All-Round Appraser Q -The Eyes of Mona Lisa-


2014年6月1日(日)「万能鑑定士Q モナ・リザの瞳」

ALL-ROUND APPRAISER Q -The Eyes of Mona Lisa-・2014・映画「万能鑑定士Q」製作委員会・1時間59分

日本語字幕:手書き風書体下/シネスコ・サイズ/ドルビー・デジタル


公式サイト
http://q-kantei-movie.jp
(全国の劇場リストもあり)

「万能鑑定士Q」の看板を出して店をやっている若い女性鑑定士、凛田莉子(りんだりこ、綾瀬はるか)のもとに、あるレストランの経営者、山村(村杉蝉之介)が、イベント用にレストランを借りたがっている会社のチラシを鑑定してくれとやって来る。小さな点に違和感を覚え指摘すると、感心した山村はイベント当日、イベント自体を鑑定してくれと言う。当日、レストランの上の階にあった宝石店の強盗事件に気付いた莉子は、貴重な宝石の盗難を阻止したことで、オーナーの朝日奈(村上弘明)の推薦により、モナ・リザの日本公開に向けたルーヴル美術館の臨時学芸員のテストをパリで受けることになる。たまたまイベント会場にグルメ記事の取材に来ていた「週刊角川」の記者、小笠原悠斗(松坂桃李)は興味を持ち、自腹でパリのテストについて行くことにする。

73点

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 どんでん返しの効いた、なかなか見事なミステリー。ちょっとだけだがパリ取材も行われていて、本物のルーヴル美術館も見ることができる。しかもモチーフとなるのが、誰もが知っている名画「モナ・リザ」で、「ダ・ヴィンチ・コード」(The Da Vinci Code・2006・米ほか)的な謎の多いものというのも興味を惹きつける。ただ、どうにもこじんまりとしたお話のような感じがして、TV向きなんじゃないのと思ってしまった。ほとんどの部分が部屋を出ずに、座ったまま展開できる話。本物、ニセモノを選ぶ場面は、どうにも眠たくて……。たぶん原作小説だったら面白いのではないだろうか。絵にすると、どうにも地味で、目が回るようなカメラワークや、テンポもあって、どんどん眠くなってしまった。隣のオバサンは軽くいびきをかいていた。

 そして、実に緻密な話の設定なのに、どうにもボクには粗いというか雑な感じもしてしまった。たとえば主人公の凛田に、なぜ取材を断られている記者の小笠原が付いて行けたのか。取材パスも、プレスの腕章も持っていないような一般人が、学芸員のテストを受ける人と一緒にルーヴルに入れるなんて。そして、いくら記憶力が良くても、一晩、本を読んだだけでフランス語が聞き取れて話せるようになるなんて。文章が読めるとか、書けるようになるくらいならまだしも……。小笠原から携帯が掛かってきてるのに、通話相手がどこにいるか簡単に調べられないって、ホント? アメリカのTVドラマだったら瞬時にわかるけど、あれはSFか? で、窓もない高層ビルの最上階で火が出てるのに、警報も鳴らずスプリンクラーも働かず、しかも地上からすごい煙が確認できるし……。うむむ。まあ、そうでないと2時間にまとめられないだろうし、ファンタジーなんだからということなのかも。疑問が後で出てくるならまだしも、見ていてリアルタイムで感じちゃうのはなあ。

 万能鑑定士Qこと凛田莉子は綾瀬はるか。最近映画に良く出ている印象。TVではNHKの大河ドラマ「八重の桜」(2013・日)に出ていた。映画だと「リアル〜完全なる首長竜の日〜」(2013・日)。ボク的には「僕の彼女はサイボーグ」(2008・日)がもっとも良かった気がする。

 週刊誌記者の小笠原悠斗は松坂桃李。やはり最近良く出ている印象。ボクはあまりTVを見ないので「麒麟の翼〜劇場版・新参者〜」(2011・日)で初めて見たかも。そのあと残念な「ガッチャマン」(2013・日)でも見た。最新作は「チーム・バチスタFINAL ケルベロスの肖像」(2014・日)らしい。

 存在感があったのは、もうひとりの学芸員となる流泉寺美沙の初音映莉子。「ガッチャマン」で松坂桃李と共演しているが、残念な作品だったので、役柄も残念そのもの。しかし「終戦のエンペラー」(Emperor・2012・米/日)では光っていた。とても同じ人とは思えないほど。本作も悪くなかった。

 ルーヴル美術館の教官ブレはピエール・ドゥラドンシヤン。主にTVで活躍している人で、映画は日本劇場未公開の「STRANGER BY THE LAKE」(L'inconnu du lac・2013・仏)に出ているらしい。フランスでのオーディションで佐藤監督が抜擢したと公式サイトに合った。フランス語はわからないが、良かった気がする。

 原作は累計400万部突破の人気ミステリー「万能鑑定士Qの事件簿」シリーズ。作者は「催眠」や「千里眼」などで知られる松岡圭介。どちらも映画化されている。かつてTVで催眠術師としてよく見かけた。ついつい小説に引き込まれてしまうのは、そんな経歴から来る心理的なテクニックが生かされているのではないだろうか。

 脚本は宇田学。TVの「TOKYOコントロール 東京航空交通管制部」(2011・日)などを手掛けている人。CS放送だったので見たかったが見ていない。

 監督は佐藤信介。1970年生れの44歳と若い。「ぴあフィルムフェスティバル」のグランプリからプロ・デビュー。「修羅雪姫」(2001・日)は素晴らしいアクションだったと思う。アクション監督のドニー・イェンのおかげもあって、釈由美子が本物のアクション女優に見えた。最近出は「GANTZ」(2010・日)シリーズや「図書館戦争」(2013・日)を手掛けている。ボク的にはもっとアクションをガンガンやってほしい気がする。

 本編では、結局最後まで「なぜQなのか」という答を出さなかったが、続編を作るためか。フランス・ロケでは現地のカメラマンを使ったようだが、日本映画のように浅い色で、ちょっとTVっぽい画質だった。天気が悪かったせいだろうか。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、金曜の夜にどうにかムビチケで確保。当日は10分前くらいに開場。メインは中高年で、下は小学生くらいからいたが、若い人は少々。男女比はほぼ半々。最終的に157席がほぼ埋まった。

 気になった予告編は……3D-CGによって描かれるアニメになるらしい「STAND BY MEドラえもん」は、漫画キャラでありながら、リアルな雰囲気。実写に近づけているということではなく、キャラはそのまま生かして、説得力をつけたと言う感じ。大人も楽しめるような気がするが、どうなのか。かなり立体っぽい雰囲気。8/8公開。

 「思い出のマーニー」はジブリ・アニメらしい曲(歌)のみの予告。説明はいっさい無し。監督・脚本は「借りぐらしのアリエッティ」(2010・日)を手掛けた人。タイトルもそっくりだし、さて…… 7/19公開。

 上下マスクの「ゴジラ」はついにゴジラの顔が! ちょっとゴリラっぽい気がしたけど……。7/25公開。

 スクリーンが上下せばまってシネスコ・サイズになってから、シネスコなのにワク付きで実写版の「ルパン三世」の予告。なんだか小栗旬はアニメのルパン三世を吹き替えた山田康雄の声を意識しているようだ。監督は「あずみ」(2003・日)の北村龍平。8/30公開。


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