Prisoners


2014年5月3日(土)「プリズナーズ」

PRISONERS・2013・米・2時間33分

日本語字幕:丸ゴシック体下、松浦美奈/シネスコ・サイズ(レンズ、in Panavision)/ドルビーATMOS、ドルビー・デジタル、DATASAT(IMDbではSDDSも)

(米R指定、日PG12指定)

公式サイト
http://prisoners.jp/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

感謝祭の日、住宅の修理やリフォームを手掛けるケラー・ドーヴァー(ヒュー・ジャックマン)の一家は近所の友人、フランクリン・バーチ(テレンス・ハワード)の家のパーティへ行く。ところがしばらくすると、外で遊んでいた両家の下の娘、6歳のアナ(エリン・ゲラシモヴィッチ)と7歳のジョイ(カイラ・ドリュー・シモンズ)が行方不明となる。事件の担当となった腕利きの刑事ロキ(ジェイク・ギレンホール)は、そのとき近くに止まっていたキャンピング・カーがいなくなっているところから、所有者のアレックス・ジョーンズ(ポール・ダノ)を容疑者として逮捕するが、証拠不十分で釈放せざるを得なくなる。しかしケラーは彼が本ボシとにらみ、誘拐すると改築中で空き家となっているかつての実家に監禁するが……。

76点

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 うーむ、異常者だらけで、驚きの展開を見せる強烈な物語。ホラーに近いミステリーで、恐ろしい話だが、現代ではいかにもありそうな話。実話の映画化と思った。冷静に考えてみれば、ハッピーエンドでは無く、非常に辛いことなのだが、主役がナイス・ガイのヒュー・ジャックマンで、ヒゲでタフさと怖さも出しているが、感情も良く伝わってきて、暴走はギリギリ理解できるから暗澹たる思いでは終わらない。むしろハッピー・エンドな気分。

 タイトルが「プリズナーズ」と複数になっているということは、捕らわれの身となった容疑者の方ではなく、誘拐された女の子たちのことだろうか。それとも、両方のことを指しているのか。はたまた、この事件に自ら深くかかわることになってしまった親のことも含めているのか。

 こういう異常犯罪者というのは、アメリカだといっぱいいそうで、とても怖い。しかも本作に出てくるのは、異常な人ばかりという印象。第一容疑者はもちろん、不審者、性犯罪者、署長、刑事、神父、親……皆ちょっと普通じゃない。ただでさえ誘拐事件は大事だというのに、こんな環境だと事件はより酷いことになってしまうと。そして、もしこんなことが自分の家族に起こったらと、幼い子供がいる人は考えざるを得ないだろう。ここまでやるかと。たぶん多くの人はテレンス・ハワードが演じたフランクの方ではないだろうか。こんな事件が起きたら、めでたく解決したとしても、関わった人々は決して元のようには戻れない気がする。そこがまた怖い。

 予告編では、警察署の前でケラーが容疑者のアレックスに襲いかかったとき「最後に見たときは生きていた」とか言っていたが、本編ではそれがない。ただケラーがやつはそう言ったと主張しているだけ。真実かどうかはわからない。他に誰も聞いていないからだ。これは本編式の方が、主人公の暴走に対する疑惑を感じさせるので効果的だろう。

 ケラー・ドーヴァー役のヒュー・ジャックマンは「ウルヴァリン:SAMURAI」(The Wolverine・2013・米/英)に続いての映画出演。すでに自作「X-MEN:フューチャー&パスト」(X-Men: Days of Future Past・2014・米/英)の公開も間近に控えている。撮影中のものが2本。映画でまくり。

 刑事ロキはジェイク・ギレンホール。好青年という感じの人なので、本作ではちょっとした無精ヒゲと刺青でタフな感じを加えている。やはり「遠い空の向こうに」(October Sky・1999・米)が良かったわけで、見ていないが「ブロークバック・マウンテン」(Brokeback Mountain・2005・米/加)でアカデミー賞候補にもなっている。最近出ていたのはドキュメンタリー・タッチのリアルなポリス・ストーリー「エンド・オブ・ウォッチ」(End of Watch・2012・米)。公開を控えている作品が5本もある売れっ子。

 非常に強い印象を残すのが、アレックス・ジョーンズのポール・ダノ。怪しい感じと同時にナイーブな感じもあって、挙動不審で、IQが10歳並みという感じまで出している。実に説得力がある。うまいなあ。もっと活躍してもいいのではないだろうか。トム・クルーズのアクション「ナイト&デイ」(Knight and Day・2010・米/豪)や、SFファンタジーの「カウボーイ&エイリアン」(Cowboys & Aliens・2011・米)、SFアクションの「LOOPER/ルーパー」(Looper・2012・米/中)、最近「それでも夜は明ける」(12 Years a Slave・2013・米/英)でとんでもない憎たらしい悪役を演じていた。まったく同一人物とは思えないほど正反対の役。うまい。

 他にケラー・ドーヴァーの妻に「ヒストリー・オブ・バイオレンス」(A History of Violence・2005・米/独)のマリア・ベロ、一緒に誘拐される黒人の少女の父親が「大統領執事の涙」(The Butler・2013・米)のテレンス・ハワード、その妻に「ナイト&デイ」(Knight and Day・2010・米)のヴィオラ・デイヴィス、アレックス・ジョーンズのおばさんに「エンド・オブ・ホワイトハウス」(Olympus Has Fallen・2013・米)の国防長官メリッサ・レオ、となかなか豪華。

 脚本はアーロン・グジゴウスキ。マーク・ウォールバーグのアクション「ハード・ラッシュ」(Contraband・2012・米/英/仏)が脚本デビュー作。本作は2009年にハリウッド業界人が選ぶ「製作前の優秀脚本」に選ばれた。今後も大いに期待したい。

 監督はドゥニ・ヴィルヌーヴ。カナダ出身で、日本で劇場公開された作品は少ないが、どれも評価が高いらしい。「渦」(Maelstrom・2000・加)、「灼熱の魂」(Incendies・2010・加/仏)どちらも見ていない。今年公開が予定されているのは再びジェイク・ギレンホールと組んだミステリー「複製された男」(Enemy・2013・加/西)だとか。見たい。7月公開予定。

 銃は刑事がグロック、ケラー・ドーヴァーがベレッタM92、おばさんがチーフスペシャルを使う。冒頭のハンティング・シーンのボルト・アクション・ライフルは、IMDbによればウィンチェスターM70だそうだ。

 公開初日の初回、新宿の劇場は全席指定で、金曜に確保。当日は14〜15分前に開場。ほとんど中高年で、若い人はわずか。男女比はほぼ半々。関係者らしい一団がいて、5人位か。多いって。2人で充分でしょう。1人でも良いくらい。最終的には157席がほぼすべて埋まった。ただ157席だからなあ……。

 気になった予告編は……上下マスクの「X-MENフューチャー&パスト」は新予告だったが、明るいままでの上映だったのでよく見えなかった。くやしい。損した気分。X-MENの過去と現在(未来?)が描かれるらしい。とにかく面白そう。5/30公開。

 半暗になってから、上下マスクの「ホットロード」は人気コミックの映画化だそうだが、予告の雰囲気は普通の学生の恋愛モノと言う感じ。ただ能年玲奈が出ていると。8/16公開。

 トム・クルーズの上下マスク「オール・ユー・ニード・イズ・キル」も新予告に。7/4公開。面白そう。

 「her/世界でひとりの彼女」は声だけの彼女であるAIに恋する男の物語らしい。ただホアキン・フェニックスが人工人間みたいで不気味。それと「かいじゅうたちのいるところ」(Where the Wild Things Are・2009・米/豪/独)の監督だからなあ……。どうだろ。設定は面白い。6/28公開。

 「超高速!参勤交代」は時代劇コメディらしい。でも当時の実情を皮肉っている感じもあって興味深い。コメディだからお手軽に作っているのか、それとも本気で本格的に作っているのか。6/21公開。

 「ノア 約束の船」は新予告に。エマ・ワトソンのビデオ・メッセージ付き。なんかタイトルは「HACHI 約束の犬」みたいだが、面白そう。すごいスペクタクル。なんでシネスコ・サイズじゃないんだろう。3Dでもないらしい。それは良かったけど。6/13公開。

 上下マスクの「トランセンデンス」はジョニー・デップの一言メッセージ付きで、どうやら死が迫った天才科学者の意識をコンピューターにアップロードして生かし続けたら、暴走して止められなくなるというSFホラーらしい。面白そう。6/28公開。


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