Winter's Tale


2014年5月17日(土)「ニューヨーク冬物語」

WINTER'S TALE・2014・米・1時間58分

日本語字幕:手書き風書体下、石田泰子/シネスコ・サイズ(デジタル)/ドルビー・デジタル、DATASAT(IMDbではSDDSも)

(米PG-13指定)

公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/winterstale/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

1895年、ニューヨーク。アメリカの移民審査で乳飲み子を抱えた一家は、母親が肺結核のため入国を認められず母国へ返されるが、小さな模型の船に隠して息子だけを密かに上陸させる。1916年、男の子はピーター・レイク(コリン・ファレル)と名付けられ、泥棒になっていたが育ての親のボス、パーリー・ソームズ(ラッセル・クロウ)から追いつめられ逃げ場を失うも、たまたま近くにいた白馬にまたがり、驚異的なジャンプでその場を逃れる。そして白馬がたどり着いたお屋敷の屋上のドアが開いていたことから、中へ侵入し物色していると、突然ピアノが聞こえてきてそれに聞きほれてしまう。そしてそれを弾いていた美女ベバリー・ペン(ジェシカ・ブラウン・フィンドレイ)に見つかる。しかし、お互い一瞬で恋に落ちる。

74点

1つ前へ一覧へ次へ
 タイトルからちょっと純愛ものかとも思ったが、予告でちょっと違う感じがあって見たところ、はたして正々堂々たる本気で作った大人のファンタジーだった。ボク的には大好きな作風。ちょっと甘いかもしれないが、なかなか感動的なお話で、見て良かった。

 お手軽に作れば子供向きになりそうなもの、あるいはすでに何本も作られたSFアクション・ホラーなどになりそうな「善対悪」、あるいは「天使対悪魔」というテーマ。それを恋愛もののテイストと、タイム・トラベラー的なテイストでまとめている。美男美女のラブ・ストーリーと徹底した優しさ、同時に対局にあるゾッとするほど凶悪な悪魔の悪意。両方ともなかなかのレベルで、いい。コリン・ファレルの二枚目がピッタリハマっているし、ラッセル・クロウの怖さもなかなか半端ない。

 しかも、ちゃんとファンタジー的な派手目のCGもちゃんと取り入れられていて、なかなか見せる。もう少し特殊メイクとかイリュージョン的なものがあっても良かった気はするけど。それと、ちょっとルシファー役のウィル・スミスが、やっぱり人が良さそうに見えて、ラッセル・クロウより怖く見えないのが残念だったかも。

 印象的に使われているのが、正義の象徴でもある「光」。各所でうまく使われている。エンド・クレジットでも使うほどのこだわり具合。こういうこだわりも映画っぽくて、予算のほとんどはキャストでなくなってしまったような印象でも、良いなあと思える。もっと宣伝に予算を掛けて、大々的にやっても良い映画じゃないかなあ。あまり入っていなかったけど。IMDbでは6.2点と低評価。

 主演はのピーター・レイクはコリン・ファレル。チンピラ的な役もやって、コスイ雰囲気なんか実にうまい人だが、本作のような役がピッタリのような気がする。本作の前の「ウォルト・ディズニーの約束」(Saving Mr. Banks・2013・米/英/豪)も同じではないがつながるものがあると思う。こういうとき、泣かすよなあ。使っていた銃は4インチのリボルバー。1916年だと時代が合わないが、パイソンっぽかったような。

 相手や役の美女ベバリーはジェシカ・ブラウン・フィンドレイ。イギリス生れで、イギリスのテレビで活躍していたが、それが評価され本作につながったらしい。このあと「フランケンシュタイン」など新作が何本か進行中のようだが、それ次第か。

 敵役のパーリー・ソームズはラッセル・クロウ。最近ほとんど悪役ばっかりという印象。スカー・フェイスにしていたし。「レ・ミゼラブル」(Les Miserables・2012・米/英)も主人公を追い詰めて行く役だった。「ブロークンシティ」(Broken City・2012・米)もとんでもない悪党だったし。傑作リメイク西部劇「3時10分、決断のとき」(3:10 to Yuma・2007・米)も悪役だったがラストに主人公を助ける。それがなくなった。本作の後は聖書物語に出てくる「ノアの方舟伝説」のノアだ。ラッセル・クロウは銃が出てくると必ず武器係としてセル・リードを使っているが、本作出はクレジットされていないようだ。シルバーのガバメントを持っていて、ぶっ放しているのだが。IMDbにはないが、エンド・ロールではアーマラーはライアン・ウィッシュバーンとかなんとか。

 ベバリーの父、アイザックはウィリアム・ハート。「ロビン・フッド」(Robin Hood・2010・米/英)でラッセル・クロウと共演している。独特の落ち着いた雰囲気がいい。ベバリーの妹ウィラの現代を演じたのは「北北西に進路を取れ」(North by Northwest・1959・米)のエヴァ・マリー・セイント。大魔王のルシファーに、息子を売り出そうとしている「アフター・アース」(After Earth・2013・米)のウィル・スミス。牙を見せたときだけ一瞬怖い気がしたが、あとはどうにもピンと来なかった。現代の新聞記者の母バージニアに「ノア約束の船」でラッセル・クロウと共演しているジェニファー・コネリー。……と、実に豪華。お金、掛け過ぎの感じも。

 原作は1983年に出版されたというマーク・ヘルプリンの「ウィンターズ・テイル」(早川書房)。製作・監督・脚本を兼ねたのはアキバ・ゴールズマン。もとは脚本家で、多くの話題作を手掛けている。ラッセル・クロウとジェニファー・コネリーが出た「ビューティフル・マインド」(A Beautiful Mind・2001・米)でアカデミー賞脚色賞を受賞。「シンデレラマン」(Cinderella Man・2005・米)でもラッセル・クロウと組み、「アイ、ロボット」(I, Robot・2004・米/独)や「アイ・アム・レジェンド」(I Am Legend・2007・米)でウィル・スミスと組んでいる。劇場映画の監督は初らしい。それで、豪華俳優陣が出てくれたのか。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、金曜に確保。当日は12〜13分前に開場。ファンタジーだがほとんど中高年で、男性14〜15人に女性3〜4人という感じ。だいたい女性の方が若い。最終的にはたぶん127席の1/3くらいが埋まった。もっと入っても良い作品だと思うけどなあ。恋愛モノ風に売っているし、広告量も少ないし、残念。

 気になった予告編は……なかなかタイトルが出なくてイライラする上下マスクの「ジュピター」はウォシャウスキー姉弟監督のSFアクションらしい。今度は面白いのだろうか。ちょっと新シリーズの「スター・ウォーズ」っぽいビジュアルがあったのが気になる。今秋公開。まだ公式サイトはない模様。

 これまたなかなかタイトルが出ない「イントゥ・ザ・ストーム」は、「ツイスター」みたいな映画かと思ったら、パニック映画らしい。まだ日本語サイトはないようだ。8/22公開。

 「るろうに剣心」は新予告に。とにかく面白そうな予感。前作も良かったので、たぶん次も大丈夫だろう。期待したい。二部作構成で、8/1と9/13公開。

 上下マスクの「オール・ユー・ニード・イズ・キル」はトム・クルーズの日本向けビデオ・メッセージ付き新予告に。すごいビジュアル。面白そう。7/4公開。

 「MONSTERZモンスターズ」はほとんど同じ予告で、ちょっと飽きが……。でもテーマ的には面白そう。5/30公開。公式サイトはクッキーをオンにしないと見られない。しかも動かし過ぎで気持ち悪い。

 スクリーンが上下に狭まってシネスコ・サイズになって本編へ。ワーナーのロゴがセピア調で始まるところがいい。


1つ前へ一覧へ次へ