告へ。上下マスクの「マンデラ 自由への長い道」はなかなかタイトルが出ずにいらいらした。ただマンデラものはたくさん映画化されているから、今さらと言う感じも。まだ日本のサイトはないもよう。5/25公開。

 コーエン兄弟のカンヌ・グランプリ作品「インサイド・ルーウィン・デイヴィス名もなき男の歌」は、長くて短い時間ではとても覚えられない。猫を連れたフォーク・ソング歌手の話らしい。ちょっと雰囲気は暗いが、コメディらしい。5月公開。

 上下マスクの「とらわれて夏」はケイト・ウィンスレットとジョシュ・ブローリンの恋愛物。脱獄犯と人質ということで、ストックホルム症候群か。夏で、少年も出てくるという、定番の設定。5/1公開。

 上下マスクの「8月の家族たち」は、メリル・ストリープ、ジュリア・ロバーツという顔合わせ。ちょっと重そうなドラマ。4/18公開。

 スクリーンが左右に広がって、本編へ。


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