Cho-kousoku Sankin-koutai


2014年6月21日(土)「超高速!参勤交代」

2014・「超高速!参勤交代」製作委員会(テレビ東京/博報堂/ケイファクトリー/講談社/松竹/衛星劇場ほか)・1時間59分

ビスタ・サイズ/ドルビー・デジタル



公式サイト
http://www.cho-sankin.jp
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

享保20年(1735年)、現在のいわき市に当たる湯長谷藩の藩主・内藤政醇(まさあつ、佐々木蔵之介)と藩士一行は1年の江戸詰から故郷に戻ってきた。ところが、江戸の老中・松平信祝(のぶとき、陣内孝則)が、湯長谷藩は金山の届け出に虚偽の疑いがあるため、5日のうちに参勤せよという命を下してはいかがかと、時の八代将軍・吉宗(よしむね、市川猿之助)に建言し受け入れられる。この命に、貧乏藩で予算も無く、通常8日間掛かる江戸行を5日では無理だと、お取りつぶしも覚悟する内藤だったが、民のため5日で参勤すると決心し、知恵ものの家老・相馬兼嗣(かねつぐ、西村雅彦)に案を出せと命じる。


72点

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 たぶんあまり本格的な時代劇を期待すると違和感があると思う。これは痛快コメディ時代劇だ。かなり笑える。実際、何回か場内にも笑い声が上がっていた。ただ、冒頭、場内が温まる前からのわざとらしいギャグは上滑り気味で、観客が引いてしまっていた。徐々に雰囲気を出して行って、温まったら多少大げさなことをやってもなんともないのだが、出だしは控えた方が良いのではないだろうか。

 全体としては、冒頭以外、あちこちにちりばめられた笑い、極悪老中、忍者、「プリティ・ウーマン」的な恋とか、ロード・ムービー的珍道中、チャンバラ、大どんでん返し……など、時代劇活劇の要素をてんこ盛りにしたエンターテインメント。

 ちょっと笑いがコテコテ過ぎたかもしれない。この辺は好みの問題もあるだろうが。そして、コメディゆえにメイン・キャラクターは重傷は負っても死なないと。そのへんのバランスがまた微妙。そして、やはり現代で時代劇を撮ることの難しさ。どうしても時代劇っぽさが薄くなってしまう。惜しい。

 そして狼とか、遠くの大名行列とかのCGのレベルがいまひとつ。予算の関係もあったのだろうが、いかにもCGっぽい。興ざめ。これだったらなかった方が良かったのでは。タイトルのアニメは良かったのに。そしてナレーション。あえて狙ったのだろうが、百姓役でも登場する神戸浩は、あまりにとつ弁で聞き取りにくい。キャラとしては味があるが、ナレーションには向かないのではないだろうか。

 良い人過ぎる設定の内藤政醇は佐々木蔵之介。たぶん、この人の雰囲気が全体の雰囲気を支配している。実際にはどうか知らないが、この映画にはピッタリの雰囲気がある。「間宮兄弟」(2006・日)や「憑神」(2007・日)あたりから注目され始め、TBSのドラマ「ハンチョウ〜神南署安積班〜」(2009〜2013・日)で主演を務めた。「ハンチョウ」はコメディ色がほとんどなかったが、この人の持ち味は本作のようなちょっとコミカルな役ではなかろうか。

 一番おいしい家老・相馬兼嗣は西村雅彦。TVの深夜枠でエキセントリックな役をやっていた気がするが、たぶん大きく注目されたのは「古畑任三郎」(1994〜2005・日)から。いろんなものに良く出ているが、最近、映画では「のぼうの城」(2011・日)が印象に残っている。このひともとぼけたコミカルな感じが持ち味。

 一番すごいというか、見事だったのは、徹底的な悪人、老中・松平信祝の陣内孝則。フジTVの月9「愛しあってるかい!」(1989・日)がいまだに記憶に残る感じで、最近はバラエティのゲストが多い印象。コミカルな役か、悪役かという両極端。

 あとは老中・松平の配下である甲賀のくのいちが、違和感ありまくり。動きも変で、ぎこちなく、かつわざとらしい。演じていたのは冨浦 智嗣だろうか?

 脚本は工学部出身という異色の土橋章宏。本作で第37回城戸賞を歴代最高点で受賞し、小説化と映画化が決定したという。ということは、脚本は問題ないわけで、映画化に際してどこかに問題があったのかも。

 監督は本木克広。残念な「ゲゲゲの鬼太郎」(2007・日)や、独特の世界観を描き出した「鴨川ホルモー」(2009・日)を監督した人だ。コメディ系が多いようだが、ラブ・ストーリーの「すべては君に逢えたから」(2013・日)や、競作となった実話に基づく「おかえり、はやぶさ」(2012・日)なども撮っている。

 公開初日の初回、新宿の劇場は全席指定で、金曜にムビチケで確保。当日は10分前くらいに開場になって、場内へ。メインは中高年で、ちょっと若い人も。男女比は4.5対5.5くらいで女性の方が多く、しかも女性の方が若い感じ。最終的には301席に8割りくらいの入り。

 気になった予告編は……桜田門外の事件を起こした犯人を追う命を受け、仇討ち禁止令が出た明治6年になってまでも追い続けた男を描く、浅田次郎原作の「柘榴坂の仇討ち」は面白そう。9/20公開。


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