On the Job


2014年6月18日(水)「牢獄処刑人」

ON THE JOB・2013・フィリピン・1時間55分(IMDbでは121分)

日本語字幕:丸ゴシック体下/ビスタ・サイズ

(フィリピンR-16指定)

公式サイト なし

ベテラン殺し屋のタタン(ジョエル・トーレ)は、新米殺し屋のダニエル(ジェラルド・アンダーソン)とともに、ある組織に属し、刑務所で服役しながら、仲介人の女テルマ(ヴィヴィアン・ヴェレツ)を介して仕事をもらい、署長と看守を巻き込み、必要な時だけ外に出て仕事をこなしていた。そのため疑われる心配はなかった。一方、一連の殺人事件を国家警察捜査局(NBI)のエリート捜査官フランシス(ピオロ・パスカル)が担当することになり、地元警察のベテラン刑事アコスタ巡査部長(ジョーイ・マルケス)から事件を取り上げてしまう。そんな時、タタンの保釈が決まり、仕事ができなくなるため、新米のダニエルを跡継ぎとして鍛えることになる。そして次の殺しをダニエルにやらせるのだが、とどめを刺さなかったためターゲットは一命をとりとめ、病院に収容されてしまう。2人はケリを付けるため病院に侵入するが、そこは地元警察とNBIの捜査官たちが厳重な警備をしいていた。

2014年7月19日(土)より、シネマート六本木にて公開

〈内覧版での視聴〉

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 なかなかハードな内容で、これが真実に基づく物語だというのがショッキングだ。おそらく刑務所にいながら殺し屋をやっているという部分だろう。そして、秩序も何もないような混とんとしたカオス状態の刑務所も。

 話は映画らしく政治絡みで大きくなって行くわけだが、そこへ師弟関係や、貧しさと家族の問題までからんでくる。上流社会、エリートの話と、貧しい下層の暮らしを対比させて行く。頭の良い1人娘を法科大学まで出して司法試験も受けさせるには、殺し屋だろうとやり続けなければならない。その辺の感情も良く伝わってくる。

 雰囲気としては、ハリウッドでリメイクされたアンドリュー・ラウ監督の「インファナル・アフェア」(無間道・2002・香)や、これまたハリウッド・リメイクされたオキサイド・パン&ダニー・パン監督による「レイン」(Bangkok Dangerous・2000・タイ)に似ている気がする。本作もハリウッドでのリメイクが決まっているという。

 驚かされるのは、これはフィリピン映画で、日本ではこれまであまり公開されたなかったということ。実際のところフィリピンはアジア有数の映画大国なんだそうで、年間の製作本数も多いのだとか。なるほど、それで絵作りがきれいで、映画っぽいのだ。かなりレベルは高いのではないだろうか。タイ映画も一時期たくさん公開されて話題となったが、その反動でたいして面白くない作品も大々的に公開されることになり、評判を落として自滅してしまったような気がする。フィリピン映画も優れたエンターテインメント作品がいっぱいあるのだろう。タイ映画やインド映画のようにならなければいいが。

 底辺を描くといっても、そこは映画。基本的に出てくるのは美男美女ばかりだ。そうかフィリピンってこんなイケてる人が多いんだと、あらためて驚くことにもなる。だから絵になる。どんな人たちかわからないが、たぶんフィリピンでは有名な人たちだろう。

 バイオレンス表現も強烈だ。血が噴き出し、頭が飛ぶ。この特殊メイクのレベルも非常に高いと思う。あちこちすり減ったボロボロの銃もリアリティがあって怖い。ちょっと発砲に迫力がなかったような気はするが、人の近くで撃っているのでしようがなかったのかもしれない。ここはCGを使ってもよかったのでは。

 ただ、日本人的には、字幕のせいでもあるのだろうが、ちょっと内容がわかりにくい。ここが惜しい。誰が誰なのか、どういう関係なのか、いまひとつピンと来ない。将軍と組織とか、政治家とか、NBIのフランシスの父とか、仲介の女とか、看守とか……。まあわからなくても全体の流れはちゃんと理解できるけど。地元警察とNBIの関係もわからなかったが、どうもアメリカのFBIに相当する組織らしい。

 銃は、ほとんどがペイントハゲハゲのガバメントとベレッタM92。マグ・チェンジもして見せる。最初NBIはヒップ・ホルスターにマガジン・ポーチも付けているが、後半ではどちらもショルダー・ホルスターに入れている。なぜなんだろうか。フィリピンではショルダー・ホルスターが人気なのだろうか。政府高官のボディ・ガードはM4カービン。これはきれいだった。ちゃんとロー・レディもやってた。

 脚本は、ミチコ・ヤマモトというフィリピンで活躍する日本人の脚本家。2000年くらいからTVを中心に活躍しているようだ。

 監督はエリック・マッティ。脚本も書いている。日本で劇場公開された作品はない模様。メインは劇場作品で、TV作品は少ない。過去にはアクション・コメディなども撮っているよう。何でも撮れる職人監督か。本作の続編も含む新作が4本も控えている。期待できるかも。

 ちなみに、製作会社のスター・シネマ(Star Cinema ABS-CBN Film Productions)というのは、1993年に設立され、現在はシェア半分以上のフィリピン最大手なんだとか。2013年の作品なので、冒頭に20周年と出る。


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