Monsterz


2014年6月7日(土)「MONSTERZ モンスターズ」

MONSTERZ・2014・日本テレビ放送網/ワーナー・ブラザース映画/ホリプロ/讀賣テレビ放送/バップ/D.N.ドリームパートナーズ/ツインズジャパン/ジェイアール東日本企画/札幌テレビ放送/宮城テレビ放送/静岡第一テレビ/中京テレビ放送/広島テレビ放送/福岡放送・1時間51分

シネスコ・サイズ/ドルビー・デジタル


公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/monsterz-movie/
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すべての人間を思いのままに操ることができる“男”(藤原竜也)は小さい時に能力に目覚め、大人になってその力を利用し他人に銀行強盗をさせるなどして生活していた。しかしある日、運送会社の田中終一(たなかしゅういち、山田孝之)だけがコントロールできないことを知る。そこで車を操って事故に遭わせる。ところが終一は九死に一生を得たのみならず、4〜5カ月の重傷を負ったにも関わらず、驚異的な回復力で3日で退院してしまう。そして運送会社をクビになったため、車を運転していた中古ギター・ショップ「ユートピア」の雲井繁(くもいしげる、田口トモロヲ)のもとを訪れ、雇ってもらうことに。そんなある日、修一を探っていた“男”が現れ修一を殺そうとするが……。

70点

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 うむむ……。これは、凄いんだけど、アクションにしようとしたのか、ホラーっぽくしようとしたのか、どっち付かずでいまひとつ伝わってこなかった。1人の主人公である、他人を操れる孤独な男は徹底的に悪くて、怖くて良い。悪過ぎて、どう倒したら良いのか考えも付かないが、結末の着け方もそんな感じって……。そんな手があったかというのを見せてくれないとアクションとかミステリーとしては成り立たないのでは。ホラーならスッキリしない尻切れトンボもありか……。つまり、めっちゃくちゃ怖かった「女優霊」(1995・日)的な終わり方?

 一方、もう1人の、対局にあるような死なない男は優しい感じがあるのだが、怒った時の迫力がありすぎて(他の映画で悪い役も多く)、心底良い人に見えない。また、途中で出てくる幸せな家庭の代表のような「ユートピア(!)」というギター。ショップの雲井一家も、意味あり気な豪華配役なのに、すぐいなくなったり、あまり活躍しない。単なる舞台装置のひとつのよう。「男」の母の老けメイクも、なんだかリアルさがなくて、むしろ怖がらせるようなメイク。

 一番酷いのは警察で、終わって外に出る時、大学生くらいの男性が「警察、バカすぎじゃね?」。まったくそのとおり! 特殊部隊のSITが出動するのだが、あまりにノー・プランで、まるでコメディのよう。メインとなるベテラン刑事も、社会学だかなんかをかじったとかいう女刑事もダメダメ。警察が頼りにならないことを演出するための舞台装置のひとつということか。

 どういうルールで人を操っているのかも不明。詳しく掘り下げていない。そこがおもしろいのに。目が合ったヤツなのか、脳波だか何だかが届く範囲(?)なんだか。いっさいの説明なし。ただ操る男が暗闇にいるときや、まぶしい光を浴びている時は、コントロールできないらしいことだけ。つまりミステリー的な興味より、それによって生じる恐怖の方を描きたいのだろう。

 人を操れる男は藤原竜也。よく映画に出ていて、本作の前に見たのは「藁の楯」(2013・日)だったか。これから公開される「るろうに剣心」(2014・日)でも悪い役をやっているらしい。最近は悪役づいているようだ。

 良い人役の山田孝之も良く映画に出ている。ただ「電車男」(2005・日)の大ヒットの反動なのか、オタク的なイメージが固定化するのを嫌ってか、その後、凶悪な役をやることが多いような印象。だから本作でもどうも悪く見えてしまう。「凶悪」(2013・日)はかなり怖かった。ボクがそういう作品しか見ていないのかもしれないが。

 あまり活躍せず、存在感も薄いが、中古ギター・ショップ「ユートピア」の娘、叶絵(かなえ)は石原さとみ。NHKのTVドラマ「坂の上の雲」(2010〜2011・日)などいい感じだった。ボク的にはやはりTVの「霊能者小田霧響子の嘘」(2010・日)がとても良かった気がする。

 オリジナル版は、日本では2012年に劇場公開された韓国映画の「超能力者」(Hunters・2010・韓)。本作のできを見るとますますオリジナル版が気になる。その脚本は監督でもあるキム・ミンソク。日本版の脚本は渡辺雄介。ちょっと残念な「20世紀少年」(2008〜2009・日)シリーズや「GANTZ」(2010〜2011・日)シリーズなどを書いている。実は「霊能者小田霧響子の嘘」も書いていて、それで石原さとみが出たのか。最近はとても残念な「ガッチャマン」(2013・日)を書いている。やはり向き不向きとかもあって、「霊能者……」系のものがいいのではないだろうか。いま製作中の劇場実写版「進撃の巨人」も書いているらしいが、はたして。

 監督は中田秀夫。超怖くて、尻切れトンボで分けのわからないホラー「女優霊」を撮った人。それで超怖い小説の映画化「リング」(1998・日)を撮り、時代劇のホラー「怪談」(2007・日)も撮っている。そのあとホラーじゃない「インシテミル7日間のデス・ゲーム」(2010・日)で、藤原竜也と石原さとみと仕事をしている。ちょっと前、前田敦子のホラー「クロユリ団地」(2013・日)を撮っている。基本、ホラーの人で、本作もホラーということか。

 登場した銃は、警察官たちが使うニュー・ナンブらしいリボルバー。チーフも交じっていたかもしれない。特殊部隊のSITはMP5。ラストの変な収容施設のようなところで特殊部隊のような男たちが持っているのはM4カービン。銃器特殊効果はビッグショット。

 気になったのは、特に日本映画にありがちな脚本の設定で、誰か(ここでは叶絵)が銃を手にしてから撃つまでが長過ぎ。とにかく銃を相手に向けて延々良くしゃべる。銃を向けるんだったら早く撃て。撃たないんだったら銃を使うな。たぶん日本的な感覚だと、銃は脅しの道具ということなんだろう。撃たないのが前提。だから銃が出てきても緊張感ゼロ。

 ラストに「モンスターズ2」って出るのはどうなんだろう。

 公開9日目の2回目、新宿の劇場は全席指定で、金曜に確保。10分前くらいに開場になって場内へ。日テレの製作ということもあるのだろう、TV系は若い人が多い。下は中学生くらいから、上は中高年まで。男女比は4対6くらいで女性の方が多かった。これもTV系作品の傾向。最終的には287席がほぼすべて埋まった。TV系の宣伝力か。

 気になった予告編は……竜巻映画「イントゥ・ザ・ストーム」は、ちょっと雰囲気が「ツイスター」(Twister・1996・米)のようだが、絵の雰囲気は「2012」(2012・2009・米)のようでもある。たぶんパニック映画だと思うけど……8/22公開。

 上下マスクの「るろうに剣心」は新予告に。まず絵がカッコいい。スペクタクルもあるようだ。見たい気にさせる。「京都大火編」は8/1公開。「伝説の最期編」は9/13公開。藤原竜也が凄い。


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