Grudge Match


2014年4月5日(土)「リベンジ・マッチ」

GRUDGE MATCH・2013・米・1時間53分

日本語字幕:手書き風書体下、戸田奈津子/ビスタ・サイズ(デジタル、by Panavision)/ドルビー・デジタル、DATASAT(IMDbではSDDSも)

(米PG-13指定)

公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/grudgematch/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

1982年、ヘンリー“レーザー”シャープ(シルベスター・スタローン)とビリー“ザ・キッド”マクドネン(ロバート・デ・ニーロ)の2人は、ボクシングで15ラウンドの死闘を繰り広げ、からくもキッドがラストでKO勝ちした。1984年、再戦が組まれ、今度はレーザーがKO勝ち。第3戦で決着をつけようというとき、レーザーが突然の引退発表をし、表舞台から姿を消してしまう。そして数年で無一文となり、造船所で働き出した。一方キッドは自動車販売店とレストランのオーナーとして悠々自適の暮らし。メタボでアル中の一歩手前という状態となっている。そんなとき、かつての試合を組んだプロモーターの息子、ダンテ・スレートJr.(ケビン・ハート)が現れ、2人が戦うゲームが発売されるので、声の出演とモーション・キャプチャーをしてくれないかと言ってくる。金に困っていたレーザーはキッドと会わないという約束で仕事を受けるが、モーション・キャプチャーする日にキッドも現れ、殴り合いのケンカに。それをスタッフがケータイのビデオで撮影し、YouTubeにアップしたところ、世界中で大人気となる。そして本当にボクシングの試合が組まれることになる。

73点

1つ前へ一覧へ次へ
 笑えるボクシング映画。よくできた物語で、楽しめる。最初は「ロッキー」(Rocky・1976・米)系のスポ根ものかと思って身構えたが、そんなことはなく、老人問題を入れながら、自作のパロディも盛り込みつつ、コミカルな味付けのボクシング映画に仕上げてある。

 たぶん、これが正解なのだろう。正統派のボクシング映画にするには主役の2人は歳を取り過ぎているし、シリアスにやったら大御所のふたりだけにずっしりと重くなってしまい、イヤミだろう。まじめな顔で人生訓など垂れて欲しくない。この明るさ、軽さが良い。むしろまだまだ悪ガキだと。

 1980年代の映像は、2人とも非常に若い。もちろんCGを使いまくりなのだろうが、2人で試合をやっているのだからすごい。でも、それより驚いたのは、地味だが、トレーニングによって2人ともだんだん体が引き締まって行くところ。実際今が引き締まっていて、CGとか特殊メイクで太らせていたんだろうか。それとも逆か。とにかく、とても70前後の肉体とは思えないスポーツマンのような体。

 ダンテ・スレートJr.役のケビン・ハートも面白いし、キットの8歳の孫も面白いが、一番面白いのはレーザーのトレーナー、ルイス“ライトニング(稲妻)”コンロンを演じたアラン・アーキン。耳が遠いからでかい声で話し、ちょっと偏屈で下ネタ連発、でもボケてはいない。最近のこれまでの役を集約したような感じ。特にこの前に出たギャング映画の「ミッドナイド・ガイズ」(Stand Up Guys・2012・米)に通じるものがある。また、見ていないがアカデミー助演男優賞を受賞した「リトル・ミス・サンシャイン」(Little Miss Sunshine・2006・米)とも共通するものがあるはず。実際1934年生れだから80歳。こういう役になるだろう。ボク的にはオードリー・ヘップバーンの「暗くなるまで待って」(Wait Until Dark・1967・米)とか、コミカル・アクションの「フリービーとビーン/大乱戦」(Freebie and the Bean・1974・米)、ピーター・フォークと組んだ「あきれたあきれた大作戦」(The In-Laws・1979・米)なんかを思い出すんだけれど。

 レーザーはシルベスター・スタローン。このところ年に2本くらいのペースで出ている。本作の前に「大脱出」(Escape Plan・2013・米)でアーノルド・シュワルツェネッガーと共演している。まもなく人気シリーズ第3弾の「エクスペンダブルズ3」が公開されるらしい。がんばっているなあ。

 キッドはロバート・デ・ニーロ。最近映画に出まくりで、2013年に作られたものだけで6本も出ている。本作の前に出たのは「アメリカン・ハッスル」(American Hustle・2013・米)。ボクシング映画といえば、実在のボクサーを描いた「レイジング・ブル」(Raging Bull・1980・米)だろう。

 2人の仲たがいの元になる金髪美女、サリーはキム・ベイシンガー。アレック・ボールドウィンとは離婚してしまったが、2年おきくらいに映画に出ている感じ。ボクが最後に見たのはマイケル・ダグラスとキーファー・サザーランドが出た「ザ・センチネル/陰謀の星条旗」(The Sentinel・2006・米)の大統領夫人だったか。なんと、若い頃のサリーを演じているのが、娘のアイアランド・ボールドウィン。ほとんどセリフはないが、これが劇場映画初出演らしい。美人。

 レーザーの息子BJはジョン・バーンサル。映画のような大予算TV戦争ドラマ「ザ・パシフィック」(The Pacific・2010・米)に出ていた人で、最近だと「ウルフ・オブ・ウォールストリート」(The Wolf of Wall Street・2013・米)にも出ていたが、ドウェイン・ジョンソンと共演した「オーバードライヴ」(Snitch・2013・米/アラブ首長国連邦)はなかなか重要な役で印象に残った。本作のなかなか良い役。今後の活躍が楽しみ。

 ボクシング・ジムのオーナー、フランキー・ブライトはLL・クール・J。「S.W.A.T.」(S.W.A.T.・2003・米)に出ていた人で、TVアクションの「NCIS:LA〜極秘潜入捜査班」(NCIS: Los Angeles・2009〜・米)のサム・ハンナははまり役。

 脚本は原案も兼ねるティム・ケルハーとロドニー・ロスマン。ティム・ケルハーは主にTVで活躍している人で、劇場作品は本作で2本目。1本目もコメディだったようだが、日本劇場未公開。ロドニー・ロスマンもコメディの人で、TVで活躍している。劇場作品は「寝取られ男のラブ♂バカンス」(Forgetting Sarah Marshall・2008・米)だけが日本で劇場公開されているが、あとはすべて日本劇場未公開。

 監督はTVから「裸の銃(ガン)を持つ男PART33 1/3/最後の侮辱」(Naked Gun 33 1/3: The Final Insult・1994・米)で劇場公開作品デビューしたピーター・シーガル。やっぱりこの人もコメディ畑の人。そのあと「1」は良かったが残念な続編の「ナッティ・プロフェッサー2/クランプ家の面々」(Nutty Professor II: The Klumps・2000・米)や、最近だとTV版の残念なリメイク「ゲット スマート」(Get Smart・2008・米)などを撮っている。たぶん本作はコメディをメインにしなかったから、うまくいったのでは。

 原題のGRUDGE MATCHは遺恨試合のこと。リベンジ・マッチではちょっと意味が違うような気がするが、わかりやすい日本語ということでこうなったのだろう。

 ラストにオチとして、有名な遺恨試合を行った有名な元プロ・ボクター2人が出てくる。これにはビックリ。

 公開2日目、新宿の劇場は全席指定で、金曜に確保。当日は10分前くらいに開場。ジジ、ババが多いとおもったら、それてMETライブ・ビューイングだったようだ。若い男性はパトレイバー狙いか。本作は若い人から中高年まで、わりと幅広かった。男女比は6対4くらいで男性が多く、なぜかケータイを使っているヤツが多かった。中にはニンテンドーでゲームをやっているやつまで。最終的には157席に8割りくらいの入り。キャパが小さいので、多いのか、少ないのか。

 気になった予告編は……タイトルがなかなか出ないでイライラした上下マスクの「ジュピター」は、ウォシャオスキー姉弟の「スター・ウォーズ」風SFアクション。秋公開。

 同様になかなかタイトルが出ない上下マスクの「ニューヨーク冬物語」はコリン・ファレルの主演で、最初は単なる恋愛物かと思ったら、100年後へと続く不思議なファンタジーの模様。見たいかも。5/16公開。

 上下マスク「るろうに剣心」の続編は2部作になるという。「京都大火編」は8/1公開。前作も良かったが、予告を見る限り続編も面白そう。


1つ前へ一覧へ次へ