Lone Survivor


2014年3月29日(土)「ローン・サバイバー」

LONE SURVIVOR・2013・米・2時間01分

日本語字幕:丸ゴシック体下、松浦美奈/シネスコ・サイズ(デジタル、Red)/ドルビー・デジタル、DATASAT、SDDS

(米R指定、日PG12指定)

公式サイト
http://www.lonesurvivor.jp
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

2005年6月、アメリカ軍ネービー・シールズの4人、マイケル・マーフィ大尉(テイラー・キッチュ)、マーカス・ラトレル一等兵曹(マーク・ウォールバーグ)、マシュー“アクス”アクセルソン二等兵曹(ベン・フォスター)、ダニー・ディーツ二等兵曹(エミール・ハーシュ)は、タリバンのリーダーの1人アフマド・シャーを逮捕または殺害する「レッド・ウィング作戦」のため、潜伏していると思われる村へ偵察で送り込まれる。村へ到達した4人はシャーを発見するが、あまりに山奥で無線が通じなくなる。そして待機しているうちに羊飼いの3人の親子に発見されてしまう。話しあった結果、彼らは3人を解放することにするが、結局タリバンに通報されて200人以上のタリバン兵の攻撃を受けることになってしまう。

76点

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 怖い。まるで自分も敵に囲まれて孤立無援状態になったような恐怖。また、彼ら特殊部隊シールズのモットーとなっているらしい言葉「決して戦いから逃げない」を実践する彼らの姿。極限状態にあっても交戦規定を守ろうとするプロ意識。そして、お互いを「兄弟」と呼ぶ仲間との絆の深さに感動する。こんな良い若者たちが戦場で命を落としてしまうという事実。しかも実話だし。泣ける。

 タイトル・バックで、たぶん実際のものと思われる写真や映像によって、シールズのトレーニングの模様が紹介される。あまりに過酷で、多くのものが鐘を3回鳴らし、ヘルメットを置いて辞めて行く。拷問のような訓練を耐え抜いたものだけがシールズになることができる。そんな苦難を共に乗り越えてきた仲間との絆は特に強い。お互い命を預けることができる関係ができ上がっていて、それは兄弟にも等しいと。時には夫婦関係よりも強いと言われる。……そんな、シールズの方を読むと必ず書かれていることが、一気に映像でつづられる。うまい。わかりやすい。

 どんなに高度な訓練をして、体力をつけても、混戦状態の戦場ではどこから撃たれるかわからない。いくら世界最強のエリート部隊の隊員であっても、弾には当たるし、撃たれれば血が流れ、死ぬこともある。ただ彼らは逃げるようなことはしないし、絶対に最後まであきらめないと。そして絶対に戦友を見捨てない。自分が負傷していて、動くのさえ大変な状態でも、戦友が残っているのを知れば助けに戻ろうと言う。それがよく伝わってくる。

 敵はAKMのほかPKMマシンガンやRGPなども使い、総攻撃を仕掛けてくる。ものすごい銃声、爆発音。耳が痛いくらい大きく、リアルだ。もちろんシールズが使っているM4/M16系の銃はサウンド・サプレッサーが付いているので、シャキン、シャキンという銃声(もちろん大きめ)で、タリバンのAKはもっとずっと大きな音。PKMはドドドっと重い音がするなど、ちゃんと銃ごとに銃声も変えられている。そして恐ろしい。

 マーカス・ラトレル一等兵曹はマーク・ウォールバーグ。アクション作品に良く出ているので、銃の扱いはうまい。当然、撮影前に訓練も受けているだろう。やはり「ザ・シューター/極大射程」(Shooter・2007・米)が良かったし、アクション作品が向いているような気がする。「テッド」(Ted・2012・米)も面白かったが、あれは主演がはぬいぐるみの方だ。もうけるとプロデューサーとしても活躍する人が多いが、マーク・ウォールバーグも同様。TVも劇場用映画もたくさん手掛けている。本作のプロデューサーも務めている。使っていた銃は、スナイパーの役割だったため、サウンド・サプレッサーと二脚付きのスコープを載せたMk.12 Mod1を使っている。身に付けていたのはシャツからパンツまですべてアンダー・アーマー。協賛に名前が入っていた。戦闘を始める前に「タイム・カードを押すぞ」と言い、上官のマーフィーが「やれ」というと、セフティを回して「カチッ」と音がし、「シュターン」と銃声が響く。怖くてドキドキするシーンだが、いかにもプロだなあと。

 グループのリーダー、マイケル・マーフィ大尉はテイラー・キッチュ。残念なSFアクション「バトルシップ」(Battleship・2012・米)や、「野蛮なやつら/SAVAGES」(Savages・2012・米)ではただのあんちゃん、若造という感じだったが、本作では落ち着きがあり、どっしりと構えたリーダーという感じが良く出ていた。こういう役もできるんだ。まったく印象が違う。見直した。使っていた銃はM4カービンで、ドットサイトを載せたACOG載せ。M203グレネード・ランチャーも装着していた。死を覚悟し、ラトレルに残った2本のマガジンを渡すところが切なかった。スポッティング・スコープのレンジ・ファインダーはちゃんとメートル表示。軍はかなり前からメートル表示を使っているらしい。

 もう1人のスナイパー、マシュー“アクス”アクセルソン二等兵曹はベン・フォスター。奥さんからアラブ馬をプレゼントしてくれとリクエストされている。傑作リメイク西部劇「3時10分、決断のとき」(3:10 to Yuma・2007・米)で、若い殺し屋をやっていた人。犯罪映画「ハード・ラッシュ」(Contraband・2012・米/英/仏)でマーク・ウォールバーグと共演している。使っていたのはラトレルと同じスナイパー・ライフルのMk.12 Mod1。仕様も一緒。ラストにハンドガンを抜くが、それはなぜかベレッタM9だった。「交戦規定なんて知ったことか。俺はお前たちが大事なんだ」というセリフがいい。そして頭にも銃弾をくらい、片目が開かなくなっているのに、ダニーを助けに行こうと言う。ラスト、動けなくなって頭の周りの岩に銃弾が当たり、それから最後に額に1発。ショッキングで壮絶な死だった。

 通信担当のダニー・ディーツ二等兵曹はエミール・ハーシュ。日本のアニメの残念な実写リメイク「スピード・レーサー」(Speed Racer・2008・米/豪/独)で主演していた人。それ以外の印象がないが、「野蛮なやつら/SAVAGES」でテイラー・キッチュと共演している。使っていた銃は、マーフィ大尉と同じ仕様のM4カービン。奥さんからどの壁紙にするか聞かれて困っていたエピソードが良い。

 若い新入隊員パットンはアレクサンダー・ルドウィグ。「光の六つのしるし」(The Seeker: The Dark Is Rising・2007・米)に出ていた子役がこんなに大きくなった。アパッチの援護なしでチヌークだけで救援に向かうが……。

 部隊の上官エリック・クリステンセン少佐はエリック・バナ。「ブラックホーク・ダウン」(Black Hawk Down・2001・米/英)でデルタ・フォースの隊員を演じていた。「ミュンヘン」(Munich・2005・米/加/仏)ではおそろしい秘密工作員を、少女の殺し屋を描いた「ハンナ」(Hanna・2011・米/英/独)では少女にテクニックを教える父を演じていた。

 降下の時に使ったヘルメットは背中にくくり付け、ずっとブーニー・ハットをかぶっている。また長時間の山歩きがあるためか、ボディー・アーマーはつけていないようだった。文字がプリントされたグローブはメカニクスのもの。サングラスはESS。腕時計はすべてカシオのGショックのようで、アメリカのネット情報によると、マイケルはDW-9052-1V(海外モデル)、マーカスがDW-6600(こちらの方が高い)、クリステンセン少佐はDW-6900らしい。アンダー・アーマーのように協賛しているのかもしれない。カシオは軍全般に人気だが、シールズはスントだという話もある。シールズ隊員が基地に戻ろうとするチヌーク・ヘリのパイロットに「俺たちを降ろせ」と突きつけていたのはガバメント。タリバンのリーダーがショルダー・ホルスターに入れていたのはシルバーのマカロフ。

 原作は、もちろん1人生き残ったマーカス・ラトレル本人の「アフガン、たった一人の生還」。来日も果たしたが、本作では、最初のブリーフィングのシーン、武器の手入れのシーンなどで出ているようだ。2007年に退役して「ローン・サババー財団」を設立、米軍兵士とその家族に、教育・リハビリ・復帰・健康の機会を提供しているという。

 脚本・監督・製作の3役を務めたのは、役者でもあるピーター・バーグ。痛快アクション「ランダウン ロッキング・ザ・アマゾン」(he Rundown・2003・米)や「キングダム/見えざる敵」(The Kingdom・2007・米/独)は面白かったが、その後は「ハンコック」(Hancock・2008・米)や「バトルシップ」と、残念なものばかり。久々に良かった。ベストかも。

 アーマラーは、エンド・クレジットではファーストとセカンドもいたが、IMDbでは記載なし。どうなっているんだろう。

 公開9日目の初回、新宿の劇場は全席自由で、45分前くらいに着いたら誰もいなかった。15分前開場の札。35分前で1人来て、30分前に10人となり、22〜23分前に開場となったときは20人くらい。ほとんど中高年で、女性は1/3ほど。場内はペア・シートも自由で、のちにちょっと増えた若いカップルが座っていた。ただ、ケータイをいじるヤツが多く、まぶしくて邪魔だって。外のロビーでやれ。でかい声のジジイや、全身迷彩服のオヤジなどがいて、ちょっと怖かったが、何事も無かった。良かった。最終的には1,064席に3.5割りくらいの入り。もっと入っても良い映画だが、かつての映画街はもはや場末でどちらかというと怖い場所。TOHOシネマズがオープンしないことには、イメージの回復は無理だろう。

 アナウンスのあとカーテンが上がり、明るいまま始まった予告は良く見えない。暗くしろ。画質が古くさい感じの「歌舞伎町はいすくーる」は裏稼業の方々が定時制高校に入るというコメディらしく、塩谷瞬や片岡愛之助らが出ている。5/3公開。

 スクリーンが左右に広がってからの予告は見たものばかり。ラストにようやく暗くなったが、階段の足下を照らすLEDらしい照明が明るくて


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